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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

未来

キャッチコピーは「湊かなえ史上、もっとも過酷で、もっとも切ないミステリー」で、まさにその通りの映画。 主人公は、黒島結菜演じる小学校教師・篠宮真唯子で、学生時代と教師になってからと、さらにその後という3つの時期が描かれる。だが、物語の真の主人公は、山崎七海が演じる中学生の佐伯章子だろう。10歳の年に父が病気で亡くなったことから、彼女の生きる環境は悪いほうへ傾いていく。 出てくる男は、悪い奴、どうしようもない奴、卑劣な奴ばかりで、これはまともな男かと思うと、弱くて役に立たない。ならば女はどうかというと、章子をいじめる同級生の女子や、篠宮を追い詰める親など、暴力をふるわないだけで、悪質さは男以上だったりもする。悪い意味での「類は友を呼ぶ」の典型で、負の連鎖が続いて、主人公ふたりを追い込んでいく。 映画の構成は、10歳の章子とそのときの篠宮、中学生になった現在の章子、学生時代の篠宮、さらに北川景子演じる章子の母の過去など、いくもの時間をいったりきたりする。全体像が把握できるようになったときは、そこまで男たちはひどいことばかりしていたのかと、愕然とする。 ともかく、重い映画だ。学校でのいじめ、児童虐待、若者の貧困、家庭内性被害、強制売春等など、考えられるかぎりのありとあらゆる災厄が少女を襲いかかる。多くの人に見てほしい映画だが、とくに児童虐待ものが苦手な人は覚悟してから見たほうがいい。でも、覚悟して見る価値はあると思う。

26/4/29(水)

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