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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

POCA PON ポカポン

猟奇殺人事件や未解決事件に惹かれるのは人間のサガかもしれない。現に謎めいた事件に多くの人が反応し、SNS上で探偵さながら推理をするのが現実世界だ。ただし実際の事件を映画にした際、その事件の全貌を描くのはあまりに不謹慎である。であれば「何故、事件を起こすような人間になったのか」もしくは「罪はいつか許されるのか」というテーマで描くのが映画化なのではないかと個人的には思っている。 本作はその更に先を見た「犯罪事件は人に影響を与えるのか」といったテーマで、人間の心の動きを淡々と映していく。しかもそれが他者からの影響をまだ受けてしまう10代の少年という設定で綴ることで、観客は彼の危うさを心配しながらスクリーンを見つめることになる。余計は解説もなく、感情を語ることもなく、その状況で反応する人間を追っていくドライなカメラ。親子の姿が映っていてもメロドラマのような演出がまったく無いお陰で観客は冷静でいられ、不気味な感覚を味わうのだ。確かに一線を越える人間の気持ちは通常は理解出来ない。けれど知りたいと思うのが人間だ。この好奇心を静かに注意するようなアプローチで撮られた脳裏に焼きつく映画だった。

26/5/3(日)

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