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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

シラート

メッセージというものが映画にあるのだろうか。いや、きっと脚本家や監督が伝えたいことはあるのだが、それを具現化出来るかというとそう容易いものではないと痛感した。それが『シラート』だ。冒頭、何もない場所に沢山のスピーカーが山積みされ、やがてそこから音が発せられると、多くの人が集まって感じるままに身体を動かし始める。やがて軍がやって来て解散を強いられるが、一台の車が路線変更をして逃げ出すとその後に何台か続くのだ。この光景を客観的に捉えるとまるでアリのようなのだ。 主人公の男と幼い息子は、テクノやトランス系音楽を爆音で楽しむレイブパーティに参加して行方不明になった娘を探しに来たのだが、彼らも流れに任せて道を外れた車についていくことになる。途中、キャンプ用のテントをなかなか張れないふたりについて自由を愛し、レイブパーティを主催する人々が「彼らは砂漠に向いていない」と微笑みながら呟くのだが、この親子の出現により、実は自由な感情で生きていたはずの彼らが、他者への思いに共鳴し、やがて驚くべき方法で魂の開放を父親から学ぶことになる。 タイトルに使われたシラートの意味は、アラビア語で「道」と言い、宗教的には「審判の日に天国と地獄に架けられる細い橋」だそうだ。それを知って観るとレーザーによって映し出される橋や、車での旅で先に進めば進むほど道が険しく細くなり、試練が待ち受けていること自体が、すべて計算づくであると気付かされる。これは人間の人生そのものを描いているのかもしれない。そんな人間に寄り添い続ける飼い犬も映し出されるが、彼らに選択の余地はない。一緒に居た人間の運命に身を委ねるだけだ。そんな純粋な思いも、愚かな人間という生き物の強欲により失うことにもなると、私自身はこの映画からメッセージを受け取った。

26/5/31(日)

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