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植草 信和
フリー編集者(元キネマ旬報編集長)
サヨナラの引力
26/7/3(金)
TOHOシネマズ 日比谷
香港映画の不朽の名作『ラヴソング』は、異郷の地で苦節を乗り越えようとする男女の「同志の絆」を描いた異色のラブストーリーだ。『サヨナラの引力』は、その名作を彷彿とさせる見事な物語の構造を持っている。実は本作、中国のヒット映画『僕らの先にある道』の韓国リメイク作品。ゲーム作家を夢見る青年と、建築家に憧れる女性が夢を叶えるために同志として支え合い、傷だらけの葛藤を経て「再生」へと向かう物語だ。 本作の素晴らしさは、近年の名作『花束みたいな恋をした』が持つ20代の恋のきらめきと、成瀬巳喜男監督の『浮雲』のような腐れ縁のやるせなさ、その甘美と苦渋の両面が絶妙にブレンドされている点にある。過ぎ去った日の愛とノスタルジーを呼び起こすだけでなく、「サヨナラ」の先にある希望までをも描き切った。だからこそ、本国・韓国での公開時には口コミで順位を伸ばし、3週連続で週末興行ランキング1位、観客動員260万人突破という大ヒットを記録したのだろう。 実力派俳優のク・ギョファンとムン・ガヨンの繊細でリアルな演技を引き出したのは、『82年生まれ、キム・ジヨン』のキム・ドヨン監督。『私の頭の中の消しゴム』や『建築学概論』といった韓国製ラブストーリーの名作群に、また新たな傑作が加わった。
26/6/21(日)