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政治からアイドルまで…切り口が独創的
中川 右介
作家、編集者
あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。
26/8/7(金)
丸の内ピカデリー
『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の続編。原作の小説とは、かなり設定が変わっていて、別の物語と言ってもいいくらいだ。 映画の前作で高校生だった百合は、高校の国語の教師になっている。タイムスリップした戦争中に恋をした特攻隊員の彰のことが忘れられない。そんなある日、彰にどことなく似た感じの青年と出会い、新しい恋が始まりかけるが、百合は彰のことを思うと、一歩、踏み出せない。 この続編では、百合はタイムスリップしない。特攻隊員の彰が、亡くなる前にタイムスリップして現在にやってくるわけでもない。だけど、これも一種のタイムスリップものといえる。 百合はひとりの高齢女性に出会うのだが、それはタイムスリップした戦争中に、食堂で仲よくなった千代の80年後だった。この女性を倍賞千恵子が演じている。『TOKYOタクシー』では施設に入る高齢女性だったが、今作もホスピスで余命を過ごしている女性で、若い世代に「戦後」を語るので、どことなく共通点がある。 続編では、現象としてのタイムスリップは起きないが、千代の視点では、百合は「戦争中から現代にタイムスリップしてきた少女」となる訳で、この仕掛けがうまい。千代も初恋の相手が特攻隊で亡くなっているが、その後、結婚して子どもも生まれていた。百合は、そういう「女の生き方」に疑問を感じるのだが、やがて千代の生きてきた戦後を知ることで、変わっていく。 この夏は、『君と花火と約束と』というアニメ映画も公開され、「花火」「戦争」「タイムスリップ」という共通点がある。若い世代が「戦争」を知るきっかけとして、タイムスリップが用いられているのは、映画の中の若い世代が戦争に関心を持つには、戦争中に行くか、戦争中から来た人と出会うことでもないと、リアルではないからか。タイムスリップという非リアルの設定が、リアルな感情をもたらすという、映画のマジックだ。だからタイムスリップの理由も原因も原理も、どうでもいいのか、何の説明もされない。 映画の中盤、タイムスリップ経験のない普通の高校生たちは、百合が考えた特別授業で、特攻隊員が最後に家族に出した手紙を朗読させられる。最初はヘラヘラしていた生徒たちも、だんだん深刻になり、一瞬だけかもしれないが、特攻隊として死んでいった同世代とシンクロする。といって、反戦運動に目覚めるわけではなく、受験のための勉強という日常に戻る。その身も蓋もなさが、かえってリアルだ。
26/8/6(木)