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植草 信和

フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

グレイ・ミッション

ガイ・リッチー監督の最新作『グレイ・ミッション』。見終わった後の圧倒的爽快感に陶然自失。面白い、いや面白過ぎる!!!  『ジェントルメン』(2019)、『コヴェナント/約束の救出』(2022)、『オペレーション・フォーチュン』(2023)、『アンジェントルメン』(2024)など、ここ数年の快作群のレベルをさらに押し上げる、きわめて芳醇なエンタテインメントに仕上がっているのだ。 本作を貫くのは、リッチー作品特有のリズム感だ。軽妙さと円熟した演出が画面のすみずみまで行き渡り、会話と編集の切れ味が観客の感覚を鋭く刺激する。『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(1998)や『スナッチ』(2000)で確立した“語りの躍動”は、本作でいっそう研ぎ澄まされる。強奪作戦というリアルな題材にユーモアとスピード感が注ぎ込まれ、作戦会議から情報戦、駆け引き、アクションへと流れるように物語が展開する。人質救出という重いテーマを扱いながらも、語り口は常にスタイリッシュで華やかだ。 キャスト陣の存在感も大きい。ヘンリー・カヴィルとジェイク・ギレンホールという2大スターに、エイザ・ゴンザレス、ロザムンド・パイクが加わることで、作品は国際級の光沢をまとう。彼らの視線や沈黙、判断の揺らぎが物語の緊張を形づくり、単なるアクション映画とは異なる“群像劇の豊かさ”を生み出している。 計画の破綻、裏切り、隠された目的――観客は常に“裏側”を読むことを求められ、物語は予測不能のスリルで満ちていく。作戦が順調に見えても、別の思惑が水面下で蠢いているかもしれない。その“読めなさ”こそが本作の推進力であり、リッチー監督が長年磨いてきた語りの技法をレベルアップさせている瞬間でもある。 『グレイ・ミッション』は、成熟した演出が冴えわたる刺激的なアクション映画だ。“観る喜び”を提供してくれる1本として推したい。

26/7/28(火)

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