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相田 冬二
Bleu et Rose/映画批評家
マルセル&ムッシュ・パニョル
26/11/6(金)
新宿武蔵野館
『ベルヴィル・ランデブー』でその名を映画史に遺すシルヴァン・ショメが実に15年ぶりに長編アニメーションを完成させた。この間、実写映画を手がけたり、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の冒頭のために血みどろのカートゥーン・アニメを提供したりしていたが、新作は実に端正な仕上がりだ。 マルセル・パニョルと言えば、日本では『愛と宿命の泉』の原作者として知られているが、本国フランスでは、劇作家としても、映画監督としても、名高い。言ってみれば国民的作家なのだ。ショメは、パニョルの孫から依頼されて、彼の伝記映画を撮ることになった。当初は、実写featuringアニメのオーダーだったそうだが、ショメの提案でアニメfeaturing実写の体裁となった。だが、アニメ部分も全てまず実写で撮影した上で、それをアニメーターに渡すという込み入った過程を踏んでいる。昨今のアニメ作りとは正反対のアナログ的綿密さによる画風には、ショメにしか描き得ないタッチがあり、それだけでもううれしくなる。 実在の人物がモデルのため、『ベルヴィル』に見られたデフォルメは極力抑えたという。だが、アニメにしかできない創意の象徴が、執筆に行き詰まったマルセルの前に、少年時代のマルセルが現れ、2人で人生を周遊していくという設定だ。老マルセルより、落ち着いており、肝心な時には姿を消す少年マルセル。妖精のような存在が、演劇界からトーキー映画のフィールドに飛び込み、スタジオまで興したパニョルの波瀾万丈を見護る構成は、優しさに満ちている。 ショメらしい鋭い演出精神は、パニョルの人生の軸足が舞台から映画に移行することによって、画面の構図や被写体との距離が変幻していく呼吸。元々、実写に造詣が深いとは言え、これはやはり実在に実写映画を監督したからこその成果。 さらりと見ても、じっくり見ても、満足できる、贅沢な佳品である。
26/10/26(月)