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夏目 深雪

映画批評家

NAZA ナザ

パレスチナ人とイスラエル人の混合チームで製作した映画に、2003年の『ルート181 パレスチナ―イスラエル旅の断章』がある。実現しなかった分割線を旅し、その土地の人と対話していく傑作ロードムービーだ。 昨年アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』も、パレスチナ人ふたりとイスラエル人ふたりの4人の共同監督であったが、2023年10月のハマス襲撃以降、激しさを増しているイスラエルのパレスチナへの攻撃を踏まえ、痛ましさが一番に来る映画であった。 『NAZA ナザ』は、『ノー・アザー・ランド』のイスラエル人監督のふたりがイスラエル軍の兵士や諜報員24人に極秘でインタビューしたドキュメンタリーである。NAZAとは、イスラエル軍が「標的」であるハマスの構成員を攻撃する際に、犠牲になると予測する民間人の巻き添えの数のこと。犠牲者をそう言い換えることで「数字」や「図形上の点」として認識し、兵士たちが攻撃任務を作業のように遂行できるように、システム化しているのだ。 監督たちは兵士たちに紙とペンで攻撃図を描かせることで、加害者が被害者をどのように認識しているか明らかにしようとした。ふたりの質問は鋭く、兵士たちにも逡巡が見えたり、逆に「作戦は楽しかった」と言う兵士がいたり、しじゅう息が詰まるような緊張に満ちている。 塚本晋也監督も『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』で加害者を描いた。人間を恐ろしい殺戮の自動マシーンにするシステムにこそ光を当てるべきという考えからだろう。しかも本作の場合、自国の軍隊に向き合っている。殺戮自体のシーンはないものの、みぞおちの辺りが冷たくなってくるような作品である。ぜひ多くの人に観てほしい。

26/10/26(月)

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