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森元 隆樹
演劇評論家/ライター
Pityman『ドライブ』
26/11/20(金)~26/11/30(月)
生活支援型文化施設コンカリーニョ、 スタジオ空洞
初めて「Pityman」の舞台を観たのは2018年6月、「新宿眼科画廊 スペース地下」での『ハミング・イン・ウォーター(再演)』であった。作品の構成力と、舞台の緊張感を途切れさせない演出力には今後への期待の余地を残すものの、セリフが至るところで原石のように光り、交わる会話の角度の鋭さに、何度も固唾を呑んで舞台を見つめている自分がいた。 <<<>>> 読み方は「ピティーマン」 山下由の脚本、演出作品を上演する媒体として2011年に旗揚げ。 「いちばん小さなものが、いちばん大きなものを動かす」を標榜。 都内を拠点に、ドライでありながらも さみしさを抱える家族や青年たちの会話劇をつくり続けている。 <<<>>> 劇団ホームページにそう謳う「Pityman」は、公演を重ねるに連れて更にセリフの切れ味を増していき、やがて構成力や演出力も着実に手に入れていく中で、2025年1月、『おもいだすまでまっていて』(東京:シアター711/広島:JMSアステールプラザ多目的スタジオ)を発表する。 <<<>>> 母はもう80なのにとても元気だ。親子3人でやってきた東京観光。怒る妹、けらけらと笑う姉。 自分が食べたいと言った蕎麦に箸もつけずに母は夜景を眺めている。 この旅をいつか思い出すだろう。あの日のことを思いだすように。 (劇団ホームページ『おもいだすまでまっていて』より) <<<>>> この公演が素晴らしかった。登場人物は広島に暮らす母と娘2人。母は少しずついろいろなことを思い出せなくなっている。娘たちそれぞれが抱える思いは隠し切れずに零れ落ち始め、柔らかな手触りだったはずの言葉が、いつしか怜悧に進化して相手を傷つけていく。古い記憶が、新しい現実の中に生きる3人の今と重なっていく。それは誰かにとってのいつか来た道であり、誰かにとってのいつか行く道なのだ。やがて3人は東京へと観光に向かう。始点は同じはずなのに、今はもう交わりが複雑過ぎる3本のベクトル。そんな親子3人の、東京物語。 親も老い、自らも人生の行く末を意識し始めた娘たちの感情を見事に会話に落とし込んでいく筆力と、過去の物語と現代の物語の交差を違和感なく描く構成力、そして、些かも緩むことの無い緊張感に満ちた演出力が全編を覆い、重くなりがちなテーマを、見事なエンターテインメントに仕上げていた。 その「Pityman」が、東京と北海道の2都市ツアーで、新作『ドライブ』を上演する。 <<<>>> 父が山から落ちて死んだ。海を越えて熊本は阿蘇まで引き取りに行かなければいけないらしい。私たちは夜に車を走らせる。死体を引き取りに行くなんて気が重いけど、初めての道にドキドキしていた。罪悪感なのだろうか。勝手に生きて勝手に死んだ父。落ちてゆく姿を見たわけでもないのに、その瞬間を繰り返し脳裏に見る。ざまあみろ。 <<<>>> 公演への道標として、ホームページにそう記された『ドライブ』。前作で東京に向かう親子を描いた山下由の筆は、今回、「死んだ父を迎えに、阿蘇へ向かうロード演劇」を綴る。この新たに生み出される3人芝居で、それぞれがどんな思いを抱え、どんな人生のベクトルが交わっていくのか。期待して待ちたい。
26/11/3(火)