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水先案内人のおすすめ

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見逃せない、ちいさな芝居を中心に

釣木 文恵

演劇ライター

FUKAIPRODUCE羽衣『ピロートーキングブルース』

5月に静岡市の中心地で行われた〈ストレンジシード静岡〉に行った。街なかのいたるところ、たとえば駿府城のある公園の芝生広場や歩行者天国となっている商店街の交差点なんかで演劇が上演される。街なかに溶け込んだ演劇祭。 タイムスケジュールを把握せずに街をうろうろしていたら、近くにいたおじいさんが連れのおばあさんに「かわい子ちゃんたちがタオル一枚で出てきたわ」と話しかけていた。彼の見ている方向に目をやると、まさにFUKAIPRODUCE羽衣の面々が登場したところだった。市役所前の広場。大きな階段に観客がぎっしりと座る前でめいっぱい歌う面々。晴れた空の下で聞く深井順子の声は底抜けに明るいのに切なくて、涙が出た。 FUKAIPRODUCE羽衣の作品は、いつも孤独に寄り添ってくれる。それは数々の名曲を生み出し、物語を紡ぐ糸井幸之介の力であり、10代の頃から糸井の才能を見抜き、作・演出・音楽を任せた深井の力だと思う。彼らにしかできない“妙―ジカル”、その公演は客席にいる瞬間だけでなく、その後の人生で耳に残る曲とともに観た人を支えてくれる。

19/6/16(日)

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