いま58歳になる女優筒井真理子の存在感と美しさが際立ち、それだけでもじゅうぶんに魅せられる作品。そして監督はカンヌ映画祭「ある視点」部門の審査員賞を受賞した『淵に立つ』の深田晃司で、前作と同じように何とも言えない不穏さの中で物語が進んでいく。
何も悪いことはしていないのに、静かにだんだんと不利な方向に転がっていき、気がつけば身動きできない状況に陥り、日常が崩壊する。誰にでもありそうなシチュエーションがひたすら怖い。プロットは複雑だが、筒井真理子と市川実日子、池松壮亮という圧倒的な演技力を誇る役者たちが引き起こす相互作用に魅了され、最後まで引き込まれるように観た。