水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

パリ発、ヨーロッパで話題の作品を

佐藤 久理子

パリ在住、文化ジャーナリスト

存在のない子供たち

「両親を訴えたい。僕を産んだ罪で」と法廷で語る12歳のゼイン。レバノンの貧民窟で生まれた彼は、戸籍を持たず、妹たちを養うために路上でジュースを売り、それでも親からは「生まれなきゃよかったんだ」とののしられる。 ついに家を飛び出した彼はしかし、さらなる過酷な現実に直面する。ここは子供が守られるどころか、社会の弱者として標的になるか、無視されるかの世界なのだ。 ナディーン・ラバキ監督が、同じような境遇にある子供たちをキャスティングした中でも、主人公に扮したゼイン・アル=ラフィーアは、その天使のようなあどけない顔立ちの中に悲痛な眼差しをたたえた、奇跡的な逸材。現代のレバノンを舞台にした『大人は判ってくれない』は、圧倒的なリアリズムをもって我々の心臓を貫く。

19/7/15(月)

アプリで読む