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監督、俳優…新しい日本の才能に注目(2018年6月〜2022年12月まで担当)
野村 正昭
映画評論家
淪落の人
20/2/1(土)
新宿武蔵野館
突然の事故で半身不随となり人生に絶望する男と、心に夢を秘めたフィリピン人の住み込み家政婦との絆を描いた感動作——と書くと、よくあるお涙頂戴の映画かと思いきや、これがなかなか侮れない絶品だった。本作がデビュー作のオリヴァー・チャン監督は、広東語が話せないヒロインと、なかなかコミュニケーションができずイライラを募らせる男チョンウィンとの葛藤を冒頭から丁寧に描き、だからこそ徐々に気持が通じあう過程が生きてくる。 チョンウィン役のアンソニー・ウォンは、『八仙飯店之人肉饅頭』(1993年)の殺人鬼役で強烈な印象の怪優だが、着実にキャリアを積み、本作の脚本に惚れ込み、なんとノーギャラで出演。ヒロインのクリセル・コンサンジも、けなげな好演だ。第38回香港電影金像奨で主演男優賞、新人監督賞、新人賞の三冠受賞も大いに納得できる快作でした。
20/1/28(火)