【re:START】キーパーソンInterview
KREVA【後編】
特別連載
6-2

KREVAが有料生配信ライブ<KREVA Streaming Live「① (マルイチ)」>を開催する。
2月27日より<KREVA CONCERT TOUR 2019-2020「敵がいない国」>全国ホール&アリーナツアーが予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため全公演無期限延期。本来ならツアーファイナル公演となるはずだった6月24日の午後9時08分に、新たなプラットフォーム「Thumva(サムバ)」のこけら落とし公演としてオンラインライブが行われる。
また、この日にはツアーのために書き下ろされ披露する予定だった新曲「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」も自身のオンラインショップにて数量限定で発売される。
4月から5月にかけての外出自粛期間にはトラックメイキングの模様を自身のYouTubeチャンネルから生配信するなど旺盛な発信を繰り広げてきた彼。新曲について、新たな試みについて、そしてオンラインだからこその表現の幅の広がりについて語ってもらった。
── 6月24日には新曲「素敵な時を重ねましょうfeat. SONOMI」が発売になりますが、これはもともと無期限延期になった「敵がいない国」ツアーのために作った曲なんですよね。
KREVA そう。ツアーで歌おうと思って作ってそのままになってたんだけど、スタッフから「あれを出したい」という話をもらって。結果ウチのオンラインショップ限定で発売になったという感じです。
── これは、どういうモチーフ、どういう意図を込めて作った曲だったんですか。
KREVA SONOMIを呼んだきっかけは、去年のライブハウスツアーで「涙止まれよ」っていう歌を一緒に歌ったことで。『愛・自分博』に入ってる曲なんだけど、この歌は俺もSONOMIもまったく頑張らない声で、完全ユニゾンで歌うんです。それがものすごく気持ちいいってことに気付いた。こういう曲をやりたいと考えて、ここ3、4年くらいで自分が作った中で一番気に入ってるメロディを歌おうと作った感じですね。
── 声を張り上げず、盛り上げず、平熱で声を重ねるというのがポイントだったんですね。
KREVA そうだね。作っている間も「頑張んないのがキーワードだよね」って言った気がする。
── 歌詞には「歳を重ねていい大人になる」というテーマがありますが、これは?
KREVA もうひとつのきっかけになったのが、ツアーのリハーサルに、バンドメンバーたちが60年代とか70年代製のギターみたいなビンテージの楽器を持ってきたことで。それがめちゃくちゃいい音なんですよ。よく「老けたなあ」とか「もう歳だから」って言いがちだけど、それはそれでいいところもあると思って。培ってきたものを肯定するような考え方の提示ができたらいいなって前から思ってたんです。そういうテーマはメロディができたときからずっとあって。もちろん新しいものも好きだけど、それにばっかり価値を見出そうとするのはどうなのかなっていう。
── ちなみにジャケットもKREVAさんデザインなんですよね。これはどういうふうに作ったんですか。
KREVA 昔からコラージュが好きでよくやってたんですよ。雑誌とかを集めてハサミで切ってコラージュするのをソロデビューしたころから趣味みたいにやってて。で、たまたまツアーのためにYouTubeを始めるにあたってFinal Cut Proっていう動画編集ソフトの使い方を覚えたんだけど、やってるうちに「これでコラージュ作れるんじゃね?」と思って。もともと静止画を作るソフトじゃないんだけど、そういう使い方をするのもヒップホップっぽいかなと思ってやってみた感じです。
── 子供のころの自分の写真を使ったのは?
KREVA それが曲のテーマと合致したというのかな。まずメンバーにビンテージ楽器の写真を撮ってもらったんです。そしたらバンマスでもあるドラムの白根(佳尚)がビンテージシンバルの写真を送ってきて、それを見て「木の年輪みたいだな」と思って。それで真ん中に子供のころの自分の写真をコラージュしてみたんです。それをメンバーのLINEグループに送ってみんなで爆笑してたんだけど。でも本気で作ったものよりこっちのほうが意外としっくりきたんで採用になったという感じですね。
── KREVAさんは4月から5月にかけてYouTubeチャンネルで精力的に発信していましたよね。しかもビートメイキングの様子をリアルタイムで生配信していた。これは以前にやっていた「完全1人ツアー」で、ステージ上で即興のビートメイキングをしていたことから地続きの発想ということなんですよね。
KREVA もちろんそうですね。ただ、「完全1人ツアー」って、チケットを買ってもらってライブハウスなりホールなりに集まってもらってやる以上、何らかのショーを見せなきゃいけないというのがあるんですよ。ちゃんと達成感がないといけないというか。でもビートメイクに関しては本来ドキュメンタリーだから。もしかしたら何かがトラブったり、できないかもしれないっていうこともあるじゃないですか。そこも含めて見せてくのがおもしろいと思ったし。どっちかというと「完全1人ツアー」でも見せたかったのもそういう感じなんです。もともと「こうやって作っていくんだよ」というのをライブ感たっぷりに見せてくのがやりたかったから。この状況が生んだことだけど、これがほんとにやりたかったことなんじゃないかなって思う瞬間もあった。
── むしろライブではなくYouTubeの生配信でビートメイキングを見せるということに手応えを得ていった。
KREVA うん、おもしろかったですね。それに自分は毎日家でビートを作ってるから「これくらいの時間があれば曲はできる」という感覚もつかんでいたんで。できないってことはない。そういう自信もあったかな。
── たしかにここにはすごく大きな可能性がありますね。エンタメに教育としての要素を織り込む「エデュテインメント」という形式があると思うんです。それがアーティストの音楽活動に結びつく可能性がある。コロナ禍によるオンライン化が進むことで今後そういう表現の幅が広がるように思います。
KREVA たしかに幅が広がりそうというのはあるかもしれない。今まではライブハウスとかホールに人を沢山集めてやるっていう発想ばっかりだったけど、そうじゃない方がやりやすいこともあるというか。もちろん人を呼んで、みんなを盛り上げるのも好きだけど、やっぱりそれが身体に染み込んでしまってるがゆえに、自分のやりたいことを無意識のうちにその枠にハメて考えていたなって。でも、今のこの状況になって、逆に見せやすくなってる気がする。
── 緊急事態宣言は明けましたが、これでYouTubeライブは一段落という感じなんでしょうか。またやるつもりはありますか。
KREVA 一段落のつもりだったんだけど、またやりたくなってる自分はいますね。新しいカメラをポチッたりしてるんで(笑)。さらにクオリティを上げてやりたい。あとはトラックメイクをずっと観ていたい人もいると思うんで。これまではシンプルなところしか見せてないから、じっくり3時間かけて、ひたすらビート作ってるところを見せるのもいいと思うしね。こういう世の中になってきたがゆえに、あんまり手を広げすぎず、興味あるところを追求していくのがこれからの形だと思ってますね。
── ちゃんとお金をとってオンラインでトラックメイキング講座やるの、いいと思います。
KREVA それはほんとにやりたいね。教えたいテクニックはいっぱいあるし、そこにちゃんとフォーカスして全部見せるっていうね。それはやってみたいな。しっかり事前にアナウンスして、トラックメイクをやってる人を集めてね。そういう場所を作りたいというのは2〜3年ぐらい言ってたから、そこに向けての一つの道筋が見えてきたのはあるかな。
── 6月24日にオンラインライブの<KREVA Streaming Live「① (マルイチ)」>も開催されます。今はこれにむけてもいろんなことを仕込んでいるところでしょうか。
KREVA そうだね。今まさに計画中って感じです。楽しみにしててください。
取材・文=柴 那典 撮影=髙木博史 ヘアメイク=結城藍
プロフィール
KREVA
1997年、LITTLE、MCUとKICK THE CAN CREW結成。2004年6月に活動休止後、ソロ活動に専念。同年9月08日(クレバの日)にメジャーデビューシングル「音色」リリース。以降、常に“HIP HOPソロアーティスト「初」”と称される精力的な活動を続け、2019年、ソロデビュー15周年イヤーには9月08日 (クレバの日)まで9ヵ月連続リリース、ホームである日本武道館公演を開催。ニューベストアルバム『成長の記録 ~全曲バンドで録り直し~』、オリジナルアルバム『AFTERMIXTAPE』と2枚のアルバムを発売。2月19日には、LIVE Blu-ray & DVD『KREVA BEST NEW ALBUM LIVE 成長の記録 at 日本武道館』を発売。6月24日、「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」をKREVA OFFICIAL GOODS ONLINE SHOPで 限定販売。11月6日(金)より全国公開映画『461 個のおべんとう』に出演。