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『マーダー★ミステリー ~探偵・斑目瑞男の事件簿~』特集

オーディションに潜入! 第二次審査『腐草館からの招待状』現場レポート

特別連載

第2回

「マーダーミステリー」は面白い! その次世代の密室体感型推理ゲームにオーディションの要素を合体させたドラマが新しい! と書いたところで、ゲームをやったことがない人はピンと来ないに違いない。

そこでここでは、251人が動画審査でエントリーし、そこから選ばれた70人のプレイヤーが10組に分かれて挑む、ゲームとドラマを合体させた「マーダー★ミステリー~探偵・斑目瑞男の事件簿~」(3月19日(金)、25:34~ ABC系)の本番さながらの二次審査の模様をレポート。

ある種のドキュメンタリーのようなリアルな緊張感とドキドキ感を伝えながら、今回のドラマのどこが新しくて面白いのか? にググッと迫っていきたい。

注意)この記事には、マーダーミステリー「腐草館の招待状」のネタバレ内容が多少含まれています。

プロローグ:「マーダーミステリー」×「新人発掘オーディション」

プレイヤーが渡されるキャラクター設定書の一部

そもそも「マーダーミステリー」の起源は、アメリカで流行った、参加者が渡された台本を読み進めながら犯人を探していくレストランや家で行うパーティゲーム。

それが海を渡り、中国で「人狼ゲーム」やボードゲームの要素を加えた中国版の「マーダーミステリー」が誕生した。

テレビのバラエティ番組で話題になったその新たなコンテンツが、2年ぐらい前に日本に流れてきて、いまの日本の「マーダーミステリー」のブームに火をつけたと言われている。

このゲームはプレイヤーが渡されたキャラクター設定を読み込み、自分に与えられた役割やテーマを即興で演じながら、情報収取をして密室殺人の犯人を捜していくというもの。

それこそ、漫才師たちが“笑い”の頂点を競い合うのが「M-1グランプリ」なら、迫真の即興芝居で台本のない予測不能なミステリー・ドラマを作り上げていきながら、役者たちが“演技”の頂点を競い合うのが『マーダー★ミステリー~探偵・斑目瑞男の事件簿~』。

要は、その役者のポンシャルが明確に浮き彫りになるので、マーダーミステリーを使った「新人発掘オーディション」という今回の番組が企画された。

さて、ここから実際の二次審査で使われた台本の設定と登場人物7人の役柄、役割と照らし合わせながら、実際にTV放映されるものに近い「マーダーミステリー」ドラマの魅力と面白さを紐解いていくことにしよう。

『腐草館からの招待状』犯人は男女7人の中の誰か

台本は、日本の「マーダーミステリー」のシナリオで3本の指に入ると言われている名作『遠き明日への子守唄』を手がけた人気作家AGATAが、本放送のシナリオ『腐草館の殺人』と連動する形で書き下ろした二次審査用の『腐草館からの招待状』。

当主の竜崎から招待を受けた、仕事も生活環境も違う7人の男女が山奥の洋館(実際は二次審査なので都内の某会議室)を訪れる。会食後、それぞれが思い思いに時間を過ごしていると突如悲鳴が聞こえ、全員が駆けつけた現場で当主・竜崎の遺体が見つかる。

山深くの閉ざされた洋館のため、招待客以外の人物が館に侵入したとは考えにくい。殺人犯は7人の中にいるのか!?……全員共通で与えられた設定はこれだけだ。

登場人物紹介

A.【執事】犬塚…男性。当主・竜崎に使える。言葉遣いが丁寧。

B.【写真家】虎元…男性。廃墟を専門に心霊写真なども撮影。楽天的な雰囲気。

C.【探偵】亀井…男性。私立探偵。明るい調子でノリがいい。

D.【大学生】蛍原…女性。文学系の大学に通う。大人しい。

E.【小説家】猿渡…女性。新人小説家。ミステリーやホラーが好きなよう。取材に熱心で元気がいい。

F.【降霊術師】鷲尾。女性。ミステリアスな雰囲気。気が強そう。

G.【画家】鹿沼。男性。風景画がメイン。礼儀正しくて真面目そう。

H.【当主】竜崎。男性。無口で不気味な雰囲気。深夜に遺体で発見される。

※それぞれのキャラクターを演じたプレイヤーは、勝ち残って決勝の舞台=ON AIRされるドラマに出演した人たちだけではないので、この先は便宜的に役者名をA~Gで記していく。

設定ルール

ここからは今回の番組=二次審査用に設定された構成とルール、全体の流れだ。

個別面談…今回のオーディションには「マーダーミステリー」をやったことのない参加者も多く、渡された設定書などに関して疑問に思っていることを解消するべくゲームを進行させるゲームマスター(この日は眞形氏が担当)と個人面談。

予め伝えてある各人の「メインミッション」と「サブミッション」を改めて確認し、これから始まる“物語”の中でそれを遂行する際の注意点などが伝えられる。

【メインミッション】としては、犯人であれば「犯人とバレない」、犯人でなければ「犯人を特定する」などと書かれている。

【サブミッション】には、それぞれ、言ってはいけない秘密などを持っていて、それがバレないようにすることなどが書かれている。このサブミッションの影響で、犯人以外も嘘をつかないといけない場面があり、全員が怪しく見えてしまう。

また、ある条件をクリアすると、時折【追加情報】がもらえることがあるため、その辺りを説明し、やってはいけないこと、絶対にやらなければいけないことを再度確認。ただし、今回はあくまで即興芝居のオーディションなので、メインミッションを遂行することに固執するなど、ゲームにばかり捉われ過ぎて芝居が疎かになったり、ストーリーの展開が滞るようなことがあれば減点になることが告げられる。

ゲーム=オーディションスタート

まずは執事・犬塚役のAの挨拶を皮切りに、7人が台本の設定に基づいて自己紹介をし、ぞれぞれのキャラクターを印象づける導入部の芝居を続けていく。

突然悲鳴が聞こえ、殺人事件が勃発!

そこから本筋のオーディション・ドラマの幕があがり、全員で事件の状況を共有したり、腹の探り合いをする全体会議が始まった(第1部・15分)。

その後、各人が全体会議で怪しいと思った人物や、事件の謎を解く情報などを持っていそうな人と密談するフェーズ(第2部・20分)へ。この間、用意された証拠を取りに行ったり、新たなヒントをゲームマスターに聞きに行くこともできる。

そして後半は、犯人を特定して事件の真相を暴く全体会議(第3部・25分)を経てクライマックスへと向かっていく。

全3部構成をざっと振り返ってみたい。

第1部【全体会議】事件の状況を共有

ここで交わされた会話は、7人が自分に与えられたキャラクターの設定を踏まえた上で自由に行われたものだ。

降霊術師・鷲尾役F「第一発見者は猿渡さんでしたっけ?」

小説家・猿渡役E「はい、私です」

執事・犬塚役A「私はみなさんが当主の竜崎とどのような関係か知りません」

降霊術師・鷲尾役F「初対面です」

写真家・虎元役B「僕も初対面です」

大学生・蛍原役D「招待状は父に届いたの。私も小さいころにここに来たことがあるみたいだけど、遠い親戚でややこしい関係みたい」

画家・鹿沼役G「竜崎には不審なところがありましたからね」

小説家・猿渡役E「私は、ここで起きることが小説のネタになるような気がしたの」

降霊術師・鷲尾役F「私は竜崎さんに呼び出されて、彼の部屋に行ったわ。でも、結局、雑談をしただけだった。私の後に竜崎さんの部屋に行った人はいないの?」

画家・鹿沼役G「蛍原さん、夕食後に大広間に行かれましたよね?」

大学生・蛍原役D「大広間には行ったけれど、竜崎さんの部屋は訪ねていないわ」

小説家・猿渡役E「鷲尾さんは、竜崎さんの霊を降ろすことができるんじゃないの?」

降霊術師・鷲尾役F「できるわよ! でも、1日にひとりしか降ろせないし、私の降霊術は1000万円だけど、お金はあるんでしょうね?」

そんな流れでFがいろいろな言い訳を並べて渋っていると、写真家・虎元役のBがかみついた。

写真家・虎元役B「竜崎の霊を降ろしたくない理由を知りたい!」

と、今度は別の人物が「この館には竜崎さんと関係があった○○さんの霊も眠っているかもしれないから、その人の霊を降ろした方がいいんじゃないの?」と言い出す。

それに反応して執事・犬塚役のAが「そっちは明日降ろせば…2000万円かかりますけど」と言い出したことから、話はどんどん複雑になって、みんな思わず失笑。

なのに、小説家・猿渡役のEがゾゾっと身体を震わせて霊感があるような芝居をして、事態をさらにかき回したため、困り果てた写真家・虎元役のBがずっと黙っていた探偵・亀井役のCにムチャ振りする。

写真家・虎元役のB「探偵さん、まとめて!」

それでCは渋々立ち上がるが、どうやら真相は何も見えていないよう。

執事・犬塚役のAに「あなたと竜崎さんのもともとの出会いは?」と質問するのが精一杯だった。

と、ここで第1部の〈全体会議〉は終了。なんとなくモヤっとした空気に包まれたままだったが、果たして、この段階で犯人を見極め、事件の真相を見破ったものはいたのだろうか?

第2部【密談】事件の真相と犯人を暴くための情報収集

ここでは、前記のように、各々が怪しいと思われる人物や、知りたい情報を持っていると睨んだ人物を全員の輪から連れ出して密談する時間。

2~3人ごとの密談のグループが3箇所作られたが、他人が密談しているところに後から割って入ってもいい。

また、この時間ではテーブルの上に置いてある情報のカードを2枚だけ取ることができる(本放送では、これが事件の鍵を解く本物の小道具になる)が、自分の名前が書かれたカードは取ることができない。

取得した2枚のカード情報…犯人を暴くための証拠など…はいつオープンしてもいい。

さらに、ゲームマスターのもとに新たな情報を聞きに行くこともできるが、カードを取りに行ったり、情報を聞きに行ったりするのは自分のタイミング。

もちろん多くの情報を得た方が推理はしやすくなるだろうが、まったく想定外の情報が提示された場合は思考や行動が停止してしまう恐れもある。

しかし、プレイヤーはどんな時も柔軟に対処して、その先のドラマを紡ぎ続けていかなければいけない。

以上のルールを頭に入れた上で密談のパートを観察していたが、ここから先は、この『腐草館からの招待状』のシナリオがゲーム化される予定ということもあり、物語の内容に関わる具体的な展開には触れず、そのときプレイヤーたちがどういう言動をしたのか? どんなサプライズに見舞われたのか? そのときにどんなリカバーをしたのか? にポイントをおいて伝えていきたい。

CASE 1

大学生・蛍原役のDと小説家・猿渡役のE、画家・鹿沼役のGが3人で話し、執事の犬塚役Aと写真家・虎元役のBがふたりで密談しているところに後から探偵・亀井役のCが乱入。Cはある証拠をBに突きつける。

対するBはAに「誰かが僕をハメようとしている可能性がある」と訴え、それから情報のカードを取りに行く。

CASE 2

執事・犬塚役のAが大学生の蛍原役のDと画家・鹿沼役のGのところに移動し、ある情報を提示したことから、蛍原と鹿沼は思いがけない新たな情報を知る(ふたりは背中を向けていたので、それによって彼らがどんな表情でその情報を受け取ったのか知ることはできなかった)。

CASE 3

執事・犬塚役のA、大学生・蛍原役のDもふたりでいたが、ゲームマスターにDは呼ばれて蛍原(つまり、自分)に関する追加情報と新たな指令が与えられる。

CASE 4

小説家・猿渡役のEが写真家・虎元役のBに「何か落とし物をしなかった?」と話しかけ、虎元役のBは大学生・蛍原役のDと画家・鹿沼役のGに手に入れたものを見せる。

CASE 5

大学生・蛍原役のDと画家・鹿沼役のGが写真家・虎元役のBに「○○さんの部屋から凶器らしきものが見つかった」と伝え、やがてDはGに「真犯人は○○さんを犯人に仕立て上げたいんだわ」と訴える。

そんなやりとりが随所で行われたが、真相は闇の中だ。

効率よく情報を収集し、真実を突き止めることができた人がいたのかどうかも分からない。

少なくとも筆者は、誰が何のために当主の竜崎を殺したのか? ちんぷんかんぷん。

謎の迷宮の深みにどんどんハマっていったが、それとは別に、この第2部の【密談】のパートでは7人の動きで、それぞれの性格や行動力、理解力が浮き彫りになっていくのが面白かった。

ある者は積極的に自分が狙ったプレイヤーを渡り歩き、ある者は執拗に質問をしてくる複数の他者からの追求を巧妙な会話でかわしていたが、中には誰に何を聞いたらいいのか分からなかったり、それ以前に、話している人の輪に入っていけない人もいる。

もちろん情報カードを取りに行くのが早い人も遅い人もいたし、新たに衝撃的な情報を入手してしまって棒立ちになってしまう人もいた。

また、7人の中には同じ秘密を予め共有している者たちもいて、この【密談】をそのことを改めて確認し合ったり、お互いの役割を打ち合わせる時間に使っていたのも注目すべき点だった。

そんなことを分析しているうちに、第2部の20分はアッという間に過ぎ去った。

そして、いよいよ7人のプレイヤーが本領を発揮する第3部の25分へと突入していったのだ。

第3部【全体会議+密談】事件の真相と犯人を解明、そしてエンディングへ

CASE 1

降霊術師・鷲尾役のFがほかの全員からしつこく要求されて、ついに降霊術を始める。

その後の展開は、ネタバレの部分が多すぎるので、詳しく書くことができないが、鷲尾役Fの降霊術から吉本新喜劇のような場面が繰り広げられることに。そこから7人でなんとか軌道修正し、トリックなどのいくつかの謎が明らかになっていく、怒涛の展開となった。

証言やアリバイを崩そうとするやり取りでは、持ち前の話術と演技力、口から出まかせの嘘でのらりくらりとかわす人もいれば、衝撃をストレートに受けてしどろもどろになる人も。

そこから推理タイムに突入し、全員が配られた用紙に自分が予想した犯人の名前を記入していく。

CASE 2

そしてエンディング。ついに犯人が暴かれたのだが、このフィナーレでも、それまで秘密を守っていたプレイヤーの真実も明らかに。あるプレイヤーは“えっ?”と一瞬素に戻り、次の瞬間、目から涙がこぼれおちた。

ただ、動揺を隠せないながらも、自分に与えられたキャラクターを最後まで演じきり、その人物の言葉で自らの過去とそのときの想いを口にしたから、その場にいたすべての人の胸に熱いものが込み上げてきた。

それとは対照的に、最後の最後まで「全然分からない!」と言っていたプレイヤーの顔が緊張と苦悩の汗でどんどんテカテカになっていったのも印象的だった。一緒にゲームをするメンバーが違うと、このエンディングが笑いに包まれる場合もあるというから面白い。

そこが筋書きのない「マーダーミステリー」と、それをオーディション・ドラマにした今回の番組の魅力なのだろう。

『マーダー★ミステリー~探偵・斑目瑞男の事件簿~』:3月19日(金)、25:34~ ABC系、ネット配信も予定

実はこの中から最終選考への切符を手に入れ、ON AIRされるドラマ『マーダー★ミステリー~探偵・斑目瑞男の事件簿~』…「腐草館の殺人」への出演を果たしたのはたったひとりだけだった。

同じような熾烈なバトルを勝ち残った最強のファイナリスト7人が挑んだ「マーダーミステリー」は、果たしてどんな唯一のドラマを作り上げたのか?

番組を観るのが楽しみでしかない!

取材・文:イソガイマサト 撮影:稲澤朝博