THEティバ/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー
注目の2ピース・ガールズ・ロックバンド、THEティバが盟友・Bearwearとのスプリット盤を通して自覚した、ふたりであることの覚悟とは?
特集連載
第16回

THE ティバ(左:明智マヤ、右:サチ)
お客さんが楽しそうにノッている姿が見えるようなバンドをやりたいって思いました(マヤ)
── 結成した時からずっとふたり体制ですが、そこには強いこだわりがあるんですか?
サチ 最初はベースを入れてやるつもりだったんですよ。でもいい人がなかなかいなかったっていうのと、まわりからもふたり体制いいねって言われることも多かったので、このまま来たっていう感じですね。
── どちらからどういうふうに声をかけてふたりでやることになったんですか?
マヤ その前に3ピースバンドを一緒にやっていて、そのバンドがなくなった後に、もう1回一緒にやろうよってサチが声をかけてくれて。そっか、じゃあやるかーって始めました(笑)。
サチ お互いにどういうものが好きかも、どんな人かもわかってたしね。
── 前身バンドがあっての新しいバンドという流れでいくと、前のバンドというのはどうしてもいろんな意味での基準にはなりますよね?
サチ そうですね。全然違う感じにしたいっていうのは強くありました。
マヤ 前のバンドはすごくダークな世界観を持っていたので、そこからは脱したいな、ハッピーに生きていきたいなって思いました。
── 「ハッピーな感じ」を目指すにあたって、どういう音楽をやっていこうという話になったんですか?
サチ 最初はグランジっぽい感じっていうところから始まったよね。
マヤ うん。ポップパンク寄りのグランジ、みたいなのをやりたいねって言ってて。
サチ ちょっとシャカシャカした感じがいいねって言ってましたね。前のバンドが結構重ためだったので。
マヤ お客さんが楽しそうにノッている姿が見えるようなバンドをやりたいって思いました。
── 前提として、カッコいいと思うツボは似通っていたんですか?
サチ そもそも好きな音楽はお互いに違ってて。でも教えてもらったものに対しては、めっちゃいいねってなるのが多いんです。
── お互いの好みをすんなり受け入れられる。
マヤ そうそう。
── THEティバが作り出す音楽はいろんなタイプがありますよね。
マヤ わたしの音楽の趣味がコロコロ変わるので、そこはそれも影響しているかもしれない(笑)。
── なるほど(笑)。連続リリースされた、EP『THE PLANET TIVA part1』(2020年12月)と『THE PLANET TIVA part2』(2021年2月)がまさに象徴的でしたが、それぞれキャラクターがまったく違いますよね。
マヤ 最初はまとめてアルバムにしようと思って一気に録っていたんですけど、途中から分けた方がいいなと思って、同じ系統の曲をそれぞれ分けて収録することにしました。
── 曲のタイプは違っても、どの曲にも共通する雰囲気として、内に篭るのではなく、もっと遠くへ行きたいっていう欲求のようなものを感じます。それがもしかしたら、先ほどおっしゃっていた「ハッピーな感じ」ということなのかもしれないと思いました。
マヤ アメリカ行きたい、カナダ行きたい、海外でライブやりたいってバンドを組んだときから思っているので、遠くには行きたいです(笑)。
── そう言えば、初期のプロフィールは「カナダ出身」ってなってましたよね。
マヤ そういう設定にしておこうって(笑)。
── どういうこと?(笑)。さんざん説明をしてきているのかもしれないけど。
サチ このバンドを始めるときにふたりで出し合った好きなバンドが、カナダ出身のバンドが多かったんです。
マヤ 4バンド中3バンドもカナダじゃんって。
サチ それはもうそういうことかって(笑)。
マヤ カナダ出身って言ってたら、間違ってカナダのフェスとか呼んでくんないかなって(笑)。
── 例えばどんなバンドがその時の話では出てきたんですか?
サチ PUP、Alvvays(オールウェイズ)とか。
マヤ Peach Pitとか。あとはアヴリル(・ラヴィーン)もカナダじゃん。カナダすげえって(笑)。
── Peach Pitのモワモワした感じって、確かにTHEティバにはあるかも。
マヤ 霧に包まれた感じというか。
── そうですね。何と表現していいか難しいですけど。
マヤ そこは結構意識しているかもですね。サウンドのアプローチとして。
Bearwearとのスプリット盤は、ひとつのバンドの作品みたいになりました(サチ)
── BearwearとのスプリットEP『Bearwear/The tiva』についてお訊きします。Bearwearとは、ずっと近い距離で活動を共にしてきている仲ですよね。
サチ もともとBearwearのベースのKOUちゃんと、サポートで入っているカトウミツキ(Gt)くんと、ゆーや(Dr)くんの3人がHaikiというバンドをやってたんですよ。で、その3人と私は大学から一緒だったんで、Bearwearが始まったのも近くで見てました。
── そうなんですね。じゃあKAZMA(Vo)さんだけが急に登場したんだ。
サチ 確かに、急に来ましたね(笑)。
マヤ 誰だ!? こいつは?っていう(笑)。
サチ KAZMAは、KOUちゃんとTwitterでつながったらしくて。
── 今回、一緒にスプリットを出そうよっていうのはどういう経緯で実現したんですか?
サチ 自分たちのまわりのバンドがスプリットをやり始めてて、いいなって思ってたんですよ。
マヤ わたしたちがやるなら、それはもう、でしょう、みたいな(笑)。
サチ そんな感じです(笑)。
── じゃあTHEティバからの声をかけたんですね。
マヤ そうです。そしたら、「あ、いいよ」って。
サチ 忙しそうだったのにね。
── 具体的にはどういうふうに進んでいったんですか?
マヤ Bearwearは基本KOUさんが曲を作ってるので、KOUさんとわたしで、「どういうのがいいかね?」っていうところから話して、「今こういうのを作ってるんだけど」っていうのをお互いに送り合って、数カ月が経ち、「できたよ」っていう感じですね。
── 収録の4曲ともそんな感じですか?
マヤ そうですね。結局、お互いのことはあんまり気にせずに作っていったっていう感じでした。最初はスプリットだし、相手に寄せた方がいいのかなって思って作ってたら、なんか全然思ってたのと違うのができて(笑)。
── お互いにそれぞれ気にせず作っていったら不思議とテイストが揃ったと(笑)。
マヤ 同じスタジオで同じエンジニアの人にレコーディングしてもらったっていうのもあるんですけど、4曲のつながりが良すぎて、出来上がった後に自分で聴いて「すご!」って思った(笑)。
サチ ひとつのバンドの作品みたいになりましたね。
── だからスプリットを超えているというか。そもそもイメージしていた着地点はあったんですか?
マヤ わたしはYUNGBLUDがIMAGINE DRAGONSのダン・レイノルズと一緒にやった曲(『Original Me feat. Dan Reynolds of IMAGINE DRAGONS』)をイメージしていたんですけど、違ったみたい(笑)。
サチ ビーバドゥービーの『coffee』がサンプリングされた、Powfuの『death bed(coffee for your head)』の感じをずっとやりたいと思ってたんですよ。そしたらKOUちゃんが3曲目の『forever and a day』を作って聞かせてくれて。これがやりたかったやつ!ってなりました。
マヤ そうだね。
── たしかに、すごくローファイな感じがよくわかりますね。SONAR TRAXにもなっている1曲目『Laid Back(feat.Kazma kobayashi)』はどんなイメージだったんですか?
マヤ それこそさっき言ってたYUNGBLUDとIMAGINE DRAGONSのやつを聴きまくった影響でできた曲です。
── これまでのThe ティバにはない感じがあるなと思いました。
マヤ そう?
サチ いつも歌とギターの入ったデモをスタジオで聴いて、そこで思いついたドラムのフレーズをつけて、それいいねって感じなんですけど、今回はめっちゃ大雑把なドラムが最初に浮かんで。
マヤ うん。それが良かった。
サチ だから、ちょっと違う感じはしましたね。
マヤ そっか。3コードくらいで延々に進んでいく雑な曲っていうか、そういうのがすごくほしくて。結局そういう感じってカッコいいし。
── タイトではないんですけど、めっちゃ体を揺らす強さを秘めた曲だなという感じがしたんですよね。
マヤ ああ、それはうれしいです。わりとスルッとできた曲で、卵の状態にするまでに30分くらいしかかからなかったから、わたし自身がノッていたのかも。
── それは珍しいんですか?
マヤ そうですね。あんまりないですね。やっぱり煮詰めすぎると良くないのかもね。
サチ たしかにね。ライブで全然やってない曲とか、結局出さなかった曲とかはそういう感じかも。
マヤ 永遠に熟成されてる(笑)。
── 『Laid Back(feat.Kazma kobayashi)』の後半に出てくるファズがかかったギターソロがいいアクセントになっていますね。
マヤ あれは友達のバンドでHOLLOW SUNSのAyumu Sugiyamaくんが弾いてくれたんですけど、なんだっけあのとき、二日酔いで来たのかな?
サチ 忙しい中での二日酔いね。
マヤ そうそう(笑)。スタジオに遅れて来て、「ごめん」って言ってあれをすぐに弾いて、また「ごめん」って言ってすぐに帰って行くという(笑)。カッコよ!
── はははは。
マヤ あの曲はもともとの雰囲気もカッコいいんですけど、あのギターが入って3倍くらいにカッコよくなった。
サチ スタジオでライブみたいになってたもんね。
── あ、そっか。さっき踊れるって言ったのは、まさにライブ感ですね。サビの〈Laid Back〉というフレーズのリフレインもオーディエンスが一緒に歌っている情景が浮かびます。
マヤ うわー、めっちゃ一緒に叫びたい(笑)。でかいステージで。
── KAZMAさんがボーカルで参加しているのもこの曲の大きな特徴ですけど、彼にはどんなオーダーをしたんですか?
マヤ 特に何も。普通に歌ってくれたらって感じですね。
── 男性の声が入ると全然違いますか?
マヤ やっぱ違いますね。なんか深みが出るというか。わたしの声って何て言うか、楽器っぽい声なんですよね。だからサウンドとして混じっちゃう感じがあって。それがいいところなのかもしれないんですけど。でも男の人の声が入ると、歌に引き寄せられる感覚がありますね。
── でもマヤさんの声とKAZMAさんの声って、段差みたいなものは感じなかったんですよね。曲の中でシームレスにつながっているように思えました。
サチ たしかに。すごく馴染んでるかも。
何をやってもTHEティバの根底は絶対に揺るがさずにやっていきたいなって思った(マヤ)

── 2曲目の『Down the river』は、どんなイメージで作ったんですか?
マヤ すごい悲しい時に爆発して作った曲です。あと、Eelsがめっちゃ好きだった時に作った曲ですね(笑)。1サビの後のギターと歌は特に意識しましたね。
── 後半に展開もあって、単調な曲かと思いきや、実はカラフルな曲ですよね。
マヤ たしかにそのままやったらすごく単調に聴こえそうだなと思って。スタジオに持っていった時にサビの後の展開とか何も考えてなくて、あれ、あのさ──。
サチ 何?
マヤ あのサビ後のドラム、何て言うんだっけ?
サチ ロール?
マヤ うん。あれがあって、「えぃ!」てなった(笑)。ハマった!って。
サチ わたしもそこなかなか出てこなくて、うーんって思って、これかなーってやったら、「それぃ!」みたいな(笑)。
マヤ それです!って(笑)。
サチ じゃ、これで!って(笑)。
── すごい、今まさにスタジオで曲ができていく感じが再現されていますね。そんな感じで感性を投げ合うんですね。
サチ もうこれは前のバンドの時からそうだったので、ずっとこのままですね。もっと「イェイ!」みたいな感じで、とか(笑)。
マヤ わかったよろしく!って(笑)。
── そして4曲目のBearwearの『Far East(feat.Theティバ)』に参加していますね。
マヤ この曲の初期が完全にグランジみたいな曲で。
サチ 裏切られた曲(笑)。
マヤ そう(笑)。でもね。
サチ すごい良くって。
マヤ ほぼ完成状態で送られて来て、わたしが歌っているところだけKOUさんの鼻歌になってて、「ここ日本語の歌詞を入れてマヤに歌ってほしいんだけど」って言われて、「わかったー」って歌詞を送って歌いました。
── 日本語の歌詞の歌を聴けるのが新鮮でした。
サチ あ、そうかも。
マヤ わたしは日本の歌謡曲とかフォークもめちゃ好きで、前のバンドは重めのそういう感じだったんですよ。なんか懐かしい気持ちになった。
サチ (笑)。
マヤ 弾き語りではフォークみたいなのを結構やってて、たぶんKOUさんがそれを聴いてくれてて。それっぽい感じでって言われました。
── スプリットツアーも行いましたけど、どうでしたか?
マヤ 楽しかった。
サチ わたしたち、自分のツアーが初めてだったので、その意味でも特別感はあったんですけど、『Far East(feat.Theティバ)』ではわたしもドラム叩くし、みんなステージの上に一緒にいて、そういう特別感もすごくあったツアーでしたね。
マヤ 2バンドでサポートを入れても全部で6人という。でもお互いに3ピースではない(笑)。Bearwearはいつもサポートギターをふたり入れてやってるんですけど、どうしても今回もうひとりが見つからないから、「マヤ弾いてくれないかな」って言われて。それで曲を覚えて、わたしがBearwearで全曲弾きました。
── じゃあ、出ずっぱりだ。
マヤ そうです。疲れたー(笑)。
── それも特別ですね(笑)。
マヤ わたしがBearwearでギターを弾いてるの、観たいでしょみんな(笑)。
サチ なかなかないからね。
── このスプリット盤、そしてツアーを通してバンドにフィードバックできることがたくさんあったと思うんですけど、今後こういう感じにしていきたいなという目標があったら教えてください。
サチ ツアーも含めてすごく楽しかったので、また今後に向けていろいろ企画を考えたり、規模も中身も大きくしていきたいなっていうのはありますね。
マヤ 何をやっても、THEティバの根底は絶対に揺るがさずにやっていきたいなって思った。
── その根底っていうのは、やはりふたりで音楽を作るところが出発点にあるということですよね。
マヤ そうですね。ふたりっていうのは崩したくなくなってきた最近。あとは、とにかく海外でライブをやりたい(笑)。
サチ 音源だけじゃなくライブもめっちゃいいとわたしたちは思っているので。早くデッカイところでいっぱいの人に観てもらいたいですね。
マヤ ライブを観てこそTHEティバを知るって感じだと思うので、観てほしい、ほんとに。
Text:谷岡正浩 Photo:矢部志保
リリース情報
『Bearwear/The Tiva』split EP
2021年9月1日(水)リリース
1,320円(税込)

<収録曲>
01.Laid back(feat.Kazma Kobayashi)
02.Down the river
03.forever and a day
04.Far East(feat.THEティバ)
プロフィール
THEティバ
2018年結成、東京を中心に活動する明智マヤ(Vo/Gt)、サチ(Dr)の2ピース・ガールズ・ロック・バンド、THEティバ。SUMMER SONIC 2019への出演や“ティバの惑星”を舞台にした2枚のEP『THE PLANET TIVA part.1』『THE PLANET TIVA part.2』をリリース。伸びやかなヴォーカルとパワフルな演奏、エモーショナルなメロディラインで人気を博している。9月1日に活動開始当初からリスペクトしあい、共演を繰り返してきた盟友・BearwearとスプリットEPがリリースされた。
関連リンク
Instagram : https://www.instagram.com/thetiva.band/
Twitter : https://twitter.com/thetiva_band
番組概要
放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
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