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音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画

YOASOBI 初の有観客ライブ! 日本武道館「この空間には愛しかない」(ikura)

PMC編集部

第6回

写真/Kosuke Ito

<小説を音楽にするユニット>YOASOBIが、結成から2年を迎えた12月4、5日に日本武道館で「NICE TO MEET YOU」を開催した。今年3月、『ぴあMUSIC COMPLEX(PMC)Vol.19』にて表紙を飾り、新宿・ミラノ座跡地の工事現場で開催した初のオンラインワンマンライブ「YOASOBI 1st LIVE 『KEEP OUT THEATER』」についてAyase(コンポーザー)とikura(ボーカル)に語ってもらったが、今回は初の有観客であり、日本武道館という大きな舞台でのライブだ。

会場に入って驚いたのは、アリーナ一面を使った36mにわたる巨大ステージ。360度、死角なしのステージ中央にバンドの楽器がたたずんでいる。まずこの光景からワクワク感があって、早くから詰めかけた観客のテンションも上がっている。そして場内が暗転してSEが鳴り響くと、そのワクワクが爆発。大きな拍手や手拍子に迎えられ、バンドメンバーの仄雲(Dr)、やまもとひかる(B & Cho)、AssH(G)、ミソハギザクロ(Key & Cho)、そしてAyase、ikuraが登場した。公演両日で衣装が代わり、本レポートの5日の公演では、ふたりの衣装はとてもポップでカラフルでステージに映える。6人が位置につき、すっと差したピンスポットに会場が静まると、ikuraは大きく息を吸い込んで「あの夢をなぞって」のアカペラをスタート。たっぷりと一節を歌い上げると「初めまして! YOASOBIです。よろしくお願いします」(ikura)の声を合図に演奏が高鳴り、ステージ一面がグラフィカルな光りを放った。このステージ床面は合計1682枚のLEDパネルになっているという。続く「大正浪漫」では和のモチーフが映し出されて、ライティングとともにスピード感のあるアンサンブルにまばゆさを増し、「ハルジオン」のグルーブへとつないでいく。前半のクライマックスは「三原色」。「ここからは手拍子で参加してもらいます」というikuraの声とともに、軽やかな手拍子が会場に響きわたると、それに乗って赤・青・緑の光の三原色によるレーザーとLEDの演出がラテンのビートを一段と華やかに彩った。ステージはメンバーそれぞれが立つ面が可動式になっており、最高4.4mの高さに上昇する。ダイナミックな魅せるステージで、曲が進むごとに観客の歓喜が湧き上がるのを感じる。YOASOBIが奏でる音楽の鮮やかでエモーショナルな魅力が可視化されたライブだ。

MCでふたりは、デビューから2年を経てこうしてようやく会えた喜びを語る。ikuraは高校生のときに初めて日本武道館でのライブを観に行き、自身のライブを前に当時のコンサートグッズを見返したという。「私、ここに立ってるんだ」と感慨深く会場を眺めながら、「1秒1秒大事に演奏するので、みなさんも1秒1秒を噛み締めてください」と語る。またAyaseはライブ前日見た夢に10代当時結成していたバンドのメンバーが出てきたという。「がんばれって言ってくれているのかなってエモい朝を迎えた」と照れ臭そうな笑顔を見せた。

12月1日にリリースされた2ndEP『THE BOOK 2』はオリコン・デイリーランキング1位となり、同日には1stEP『THE BOOK』(2020 年1 月6 日発 売)が2位につけたが、この日のセットリストは、2019年11月に公開されたデビュー曲「夜に駆ける」をはじめ、結成からの2年を網羅する内容だった。ふたりのMCはフレンドリーで、バンドメンバーらとわちゃわちゃとトークしている姿は無邪気だが、パフォーマンスはみずみずしくもとてもタフだ。今回の武道館では2日間で14000人が来場したが、これまで数字上やオンラインでのリアクションだったものが、一人ひとりと顔と顔を合わせ同じ空間を作り上げる“ライブ”で、より確かな自信が芽生えてもいるのだろう。曲や、ライブが進むに連れて、その音や存在のスケール感が増していくのが感じられる。「もう少しだけ」でスタートした中盤はメロウな曲が中心。「もしも命が描けたら」はikuraの朗読からはじまって、その歌の鼓動を丁寧に紡ぎ上げていく。ステージには歌詞がグラフィカルに映し出され、目に耳に、その言葉が飛び込んでくる。

「今回の演出、すごいでしょ?」と観客に問いかけたikuraは、「みなさんが物語へと入り込めるような演出になっています。YOASOBIは小説を音楽にするユニットで、すべての曲に物語があります。まだ読んでいないという人はぜひ、読んでみてください」と添える。そしてAyaseは「早いもので後半戦、しっかりがっつり盛り上がっていきましょう。ikura選手、コールしてくれるかな」と、1階席、2階席、そして会場全体でと大きな拍手を巻き起こして、ボルテージが最高潮のなかで「夜に駆ける」をスタートした。藍にいなによるMVの絵がステージを彩って、ikuraのリズミカルなボーカルとともに会場全体をその物語へと引っ張り込んでいく。「怪物」ではアンサンブルの馬力をあげて、獰猛に会場を駆け巡る。炎の特効もスリリングだった「怪物」から、スモークがファンタジックに煙る「優しい彗星」へと演出が際立つ曲が続いたが、「アンコール」では一転して、シンプルな照明が静謐な時を描く。
曲に入る前に「この先ずっと、音楽が続いていきますように」とikuraの言葉が祈りのように響くと、観客は一斉にスマホのライトを灯した。何を言わずとも、こうして会場一体となって美しい時間を織り成していくのがライブの醍醐味だ。初の有観客でそんな瞬間を味わえるとは、いかにここに集まった観客の熱量が高いかがわかる。そしてラストに据えたのは「ツバメ」と「群青」。《知らず知らず隠してた 本当の声を響かせてよ、さあ》とアンセミックに響きわたるikuraのシンガロング、そこにひときわ大きな手拍子が重なった「群青」は、2年を経てようやく出会えた今回の「NICE TO MEET YOU」のエモーションそのものだろう。曲の持つ青い衝動はこの日、とても晴れやかに、カラフルな色を帯びて会場に舞い上がった。コロナ禍で観客が声を出せないなど制限がある現在だが、いつか、このシンガロングが観客のリアルな声で轟くことを願ってやまない。

大きな拍手で迎えられたアンコールでは、ふたりは満面の笑みで「みんなの拍手を録音して、練習でも流したいくらい」と語り、ikuraは涙を堪えるように「この空間には愛しかない」と感謝を述べて、「これからまたYOASOBIとしてもっともっとおもしろいことを続けていくので、よろしくお願いします。大好きです」と付け加えた。Ayaseは、この「NICE TO MEET YOU」に向け、半年かけて準備をしてきたこと、そしていつかライブをという思いが実現できた幸せを噛み締めながら、ライブがもう少しで終わってしまう複雑な心境も覗かせた。そして最後に贈ったのは、音楽への感謝を綴った手紙を元にした「ラブレター」。この空間にもぴったりのピュアな1曲に、日本武道館は歓喜で満ちあふれた。初の有観客ライブ「NICE TO MEET YOU」に向かって駆け抜けた2021年。音楽はもちろん、YOASOBIの存在をより身近に感じ、手を取り合って歩んできたこの1年が、続く2022年にどうつながっていくのか。その楽しみに、まだワクワクは止まらない。

なお、このライブの模様は、1月22日(土)20時よりWOWOW『YOASOBI「NICE TO MEET YOU」』にて放送を予定するほか、日本武道館公演への道のりを追った『情熱大陸』(TBS)も12月12日(日)23時15分より放送される。

取材・文/吉羽さおり 写真/Kosuke Ito

YOASOBI「NICE TO MEET YOU」
2021年12月4日(土)・5日(日)
日本武道館
※来場数:14,000人(2日間計)

セットリスト

01. あの夢をなぞって
02. 大正浪漫
03. ハルジオン
04. 三原色
05. もう少しだけ
06. ハルカ
07. たぶん
08. もしも命が描けたら
09. 夜に駆ける
10. 怪物
11. 優しい彗星
12. アンコール
13. ツバメ
14. 群青
En1. ラブレター

リリース情報

2nd EP『THE BOOK 2』
now on sale
完全生産限定盤(CD+特製バインダー)/4,500円+税
★購入URL:https://YOASOBI.lnk.to/THE_BOOK_2
★配信URL:https://orcd.co/thebook2

2nd EP『THE BOOK 2』クロスフェード


《収録曲》
1. 「ツバメ」(YOASOBI with ミドリ-ズ)
(NHK・子ども向けSDGs番組シリーズ『ひろがれ!いろとりどり』テーマソング)
2. 「三原色」
(NTTドコモ「ahamo」CMソング)
3. 「大正浪漫」
(NTTドコモ「Quadratic Playground」コラボレーション楽曲)
4. 「もう少しだけ」
(フジテレビ『めざましテレビ』テーマソング)
5. 「優しい彗星」
(TVアニメ『BEASTARS』第2期エンディングテーマ)
6. 「怪物」
(TVアニメ『BEASTARS』第2期オープニングテーマ)
7. 「もしも命が描けたら」
(舞台『もしも命が描けたら』テーマソング)
8. 「ラブレター」
(TOKYO FM/JFN『日本郵便 SUNDAY'S POST』レターソングプロジェクト楽曲)

アーティスト情報

YOASOBI Official Site:https://www.yoasobi-music.jp/ Twitter:https://twitter.com/YOASOBI_staff YouTube Channel:https://www.youtube.com/c/Ayase0404 TikTok:https://www.tiktok.com/@yoasobi_ayase_ikura

プロフィール

YOASOBI

2019年11月に公開された第1弾楽曲「夜に駆ける」は2020年12月にストリーミング再生4億回を突破し、Billboard Japan 総合ソングチャート"HOT100"にて2020年年間1位を獲得。2021年1月6日、初のCD『THE BOOK』をリリース。2月には、初のワンマンライブ「KEEP OUT THEATER」を新宿・ミラノ座跡地の工事現場にて開催し、同時視聴者数4万人を記録する盛り上がりを見せた。原作小説の書籍化や映画化など、音楽以外の領域にも展開の幅を広げている。
https://www.yoasobi-music.jp/

YOASOBIが表紙の『PMC Vol.19』(2021.3月発売)の詳細はこちらです。