音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画
Stray Kidsが6万人を動員した日本公演6公演を完走。世界的な人気を決定づけた、彼らのライブエンタテインメントとは?
PMC編集部
第35回
撮影:田中聖太郎
Stray Kidsが表紙を飾り、大好評発売中の『PMC Vol.24』。2年7ヶ月ぶりの来日スペシャルとして、ワールドツアーの日本公演「Stray Kids 2nd World Tour "MANIAC" in JAPAN」より6月公演を追い、Stray Kidsのライブエンタテインメントを大特集しているが、ここでは、7月27日のファイナル公演(東京・国立代々木競技場第一体育館)を通し、その人気を決定づけた彼らのライブに迫りたい。
ワールドツアー「Stray Kids 2nd World Tour "MANIAC"」とは?
・2年5ヶ月ぶり、韓国・日本・アメリカの11都市21公演を巡る、大規模ワールドツアー。ミニアルバム『ODDINARY』のリード曲「MANIAC」をツアータイトルに冠する
・前回のワールドツアーが2020年2月にアメリカ公演を終えたところでコロナの影響で中止となり、来日公演は実に2年7ヶ月ぶり
・日本デビュー後初の日本公演であり、6月11・12日兵庫・神戸ワールド記念ホール、6月18・19日、そして7月26・27日に東京・国立代々木競技場第一体育館にて開催
・日本公演全6公演のチケットは一般発売開始5分で即完売し、全公演チケット争奪戦となり、完全ソールドアウトを記録。合計6万人を動員
Stray Kidsは有観客ライブができなかった2020〜2021年に大きく飛躍し、今もなお、その快進撃を続けている。YouTubeの再生回数が億超えする大ヒット曲を連発したほか、2021年に出演したサバイバル番組『KINGDOM : LEGENDARY WAR』(Mnet /K-POP界を代表するボーイズグループ6組が王座をかけて激しいバトルを繰り広げた)で優勝し、2021年8月にリリースした2ndフルアルバム『NOEASY』がミリオンセラーを記録。年末の「2021 Asia Artist Awards(AAA)」では大賞の一つである「今年のパフォーマンス賞」を受賞した。そして、2022年3月にはミニアルバム『ODDINARY』が米・Billboard 200で1位を記録する快挙を成し遂げ、そうした成果と、久しぶりの来日公演ということで、期待は高まるばかり。世界的な人気を拡大し続けた中で、日本公演のチケットは入手困難を極めた。
次々と記録を更新する中、米・Billboard 200の1位について、リーダーのバンチャンは「実はまだ実感が湧かない」(『PMC Vol.23』)とも語っていたが、6月の日本公演やアメリカ公演を重ねるにつれ、自分たちの音楽が求められているという実感を得たのではないだろうか。6月の日本公演を終え、約1ヶ月ぶりに戻ってきた7月の日本公演では、グループの充実と自信が見てとれた。
7月27日東京・国立代々木競技場第一体育館
▼ Stray Kids 2nd World Tour "MANIAC" in JAPAN SETLIST
オープニングは、まるで円柱の宇宙船から8人が降り立つような登場で、最新ミニアルバム『ODDINARY』のリード曲であり、今ツアーのタイトルに冠する狂気的な「MANIAC」でパワフルに始まり、蜘蛛の巣に絡まるように引き込まれる「VENOM」、官能的な「Red Lights」の3曲で客席を圧倒した。前半は『ODDINARY』の楽曲はもちろん、『GO LIVE』『NOEASY』アルバム収録曲を中心に展開する。
Stray Kids印とは?
今ツアーのハイライトといえば、『PMC Vol.24』のインタビューでも語ってくれた、セットリストの中盤、Stray Kids印の代表曲「Thunderous」「DOMINO」「God’s Menu」の3曲が続く<麻辣味(まーらーあじ)のパート>だ。
韓服風の羽織をまとったヒョンジンの美しい舞いに始まり、リノ、フィリックスのDANCE RACHAがそろうと、後方にバンドが登場し、8人の舞いとバンドの音が重なり、うねり出す。「Thunderous」「DOMINO」と息つく暇もない過酷なダンスが続き、今に至る快進撃のきっかけとなった「God’s Menu」では、鬼気迫るパフォーマンスと重厚なバンドサウンドが一体化し、ものすごいエネルギーが生まれていた。
体力的にもヘビーなパートだが、チャンビンが「Thunderous」冒頭のラップを聴かせる直前に、日本のアニメ映画にインスパイアされたと思われる、「君の名前は……?」「ソ・チャンビン!」などと日本語の小芝居を入れるシーンもあり、最終日には8人全員の掛け合いで見事な完成形へと仕上げて、笑顔を誘う。そして、いざパフォーマンスがはじまると、驚くほどのギャップで、チャンビンの力強いラップが会場に轟くのだ……。
その後も、息つく暇もなくデビュー以前からあるロックナンバー「YAYAYA + ROCK」を披露し、キャリアを網羅するセットリストで畳み掛けていく。センターステージからメインステージへ向かって、また、ステージの端から端まで、自由に駆け回る8人は、まさに青春のときであり、かけがえのないエモーショナルな瞬間を観ているようだった。
多彩な魅力を放つStray Kidsの楽曲と8人の個性
セットリスト冒頭の3曲はもちろん、また、2チームに分かれてのユニットパートは、聴かせるボーカルナンバー「Waiting For Us」とオールドスクールのラップ曲「Muddy Water」といった真逆のアプローチで、本当にさまざまなジャンルの楽曲・表現にチャレンジしていることがわかる。彼らの音楽を語る上で欠かせないのは、デビュー以前よりバンチャン、チャンビン、ハンの3人が3RACHAというプロデューサーユニットとして、Stray Kidsの全ての楽曲を彼ら自身が手がけていることだ。それぞれの個性を知り尽くしたメンバー自身が楽曲制作に関わるからこそ、どんなジャンルがきても、8人の個性を生かしたまま、Stray Kidsとしての世界観を作り上げることに成功しているように思う。
ライブでは、要に据えられたチャンビンのラップがくると一瞬で「これぞStray Kids」というムードになり、ボーカルを担当するスンミンは安定感とスキルフルな歌を見事に聴かせてくれたし(即興パートで披露したOfficial髭男dism「Pretender」のカバーもお見事!)、アイエンは個性豊かな高音を響かせる。ハンは評価の高い高速ラップのみならず、伸びやかな歌声でライブ全体を支えていたし、DANCE RACHAはダンス&ビジュアルのみならず、フィリックスの低音ボイスはもちろんリノやヒョンジンも個性的なラップや歌を聴かせ、バンチャンおよび、3RACHAのプロデュースで、8人が欠かせない形で成立しているのだ。
日本オリジナル曲「CIRCUS」「Scars」
さらに、日本の楽曲も新たな彩りを添える。メンバーがサーカス団に扮した新曲「CIRCUS」では、弾けるように賑やかなヒップホップダンス曲で盛り上げ(最終日は日本では初披露だった赤衣装が映えていた)、続いて、彼らの覚悟を歌った感動的なミディアムナンバー「Scars」を聴かせる。
2曲歌い終えると、6月22日に発売のJAPAN 2nd Mini Album『CIRCUS』がBillboard JAPAN「Top Albums Sales」「Hot Albums」「Artist 100」の3冠に輝いたことがメンバー直々に報告され、そのお礼として、ミュージックビデオにてメンバーの恋人感が話題の日本オリジナル曲「Your Eyes」を初披露するという、日本公演ファイナルならではのサプライズもあった。
Stray Kids 『CIRCUS』 Music Video
Stray Kids 『Scars』 Music Video
Stray Kids 『Your Eyes』 Music Video
Stray Kidsの成長のストーリーと真正性とは?
本編ラストは、プレデビューの楽曲「Hellevator」から「TOP -Japanese ver.-」「Victory Song」の3曲。「Hellevator」「TOP -Japanese ver.-」で、痛みを抱える努力のときを経て、どんな困難が起きても立ち止まらず、上を向いて高みを目指す姿を……「Victory Song」では、まさに旗を掲げて、勝利を掴む。フィリックスのアジテーション、チャンビンとハンのラップも圧倒的だったが、この3曲で、Stray Kidsのストーリー、情熱と歩みそのものを表していた。音楽的に多彩であり、情報量も多いのだが、全てがStray Kids印となって、3時間半があっという間でもあるのは、8人が生み出す真正性(本物であること)そのものということだろう。
「内面を脱ぎ捨て、新たな姿を見せる」
今ツアーは『ODDINARY』のコンセプトにもある二面性にフォーカスし、ライブ全体の構成にも前半に<パフォーマンスで魅了する完璧なステージ>、後半は<自由に遊ぶステージ>を織り込み、一つのコンサートで二つの姿を見せる。彼らのダンスパフォーマンスの実力と世界観を堪能しつつ、ヒップホップグループやロックバンドのようなエモーショナルなアクション、さらに、STAY(Stray Kidsファンの呼称)と目を合わせ、自由に楽しむシーンを同時に楽しめた。
ライブは生物だとよくいうが、6月の4公演でも、全ての公演で違う表情をみせていたし、アメリカツアーを経て、7月に再び日本に戻ってきた彼らのステージの変化といえば、パフォーマンスの自由度・ライブ感がより増していたことではないだろうか。『PMC Vol.24』では「自分たちがライブを楽しむことこそが、STAYにも伝わる」(バンチャン)と教えてくれたが、例えば「Thunderous」でのカムバックの際、音楽番組でパフォーマンスを重ねるにつれ、チャンビンが掛け声をアレンジしたり、メンバー間で笑わせあったり、どんどん楽しむようになっていったように、7月の公演は要所要所にメンバー同士で楽しむ表情が垣間見えた。即興パートで、リノとアイエンがサングラスをかけ、J.Y. Parkの「Honey」を披露している際、本来ならば次のユニットステージを準備中のメンバーが、思わず出てきてSTAYと同じ目線で盛り上がるシーンもあり、最終日はStray Kidsらしい、わちゃわちゃ・はちゃめちゃなシーンも多く見られた。
ちなみに、7月公演のMCではリノがリーダーのバンチャンについて日本語の<部長>呼びを連発していたが、PMCの読者アンケートでも人気を示した、Stray Kidsによるメンバー紹介曲「FAM」をアンコールで披露した際、リノがバンチャンの紹介をするパートで、歌詞を<部長>に変えてしまった。
▼こちらは、日本公演初日。公式が公開した「FAM」初日、神戸公演の映像
https://twitter.com/stray_kids/status/1535613469822976000?s=21&t=KG0ptZkGrXAT54htC8M3EA
最終日のアンコールパートは、EDMナンバー「MIROH」の盛り上がりから、「Star Lost」「Haven」では会場のファンと思い思いに目を合わせるメンバー。紙吹雪が舞い、多幸感とあたたかな空気で満ちあふれていた。全公演プレミアムライブと化した「Stray Kids 2nd World Tour "MANIAC" in JAPAN」のファイナル公演は、全国の映画館で生中継された上、リアルタイムで世界配信も実施し、3時間半におよぶ特別な時間を、日本および世界中のSTAYと共有し、幕を閉じた。
『PMC Vol.24』ではメンバーのライブにかける思いをたっぷりと語ってもらっているので、ぜひともチェックしていただきたいが、今回のツアーは、2年5ヶ月というブランクを物ともせず、世界中のどこへでも音楽を直接届けに行くという思いのもと、国立代々木競技場第一体育館という会場を見事に掌握し、Stray Kidsの人気を決定づける日本公演になったと思う。きっと、次の来日公演は、さらに大規模なアリーナ・ドームクラスの会場を美しいペンライトの光で埋め尽くし、Stray KidsとSTAYが家族のような関係で「おかえり」とお互いを迎えられるのではないだろうか。
Stray Kidsはワールドツアー中にも楽曲制作を進めていたようで、次なる作品にも期待は高まるが、早速、8月1日のSTAYの誕生日(ファンクラブが誕生した日)にポップパンクな新曲「Time Out」が公開された。日々、新たな展開が続いているので、変化・進化し続ける彼らのライブ同様、一時も見逃せないのである。
取材・文/PMC編集部
Stray Kids "Time Out" M/V
Info.
『ぴあMUSIC COMPLEX(PMC)Vol.24』
・発売日:2022年7月28日(木)
・仕様:A4変型 112P オールカラー/無線綴じ
・販売場所:全国書店、ネット書店、CDショップ ほか
【表紙Stray Kidsのポストカード特典付予約】
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▼8月10日(水)まで、Stray Kids×PMCパネル(W1700×H1580)がタワーレコード渋谷店5Fに登場。
コンテンツ
表紙 Stray Kids
特集「2022年の来日ラッシュ!」
◎Stray Kids 2年7ヶ月ぶりの来日公演! ライブの“真正性”を語る
・Stray Kids巻頭インタビュー
・"MANIAC" in JAPAN 神戸・東京を完全レポ!
・K-POPジャーナリスト、古家正亨の証言
・久しぶりの日本滞在と“真正性”の源とは?
・読者アンケート
・Stray Kidsサイン入りチェキ、プレゼント
◎SUMMER SONIC 2022 来日ラッシュとSUMMER SONIC、3年ぶりの完全復活!
◎Novel Core言葉と実体がハマる新たなフェーズにきた!
◎小鳩ミク(BAND-MAID / cluppo) ソロ活動cluppoを経てBAND-MAIDの全米ツアーへ!
◎OWV 僕らの生きがいはライブ。2022年初ツアーへ
◎アート×音楽の世界も、来日ラッシュ!
◎Kroi “telegraph”で世界とつながる!
◎PICK UP! PIA SPECIAL PIGGS / WANG GUNG BAND
◎Chim↑Pom from Smappa!Group エリイの国の人の習性 ほか