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音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画

3年ぶり開催! 世界的に注目を集めた 「SUMMER SONIC 2022」レポート前編

PMC編集部

第36回

©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.

8月20〜21日、国内外のアーティストが集結するインターナショナルフェスティバル「SUMMER SONIC 2022(以下、サマソニ)」が東京・大阪の2ヶ所で同時開催。東京会場はZOZOマリンスタジアム&幕張メッセで開催され、各日5万人を動員し、ソールドアウトを記録。サマソニ前夜(8月19日)のオールナイトフェス「SONICMANIA」、8月20日深夜内の「AREA DIP 2022 in MIDNIGHT SONIC」(以上、幕張メッセ)には計2.5万人、サマソニ大阪会場には各日3万人(完売)が参加し、3年ぶりに完全復活を遂げた。

現在好評発売中の『PMC Vol.24』では、主催するクリエイティブマンプロダクションの代表・清水直樹氏に、2022年のブッキングに込めた思いを聞いたが、以下のような意義があると答えてくれた。

・新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止となった大型フェス「SUPERSONIC」(2020年9月に開催を予定していた)のリベンジとして、同フェスでブッキングしていたThe 1975とポスト・マローンがヘッドライナー

・YUNGBLUD、ミーガン・ザ・スタリオン、Måneskin(マネスキン)といった、「今年呼んで良かった!」と思える、世界的に注目株のスタジアムライブ(MARINE STAGE)

・もともと多様なブッキングが特徴のサマソニだが、The 1975の要望もあり、出演アーティストの女性比率をさらに上げ、ジェンダーバランスに配慮

・SONIC STAGEからMOUNTAIN STAGEへとステージの規模を大きくしたTOMORROW X TOGETHER、米コーチェラ・フェスティバルでも注目されたCLほか、アジア系アーティストの充実

国内アーティストも、King Gnu、ONE OK ROCKら人気ロックバンドから、J-POP、ヒップホップ、アイドルまで幅広く、さらに、グローバルな活動に注目が集まるちゃんみな、CHAI、BAND-MAIDらが参加し、ジャンルを超えたラインナップで国内外のアーティストが多彩なステージを繰り広げた。

©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.

8月20日、筆者はMOUNTAIN STAGE のThe Linda Lindasからスタート。アジア系&ラテン系のアメリカ人で、2人の姉妹、いとこ、親友の4人(11歳〜17歳)で構成する10代のバンドである。日本で初めてのライブだが、パンク・ガレージバンドとして、ビジュアルも音もマインドもハマっていた。衝動とともに、懸命に演奏する姿に心を打たれたし、メンバーがアジア人差別を受けたことで生まれた「Racist, Sexist Boy」を熱く披露したあと、ルーツである(日本の映画『リンダ リンダ リンダ』に衝撃を受けてバンドを始めた)ザ・ブルーハーツ「リンダ リンダ」のカバーで終わり、同日同じステージに出演するクロマニヨンズにつなげようとしていたのもよかった。ぜひまた、単独日本ツアーで戻ってきてほしい。

©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.
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その後は、主にMARINE STAGEを。beabadoobee(ビーバドゥービー)、リナ・サワヤマという米コーチェラ・フェスティバルで存在感を示していた2組。どちらも日本初ライブであり、同日のトリを務めるThe 1975が所属するイギリスのインディーレーベルDirty Hitのアーティストで、レーベルの勢いと信頼が感じられる。beabadoobeeはシューゲイザーやベッドルームポップ的な浮遊感や甘美なメロディのいい曲ばかりなのだが、意外と骨太なバンドサウンドで、ビー・クリスティのキャラクターと笑顔にひきつけられる。一方のリナ・サワヤマは、ダンサーを引き連れたダンスパフォーマンスで魅せる。オープニングから「Dynasty」でスケール感があるポップアイコンっぷりを発揮し、実にパワフル。MCでは「実は日本人です」と日本語で、とても親しみがわくのだが、リナはLGBTのBであることを伝えた上で、「日本人であることに誇りを持っているが、G7の中で日本だけが同性婚を認めていないことは恥ずかしい」と言及し、「Free Woman」を披露した。ジャッジするとはどういうことかも考えさせられたし、どんなアイデンティティでも人間であり、日本人であり、平等な権利を持つべきだと思うなら、ともに闘ってくださいというメッセージがかっこよすぎた。リナ・サワヤマはサマソニ大阪を終えた翌朝、『スッキリ!』(日本テレビ系)に出演し、サマソニでもやっていた「This Hell」を披露していたが、来年1月には日本ツアーを行うとのこと。なんと東京は5000〜6000キャパの会場らしいので、ぜひともチェックしてほしい。

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そして、今回、サマソニ参加者の心を最もかっさらったのはイタリアのバンド、Måneskin(マネスキン)ではないだろうか。東京・豊洲PITで開催された単独公演も即完し、日に日に注目度が増す中でのサマソニ出演。ライブで鍛えられた4人のバンドサウンドの説得力とグラマラスな存在感がとにかくすごい。ファンのみならず、スタジアムに居合わせた観客が、どんどんステージに引き込まれていく。中盤の「Beggin’」「SUPERMODEL」が鳴り始めるころには、すっかり夢中になっていたし、スタンド席の隅から隅まで届くような、ものすごい音圧とグルーブ。生身の野生的なパフォーマンスで掻き立て、MARINE STAGEというサマソニ最大のステージを大いに盛り上げた。ラップやダンス、ポップミュージックが隆盛を極めるなか、まさにロックバンドの復興を感じさせるものだった。

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King Gnuは2019年SONIC STAGEへ出演していたが、この3年でサマソニのメインステージでトリ前を務めるまでにバンドも大きく飛躍。常田大希が拡声器を手に登場した「Slumberland」に始まり、「飛行艇」「Sorrows」とスタジアムに映えるロックナンバーでスタートした。会場はアリーナからスタンド席まで満員、3階まで立ち見が出ていたほどで、案の定、入場規制がかかっていると通知が来た。大ヒットしたバラード曲「白日」のみならず、その後もヒットナンバーが追加されてきたことを実感したし、音数が多くカオティックであるのはKing Gnu印であるが、その中で新曲「雨燦々」は哀愁含むメジャーコードからの上昇していく感じが気持ち良く、バンドの真骨頂という感じで響いていた。11月19、20日に予定されている東京ドーム2DAYSが俄然楽しみになった。

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そして、初日のトリはThe 1975。サマソニとの関係は、2013年の初出演以来、世界的にバンドの人気が大きくなるにつれ、ステージを昇格していき、今回、初のヘッドライナーとなる。さらに、2021年のツアー再開もキャンセルしていたため、パンデミック後初のライブがサマソニとなり、世界的な注目が集まっていた。さらに、MARINE STAGEに出演予定だったThe Libertinesの来日がビザの関係でかなわず、持ち時間が1時間半というロングセットになったことも、特別感が増す。オープニングから映像含め、モノトーンの世界感で、衣装も黒と白のツートーンで、一気にThe 1975の世界観に持っていかれた。1stアルバム『The 1975』の曲も組み込まれるなど、ベストライブ的なのだが、50年代の映画をみているような、一つの世界観で、照明までセンスよく、余計なものがない潔いクールネスで実に気持ちいい。さらに、新曲「Happiness」の披露ほか、本当に特別なステージとなった。ニューアルバムは10月14日、日本盤『外国語での言葉遊び』も同時発売、来年の4月に来日を予定しているとのことで、こちらも続報を待とう。

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8月21日のMARINE STAGEも圧倒的だった。ミーガン・ザ・スタリオンは、お団子頭にセーラームーン風衣装で登場し、トゥワークするミーガンに、まずは圧倒される。カーディ・Bとのコラボ曲で2020年を代表する曲となった「WAP(feat. Megan Thee Stallion)」「Body」など過激な楽曲で盛り上げるのだが、しばし会場を見回し、観客に笑顔を向ける姿は最高にキュート。MCでは<あなたは美しいし、強いから、私は感謝する>とすべての女性に向けてエンパワーメントし、<ヘイターたちに向けてメッセージを届ける>と「What’s New」を披露したくだりはカッコよすぎてしびれた。リリースされたばかりのニューアルバム『Traumazine』より「Her」やビヨンセをフィーチャーしたリミックスでも話題になった「Savege」など、あっという間だった。本人も日本でのステージを思う存分楽しみ、手応えがあったようだ。前日のリナ・サワヤマもそうだったが、とにかく、女性アクトがどれも素晴らしい。

Rui Hashimoto (SOUND SHOOTER)

続いて登場したのは、グローバルに活動するロックバンドONE OK ROCK。いきなり「We are」からスタートし、スタジアムバンドとしてのスケール感を見せつける。ニューアルバムの発売を前に先行配信された新曲「Save Yourself」、大ヒット曲「Wherever you are」では聴き入る場面もあり、ラスト「Wasted Nights」は、とにかく、海外ツアーで鍛えられたパフォーマンスとボーカルTakaの歌声が圧倒的で、スタジアム中に響き渡っていた。このあとは、ワールドツアーに行くとのこと。最近、海外のアーティストからONE OK ROCKの名前が出てくることも多く(来日公演でのカバーなども)、ニューアルバムのリリース含め、さらなる世界的な活躍が楽しみなところ。

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そして、いよいよ、サマソニ東京の大トリ、ポスト・マローンである。初来日の「FUJI ROCK FESTIVAL '18」でも愛嬌のあるキャラクターが印象的だったが、その後、ラップスターから一気にポップスターにまで上り詰めた中で、今回は、とにかくフィジカルの強さが半端ない。スタジアムライブであるのだが、特別な演出があるわけでも、着飾るわけでもなく、彼自身とエモーショナルな歌があるだけ。「Wrapped Aroud Your Finger」「I Like You(A Happier Song)」といった最新アルバム『Twelve Carat Toothache』の楽曲もすばらしく、曲の力とボーカルの魅力、表情で、心に訴えてくる。曲紹介したり、1曲1曲お辞儀していたのも、彼の魅力を伝え、親しみやすいキャラクターが伝わってきたし、「rockstar」でギターを叩きつけるシーンも鮮烈。ラスト「Congratulations」では花火も打ち上がり、客席を見つめ、笑顔を向ける姿も、とても感動的だった。ポスト・マローン×花火の光景は2022年の夏の景色として目に焼き付いている。

8月19日の「SONICMANIA」を含め、3年ぶりのサマソニは、国内外含め、さまざまな世界の音楽を一気にあびるような、刺激的な音楽体験だった。何より、どの海外アーティストもステージはもちろん、日本滞在を楽しんでいたようだし、日本のアーティストとの交流もSNSを通じて伝えてくれた。2022年はさらに、イベントや単独公演をはじめ、来日公演が決定しているので、ぜひともチェックしてほしい。

取材・文/編集部