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音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画

完売のツアー最終日のライブレポート。BREIMENがNON FICTIONなショーで魅了!【写真26点掲載】

PMC編集部

第39回

7月にリリースした3rdアルバム『FICITION』を携えたミクスチャーファンクバンドBREIMENの東名阪ツアー「BREIMEN 3rd ALBUM “FICTION” RELEASE ONEMAN TOUR “NON FICTION”」の最終日、東京公演が9月29日に渋谷のSpotify O-EASTで開催された。平日の開催だったがチケットはソールドアウトし、フロアは後方までびっしりと埋まっている。同業の音楽仲間やコアな音楽ファンを中心に幅広いリスナーから好評を得た前作『Play time isn’t over』(2021年)と、瞬く間にソールドアウトしたアルバムツアーを経た後も、「CATWALK」や「あんたがたどこさ」などノンストップで進化を続ける新曲をリリースしてきたBREIMEN。今年5月には、高木祥太(B&Vo)が、岡野昭仁(ポルノグラフィティ)と井口理(King Gnu)のコラボ曲「MELODY(prod.by BREIMEN)」を楽曲提供、編曲と演奏をBREIMENが担当し、今夏は大型フェスをはじめさまざまなイベントに出演した。バンドへの注目度、期待感が高まる中での3rdアルバム『FICTION』、そしてツアー「NON FICITON」は、BREIMENの音楽、バンドアンサンブルの魅力を余すことなく伝える“ショー”となった。

フィルムが回る音とともに、ステージにかかったオペラカーテンにツアータイトルが映し出されクラシカルな映画のようにスタートしたライブ。カーテンが開いてあらわになったステージには絨毯が敷かれ、さらに5人それぞれのプレイが見えるように段違いでステージが組まれている。頭上にはシャンデリアが灯って、その中で奏でられたスロウな「フィクション」は物語を幕開けるマジカルなプロローグとなった。メロウな気分もつかの間、続く「ドキュメンタリ」からは5人の濃厚なアンサンブルが一気にうねりを帯びて会場を駆け抜ける。ファンキーに、ときにサイケデリックに、あるいは変則的なビートでと有機的に形を変えていくアンサンブルと、ビートや音とシンクロしたカラフルな照明とが、“見える音楽”を生み出していて、フロアが興奮で包まれていくのがわかる。さらに序盤のハイライトはゴージャスな80sサウンドのエッセンスを盛り込んで、エフェクティブなベースとジョージ林のサックスで幻惑的なグルーブを編み出していく「苦楽ララ」でフロアをダンス空間に変えた。

中盤、憂いを帯び、多重感のあるエフェクティブな高木のボーカルと柔らかなビートや鍵盤で紡ぎあげていく「noise」は、サビでスモークが噴射され、薄くけむった光景の中でエモーショナルに響く。さまざまな感情をかき消す雨音のようなノイジーなギターやサックス、ボリュームを上げていくサウンドが美しい。情緒的なこのシーンから、「あんたがたどこさ」でまたムードを変えてフロアを沸かせていく。曲中、「踊りたいよね、というか遊びたいよね」という高木の一声から、いけだゆうた(Key)がステージ前へと飛び出して、「せっかくだから跳ねてみませんか」と観客を指揮していったりと盛り上げる。会場の温度が上がったところでの「脱げぱんつ」は、5人の仕掛け合いが最高だ。ドラム・So Kannoとサックス・ジョージ林の、息をもつかせぬ白熱したセッションに、メンバーも思わず声をあげる。BREIMENを主軸としつつ、メンバーはそれぞれさまざまなバンドやアーティストのサポートも務め、若手ながらミュージシャンからの信頼が厚い。そんな5人が揃っているからこそ、ライブはライブならではのアレンジやハプニング、スリリングな掛け合いで満ちている。

怒涛の、そしてすでにボリューム感が満載の前半戦を終えて、改めて会場を眺め「すごい人がいるじゃない。お越しくださいましてありがとうございます」と高木。ここで、この日22時に「綺麗事」のMVが公開になるなど告知事項がいくつかあったようだが、熱量の高いプレイでいろいろ吹っ飛んでしまったようで、サトウカツシロ(G)はインカム越しにスタッフの指示を受けながら話をしたりと、自由そのもの。いい具合にリラックスもしているのだろう。

▼BREIMEN「綺麗事」Official Music Video

またここでMCを任された林は、ドキュメンタリー映画『BREIMEN:映画 “DOCUMENTALY?”』でも語られなかったBREIMENの前日譚を話してくれた。林が20歳くらいから一緒にいる妻に、普段あまり感情が表に出ないタイプの彼が本気で喜んでいるのを見たのは2回くらいで,その一つが高木にバンドに誘われた時だと言われたこと。またバンドでキャリアを重ねてきて、BREIMENとしてどうなっていきたいかということも聞かれるが、とくに具体的なものはなく、そのとき思う、そのときにできるいちばんかっこいいこと、面白いことをやっていくんじゃないかと思っていると語った。「温かく見守ってください」(林)と締めくくるその言葉に、拍手が起こる。肩肘を張らず、バンド内での興奮が音楽となり、そのピュアな衝動にたくさんの人が共振し、自然と熱いファンを増やしていった。そんなバンドの道のりが透けて見えるシーンだった。

そして後半。1stアルバム『TITY』からの曲、そして「Play time isn’t over」でスピード感たっぷりに突き進んでいったところで、続いたのは多幸感あふれるメロディとビートに気持ちも弾む、「MUSICA」。ポップなアンサンブルにフロアの高揚感が上昇していったところで、金テープが放たれ、ステージにはキラキラとした紙吹雪が舞う。機材にもたっぷりと降り積もるほどの紙吹雪はじつは、スタッフからメンバーに贈られたサプライズだったという。この華やかな演出からの終盤は、アルバム『FICTION』と同様に「綺麗事」「チャプター」、そして「エンドロール」と、より内省的で、パーソナルな流れとなっていく。哀愁感の滲むギターに乗せて静かに吐き出すように歌う「綺麗事」、アンビエントで空気を色付けていくような音響から、アップダウンする心模様をたどっていく「チャプター」の調べ。「また会う日まで、さようなら」(高木)と言って続けた「エンドロール」は、明日の行方を探すように、混沌をかき分けて進むようなアンサンブルが心をかき乱していく。曲が終わりに近づくと、大量のスモークがステージとフロアを覆ってほんの先も見えないくらい真っ白な状態となった。残響とともにもやが晴れていくと、ステージにメンバーの姿はなく、文字どおり煙に巻かれたように、そのライブは終了した。ステージのオペラカーテンが閉じ、はじまりと同様にカーテンにエンドロールが投影される。たくさんの人がショーに関わり、長いエンドロールが流れる間中、観客は大きな拍手を送り続けた。アンコールはなし。約2時間の幻のような、それでも確実にそこにあった“ライブ”を堪能した。

文=吉羽さおり

▼O-EAST:BREIMEN「NON FICTION」Set List

▼BREIMEN『FICTION』
発売中/SPACE SHOWER MUSIC
https://breimen.lnk.to/FICTION

▼BREIMENワンマンライブ
日時:2022年1月9日(月祝) OPEN17:00 / START18:00
会場:渋谷Spotify O-EAST
チケット:Standing ¥5,000(ドリンク代別)

<オフィシャル最速先着先行>
受付期間:9月29日(木)21:00〜10月10日(月祝)23:59
受付URL:https://w.pia.jp/t/breimen-t/

BREIMEN(高木祥太)のインタビューを掲載した『ぴあMUSIC COMPLEX(PMC) Vol.23』好評発売中