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音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画

動員数2万人超のBAND-MAID米ツアーへ。渡米したライター阿刀大志の完全ルポ【後編】

PMC編集部

第51回

「BAND-MAID US TOUR 2022」(2022.11. 1 CHICAGO, IL HOUSE OF BLUES) 写真=FG5

『PMC Vol.25』では、世界的な人気を誇るBAND-MAID、3年ぶりのアメリカツアーを特集。現地を訪れたライター阿刀大志による追加2公演のレポートと帰国後のメンバーインタビューを掲載しているが、ここでは、ルポルタージュ完全版の後編をお届けする。

2022.11. 1 CHICAGO, IL HOUSE OF BLUES

「BAND-MAID US TOUR 2022」(2022.11. 1 CHICAGO, IL HOUSE OF BLUES) 写真=FG5

10月30日にニュージャージー公演を終えると、一行は旅の最終地・シカゴへ向かった。ご時世的にいつ誰がコロナウィルスに感染してもおかしくない状況だったが、全員そろって無事にツアーファイナルを迎えられたことはそれだけで称賛に値する。ちなみに、ニューヨークではマスクをしている人は体感5%ぐらいだった。だからといってマスクをしている自分のような人間が白い目で見られることもなく、そのへんはよかった。

シカゴ公演はHOUSE OF BLUESで行われた。ダウンタウンの中心を流れるシカゴ川沿いに建てられたこの会場は、全米11ヶ所で展開されているライブホール&レストランの一つ。最大キャパは1800人。もちろん、ソールドアウトである。

開場30分後に会場を訪れると、入場待ちの長蛇の列が待ち受けていた。これを避けるために遅めに行ったのに、まだまだとんでもない長さだった。それに驚いた通りがかりの若者が列に向かって、「誰のライブ?」と尋ねると、自分の後ろにいた男性が「BAND-MAIDだ」と返す。「誰だ、それ?」「後で調べろ」そんなやりとりがあった。うん、調べてくれ。

ちなみに、自分の前に並んでいた女性が着ていたのは女性ボーカルを擁するカナダのメタルバンドUNLEASH THE ARCHERSのTシャツ。なるほど、こういうところともリンクしているのか。
しばらく待って場内に入ると、非常に凝った内装が目に入ってきた。ベンチに人が座っていると思ったら、映画『ブルース・ブラザーズ』の登場人物の等身大の人形だった。これはきっとこの映画の舞台になっているシカゴならではの装飾なんだろう。これに限らず、とにかくどこもかしこも凝っていて、じっくり見て回るだけでも数十分は楽しめたはずだ。

セキュリティなどのさまざまなチェックを終えて、ホールがある2階への階段を上ったのだが、階段の際まで人で埋まっていて足を踏み入れる隙間がない。人が移動するのと同時にスルッと紛れ込んだものの、今度はステージがまったく見えない。自分の170cmという身長をこんなに恨んだことはない。どこに行っても人の壁があり、3階(実質2階)にあるバルコニーもパンパン。人がいない空間を見つけたと思ったらVIP専用エリアときたもんだ。大げさではなく、これではまともにレポートができないのでは、とかなり焦った。でも、これだけの人を集めるBAND-MAIDを誇らしくも感じた。結局、フロア最後方にあるバーカウンターの前にスペースを見つけ、そこから観覧することに。

場内を動き回っている間に気づいたのは年齢層の幅広さだった。若者から年配の夫婦、小さな子どももいた。そういえば、ニュージャージーでは中学生ぐらいの男子3人組も見かけた。これだけの層に支持されている理由についてはメンバー本人が『PMC Vol.25』のインタビューで語っているので、そちらを読んでほしい。

「BAND-MAID US TOUR 2022」(2022.11. 1 CHICAGO, IL HOUSE OF BLUES) 写真=FG5

ライブはいつものようにSEととともにスタート。MISA(B)、KANAMI(G)、小鳩ミク(G&Vo)、AKANE(Dr)、そして最後にはSAIKI(Vo)がゆっくりと貫禄たっぷりにステージに現れる。1曲目にはニュージャージー公演と同様に「Sense」が選ばれた。前公演ではここから「Play」「DICE」「FREEDOM」と続いたが、この日は「DICE」と「FREEDOM」の順番が入れ替わっていた。ツアー最終日に至っても微調整を加える姿勢には頭が下がる。

そして、やっぱりライブハウスはいい。とにかく音がいいし、演奏の迫力もしっかり届けてくれる。「FREEDOM」ではメンバーが自由に動き回り、AKANEのソロでは彼女を中心にほかの4人がしゃがみ、ドラムプレイを盛り立てる。本人たちは必死だっただろうが、こちらからすると余裕たっぷりに見えた。

「BAND-MAID US TOUR 2022」(2022.11. 1 CHICAGO, IL HOUSE OF BLUES) 写真=FG5

最初のMCでは小鳩が興奮気味にまくし立てるが、後半はよく聞き取れず、自分の周りにいた観客も「いま、なんつった?」と言っている。でも、最後に「ようこそ!BAND-MAIDのお給仕へー!」の一発でオールOKになるんだから強い。ちなみに、ここ以外の英語MCはほぼ100%観客に通じていた。言語面でいうと、日本語を理解している観客がとても目立った。小鳩が言うことに対して全部日本語でリアクションする女性もいて、けっこう驚いた。

「Choose me」ではイントロから歓声が上がり、「endless Story」ではシンガロング。「アイシテルー!」という女性の声が飛んだ。「Daydreaming」でも合唱が起こっている。この曲で聴かせるKANAMIのギターソロは本当に素晴らしい。

「BAND-MAID US TOUR 2022」(2022.11. 1 CHICAGO, IL HOUSE OF BLUES) 写真=FG5

SAIKIがいったんステージを降りて、小鳩がメインボーカルをとった「Rock in me」は圧巻だった。ここまできてまだその声が出るかという迫力。「もっとー!」とフロアに向かってシンガロングを求める声はドスが効いていた。

しかし、直後のMCでは観客の「ミク」コールに合わせておどけながら踊って見せてみんなを笑わせるんだから、この人の人間力というのは本当にすごい。しかし、本当にすごいのはこのあと。まずは客席に向かってどこから観に来たのか尋ねた。「シカゴ!」大歓声。続いて、「USA!」大歓声。「ジャパン!」5人ぐらい。アルゼンチンから来たという猛者も一人いた。

「BAND-MAID US TOUR 2022」(2022.11. 1 CHICAGO, IL HOUSE OF BLUES) 写真=FG5

MISAの乾杯タイムに続いて、小鳩によるおまじないタイムがやってくる。この時間の彼女は無双だった。小鳩が「萌え萌え!」と言ったら、観客が「キュンキュン!」と返すのだが、まあ、日本人にとっては恥ずかしい。でも、この国ではみんな積極的に参加する。小鳩は「絶対に参加しないとダメっぽ!それ以外の選択肢はないっぽ!」「全員参加しないと次の曲やらないっぽ!」と英語で絶叫し、参加していない客を見つけると、「あなた!」と指を指して参加させる。彼女は異国の地で客イジりまでやってのけたのだ。この大立ち回りにはメンバーもインタビューで感心していた。

ライブ内容はニュージャージー公演以上のものだった。やはり、ライブハウスでの一体感に勝るものはない。もちろん、いい演奏をすることは大事だ。しかし、BAND-MAIDの5人はそれだけではよしとしない。観客を徹底的に楽しませようとそれ以外のことにも全力を尽くす。そんな彼女たちの熱量を観客は全身で受け止めて、大声に気持ちを乗せてステージに届ける。この相互関係が本当に美しい。当たり前のことのようだけど、ここまでその関係が可視化されることは稀だと思う。彼女たちは世界征服を目指しているが、征服というよりも世界中をホームにしかねない温かさがある。それはアメリカで初めて気づいたことだ。

ほかの国ではどうなのかわからないが、少なくともアメリカのファンとエンタメ度の高いBAND-MAIDとの相性はかなりいいのは明らかだ。

「BAND-MAID US TOUR 2022」(2022.11. 1 CHICAGO, IL HOUSE OF BLUES) 写真=FG5

疲労が頂点に達していたであろう終盤でも、演奏の勢いは落ちなかったし、SAIKIも最後まで力強いハイトーンを響かせ、バンド全体を牽引した。「NO GOD」では<Lu-lu, lu-lu>のコーラス部分で小鳩が指揮者のように手を動かすと、それに合わせて観客が大声を上げる。MISAのベースソロもキレていた。

この日一番の盛り上がりを見せたのは、ラストの「DOMINATION」。SAIKIは歌いながらKANAMIの肩を抱くと、KANAMIはうれしそうにほほえむ。公演のラストはドラムのズクズン、ジャーン!で終わるのが定番だが、BAND-MAIDではAKANEがいつもドラムを溜める。しかも、この日はツアーファイナルということもあり、それが最後の一音になることを惜しむかのように、AKANEはドラムを叩きつけるのだった。何度も、何度も、何度も。それがなんだかすごく感動的だった。

「BAND-MAID US TOUR 2022」(2022.11. 1 CHICAGO, IL HOUSE OF BLUES) 写真=FG5

終演後はアンコールを求める声がなかなか止まなかった。「One more song!」と叫ぶ観客の声は、いつしか「ウタ、モウイッカイ!」に変わっていた。気づくと、物販コーナーに長蛇の列ができていた。自分も何か買いたかったけど、待つにはかなり厳しい長さだった。

こうしてBAND-MAIDの全米ツアーは無事に終了した……かのように見えたが、真のエンディングはここではなく、5日後に行われるさいたまスーパーアリーナだったのである。

2022.11.6 「GUNS N' ROSES JAPAN TOUR」(さいたまスーパーアリーナ)

BAND-MAID「GUNS N' ROSES JAPAN TOUR」(2022.11.6さいたまスーパーアリーナ)

11月6日、BAND-MAIDはさいたまスーパーアリーナにいた。ガンズ・アンド・ローゼズの来日公演をサポートするためだ。

個人的にガンズのライブを観るのは5年半以上ぶりだったが、彼らは前回よりも力強いパフォーマンスを見せてくれた。演奏された楽曲は前回の来日時と大きくは変わらなかったものの、「It's So Easy」「Welcome to the Jungle」「Paradise City」といった超有名曲だらけの中に、「Estranged」や「Civil War」のような隠れた(というほどでもないが)の名曲が挟み込まれるのがうれしかった。

GUNS N' ROSES「GUNS N' ROSES JAPAN TOUR」(2022.11.5・6さいたまスーパーアリーナ)

BAND-MAIDの出番はガンズがステージに現れる2時間も前だった。当然、そんなに早い時間から会場に来ている人は多くなく、いたとしても物販列に並んでいるのがほとんどだった。その結果として、客の入りは芳しくなく、少々寂しい雰囲気ではあった(メンバーとしてはもっといないと思っていたらしい)。

こういう状況だとパフォーマンスも小さくなりがちだが、アメリカを経験してきた5人は違った。自分たちの目の前に何人いようが関係ないという空気をまとい、真っ暗なステージに立ち、SEもなく、いきなり1曲目「from now on」を叩き込んだ。

もう、最初の1音目から違った。理屈では説明しきれない圧倒的な迫力。もちろん、演奏も違ったのかもしれない。でもそれ以上に感じたのは人間的なデカさだ。会場の広さに飲み込まれるどころか、その広さに向かって全力で襲いかかっていくような気迫を肉厚なアンサンブルから感じた。特別なセットもない簡素なステージだったからこそ、それが際立って見えた。それだけなく、全体的に余裕があった。「DOMINATION」で小鳩は笑っていた。あの場に何人いたのかはわからないが、観なきゃもったいないパフォーマンスをしていた。

単純にパワーがあるだけではない。「Daydreaming」ではSAIKIが丁寧にメロディを紡ぎながら素晴らしい歌唱を見せ、KANAMIは繊細な運指で美しいギターソロを響かせた。たった30分のステージだったのに、インパクト重視ではなく、しっかりと展開をつけたセットリストにしていたのも驚きだった。

BAND-MAID「GUNS N' ROSES JAPAN TOUR」(2022.11.6さいたまスーパーアリーナ)

ラストは「REAL EXISTENSE」を豪快に鳴らしてフィニッシュ。『PMC Vol.25』の後日インタビューでも話していたが、彼女たちにとって真のツアーファイナルはここだった。それぐらいのインパクトのある30分だった。

新たなBAND-MAIDの姿を観ることができるのは1月9日に行われる東京ガーデンシアター公演。過去最大規模のお給仕となる。今回の全米ツアーをきっかけに、5人は技術面、精神面ともに大きく飛躍していくことになるはず。今のBAND-MAIDほどのエンタメ性と音楽性を高いレベルで実現し、海外でもしっかり結果を残せるバンドは国内にはほぼいない。来年以降、BAND-MAIDによるさらなる勢力図の拡大が楽しみだ。まだまだいける、もっといける。

阿刀大志=取材・文

BAND-MAID US TOUR 2022

10.9 SACRAMENTO, CA  AFTERSHOCK FESTIVAL
10.12 SEATTLE, WA NEPTUNE
10.14 SAN FRANCISCO, CA AUGUST HALL
10.15 LOS ANGELES, CA BELASCO
10.17 SAN DIEGO, CA HOUSE OF BLUES
10.19 PHOENIX, AZ CRESCENT BALLROOM
10.21 DALLAS, TX HOUSE OF BLUES
10.22 HOUSTON, TX HOUSE OF BLUES
10.25 WASHINGTON, DC THE FILLMORE
10.26 PHILADELPHIA, PA TLA
10.28 NEW YORK, NY IRVING PLAZA
10.29 BOSTON, MA PARADISE ROCK CLUB
追加公演
10.30 EAST RUTHERFORD, NJ AMERICAN DREAM
11.1 CHICAGO, IL HOUSE OF BLUES

<CD info.>
「Unleash」

now on sale/(CD+Blu-ray)¥5,900、(CD+DVD)¥3,500、(CD)¥2,500/PONY CANYON

<LIVE info.>
2023.1.9
「BAND-MAID TOKYO GARDEN THEATER OKYUJI」
東京ガーデンシアター

※配信チケットは12月23日(金) より発売。
詳細はこちら:
https://bandmaid.tokyo/contents/534358

「BAND-MAID PRE US OKYUJI in JAPAN SHIBUYA EGGMAN」

12月24日(土) 14:00より配信開始 ※ファンクラブ会員のみ配信チケット購入可能
詳細はこちら:
https://bandmaid.tokyo/contents/604878

2023.5.18~22 ※米現地時間(BAND-MAIDは5.18に出演)
「WELCOME TO ROCKVILLE 2023」

https://welcometorockville.com/