音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画

【写真全15枚】INIが初のアリーナツアーを完走。オーディションからの全てを昇華した日本武道館公演レポ

PMC編集部

第53回

INI (C)LAPONE Entertainment

1月8日、「2022 INI 1ST ARENA LIVE TOUR [BREAK THE CODE]」の追加公演が東京・日本武道館にて開催され、INI初のアリーナツアーが千秋楽を迎えた。

12月17日の愛知・AICHI SKY EXPO ホールA公演を皮切りに、全国4都市5会場(全13公演)を巡り、12万人を動員した同アリーナツアー。11人の個性を遺憾なく発揮しながらも、デビュー2年目に突入したグループとしての強さを確かに示したステージだった。まだまだ成長するであろう、ポテンシャルを改めて感じるとともに、現時点での最高を見せた。本稿では、ライブを通して感じたメンバーそれぞれの魅力にフィーチャーし、レポートしたい。

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火花とともに幕が上がり、1曲目はデビュー曲「Rocketeer」。ダンスブレイク前に木村柾哉が「ラスト行くぞー!」と叫ぶと、ボルテージは一気に高まる。フォーメーションダンスから、低く響く池﨑理人の声で始まる「BOMBARDA」。同公演では、ステージにおける池﨑、松田迅の年少コンビの見せ方のうまさ、堂々たる姿に驚かされた。松田は、木村・後藤威尊とのユニットステージ「DANCE #1」でアクロバティックな技を決めるなど見せどころが多いこともさることながら、自分自身で見どころを作っていく。池﨑は、唯一無二の低音ボイスとステージ上での冷静沈着さで、キーマンともいえる存在感を放っていた。心強くも、話せばとたんに無邪気でサービス精神旺盛な年少二人は、INIを盛り立てる存在だ。

(C)LAPONE Entertainment

最初のMC。「MINI〜」と愛おしそうに名前を呼び、会場中に手を振るINI。西洸人は「武道館だろうが最後だろうが、みんなで力を合わせてツアーを完成させましょう」と気合十分。松田は「大丈夫ですかー!」と会場に呼びかけ、「何が大丈夫なんだろう(笑)」と自分の言葉に笑ってしまう。こんな姿は、やはりかわいい最年少だ。“INIのエンジェル”こと佐野雄大は「最高の思い出、作っていきましょう!」と、ニコニコの笑顔を。髙塚大夢は「泣く時間じゃないぞ!メンバーもね!(笑)」と、笑いを交えながら、楽しんでいこうと声をかけた。新年の挨拶、そして追加公演決定について、深々とお辞儀を繰り返す。

最初のMCより 左から)池﨑理人、許豊凡、西洸人、松田迅、藤牧京介、木村柾哉、佐野雄大、尾崎匠海、後藤威尊、髙塚大夢、田島将吾 (C)LAPONE Entertainment

ダンスを牽引するのはやはり、西、木村、田島将吾だ。ステージでの西の覚醒には、きっと誰もが目を奪われる。ダンススキルは言うまでもないが、とにかく楽しんでいることが伝わってくる。自由に動くパートでは、メンバーと積極的に絡み、メンバーとファンの笑顔を引き出す。ライブになくてはならない存在だ。

木村はリーダーという心構えもあってか、そのパフォーマンスには「牽引」という言葉がしっくりくる。木村という存在の安心感。彼がいることでパフォーマンスが引き締まり、チームとしての完成度が高まる。そして彼自身もまた、きらめきを放つ存在。彼のはじけるような笑顔がモニターに映し出されるたび、会場からは思わず声が漏れる。

田島の長い手足はステージに映え、温厚な素顔からは想像できないほどパフォーマンスに情熱を捧げていた。とりわけINIらしいヒップホップでは、楽曲の封を切り着火するような存在。自分の世界をしっかり持っているようで、メンバーに目を配ったり、会場中を何度もぐるりと見回していたのもまた、田島だ。3人のスキルと経験値は、INIの初アリーナコンサートをまるで初でないもののように高めていた。

西洸人、田島将吾、池﨑理人 (C)LAPONE Entertainment

そして、豊かな表現力を持つ許豊凡と尾崎匠海の存在も大きい。楽曲によってガラリと表情を変える彼らは、その歌声にも色がある。世界観に没入したパフォーマンスは実に美しく、凛々しく、ときにはその上品な色気にゾクッとする。11人という大所帯において前へ前へと出るタイプではない二人だが、2曲目「Cardio」から、彼らが表現するストーリー、仕草の一つ一つに目を奪われっぱなしだった。

ライブで強く実感するのが、藤牧京介、髙塚のボーカルの強み。藤牧の声には会場を包み込むようなぬくもりがあり、髙塚の声には会場の天井を突き破るかのようなパワフルさがある。異なる性質を持つ類まれなボーカリストの存在は、ボーイズグループ群雄割拠の時代において、INIの大きな武器。ライブで真価が発揮されるその歌声、多くの人に届いてほしい。

尾崎匠海、藤牧京介、佐野雄大、髙塚大夢、許豊凡 (C)LAPONE Entertainment

不思議な存在感を放つのが、後藤と佐野だ。後藤はとにかくつかめない。パワフルなラップをかましたかと思えば、メンバーらが挑発的な表情を浮かべる中、ふっと微笑んでいる。冗談も多いが、「Brighter」の曲前には、MINIへの心からの感謝と、MINIに送るポジティブな言葉を届ける。「MINI一人一人が、大切なMINI」というアンコールの言葉も実に彼らしかった。

オーディション中、苦労が多かった佐野。しかし彼のまろやかで素直な歌声は、たしかに心に届くものとなっていた。それをとくに感じたのは「RUNWAY(INI Ver.)」。本日、自身を“INIのエンジェル”と称した佐野だが、文字通り彼が笑うとそれだけで場が華やぎ、ほっとする。アンコールでは「メンバーみんないいやつすぎて、毎日楽しくて」と、両隣の後藤・池崎と手をつなぎ「ここまで連れてきてくれてありがとうございました」「支えあって生きていきましょう!」と、彼らしい全開の笑顔で、ぎりぎり涙をこぼさず乗り切った。

後藤威尊、木村柾哉、松田迅 (C)LAPONE Entertainment

印象的だったのは、「Do What You Like」から続くパート。「こういうINIもあるのか」と、発見だった。同曲ではグルービーなサウンドに乗せ、楽曲のストーリーを表現しながらものびのびと歌い踊る。「KILLING PART」では、ステージの端々まで広がり、一度きりの瞬間を楽しんでいた。西から肩を組まれ、照れたような池﨑の表情も印象的だ。同曲のラストで藤牧と髙塚がウサギ耳ポーズを作ると、会場は大盛り上がり。ポップなムードのまま、続く「AMAZE ME」では、佐野がウサギ耳ポーズで大きくジャンプ。メンバーらも次々と愛嬌を見せ、ステージにも会場にも笑顔があふれる。MCの盛り上がりを含め、MINIが喜ぶことに全力で応え、MINIの喜びを自分たちの喜びとする、心から楽しそうな姿だった。

「KILLING PART」より (C)LAPONE Entertainment

「疲れたら休んでもいい、皆さんが逃げてこれる場所になれば」という池﨑のあたたかな言葉から「Runaway」。11人が横並びで、ボーカルだけを届けるシンプルなステージ。エンディングのユニゾンが、心にしみわたる。さらに注目すべきは、同曲からのギャップ。シングルリード曲「Password」「CALL 119」は、ショーケースやツアーを通して明らかにライブ力が高まっていた。続く「Shooting Star」では、野太い煽りとのびやかなフェイクが交差する。ふと会場を見渡すと、みなが身体を揺らしていた。

「Runaway」より (C)LAPONE Entertainment

ウェーブで会場と一体となり、普段はストッパー役の許ですら収拾をつけられなかったにぎやかなMCから、またも雰囲気はガラリと一転。一体、何度の高低差に驚くのだろう。モノクロームのモニターで異色の存在を放つ「Dramatic」。高難度の楽曲も、彼らにとって楽しむ領域に達していた。現在大ヒット中のアルバム『Awekening』から、同じく人気曲「BAD BOYZ」へ。これら2曲はMVも制作されており、その完成度の高さに驚いたばかりだったが、短期間でさらにブラッシュアップし、自分たちのものとしていた。

ラストの曲を前に、興奮のあまりうまく言葉が出てこない西。「めちゃくちゃ僕たちも楽しませてもらってます、すみません」と笑った。鳴りやまぬ拍手にメンバーは目を丸くしたのち、愛おしそうに会場を見渡す。本編ラストは「SPECTRA」。INIの煽りに、ペンライトを大きく振ってMINIが応える。この日何度目かの、会場が一つになった瞬間だった。

アンコール1曲目は、INIのはじまりの曲「Let Me Fly〜その未来へ〜(INI Ver.)」。『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』のお披露目ではステージ上に立てなかった佐野が、日本武道館のステージでライトを浴びて笑顔いっぱいで歌い踊っていた。当時、レッスンにて苦戦した藤牧ものびのび踊り、目が合った許とともに飛び込むように抱き合った。全員が、本当に輝いていた。

(C)LAPONE Entertainment

最後の挨拶では、メンバー全員がMINIへのまっすぐな思いを言葉にした。全員が、MINIを「支えたい」という。今にも泣きそうな表情で「MINI〜!」と叫んだ松田は、両親への思いを言葉にしようとするといよいよ涙をこらえられず、「自慢の息子やろ!」と、泣きながら笑った。「一度はあきらめたけれど、もう一度チャレンジしてよかった」と藤牧。「1年通して、ずっとツアーをやりたい」と、名残の尽きない田島。「ありがとうございますしか言えない」と、木村も声を震わせる。「一昨年の6月13日に人生が変わった」と振り返る髙塚は、オーディション当時の葛藤を明かした。そして、この道を選んでよかったと。「みんな覚悟してINIになってます」と、涙ながらに思いの丈を語る西は、INIと引き換えに、それまでの自身の環境を「失っちゃった」と思ったこともあったという。しかし決してそうではなかったと気付きを共有した。そして、だからこそ本気で世界に行きたいと。MINIも含め「俺たちみんなチームだぜ」と、更なる高みを目指すとともに「一旦、ここに立たせてくれてマジでありがとう」と最後は笑顔でしめくくった。単身で来日し、孤独を感じないようにと思いながらも今なお、感じてしまうことがあると明かした許。そんな日々の中「もらってばかり」だと、「皆さんに与えていきたい」と、どこまでも謙虚で優しい言葉を紡いだ。

少ししんみりした空気を吹き飛ばすようなラストの曲は、とびっきりポジティブな「We Are」。何度も「大好きだよー!」と思いを伝えた。それでも、歌い終わってひとときの別れを告げるときには、メンバーたちの瞳から涙がこぼれる。同曲はファンによる撮影と拡散が許可されているため、ぜひツイッターで輝く笑顔を見てほしい。

終演後には、同ツアーの12月25日、東京・有明アリーナ公演を収録するBlu-ray DVDの発売が発表された。発売は2023年4月19日。INIにとって一度しかない「初」のアリーナツアーは、うれしいサプライズで幕を閉じた。

(C)LAPONE Entertainment

取材・文/新亜希子

公演情報

2022 INI 1ST ARENA LIVE TOUR [BREAK THE CODE]

2023年1月8日(日) 日本武道館

【セットリスト】
01. Rocketeer
02. Cardio
03. BOMBARDA
04. RUNWAY(INI Ver.)
05. ONE(INI Ver.)
06. Do What You Like
07. KILLING PART
08. AMAZE ME
09. Brighter
10. STRIDE
11. DANCE #1(ユニット曲:木村柾哉 / 後藤威尊 / 松田迅)
12. How are you(ユニット曲:池﨑理人 / 田島将吾 / 西洸人)
13. Mirror(ユニット曲:尾崎匠海 / 佐野雄大 / 許豊凡 / 髙塚大夢 / 藤牧京介)
14. Runaway
15. Password
16. CALL 119
17. Shooting Star
18. Dramatic
19. BAD BOYZ
20. SPECTRA

■アンコール
21. Let Me Fly~その未来へ~(INI Ver.)
22. We Are

リリース情報

Blu-ray&DVD『2022 INI 1ST ARENA LIVE TOUR [BREAK THE CODE]』

2023年4月19日(水) リリース

●初回生産限定盤(数量限定)
Blu-ray:6,050円(税込)
DVD:5,500円(税込)

●通常盤
Blu-ray:4,950円(税込)
DVD:4,400円(税込)

●FC限定盤
Blu-ray:7,150円(税込)
DVD:6,600円(税込)
※予約受付開始は後日発表

【収録内容】
2022年12月25日(日) に開催した東京・有明アリーナ公演を収録しており、1ST ALBUM『Awakening』収録曲を中心に、初披露曲やユニットによるパフォーマンスなど、全22曲を収録。