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「一生ついてこい! 助けてくれよ!」iKON、移籍後初のワールドツアーがスタート【写真17点】
PMC編集部
第97回

「2023 iKON WORLD TOUR TAKE OFF」より 撮影:上飯坂一
今年でデビュー8年目を迎えるiKONが5月5日・6日の韓国・ソウル公演を皮切りにワールドツアー「2023 iKON WORLD TOUR TAKE OFF」をスタート。5月26日・27日東京ガーデンシアター、7月8日(土)・9日(日) 丸善インテックアリーナ大阪でジャパンツアーを開催した。
iKONといえば昨年12月、YGエンターテインメントとの契約満了にともないメンバー全員で143エンターテインメントへ移籍したことでも話題になった。今回のツアーは移籍後初、日本単独公演としては昨年10月に開催された『iKON JAPAN TOUR 2022~FLASHBACK』追加公演以来、約7ヶ月ぶりとなる。
つまり、今回のワールドツアーは彼らにとって新しい船出となるもの。そのジャパンツアー初日、地震によってスタートが少々遅れたものの、会場の東京ガーデンシアターは高まる期待で開演前から熱気をはらんでいた。

待ちに待った公演は新曲「Tantara」からスタート。彼らのライブがいつもそうであるように、今回もバックバンドを従えてのステージだ。爆音とともにステージ上にかけられていたスクリーンが落ちると、宇宙服のようなシルバーのセットアップを着た彼らがステージ上に据えられた階段の上に登場する。「トーキョー、メイク・サム・ノイズ!」のシャウトで、会場のコンバット(iKONのペンライトで、バットの形をしている)が大きく揺れる。「まだまだいけるでしょう、みなさん!」というBOBBYの気合でスタートした「SINOSIJAK」では、会場のiKONIC(iKONのファンネーム)も一緒にサビでタイトルを大きく叫ぶ。昨年のツアーではできなかった声出しが解禁になって初めての単独公演なだけに、iKONICも思いっきり声をあげてはしゃぐ。BOBBYの超高速ラップで始まる「AT EASE」まで一気に畳みかけ、会場をiKONのムードに染め上げる。
MCを挟んでもその勢いは衰えず、「Dragon (THE PROOF Ver)」では緩急ある自由なダンスでiKONらしさを演出。ラスト、背を向けて右手を突き上げるポーズにはステージも生きざまもやんちゃだけど嘘がない彼らのカッコよさがにじみ出ていた。「KILLING ME」では別れた後の空しさを哀切なまでに表現し、感情表現という点でもiKONが優れたアーティストであることを証明してみせる。切ないメロディと歌詞だがどこか激しさを抱えたこの曲の後には一転、「RHYTHM TA」で会場の全員をリズムとビートの渦に巻き込んでいく。続く「BLING BLING」でも勢いはそのまま、緩やかなメロディで始まったと思ったらあっという間にラップの波に飲まれ、会場を飛び交うレーザー光線と、サビでリフレインされる「輝け」の大合唱に、会場は一種のトランス状態のような一体感に包まれた。あまりの盛り上がりにSONGの靴底が剥がれてしまい、「本当にがんばりました!」とドヤる一幕も。

MCでは最終回を迎えたドラマ『ボラ!デボラ〜恋にはいつでも本気〜』に出演しているJU-NEが「昨日、結婚しました」とドラマの中で結婚したことを報告。「じゃあここでも『結婚しよう』って言って」とJAYがおねだりすると、JU-NEは少々やけっぱちなテンションで「結婚しよう!」と赤いマイクを花に見立てて差し出し、プロポーズの真似をしてみせた。BOBBYはソロアルバムができたことを報告しつつ「たくさん聴いてください、助けてくださいね!」と笑顔を見せた。また、先日ソロライブツアーが終わったばかりだが、11月にも再びソロコンサートが予定されていることもちゃっかり宣伝。



移籍した新事務所についても言及。「143エンターテインメントはどうですか?」とBOBBYに水を向けられると、DKは「いいじゃん!」とにっこり。「新しいコンバットも作ったし、こんなにいいワールドツアーができたし、俺たちの新しいアルバムもできたし、最高です」と満足げ。さらに、BOBBYに続いてJAYも個人ファンクラブが開設されたことを受けて、プロンプターには「僕も入ってもいい? JAYのこともっと知りたいな」と書かれていたそうなのだが、JU-NEは「十分知ってますよ! もっと知ることはない」と断言。「僕はJAYさんが居酒屋に入ったら何を頼むかも知ってます」と誰よりもJAYのことを知っていることをアピールした。

「iKONの曲ってみんなで歌える曲が多いけど、みんなで歌ってみたらどうかな」というJAYの提案で、会場の大合唱で始まった「LOVE SCENARIO」にはじまり、iKONの楽曲中もっとも明るくスウィートな「BUT YOU」、そして新曲「U」ではごきげんなEDMサウンドに乗せて弾けるダンスを見せて、“陽キャ”なパリピソングで会場を盛り上げるが、一連の盛り上がり曲が終わると、ステージに残されたBOBBYとCHANは口々に「ちょっと座ろうか」「僕たちもうすぐ30代ですよ」「休み時間が必要だよ」とぶつぶつ言いながらも、とあるゲームをすることに。実はこのツアーから新型コンバット(ペンライト)が導入され、遠隔操作でさまざまな色に変化するようになったのだが、せっかくなので2人が胸キュンな台詞を言って、反応がよかったメンバーの希望の色に変えてもらおうというもの。「コンサートが終わったら僕とラーメン食べに行く?」と投げキッスしたCHANに対して、BOBBYは「君が大好きです! 一生ついてこい! 助けてくれよ!」と最後は正座しながら冗談とも本気ともつかない言葉で客席のiKONICのハートをつかみ、コンバットは見事BOBBYの希望カラーである紫に変化。負けたCHANはステージを端から端まで走って、ウェーブを起こしていた。

その後はメンバーのソロステージへ。JAYがリアーナの「Love on the brain」をしっとりと歌い上げたかと思えば、DKは白いサテンのシャツに黒いタイをゆるく締め、「KISS ME」で大人の男の色香を振りまく。首元を指でおさえる振り付けはキスを表現しているそうで、その後のMCでメンバーが踊ってみせていた。続くJU-NEはエレキギターを弾きながら、「WANT YOU BACK」を彼特有の少しハスキーだがあたたかみのある声で披露。実はこのステージでギターは弾いているものの音は出していないと後のMCで暴露してメンバーからは非難轟々だったが、本当にちゃんと弾ける!とバックバンドのギターを借りて弾いてみせていた。ソロステージのラストはSONGの「ウラチャチャ」! 赤いスパンコールがきらめく演歌歌手のようなジャケットを着て、スクリーンには巨大なミラーボールが輝くなか、トロット(韓国の演歌)調の楽曲を歌い、踊る様はまさにショー。ラストは客席も一緒になって歌い上げ、もはやiKONのライブには欠かせないステージになっているくらい、盛り上がりを見せた。

ライブもいよいよラストスパートへ。「WHAT’S WRONG?」から「DUMB & DUMBER」、そして「B-DAY」までの流れはiKONがもっとも得意とするライブパート。彼らがライブ巧者と称されるのは、パフォーマンスや世界観で圧倒するのではなく、客席と真正面から向き合って、観客の感情を最大限に引き出して、一緒になってジャンプして、ライブを作り上げていくから。だからこそ彼らのライブの一体感は半端ないし、とことん楽しいと思わせてくれるのだろう。客席も力の限り叫び、飛び跳ねて一緒になってライブを盛り上げる。最後にはどんどん疾走感を増していくライブ定番曲「FREEDOM」でひとしきり暴れた後、風のように去っていった。

アンコールでは観客が「LOVE SCENARIO」をアカペラで歌い、メンバーの再登場を待つサプライズも。ラップパートもしっかり歌い上げるiKONICのスキルにメンバーもうれしそうにステージに登場し、「全部聴いてたよ」「感動しました」と感謝を伝えた。「パーティしよう、めちゃくちゃにしようぜ!」「みんなジャンプ!」と言って始まった「B-DAY」は本編よりさらに熱く盛り上がり、「RHYTHM TA」と「LOVE SCENARIO」ではSONGとDKがステージを降りてアリーナ席の観客と一緒にハイタッチしたり、ハートを作ったりで、客席は大興奮。そしていよいよ最後の曲へ……というところで、JAYのズボンが裂けるというハプニングが。最後を思いっきり楽しむためにも着替えてきたい、というJAYのため、急遽SONGのソロ曲「ウラチャチャ」をここで再度歌うことに。急なハプニングではあるものの、自然と一番盛り上がる曲をセレクトするメンバー、すぐさまスクリーンに字幕とミラーボールを映し出すスタッフ、そしてしれっと2番を歌い出すJAYなど、柔軟な対応のおかげでハプニングがミラクルへと変わった瞬間だった。そして満を持して最後の曲「Tantara」へ。この日、ステージを飾ったダンサーたちもステージに登場し、ライブのフィナーレを盛り上げた。
久しぶりに声出しが解禁されて気持ちよさそうに叫び、歌ったiKONICたちと、そんなファンをうれしそうに、慈しむような目で見ていたiKON。「愛してると言っても過言ではない」というJU-NE、「本当に会いたかったです。たくさん来てくれてありがとう」としみじみ語ったDK、「いつも言ってるけど、みなさんがいてくれるから僕たちがいるし、僕たち6人で1人も抜けずにいることができたと思います」と涙ぐんだJAY、「いろんな変化の中であったコンサートなのに忘れずに来てくださってありがとうございます」と感謝を伝えたSONG、「事務所は変わったけどこんなにたくさん愛をもらって僕は本当に幸せな人です」と笑顔で語ったCHANと、メンバーそれぞれiKONICへの感謝の気持ちを伝えていた。最後にBOBBYは「いつも僕は『助かります』と言うけど、冗談ではないんです。俺たちの大変な現実からみなさんが助けてくれています。みなさんがいらっしゃって本当に幸せです。ずっと助けてくださいね」と、お得意の「助かります」を連呼して、JAYに「流行語にしたいの?」とツッコまれていたが、その気持ちに偽りはないはず。新たな船出をこれ以上ないライブでスタートを切った彼ら。事務所は変わっても、ライブでの一体感も盛り上がりも、メンバーの関係性もファンとの距離感も、何ひとつ変わらずいてくれたことを確信した夜だった。

取材・文=尹秀姫
撮影=上飯坂一
<公演情報>
「2023 iKON WORLD TOUR TAKE OFF」
5月26日(金)・27日(土) 東京・TOKYO GARDEN THEATER
【セットリスト】
OPENING VCR
01. Tantara(新曲)
02. SINOSIJAK
03. AT EASE
04. Dragon(THE PROOF Ver)
05. KILLING ME
06. RHYTHM TA
07. BLING BLING
08. LOVE SCENARIO
09. BUT YOU
10. U(新曲)
11. Love on the brain(JAY)
12. KISS ME(DK)
13. WANT YOU BACK(JU-NE)
14. ウラチャチャ(SONG)
15. Why Why Why+like a movie
16. GOODBYE ROAD
17. WHAT'S WRONG?
18. DUMB & DUMBER
19. B-DAY
20. FREEDOM
■ENCORE
21. Driving slowly(新曲)
22. B-DAY
23. RHYTHM TA
24. LOVE SCENARIO
25. Tantara(新曲)
<ライブ情報>
「2023 iKON WORLD TOUR TAKE OFF」
7月8日(土)・9 日(日) 丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)