音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画
Absolute area、未来に向けてもっと高く飛び立つ! メジャーデビュー決定を発表したワンマンレポ
PMC編集部
第99回

撮影:北村勇祐
Absolute areaが6月3日、バンド史上最大規模となる東京・EX THEATER ROPPPONGIでのワンマンライブ「Absolute area One Man Live 2023“Fly High〜未来への滑走路〜”」を開催した。
昨年12月に3rdミニアルバム『Future』をリリースしたバンドにとって、まさにこの先進むべき地への大事な道標となるライブ。アンコールでは今秋avexからデビューすることが発表され、まさに大きな未来へと乗り出していく瞬間のステージとなったわけだが、この日を分かち合った観客に後々まで誇れるような、晴れやかで、気概に満ちたパフォーマンスを観せた夜となった。
SEが会場に鳴り響く中、幕が上がると、都会のビル群を背景にしたステージが照明に浮かび上がる。フロアからは手拍子が巻き起こり、山口諒也(Vo/G)、萩原知也(B)、高橋響(Dr)、そしてサポートの坂本夏樹(G)、鮎京春輝(Key)が登場し、まずは伸びやかな山口のボーカルが冴える「ひと夏の君へ」からライブはスタートした。しっかりと絡み合った5人のアンサンブルがサウンドのスピードを上げて爽快な風を吹かせると、観客の手もおのずと高く上がっていく。

最高の滑り出しに山口も思わず高くギターを掲げると、続く「遠い春の夢」ではハンドマイクでステージを歩き、観客に語りかけるように歌う。萩原と高橋は笑顔でアイコンタクトしながら、心地よくはずむビートを紡ぐ。続く「マイナスの要素たち」とともに、キラキラとしたビートやフレーズが切なさや陰りある気持ちを拭って、山口のハイトーンが視界をクリアにしてくれる。Absolute areaの真骨頂たる曲が連投され、冒頭から会場の熱も高い。
この日を楽しみにしてきたことを告げ、最後までみんなと盛り上がりたいと挨拶をすると、続いてはソリッドなロックンロール「ビニール傘」にはじまり、また山口がエレキをアコギに持ち替え「70cm」へと続く。軽やかなアコギの音色と鍵盤、控えめながらメロディの輪郭を際立てるベースやドラムのアンサンブルに、歌心が映える。地声からファルセットまでブレのないボーカルと、歌詞・言葉を濁りなく伝える歌を最大限で聴かせるバンドアンサンブルや、5人の呼吸感がいい。ゆったりとしたバラードでは、このバンド感がさらなる威力を発揮する。

現在YouTubeで840万回再生を超える切ないはなむけの歌「遠くまで行く君に」、そして『Future』収録の「橋を越えれば」が、ひと続きの物語のようにどこか懐かしく甘酸っぱい心の情景を編み上げていく。曲の終わりには、静かに歌の行方を聴き入っていた観客から大きな拍手が上がった。
また中盤では新曲を1曲披露。幸せだったときを後悔交じりで振り返るトーチソングで、ふと湧き上がる寂しさ、鼻の奥がツンと刺激されるような空気を描く。このチクリと胸を刺す心情をもさらりと音に乗せるのもまた、Absolute areaだ。

そして、続く「Girl」「無限シナリオ」ではステージ後方に据えられたミラーボールがフロアにまばゆい光を降り注いで、高揚感のあるサウンドと光の渦で会場を包み込んでいった。光のシャワーが呼ぶ恍惚感と、ぐんぐんとパワフルになっていくアンサンブルの爆発感に、観客の手が高く上がっていく。一体感が高まったところで「useless days」がキャッチーに響く。
山口は今回のワンマンのタイトル「(Absolute area One Man Live 2023)“Fly High〜未来への滑走路〜”」について、そしてバンドについて、未来に向けもっともっと高く、飛び立っていけるようにという思いを込めたと語り、がんばるので応援してほしいと、この場にいる人たちと約束をするようにMCで語った。後半は新曲をもう1曲、前向きな曲を演奏。すぐにでも口ずさめるキャッチーなメロディラインと疾走感のあるサウンドが眩しい。
その躍動感かそのまま、「いくつになっても」でバンドと観客の鼓動を大きくして行き、ラストは再び山口がハンドマイクを持って「僕が最後に選ぶ人」をプレイ。結婚をテーマにし、MVも結婚式場・チャペルを舞台にした「僕が最後に選ぶ人」。しかし、この日ここで歌われた「僕が最後に選ぶ人」は、これまでも応援してくれたファン、観客と共にこれからも歩んでいくこと、誰もおいていくことなく未来に進んでいくことを誓う、多幸感であふれた曲となった。

フロアから“アブソ”コールが起こったアンコールではまず、山口とサポートの坂本・鮎京という3人の編成で、今年5月にニューアレンジで配信リリースした「発車標-2023 ver.」を披露。山口の歌、シンプルな構成でAbsolute areaのソングライティングの魅力をダイレクトに聴かせた。
そして萩原と高橋を呼び込むと、改めて今日を迎えた喜びを語り合う。萩原は「楽しかったー!」と笑顔を爆発させ「言いたいことがあったけどそれが吹っ飛んでしまうくらい楽しくて、ここに立たないとわからない思いがたくさんあった」と言う。高橋は「新曲も、“無限シナリオ”とか数年ぶりに演奏する曲もあって、やっていて楽しかった。こういう景色をこれから何度も見れるようにがんばる」と語った。また山口は「前にある子から、私の言葉では励みにならないかもしれないけれど……というDMをもらったんだけど、そんなことない、いつもみんなに励まされてます。ここにいるみんなや、聴いてくれる人がいないと自分一人では何ひとつなしえない。すべてが僕の心の励みになっている」と語る。
この日は前日の台風による交通機関の乱れがあり、地方から来場できなかった観客もいたようだ。そんな人へも届けるように、一人一人に語りかけていった。そして秋にavexから作品をリリースするというサプライズの発表もあり、来たるこれからの思いを「ドラマティックサマー」に、そして「いつか忘れてしまっても」で大きなシンガロングを巻き起こして、未来への大きな布石となるワンマン「”Fly High〜未来への滑走路〜“」を締めくくった。

取材・文:吉羽さおり 撮影:北村勇祐
<ライブ情報>
「7秒とロック」
6月11日(日) 下北沢各ライブ会場
「NEWST CONCEPT vol.1」
6月29日(木) 渋⾕Milkyway
「Laughing Hick Club upset presents Voyager」
6月30日(金) 名古屋CLUB UPSET
「Funolic Lv.1」
7月12日(水) クラブチッタ川崎
「LIVEHOLIC 8th Anniversaryseries〜君と紡ぐ物語〜」
7月15日(土) 下北沢LIVEHOLIC
「SUMMER SONIC 2023」
8月20日(日) 幕張メッセ
※SONIC STAGEに出演予定
「TOKYO CALLING2023」
9月16日〜18日新宿・下北沢・渋谷各ライブ会場