『PMC Vol.28』にもインタビューを掲載中のtonun。自身のルーツから1stアルバム『Intro』について語ってもらったが、6月24日、東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)にてアルバムリリースを記念したワンマンライブを開催。本稿ではそのライブレポートを届ける。
今年2月、シングル「Friday Night」でメジャーデビューし、6月には1stアルバム『Intro』をリリースしたシンガーソングライターtonunが6月24日に、アルバムのリリース記念ワンマンライブを開催した。待望の1stアルバムを携えてのワンマンということで、会場となったZepp Shinjuku(TOKYO)には多くの人が詰めかけた。
フロアを占めるのは、見たところtonunと同世代の20代から、その上の世代の音楽ファンまでと幅広い。日常にさりげなく寄り添って、心地よく体温を上げてくれるメロウでグルービーなサウンドのキャッチーさもさることながら、その音楽の下地にはジャズやブルースが香り、洒脱な余韻を残す。このレイヤーが多彩な音楽ファンの心をとらえているのだろう。さらに、声出しが解禁となったワンマンということで、とにかく待ってましたとばかりに観客の熱量が大きい。
SEの流れる中、ドラム、ベース、ギター、キーボードのバンドメンバーに続いて、爽やかな白のセットアップ姿のtonunがステージに登場すると大きな拍手が起こり、1曲目「rendez-vous」から拍手が手拍子に変わり、観客は歓声混じりで気持ちよくビートに乗っていった。
軽い挨拶の後、続く「東京cruisin’」ではスモーキーなボーカルを響かせ、軽やかにフェイクを決める歌で魅せ、「バージンヘア」ではギターを手にしカッティングでグルーブを生み出すと、ブリージーなバンドアンサンブルで風を起こす。スタンドマイクの前に立ち歌う姿と、ギターをプレイする姿がまた一味違って雰囲気がある。ファイバリットにジョン・メイヤーを挙げるのも納得で、色っぽさが漂う感じだ(MCでは人懐っこさ全開の笑顔を見せてくれるが)。
「改めまして、1stアルバムリリースパーティにお越しいただきありがとうございます。すごい人の数!」とフロアの後ろのほうを眺めると「楽しんでますか」と笑顔をのぞかせるtonun。「初めてtonunのライブを観るという人も、今日は最高のグルーブを届けるので自由に体を動かしていってください」と言うと、ここからアルバム『Intro』から「eyes」「真夏の恋は気まぐれ」「君は言うかな」を連投。「eyes」ではさりげなくポケットに手を入れてリズミカルにメロディを紡いだり、ブルーのライティングがまぶしいサマーチューン「真夏の恋は気まぐれ」では気だるく甘美な歌声が冴える。ボサノバ的なドラムビートに乗せて、語りかけるように歌う「君は言うかな」では、哀愁感たっぷりのギターソロを披露して歓声を巻き起こしていく。
熱気が満ちるフロアに「飛ばしちゃったけど、大丈夫かな?」と声をかけると、中盤はちょっとクールダウンするように、インディーズ時代の2曲を弾き語りで披露した。ステージの真ん中に据えられた椅子に腰をかけて、助走するように軽やかなタッチでギターを爪弾くとファンキーにギターを刻んで、「思考回路はmellow」を聴かせる。ソロとして音楽をはじめたころから、一番なじみのあるスタイルがこの弾き語りだけに、とてもリラックスしてギターを楽しみ、歌を口ずさんでいるように見える。曲もまたギター1本でのシンプルなアレンジでも聴きごたえあるもので、続く「あなたの季節が」では繊細なギターフレーズでささやくようなボーカルを引き立てる。静かに聴き入る観客を、歌がエモーショナルに包んでいくブロックとなった。
そして後半は再びバンドを交え、新旧の曲を織り交ぜながらまた徐々に会場内の温度を引っ張り上げていく。スロウなビートで切なさの琴線を揺らしていく「嘘寝」から、「Sweet My Lady」「d.s.m」とメンバー紹介を交えながら厚みのあるバンドアンサンブルで観客をジャンプさせていくと、「まだいけますか?」とtonunサウンドがより華やかに躍動的に色づいていくきっかけとなった曲「Sugar Magic」へと突入する。
ホーンセクションやシンセをフィーチャーした、カラフルでキャッチーなサウンドとグルービーに加速していく歌は、大きな会場にとてもよく似合う。華麗なドラムの見せ場でもショーアップして、歓声を上昇させていくと、「今日はサタデーナイトだけど、いこうか!」とメジャーデビュー曲となった「Friday Night」の小気味いいギターカッティングで、観客をダンスさせる。ミラーボールがきらめいて黄金色の光がフロアに降り注ぐと、観客の手が上がって、ファンキーな音を全身で浴びるようにジャンプし、ステップを踏む。街中やドライブにぴったりな曲だが、ライブでは多幸感たっぷりに一体感を巻き起こせる曲だと再確認する。
そして本編ラストとなったのが、「気持ちの糸」。「あっという間にラストです」と言うtonunの言葉に、観客は「いやだ!」と声を挙げる。「もう曲がないです」と笑うtonunに、「まだあるよ」と観客が返したりと、なんともフレンドリーな空間が居心地がいい。メロウな鍵盤から、柔らかなピンスポットのもとで歌いはじめた「気持ちの糸」は、ひとりひとりに語りかける親密さで響く。終わりの切なさを感じさせながらも、あたたかな歌心がすっと胸に染み込んでいく。この後アンコールに立ち、アルバム『Intro』収録曲はすべて披露し、ワンマンライブを終えたtonun。時間としては短いようにも思えたライブだったが、濃密で、それでいてこの先さらに広がっていくtonunの音楽の期待感や余白に高揚感を覚える、はじまりの夜にもなった。
取材・文:吉羽さおり 撮影:鳥居洋介
tonun「1st Full AL Release Party『One-man Live』」
2023.6.24 東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)
SET LIST
01. rendez-vous
02. 東京cruisin'
03. バージンヘア
04. eyes
05. 真夏の恋は気まぐれ
06. 君は言うかな
07. 思考回路はmellow
08. あなたの季節が
09. 嘘寝
10. Sweet My Lady
11. d.s.m
12. Sugar Magic
13. Friday Night
14. 気持ちの糸
ENCORE
15. how many times
16. merry-go-round
17. 琥珀色の素肌
tonun
1st ALBUM『Intro』
https://tonun1.lnk.to/Intro
EVENT info.
7.16「CORONA SUNSETS FESTIVAL 2023」沖縄・豊崎海浜公園
7.23「NUMBER SHOT 2023」福岡・福岡PayPayドーム、Zepp FUKUOKA
8.19「SUMMER SONIC 2023 OSAKA」大阪・舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
8.20「SUMMER SONIC 2023 TOKYO」東京・ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
8.26「SWEET LOVE SHOWER 2023」山梨・山中湖交流プラザ きらら