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音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画

サマソニ前夜の「SONICMANIA」に、FLYING LOTUS、JAMES BLAKEほか、山口一郎主宰の「NF」、Perfume、ずっと真夜中でいいのに。らが出演!

PMC編集部

第110回

FLYING LOTUS

「SUMMER SONIC 2023」前夜祭とも言うべきオールナイトの屋内大型エレクトロフェス「SONICMANIA」(以下、ソニマニ)が、8月18日夜から翌日早朝にかけて千葉・幕張メッセで開催された。会場内には「MOUNTAIN/SONIC/PACIFIC」という恒例の3ステージに加え、サカナクション山口一郎がオーガナイザーを務めるクラブイベント「NF」がソニマニ内でスペシャル開催。特設ステージ「NF in SONICMANIA」を加えた計4つのエリアで、音楽性はもちろん、サウンドへのこだわりを強く持つ、実にサマソニらしいラインナップの国内外のアーティストが一堂に会し、一期一会の夜を作り出した。

全体のオープニングを飾ったのは、「出れんの!? サマソニ!?2023」枠からの選出となった5人組ミクスチャーバンド、鋭児。強力な攻撃性と妖艶さをも併せ持つサウンドでPACIFIC STAGEを一気にヒートアップさせると、一方のSONIC STAGEはLEO(箏)のパフォーマンスからスタート。チェロとDJを従えて織りなすオリエンタルなダンスグルーブで、坂本龍一の名曲「Merry Christmas Mr. Lawrence」などを演奏した。

LEO(箏)

ここからは注目のアーティストをピックアップして紹介していこう。まずは、どんぐりず。既に数多くのフェスに出演し、まさにこの日、東南アジア最大級の音楽フェス「BIG MOUNTAIN MUSIC FESTIVAL 13」への出演決定が発表されるなど話題沸騰中の彼らだが、今回は「NO WAY」「Funky Grandma」などの人気曲を披露しつつ、全体的に原曲のポップさ以上にソニマニ仕様にチューンナップされたエレクトロ感強めのテイストで、どんぐりず流ダンスミュージックを確立。もともと評価の高かったライブパフォーマンスを今回のソニマニで大きくアップデートさせた彼ら。ますます今後の活動から目が離せない存在となったと言える。

どんぐりず

ほぼ同時間帯にMOUNTAIN STAGEに立ったPerfumeは、まさに圧巻の貫禄。テクノミュージックとしても、J-POP、そしてアイドルとしても超一級品のライブで観客を魅了し、MOUNTAIN STAGE唯一の日本人アーティストとして非の打ちどころがない風格を感じさせるパフォーマンスであった。

Perfume

GRIMESはステージ前方にも紗幕を下ろし、自身のDJセットとダンサーの前後に映像を映し出すという幻想的な演出が印象的。Novel Core & THE WILL RABBITSは、エッジの効いたバンドサウンドをバックに、芯が強く、同時に色気もあるNovel Coreのボーカルが冴えわたっていた。

GRIMES
Novel Core & THE WILL RABBITS

そして今回、ひときわ話題を集めた“ずとまよ”こと、ずっと真夜中でいいのに。は、22時すぎにSONIC STAGEに登場。サウンドチェック段階でエリア後方まで大勢の観客が集まり、歓声が上がる注目アクトとなった。まず目を引いたのはバンド編成。ドラム、ベース、ギター、キーボード、ホーンセクション2名の実力派プレイヤーに、オープンリールを操るメンバーやブラウン管テレビを改造したパーカッションを加えた、ポップ性とアート性をミックスした大所帯で、そのサウンドは衝撃的。ACAね自身も、改造扇風機の“光”をセンサーでキャッチし音を鳴らす扇風琴などをプレイしていたが、こうした直接的に伝わるユニークかつ斬新なサウンドアプローチだけでなく、楽曲の深層にある個性的なメロディと、それを歌うナイーブさとある種の狂気が紙一重で存在した彼女ならでは表現力で、ずとまよ独自の世界観をステージで爆発させ、ソニマニ仕様とも言うべきアレンジとも相まって、強烈なインパクトを残したステージであった。

時を同じくしてMOUNTAIN STAGEで繰り広げられていたのは、世界的トップアーティストの超豪華リレーだ。6弦ベースの超絶プレイをエフェクティブなサウンドメイク術で彩り、ベースという楽器で、ジャズやヒップホップなど多彩な音楽性をジャンルレスに拡張し続けるTHUNDERCATは、自身のロゴをあしらった和服姿でステージへ。「How Sway」や「No More Lies」など代表曲でフロアを沸かせつつ、坂本龍一への追悼として「A Message for Austin」(坂本の楽曲「El Mar Mediterrani」を用いて作られたAUSTIN PERALTへの追悼曲)、そして坂本の代表曲「Thousand Knives」をプレイ。ラストは親日家である彼らしく「Tokyo」で締めくくった。

THUNDERCAT

続くFLYING LOTUSは、コンクリート製のフロアが振動するほどの重低音を轟かせる。すると観客は、その大きな音の波に身体を委ねゆらゆらと踊りだす。その波動にビートが重なると一斉に大歓声が上がり、否応なしにコズミックでスピリチュアルなサウンドに陶酔してく。そしてラスト2曲、「Dragonball Durag」と「Them Changes」ではTHUNDERCATがステージに飛び入りするというサプライズ共演が実現。ヒップホップ50周年という記念すべき年に開催された「SONICMANIA」にとって、間違いなく一つのクライマックスとなった。

深夜24時を回ってもソニマニのエネルギーはとどまるところを知らず、電気グルーヴは「人間大統領」「Shangri-La」「ガリガリ君」「N.O.」など怒涛の勢いでヒット曲を連発。ギターを加えた生感の強い演奏で、切れ味を増したグルーブがフロアを熱狂させる。そんな中でも「Fallin' Down」のようなメロディの良さをしっかりと届けるあたりはさすがのひと言だ。

電気グルーヴ

AUTECHREはフロアの四方を暗幕で囲み、暗闇の中で轟音ノイズのカオスな世界観を作り出し、JAMES BLAKEは、自身のシンセサイザーに加えてメンバーもエレクトリックドラムやモジュラーシンセをプレイし、新旧織り交ぜたセットリストを披露。彼独特の穏やかな歌声で神々しい空間を生み出していた。DJセットをプレイしながらパーカッションを叩き会場を深夜のダンスフロアへと変貌させたMURA MASA、光るスーツをまとい未来感と人間味あふれるユーモアで踊る楽しさを体現したTHE STICKMEN PROJECTに続き、28時(早朝4時)、NFのステージに山口一郎が姿を現した。

THE STICKMEN PROJECT

「NF」とはサカナクション山口が2015年より主宰する、音楽×ファッション×テクノロジーを融合したクラブイベント。不定期に開催しているが、サマソニ2023でのNF開催にはぜひ触れておきたいストーリーがある。コロナ禍でも止まることなく積極的に活動し続けてきた山口は、昨年6月に体調を崩し、サカナクションは活動休止を余儀なくされた。サマソニ2022にラインナップされながらも、無念の出演キャンセル。しかし彼とバンドは約1年間の静養を経て少しずつ活動を再開し、今年6月にNFツアー「NF#15 NF1ROOM」を行い、久々に山口はファンの前に。こうした1年間を経て行われた「NF in SONICMANIA」は、約8時間におよぶ格別なパーティとなった。

NFのステージには、サカナクションのメンバーである江島啓一や、Perfumeやサカナクションのライブ映像演出を手がける真鍋大度(Rhizomatiks)、NFでお馴染みのShotaro Aoyama、YonYonらが出演。山口と親交の深い札幌のマエストロKuniyuki Takahashiがリミックスするサカナクション「ナイロンの糸」を受け継いでDJブースに立った山口。開口一番、「まだまだ踊れる?」とフロアに呼びかけ、NFのトリ、そして同時にソニマニ全体を締めくくるに相応しいダンスビートを鳴らし続けた。

幾度となくフロアを煽り、終始笑顔で約1時間のDJパフォーマンスを終えた山口は、一旦は大きな拍手を浴びるも、「もう1曲踊る?」。そして彼が歌いはじめたのは、NF定番曲「聴きたかったダンスミュージック、リキッドルームに」だった。NF出演者が全員ステージに集い、会場全体が笑顔に包まれる中、エンディングで山口は「みんなまた会いましょう。サカナクション、来年春復活します!」と声高らかに宣言。会場に残っていたほぼ全ての観客たちが集結したフロアからは大歓声が沸き起こり、2023年のソニマニはピースフルにフィナーレを迎えた。

Text:布施雄一郎

▼8.18 「SONICMANIA」千葉・幕張メッセ

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