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音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画

BABYMETALが主催する「FOX_FEST」。世界のどこにもない新たなメタルフェスをレポ!

PMC編集部

第171回

BABYMETAL (撮影:Taku Fujii)

BABYMETALによる主催フェス「FOX_FEST」が、5月25日と26日の2日間にわたって、埼玉・さいたまスーパーアリーナにて開催された。

出演者はBABYMETAL、ELECTRIC CALLBOY、POLYPHIA、Bilmuri、METALVERSE(Guest Band ASTERISM)の5組。一般的に思い浮かべるフェスからするとアクト数は少なめだが、あちこち移動することなく1組1組のライブをじっくりと堪能できたことを考えると、この形でもフェスとしてしっかり成立するとよくわかったし、何よりメタルという音楽が非常に幅広く、とても楽しい音楽だということを改めて示してくれたという点でかなり意義のあるフェスであり、メタルの入口としても十分に機能する2日間だった。

自分は2日目に参加した。会場に入ると、アリーナ内ではDJによる音楽が流れていたのだが、この時点からすでに普通のメタルフェスとは違っていた。もちろん、選曲のベースはメタル。しかし、その合間にサカナクション「新宝島」やマルーン5の曲が普通にプレイされていた。こんなところからも「FOX_FEST」の従来の型にはまらない自由な雰囲気が演出されていたと言える。

開演時間の14時半直前になると出演者の紹介があり、定刻にOPENING ACTとして赤子金属が登場。赤子金属を英訳するとBABYMETAL。そう、ステージに登場したのは彼女たちだった。3人は「メギツネ」のリミックスバージョンをパフォーマンスしたのだが、誰もマイクは持たず、ダンスに専念。披露したのは1曲のみだが、それはすごく新鮮な光景だった。

ゲストバンドのASTERISMを従えたMETALVERSEが現れ、いよいよ本編のスタート。METALVERSE初のメタルフェスという大舞台にもかかわらず、20分間にわたって物怖じしないパフォーマンスを見せつけた。1曲目「Crazy J」で定番のコールアンドレスポンスを交わした際にはフロアの奥のほうまでリアクションがあり、彼女たちの存在が浸透していることが伝わった。Official髭男dism「Cry Baby」をカバーするという予想外の展開(1日目はLiSA「紅蓮華」)のあとは、ASTERISMのソロコーナーやMETALVERSEメンバーのダンスソロも盛り込み、魅力をギュッと凝縮。爽やかにステージをあとにした。

METALVERSE(撮影:Taichi Nishimaki)
(撮影:Taichi Nishimaki)

ギター、ドラム、アルトサックスという珍しい編成のバンドで登場したBilmuriは、元Attack Attack!のJohnny Franckによるソロプロジェクトだ。Bilmuriの音楽性は非常に多様でポストハードコアやメタルコアなどはじめ、さまざまな要素を感じさせるが、Franckによる甘いボーカルやキャッチーなメロディの力もあり、ジャンルにそこまで詳しくない人にとっては「一風変わったポップス」として響いてもおかしくない。自分も、ノーマルなメタルフェスで彼の音楽に出会っていたらきっととまどっただろうし、まっすぐに受け止め切れなかった可能性が高い。

Bilmuri(撮影:Taichi Nishimaki)

しかし、「FOX_FEST」という場所だったからこそ、Bilmuriの何たるかを比較的よく理解できたんだと思う。彼は、「こうして日本にいられるのはこれまでで最高な瞬間だ!」とMCで喜びをあらわにするなど、親日家っぷりを存分に見せつけたこともあり、この2日間で多くの新規ファンを獲得したのではないだろうか。しかし、振り返ってみればそれはBilmuriに限った話ではなかった。

(撮影:Taichi Nishimaki)

インストバンドPOLYPHIAが残したインパクトも相当なものだった。あらゆる技巧を尽くした演奏はもちろん素晴らしかったのだが、演奏技術だけに頼らず、MCで観客をあおりまくるのがよかった。ギタリストScott LePageは、「みんなの内にあるエネルギーを世界に向けて放出しろ! みんなの安全を守るセキュリティもこれだけいるからクラウドサーフしてこい!」とフロアへ呼びかけ、クラウドサーファーが10人に達したところで「Goose」を演奏しはじめた。その後、彼が発した「曲がはじまってもサーフを続けろ! これがPOLYPHIAのショーだ!」のひと言には演奏と同様にしびれた。

POLYPHIA(撮影:Taichi Nishimaki)

「Champagne」では「リフを歌うゲームをしよう!」とギターリフとのコールアンドレスポンスを繰り広げるなど、とにかく盛り上げ方がうまい。ひたすら五十音を言い続ける「ABC」のように日本人にとってかなりインパクトのある楽曲もあったのだが、インストバンドのイメージを覆すような熱量やTim Hensonの美貌など、見どころの多さにただただ圧倒された。POLYPHIAのライブがすごいという話は事前に聞かされていたが、実際に観て納得した。なるほど、これは本当にすごい。

(撮影:Taichi Nishimaki)

そして、BABYMETALの登場前にフロアの興奮をかっさらったのはELECTRIC CALLBOYだった。実は、彼らとBABYMETALは2015年にドイツ・ミュンヘンで開催されたフェス「ROCKAVARIA」でニアミスしている。BABYMETALは初日のセカンドステージに出演、ELECTRIC CALLBOYは3日目のサードステージのトリを飾っていて、自分はこのときに両者のライブを観ている。ELECTRIC CALLBOYはなんだかよくわかんないけどとにかく活きがいいという印象で、実際かなり盛り上がっていた。あれから10年近い時を経て日本で体験した彼らのパフォーマンスは極上のエンタメの域に達していた。

ELECTRIC CALLBOY(撮影:Taichi Nishimaki)

ライブ冒頭の映像では女性添乗員が現れ、「大人しく立っていることは厳しく禁止されてます」などの注意事項を伝えたあと、「ELECTRIC CALLBOYがステージに登場します」「テクノの時間です」とアナウンスし、6人のメンバーが登場。ここから最後まで数々のライブを経て完成されたフォーマットで駆け抜けていくのだが、頻繁な衣装チェンジ(かつら含む)を含み、まったくスキがない。それでいながらしっかり曲紹介はするし、ウォールオブデスもあおる。さらに、ドイツらしいエレクトロビートを効かせたサウンドはとにかくキャッチーで、特に「Hypa Hypa」のイントロはこの日最も観客の耳にこびりついた1節だったはず。

(撮影:Taichi Nishimaki)

これだけクセの強いバンドのあとでも全く見劣りしないのが今のBABYMETALのすごいところで、オープニングムービーが流れはじめるとすぐにBABYMETALの空間へと切り替わる。最初に披露したのは「BABYMETAL DEATH」だ。ステージ上にはステージの3分の2ほどを占める幅の2階ステージが設置され、3人はそこから登場した。

BABYMETAL(撮影:Taichi Nishimaki)

「Distortion (feat. Alissa White-Gluz)」では12機のフレーマーが火を吹き、レーザーが飛び交う中、SU-METALはいつも以上に素晴らしい声を聴かせてくれた。ラスサビでの声の伸びは特に気持ちよかった。これはライブ中ずっと感じていたことで、近年最もいい歌唱だったと思う。

続く「PA PA YA!! (feat. F.HERO)」では大量のタオルがフロアやスタンドで振り回され、サビでは、歌う代わりにSU-METALはひたすら「ジャンプ! ジャンプ!」とあおりまくった。一転して、「BxMxC」ではダークに展開。サーチライトのようにゆっくりと動く照明と不意に激しく動くレーザーの対比が不穏でいい。SU-METALのボーカルは狂気をはらみ、鬼気迫るものがあった。この曲はいまだにわかりやすく変化し続けていて、それを感じるのがいつも楽しい。

そして、皆が待ち望んでいた瞬間その1がやってきた。「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」である。イントロが鳴った瞬間に大歓声。この曲でここまでの声が上がるのは珍しい。ロングイントロとともに朝日が昇る映像が流れ、まずBABYMETALの3人が2階ステージに姿を現す。そして、その両サイドにPOLYPHIAのTim HensonとScott LePageの姿を見つけると、フロアから歓喜の声が上がった。

(撮影:Taichi Nishimaki)

ここでのSU-METALの歌唱も特筆すべきものがあった。非常にクリアで、ニュアンスの表現まで明確に聴き取れる歌声。映像とレーザーの切り替えもカッコよく、パフォーマンス、演出ともに過去イチの「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」となった。この曲を完全体で披露するのは「FOX_FEST」が初めて。発表から5年近くのときを経てついにこのときが来たのだ。まさかこの共演が実現するとは思わなかった。“Finally, this day has come!!”と喜びの声を上げたSU-METALは本当にうれしそうだった。

BABYMETAL「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」ライブMV

この日一番のどよめきが起こったのは「メタり!! (feat. Tom Morello)」。この曲が発表された昨年夏以降は必ず披露されているといってもいいぐらい定番化していて、特に珍しい楽曲ではないのだけど、この和物イントロには思わず声を上げたくなるような魅力がある。しかし、実際に声を上げて驚いたのは間奏だ。MOMOMETALが“Everybody, get low.”とフロアに向かってしゃがむように促したのだ。MOMOMETALがこういった指示するのは初めてのこと。

さらに、MOAMETALが“I(正しくはShe) said, get low.”と追い打ちをかけた。そして、フロアが全員しゃがんだのを確認して、MOMOMETALによる恒例のJ-RAPパートがはじまる。その様子をうれしそうに眺めるSU-METALとMOAMETAL。“Are you ready?”と彼女のグロウルが地を這うと、バンドインととともにおびただしい数のレーザーが宙を貫いた。この瞬間がしびれるぐらいカッコよかった。BABYMETALのライブには定番曲が多く存在するが、メンバーのパフォーマンスも、演出も、つねに進化を続けている。「メギツネ」も映像演出に変化が加わっていた。

(撮影:Taku Fujii)

そして、ついにあの曲のイントロが鳴ったのだった。みんなが待ち望んでいた瞬間その2、ELECTRIC CALLBOYとのコラボ曲「RATATATA」である。イントロが鳴った瞬間に大歓声が上がり、大ハンドクラップが沸き起こる。そして、自然発生的に「フゥフゥ!」という声もあちこちから上がった。

そんな大盛り上がりなフロアに迎えられたBABYMETALの3人、そしてそのあとに現れたELECTRIC CALLBOYのKevin RatajczakとNico Sallachの2人は、クールなアイソレーションにはじまり、ひたすら楽しいパフォーマンスを展開。曲の最後は5人でハグ。こんなにハッピーな曲もなかなかない。BABYMETALというユニットが持つ楽しさがさらにブーストした瞬間だった。

BABYMETAL×Electric Callboy「RATATATA」ライブMV

面白かったのは新たなパーティーチューンによる興奮が冷めやらぬ中でプレイした「ギミチョコ!!」だ。この大ヒット曲からいつも以上の重さや生々しさを感じたのだ。これは間違いなく「RATATATA」との対比によって呼び覚まされた感覚。それにしても、ラスト曲の前に「ギミチョコ!!」がくるのはかなり珍しい。もしかしたらBABYMETALのライブ史上初めてではないだろうか。

ラストは「Road of Resistance」。実は、「FOX_FEST」は「BABYMETAL WORLD TOUR 2024」に含まれているライブだ。お祭りではあるけど、3人の新たな戦いはすでにはじまっている。曲中、スクリーンに大写しになったSU-METALの真剣な表情がそれを物語っていた。この曲では後半でシンガロングをするのが恒例となっているが、この日、3人はいつも以上に観客にシンガロングを求めた。それが自分たちの力になると言わんばかりの熱さだった。

(撮影:Taku Fujii)

最後、SU-METALは出演者と観客へ向けて感謝を述べ、さらに彼女はこう続けた。「みんなのおかげで最高の2日間になりました、ありがとうございます! もし第2弾が開催されることがありましたら、そのときにお会いしましょう!」

主催として大変なことは本当に多々あると思う。自身も世界中を駆け回る中、ひとつのフェスを遂行するのは至難の業だということも容易に想像できる。しかし、我々はもう「FOX_FEST」を知ってしまった。世界中のどのメタルフェスとも似ていないこの異端なフェスをもっと観たいという気持ちは抑えられない。毎年とは言わないが(実際は言いたい)、せめて2年に一度は日本のメタルファンにこの楽しい時間を提供してもらえないだろうか。それぐらい満足度の高いメタルフェスだった。

取材・文=阿刀大志

FOX_FEST 特設ページ:
https://foxfestjapan.com

▼LIVE info.

https://babymetal.com/mob/news/diarKiji.php?site=TO&ima=0959&cd=TOUR_TO&so=a&lang=ja

▼MOVIE info.

BABYMETAL 世界25カ国、98公演を完遂した自身最大規模のワールドツアーファイナルが映画化!
2024年8月23日(金)、劇場公開決定!

タイトル:BABYMETAL LEGEND - 43 THE MOVIE
公開:2024年8月23日(金) より全国ロードショー

【チケット情報】
劇場販売:一般3,000円(税込) / こども(3歳以上・中学生以下)2,000円(税込) / 障がい者割引2,000円(税込)
ムビチケ前売券(6月28日(金) 発売開始):2,700円(税込)

『BABYMETAL LEGEND - 43 THE MOVIE』特報映像

公式サイト:
https://liveviewing.jp/feature/babymetal_film/

公式X:
https://x.com/BABYMETAL_film

▼Blu-ray & DVD info.

『BABYMETAL WORLD TOUR 2023 - 2024 LEGEND - MM』

発売日:2024年7月10日(水)
https://TF.lnk.to/bm_legend-mm

BABYMETAL「LEGEND - S - BAPTISM XX - (LIVE AT HIROSHIMA GREEN ARENA)」(復刻盤)

発売日:2024年7月10日(水)
https://TF.lnk.to/bm_legend-s_kanzen

BABYMETAL「BABYMETAL ARISES - BEYOND THE MOON - LEGEND - M -」

発売日:2024年7月10日(水)
https://TF.lnk.to/bm_legend-m_tsuujou