音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画

初のドラマ主題歌から単独ツアー&海外ライブまで。4人組ガールズバンドFaulieu.がPMC誌面&WEB+アプリに登場。

PMC編集部

第213回

写真左から、Ayano(B & Cho)、Canaco(Vo & G)、Mimori(Dr & Cho)、Kaho(G & Cho) 写真:佐野優典

4人組ガールズバンドFaulieu.の勢いが増している。昨年末にアミューズ所属を発表し、4月12日に配信がはじまった新曲「愛煩い」はドラマ「⼦宮恋愛」のエンディングテーマに決定。さらに、今夏開催されるワンマンツアー「Faulieu. One-man Tour 『My name is Faulieu.』」では、宮城・大阪・東京公演に加え台北で初の海外ライブを行う。メンバー全員にクラシックの素養があり、全員が作曲を手がけるという実力派バンドの今に迫った。

――みなさんがFaulieu.として始動したのは2年前ですが、CanacoさんとMimoriさんは高校時代からずっと一緒にバンドをやっているんですよね?

Canaco はい。私がバンドをはじめたいと思ったのは、『けいおん!』というアニメを観たことがきっかけで、登場人物たちが組んでいたのがガールズバンドだったので、私もガールズバンドをやりたいなというあこがれがずっとありました。そこからずっとMimoriと一緒にメンバー探しをしてきて、最高のメンバーに出会えたなって思ってます。

Canaco(Vo & G)

――やっぱり、ガールズバンドじゃないとダメだった?

Mimori ガールズバンドにしたいというCanacoのこだわりがあって。

Canaco あの作品にあこがれを抱いた青春時代があって、今もその延長線上で青春してると感じてます。

――現在のガールズバンドシーンについてはどう見ていますか。ジャンル問わず、全体的にバンドのレベルが上がってきている印象があります。

Canaco メンバーそれぞれ感じていることは違うと思うんですけど、私は両極端だと思っていて。メタルとか激しめの音を出す人たちと、がっつり下北系のサウンドを出す人たち、みたいな。その中で、王道のガールズバンドが少ない。もちろんSCANDALさんとかSILENT SIRENさんみたいな存在はいますけど、その次の世代ってなると、まだ「これ!」というバンドが出てきていない気がして。だから、私たちがそういう存在になれたらいいなと思ってます。

Ayano 技術面で言うと、今はもう“女の子だから”という枠にとらわれない、すごく技術力の高いプレイヤーが増えていると思います。ジャンルに関しても、ラウドだからとかパンクだからとか関係なく、どんどん挑戦している。音楽そのものが広がっていると感じますね。

Ayano(B & Cho)

――Faulieu.はメンバー全員作曲できることが強みですよね。みなさんの音楽的なルーツが気になります。

Canaco 私はもともとアニソンやボカロが好きで、嵐も聴いてました。いい曲が多いなって。そこから『けいおん!』を観てバンドに興味を持って軽音楽部に入ってからは、相対性理論とかサカナクションとかも好きになりましたし、大学に入ってからは女王蜂にどハマりして、ライブにも足を運んでいました。

Mimori 私はもともと歌謡曲とかJ-POPがすごく好きで、荒井由美・宇多田ヒカル・スキマスイッチ・絢香・いきものがかりさんをよく聴いていました。中高生のころバンドが好きになって、特にUVERworldはずっと好きです。あとは関ジャニ∞(現SUPER EIGHT)とかもよく聴いてましたね。大学に進学してからは、音大だったこともあってすごく幅広いジャンルに触れるようになって、空間エレクトロニクスみたいなものも聴くようになったし、映画のサントラも好きで、菅野よう子さんも大好きです。でも、やっぱり戻ってくるのはJ-POPや歌謡曲。そこが根っこにあると思います。

Mimori(Dr & Cho)

Ayano 私は中学からバンドをはじめたんですけど、それ以前はピアノを習っていて。最初は弾き語りから入って、BUMP OF CHICKENやRADWIMPSとか、いわゆる邦ロックにひかれて、SupercellやLiSAさんみたいなアニソンにも興味を持って。メロディが際立つバンドが自分のルーツかなと思います。

Kaho 私が最初に音楽に触れたのは習いごとのバイオリンでした。中学受験のときに一度楽器からは離れたんですけど、塾の送り迎えの車の中で母がいつもGReeeeN(現GRe4N BOYZ)を流してくれて、そこで音楽の力ってすごいなと実感しました。それから、高校に入るタイミングで父にギターを買ってもらって軽音楽部に入り、J-POPのバンドにハマりロックの力強さを知りました。

Kaho(G & Cho)

――みなさん、特定のミュージシャンから強く影響を受けているというより、いろんな音楽を幅広く吸収しているんですね。それがFaulieu.の個性になっているのかも。

Canaco そうかもしれないですね。みんな本当にいろいろ聴いてますから。

――さらに、みなさんは全員ピアノやバイオリンといったクラシックの素養もありますよね。それも自分たちの強みだと感じていますか。

Kaho 確かに、クラシックと今やっていることが違うからこそ、ジャンルにとらわれないでいろんな音楽を聴けるというのはあるかもしれないです。ジャンルに対して私たちはそんなに壁を感じていないから。

――Faulieu.のサウンドは全体的に整ってる印象があって、どの音が前に出るとかではなく、4人の個性がそれぞれ活かされていて、それぞれに聴きどころがあるというか。歌が中心にあるのはもちろんなんだけど、それだけではない。

Canaco 最初からそういう考えはありました。たとえば、楽曲の中でソロ回しがあったり、ギターソロがない曲はほとんどない。それぞれの個性をライブでも音源でもしっかり見せられるようにしたいというのは根っこにあると思います。

――でも、全体としてすごく自然なんですよ。すごく大胆な一面もあるけど無理がないし、構成がすごくうまいなと。

Ayano それはスタジオでかなり試行錯誤するところですね。今回の新曲「愛煩い」も、「ここはベースを前に出して、ドラムはおさえめで」とか、かなり綿密に話し合いました。

――「愛煩い」は一聴するとすごく聴きやすいけど、実は音楽的にかなり凝っていて、展開も複雑です。こんな曲がどうやってできたんでしょう?

Mimori ドラマ用の書き下ろしだったので、ドラマの監督さんから「サスペンスロック」というテーマが提示されていたんです。それでいろいろと考えた結果、今までやってこなかったストリングスに挑戦することにしました。ほかにも、「パッと耳に入ってくる音で」というリクエストもあったので、アクセントのあるサウンドやテンポの微妙な変化、ちょっとした転調も取り入れて、ハッとする瞬間を作るように意識しました。あと、Canacoの声が高めなので、それを活かしてキーを設定したり、サスペンス感をどう演出するかすごく考えましたね。

――この曲はサビはじまりで、ラスサビで転調することによって最後の盛り上がりを演出していますけど、実はどちらもキーは同じというトリッキーな構成です。作曲を手がけたMimoriさん、解説をお願いします。

Mimori インパクトを出したくて頭でガンっとくるような構成にしました。最初に歌があって、イントロがあって、そのあとにくるAメロでキーを落としてるんです。 ――最初はそのことに全然気づかなくて。それくらい自然に聴けるんですよ。でも、1曲の中で同じ展開がない。同じサビでもベースのフレーズが最初と最後で全然違ったり。

Ayano 最後のサビは、どうしても主人公の感情に寄り添って弾きたかったので、あんな感じになりました。一応、コードに従って弾いてはいるんですけど、感覚でフレーズをつくったところはあります。最後のパートは「とにかく動きまくる」と自分の中で決めていました。

Kaho 私もいっぱいギターを弾いた気がします。でも、歌を聴かせるためにサビではあえて下がったり、音の抜き差しはかなり考えましたね。

――そして、詞を書いたのはCanacoさんです。

Canaco ただドラマに寄り添うだけじゃなくて、Faulieu.として伝えたいことも歌詞に込めたくて。自分とドラマの主人公の共通点を探す中で、「人生の主人公は自分しかいないでしょ」というセリフにグッときて、これは自分にも言えることだなと。結果として、心を込めて歌える、自分と重ねられるタイアップ曲になったと思います。

――この歌詞は、物語が進んでいくうちにつれて、主人公が徐々に開き直っていくような印象を受けます。

Canaco 後半に向けた展開はかなり意識しました。前半は原作の主人公の要素が強いんです。他人の顔色をうかがってばかりで、自分のやりたいことが見つけられない女性。でも、物語の後半になるにつれて恋愛を通して自分を見つけていく、というのが私なりの解釈です。その変化を歌詞にも反映したくて、後半にいくにつれて自我が出てくる感じを意識しました。それが私自身のイケイケモードと重なったのかもしれないです(笑)。

――楽曲終盤に登場する童謡「はないちもんめ」の引用が、サスペンス感を増幅しています。

Mimori もともと、このアイデアはCanacoのもので。

Canaco デモの段階では別の童謡が入ってたんですけど、「ちょっとテーマに合わないね」ってなって。私はそういう童謡みたいなものが入ってる曲がわりと好きで。女王蜂の曲にもあるじゃないですか。

――ああ、言われてみれば確かにありますね。

Canaco なので、ここは自分のあこがれを出せる部分かなって。それに、「あの子がほしい」「あの子じゃわからん」というやりとりがドラマのテーマとも重なると思って。

――さらに、曲の最後の最後に<芽吹く春>という一節が登場します。この終わり方にも鳥肌が立ちました。

Mimori レコーディングのときに、「なくそうか」という話にもなったんですけど、この歌詞にとても思いが詰まってると思ったし、これを入れないと怖いだけで終わってしまうから、「春が来る」という優しいメッセージを込めたかったんです。

Canaco つまり、「新しい芽生え」ですね。物語はここから肯定に向かっていくんだよ、間違ったって何度でもやり直せるんだよ、という気持ちを伝えたかったんです。

――この歌詞の世界感は歌い方にも反映されていますよね。

Canaco そうですね。メロディが高いところも低いところもあって忙しいんですけど、自分を見つけ出そうとする心情や葛藤を乗せられたらと思いながら歌いました。

――こういう楽曲が生まれたことで、楽曲の幅が広がったんじゃないですか。

Kaho 広がったと思います。サスペンスですもん(笑)。ライブで披露するときの想像が止まりません。

――8月からはワンマンツアーがはじまりますね。タイトルは「My Name is Faulieu.」です。

Canaco これぞ私たちです、という自己紹介ですね。ライブで見せられる私たちの最大限を各地で観せたいという思いも込めてます。

――初の海外公演として台北も訪れます。

Canaco 台湾で聴いてくださっている方もたくさんいらっしゃって、「いつかライブしてね」っていう声をいただいてた中で決定したライブなので楽しみです。

――新しい環境になり、新たな可能性を感じていると思います。何か野望はありますか。

Mimori フェスに出て自分たちのライブをライブキッズたちに観せたいです。楽しいエンタメとしてFaulieu.の音楽を届けたいですね。

――最後に、ガールズバンドってFaulieu.のような実力派バンドでもナメられがちな側面がいまだにあると思うんです。そういったことでフラストレーションを感じることはないですか。

Canaco 昔はありました。一時期、「かわいいと思われたくない」と思って、かわいい格好は避けようとしていたんです。でも、今のメンバーと出会ったことで、こんな仲間と一緒にいられるのにそれを誇らしく思わないのっておかしいんじゃない?って気づいて、「ガールズバンド、いいじゃん!」って。これからも、私たちだからこそ歌える、演奏できる、伝えられることを発信していきたいですね。

取材・文:阿刀大志 写真:佐野優典

DIGITAL SINGLE info.


「愛煩い」

available now

LIVE info.

「Faulieu. One-man Tour 『My name is Faulieu.』」

8.9 宮城・ROCKATERIA
8.16 大阪・Live House Pangea
8.30 東京・代官山UNIT
9.14 台北・Corner House