音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画

【写真30点】これぞ、Stray Kids! 巨大な会場を楽曲と歌とパフォーマンスの説得力で掌握。22万人を動員したスタジアム公演4DAYSより最終公演をレポート。

PMC編集部

第212回

5月18日「Stray Kids World Tour <dominATE JAPAN>」静岡・エコパスタジアム (撮影:田中聖太郎)

Stray Kidsが自身最大規模となるワールドツアー「Stray Kids World Tour<dominATE>」の日本公演を5月10・11日、17・18日の4日間にわたり、静岡・エコパスタジアムにて開催。彼らにとって初のスタジアム公演となり、4日間4公演で22万人を動員した。今回は、演出もアレンジもスタジアム仕様にアップデートされ、何よりメンバー個々のパフォーマンスのスケールが完全にスタジアムになじんでいたことに驚いた。米・「Billboard 200」チャートNO.1を何度も獲得し、欧米の大規模野外フェスにおけるトリのステージを経験し、名実ともにワールドスターになった彼らが今一番映えるステージは「ドームではなくスタジアムなのかも」とすら思ったほどだった。アリーナやドームというステージを制覇し、さらなる真骨頂がスタジアム。屋根がない開放感と、エコパスタジアムは5.5万人だったが、日本最大級の7万人収容規模のスタジアムであっても不足がないように感じるスタジアムのスケール感が実によく似合っていた。おそらく遠方から集まる日帰りのSTAY(Stray Kidsのファン)に配慮した16時という早いスタート時間により、会場全体が自然光で明るく、照明や演出が映えないのだが、そういった条件は関係なかった。完全にStray Kidsの核となる曲と歌とパフォーマンスの強度だけでもっていける、今の彼らのストーリーと8人の存在感で圧倒できる。これほどまでにスタジアムが似合うアーティストになっているとは思わなかった。というわけで、本稿は約3時間半で31曲を披露した最終日5月18日のレポートを届ける。

◎「Stray Kids World Tour<dominATE>」とは?

・自身最大規模のワールドツアー。2024年8月24日ソウルKSPO DOMEを皮切りに、2025年7月30日ローマ・Stadio Olimpico di Romaまで、全世界34の国と地域にて55公演を行い、K-POP史上最多の220万人を動員予定
・日本は2024年11月14・16・17日東京・東京ドーム、12月5・7・8日大阪・京セラドーム大阪のドーム6公演で合計約31万5000人を動員し、ドーム公演に続いて、2025年5月10・11・17・18日に静岡・エコパスタジアムでのスタジアム4公演で合計約22万人を動員。さらに5月11・17・18日に全国の映画館でライブビューイングを実施し、オンライン配信まで合わせて11万人が鑑賞

5月18日静岡・エコパスタジアム。オープニングSEが鳴り響くと、Stray Kidsの旗がLED一面になびき、TEAM SKZのダンサーによる剣の舞から太鼓の音が波動を起こす。旗手団と行進隊の総勢28名のスケール感でひきつけたあと、どっしりと力強いビートが響き渡る「MOUNTAINS」でスタートした。メインステージの左右ウイングまで火柱があがり、LEDに現れた大きな口の中から真っ白な衣装に身を包んだメンバーが登場。「ヤッホーー!」というフィリックスの第一声で、オープニングから畳みかけるようにスパークラーが吹き上がり、メンバーのマイクリレーに歓声があがりまくる。Stray Kidsが数々の険しい山を越えてきたこれまでの歩みと、さらなる頂上をめざす意志を感じさせる、マグマが噴き出すかのように、熱く燃え上がるオープニングだった。続く「Thunderous」は韓国の伝統音楽の要素と現代的な音楽を融合させた代表曲である。お約束のチャンビンによる力強いラップからはじまるが、大勢のダンサー&TEAM SKZのバンドアレンジは、ズーンと響くビートに壮大な空間を感じさせるスタジアム仕様となり、今度は稲妻のように鋭い勢いで攻めてくる。「JJAM」ではアップデートしたStray Kidsらしさが詰まった中毒性のあるサウンドで、ジャムのようにドロッと、ファンク、トラップ、ダブステップといったジャンルと8人の個性豊かなラップ・ボーカル、さらに5万5千人のかけ声が混じり合っていく。以前、Stray Kidsはライブにおいて、オープニング3曲がキーだとインタビューでも教えてくれたが、「これが今のStray Kidsだ」と言わんばかりに自身のスタイルを強く打ち出しながら、スタジアムライブというスケールにも負けない3曲をぶつけてきたオープニングだった。

「静岡エコパスタジアム。日本初のスタジアム公演がかないまして。今日ついに最終日です」とバンチャン。オープニングの挨拶を終えると、フィリックスが「Are You Ready?」と低音で叫び、会場全員のスイッチが入る。初期曲の中から彼らのアイデンティティを強烈に打ち出した「District 9」だ。メインステージ中央から伸びる花道の先のセンターステージに移動し、ほうぼうでSTAYを盛り上げる8人。チャンビンとハンのラップで力強く扇動する中、彼らの反骨精神と情熱を表すロックテイストを完全に血肉にしたアイエンの〈Better watch out〉のシャウトがすばらしい。デビュー当初、Stray Kidsが抱えていた葛藤と野心が現在進行形で表され、終わりでLED全面に「District 9」の文字が映し出された。Stray Kidsの代表曲の一つ「Back Door」では、曲の個性とともにステージ後方上のカメラが8人とアリーナをとらえ、カメラをのぞき込みながらドアを叩くモーメントが臨場感を伝える。

ステージ背景に現れたガレージのシャッターがあがり、真っ赤なオープンカーが目に入り、赤×黒の衣装でメンバーが登場。アルバム『ATE』のタイトル曲で、ラテンのリズムとヒップホップを融合させた「Chk Chk Boom」だ。ヴェルサーチェのサングラスをかけたヒョンジンがリードし、<Boom Boom Chk Chk Boom>のかけ声が会場中に響く。続いて、「DOMINO」ではセンターステージに集まりアリーナに水をまき散らし、興奮の叫び声とともに赤い銀テープが舞う中、「God’s Menu」へとなだれ込むのだが、センターステージでパフォーマンスするメンバーに加え、メインステージのファイヤーボールが上に、斜めに、扇状形にあがり、その炎の熱さがスタンド席まで伝わってきた。

バンチャン
リノ
チャンビン
ヒョンジン

K-POPの魅力の一つといえば一糸乱れぬ群舞だが、彼らのそれはメンバーそれぞれの個性が見えるのに8人のコンビネーションがダイナミックさと貫禄を伝え、エネルギーを産んでいるように思う。人気に一気に火がついた「God’s Menu」の曲終わりでゆっくりとメインステージに歩いて戻り、最後のバースで、ダンサーとともにメインステージの端から端まで横に広がり、力強いダンスで魅了する中、チャンビンのラップが響き渡る。オープニングからここまでのブロックで、流行の音楽シーンとは一線を画す彼らのオリジナリティが濃く打ち出された。ジャンルの越境は世界の音楽シーンの主流だが、あらゆるジャンルを飲み込みながらもStray Kidsのアイデンティティが強烈に主張してくる。これまで「Stray Kidsのカラーとは何か?」と追求してきた彼らの歩み、そして今を象徴する空間を見事に作り上げていたのである。

ハン
フィリックス
スンミン
アイエン

TEAM SKZのバンドのインスト演奏を経て、3月21日にデビュー7周年を記念してリリースされた『Mixtape : dominATE』に収録されたユニット曲のパートがスタートした。昨年のドーム6公演ではメンバーそれぞれのソロステージを展開した8曲がまるっとユニットステージに差し替わっていた。いずれの公演もツアータイトルにもあるように『ATE』が軸にあるが、セットリストが大きく変わった印象を受けるのはこのパートによるところが大きいだろう。スパイ風の世界観にハンとフィリックスのラップのかけ合いとドラムベースで畳みかける「Truman (HAN & Felix)」、疾走感のあるロック・パンクとヒップホップのミクスチャーでチャンビン&アイエンというユニット最大の魅力を活かした「Burnin’ Tires (Changbin & I.N)」、もはや名物となっているバンチャン&ヒョンジンのユニットはラテンの要素も感じさせ、内なる情熱を表すような新機軸の「ESCAPE (Bang Chan & Hyunjin)」で2人の全速力も披露。ポップバラードでアコースティックギターのサウンドながらも広がりのある壮大なサウンドスケープでエモofエモなステージを繰り広げた「CINEMA (Lee Know & Seungmin)」もよかった。<This is our CINEMA>のごとく、これらのユニットステージは、前半のStray Kidsの個性をより深めるかのように、彼ら自身の豊かな音楽性とその個性を掘り下げていく。メンバーそれぞれの新境地が見られ、全体のセットリストに相乗効果をもたらしていた。

VCRを挟んだあと、ステージのLEDには後半へと突入することを伝える、<Stray Kids everywhere all around the world>が映し出された。ディストピアに現れた巨大な(人型の)存在がステージを覆い尽くすように飛び出してくる。「GIANT」日本語バージョンである。メンバーはジーンズとブルー系の衣装に変わり、リノが力強く〈I’m a giant〉とシャウトする。バンチャンとダンサーによる千手観音風のカノンダンスもすごかった。そのままラップナンバー「Walkin On Water」へとなだれ込み、「S-Class」まで。「12曲続けて披露しました! 楽しんでいますか」とハン。やり切った感じで満足げなメンバーの表情が見える。

スンミンが「披露したい曲があります」と紹介したのが、6月18日に発売となる日本3rdミニアルバム『Hollow』より同タイトルのリード曲の初披露である。この「Hollow」だが、英語で“からっぽ”、韓国語で“ひとりぼっち、寂しい”を意味する言葉で、「STAYが好きそうなジャンルをイメージして書いてみた」とバンチャン。シティポップ+J-POP風味のサウンドで、ひたすら切なく展開していくメロウなメロディと歌詞に、「空虚」「孤独」感を重ね合わせた楽曲になっていた。ひたすら前を向いて走り続けてきた彼らだが、世界的にスタジアムクラスのツアーを回るようになった今感じる“Hollow”。そして、「Hollow」にも通じる、孤独をテーマにした「Lonely St.」を続けた。あきらめとは違う、それでもなお新たな息吹や変わらず大事なものをつかもうとする、20代のリアリティが詰まっているように思えた。

このあとの「Cover Me」まで聴かせるナンバーが続いた中盤のブロックを経て、「TOPLINE (feat. Tiger JK)」「Social Path feat. LiSA」(ハンが代わりに歌うLiSAパートが今回も素晴らしかった)、「LALALALA」で再びフルスロットル状態に。ファイヤーボールもド派手にあがりまくる。かと思えば、MCでは〈何が好き?〉〈チョコミントよりもあ・な・た〉という「愛♡スクリ〜ム!」チャレンジをステージ上で繰り広げるなど、ゆるい場面においても彼らは8人のコンビネーションをどこまでも発揮する。キュンしたところで、本編ラストスパートへ。

ステージが赤く染まり、ひときわ変幻自在に展開し、現実離れした感覚に陥る「MEGAVERSE」では、ヒョンジンの狂気的なダンスに声があがる。そして、フィリックスのダンスソロと名物の低音が響き渡る「MANIAC」がきた。「Let’s Go」とアイエンががなり、メンバーの熱量とともに、映画を観ているような壮大なスタジアムロックのバンドアレンジで、何度も観た「MANIAC」のステージが実に新鮮なグルーブを生み出していた。前回の2ndワールドツアー「MANIAC」は、コロナ禍明けというタイミング、完成度の高い演出、その当時の彼らの思いが見事にハマり、最終的に大阪・京セラドーム大阪で締めるという完璧なシーンを作り上げてきた曲である。異質なまま存在することを肯定するこの楽曲で、スタジアムのセンターステージまで駆ける8人による、また新たなシーンが作り上げられたのだ。

ようやく、薄暗くなってきたころ、アンコールでは、「SUPER BOARD」とともに2台のトロッコがStray Kids公式キャラクターSKZOOのビッグバルーンもともに登場し、STAYを沸かせる。「I Like It」「My Pace」まで、ゆっくりスタジアムのアリーナ外周を一周し、トロッコから降りてステージにあがって「BLIND SPOT」を披露。自由に動きまわり、メンバー同士ではしゃぐ中、客席のスマホのライトが一斉に輝き出し、スタジアムを埋め尽くした。〈Shining, we are the champions〉と大合唱となり、スンミンがその会場の景色を観て胸がいっぱいになっているのが見てとれた。

「最終日が終わりました。寂しいけど、STAYのおかげで最高にたのしむことができました」というハンに続いて、「STAY楽しかったですか?」とリノが呼びかける。まだ未発表の「Never Alone」をスンミンが口ずさむと、「来月発売のアルバムは個人的に本当に名盤だと思います。タイトル曲「Hollow」はもちろん、「Never Alone」、チャンビンの「宿命」ハンの「just a little」……メンバーが一心同体になって作った名盤になっています。8年目、この8人でまた戻ってきます。STAY、ハッピーな気持ちで待っていてね。大大大好きだよ」とバンチャンが締めた。

「Stray Kids」では、〈Woah, woah, oh, oh, woah〉というスタジアムに似合う大合唱が起き、「MIROH」で再びフィナーレを迎えたのだが、その解放感に余韻覚めやらない中、会場からアンコールがすかさず起き、メンバーはすぐに再びステージへ。ダブルアンコールとして「Chk Chk Boom (Festival Ver.)」を披露。ヒョンジンとフィリックスが全速力でセンターステージへ向かい、ほかのメンバーも続く。紙吹雪が舞う中、花火があがりはじめる。ラストは「FAM」だった。日本でリリースした楽曲で、今やメンバー自己紹介ソングとしてメンバー8人とSTAYも含め家族感を感じられる人気の曲である。来日するたびによりビッグになっていく彼らだが、「FAM」も「Hollow」も「MANIAC」も「District 9」も全てがリアリティをもって歌える歌であり、彼らは「MOUNTAINS」のごとく新たな山頂へ向かうのである……これほどスタジアムが似合うアーティストなのだから、次は7万人規模のスタジアムの景色を、ぜひ観せてほしい!

文:PMC編集部 撮影:田中聖太郎

セットリスト

Stray Kids World Tour<dominATE JAPAN>

5月18日 静岡・エコパスタジアム

1. MOUNTAINS
2. Thunderous
3. JJAM
4. District 9
5. Back Door
6. Chk Chk Boom
7. DOMINO
8. God’s Menu
9. Truman (HAN & Felix)
10. Burnin’ Tires (Changbin & I.N)
11. ESCAPE (Bang Chan & Hyunjin)
12. CINEMA (Lee Know & Seungmin)
13. GIANT
14. Walkin On Water
15. S-Class
16. Hollow
17. Lonely St.
18. Cover Me
19. TOPLINE (feat. Tigar JK)
20. Social Path (feat. LiSA)
21. LALALALA
22. MEGAVERSE
23. MANIAC
24. SUPER BOARD
25. I Like It
26. My Pace
27. BLIND SPOT
28. Stray Kids
29. MIROH
30. Chk Chk Boom (Festival Ver.)
31. FAM

CD info.

JAPAN 3rd Mini Album『Hollow』

6月18日発売
https://www.straykidsjapan.com/hollow/