音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画
「SUMMER SONIC 2025」レポートDAY1。SixTONES、HANA、BABYMETAL、The Prodigyほか
PMC編集部
第226回

BABYMETAL
8月16〜17日、国内外のアーティストが集結するインターナショナルフェスティバル「SUMMER SONIC 2025」(以下、サマソニ)が東京・大阪の2ヶ所で同時開催された。
今年は、東京会場16日が5万2000人、17日が完売の6万人、大阪会場は両日完売の各日4万5000人の9万人、さらに、サマソニ前夜のオールナイトフェス「SONICMANIA」では1万4000人を動員し、合計21万6000人の観客が楽しんだ。東京会場は今年からPACIFIC STAGEが幕張メッセ9-11に移動し、収容数も拡大。各所、休憩スペースや給水所も増設され、暑さ対策がとられた。快適度は増しつつ、サマソニならではのサプライズステージもあり、会場はもちろんSNSなどでも賑わいを見せた。
まずは、8月16日、東京会場(千葉・ZOZOマリンスタジアム、幕張メッセ)1日目のレポートを、『PMC』ではBABYMETALの取材を担当している阿刀大志よりお届けする。
8月16日、天気予報によると午前11時前のZOZOマリンスタジアムの気温は30度。青空は見えるが日差しは控えめ。今年のサマソニも暑さとの厳しい闘いになることを予想していたので、かなりホッとした。席は、この時間帯には陽が当たらない三塁側の2階スタンドを選んだ。SixTONESのライブを間近で観られる機会はなかなかないので、スタンディングアリーナにもひかれたのだが、フェスの1日は長い。暑さ対策をするに越したことはない。スタジアム周辺で行われていたサンプリング施策で手に入れた塩分チャージを一粒口に放り込み、SixTONESの登場を待った。個人的に、フェスでのSixTONESは初体験だ。
SEが鳴り、ステージに登場するSixTONESの6人を大きな拍手が出迎えた。初のサマソニであり、初の洋楽フェスのオープニングナンバーに選んだのは「こっから」だった。バンドセットのエッジの効いた演奏をバックに、ジェシーが「We are SixTONES!」と叫べば、森本慎太郎は「SUMMER SONIC、調子はどうだー!?」とがなる。明らかに前のめりで、いきなりトップギアに入っている。そんなフェス仕様のスタイルが新鮮で楽しい。いつも以上に猛々しいパフォーマンスの中、クールさを保つ松村北斗がカッコいい。

有名曲ばかりを披露するような、自己紹介的なパフォーマンスをする意志が6人にないことは、2曲目にシングルのカップリング曲「Waves Crash」を持ってきたことでよくわかった。フェスの場で自分たちがどれだけカマせるのか、その一点に絞って準備してきたに違いない。ワンマンに比べると、SixTONESというグループの楽曲を届けること以上に、彼らの内に宿っている熱量や生き様を伝えることに重きが置かれているように感じた。

巨大なステージの横幅いっぱいに広がって繰り広げた縦ノリの「GONG」では、バンドメンバーによるギターソロの横で京本大我がエアギターをしているのだが、スクリーンに映し出される田中樹はラッパーのような出で立ち。このミクスチャー感がSixTONESの魅力だ。SixTONESは間違いなくアイドルだが、そこを軸にしつつも、さまざまなジャンルとクロスオーバーしていることがフェスの場だと如実にわかる。「◯◯のようなライブ」とひと言で説明できればいいのだが、彼らはそもそもそういうパフォーマンスをしない。ロックもヒップホップもポップスもすべて飲み込み、それを単なる模倣で済まさず、6人なりに咀嚼して吐き出すのがSixTONESのやり方なのである。
この日、唯一じっくり歌い届けたのは、最新シングル「Stargaze」。野田洋次郎が作詞作曲を手がけたこの曲は歌詞も素晴らしいので、気になった人はぜひサブスクでチェックしてみてほしい。「Stargaze」でワンクッション置いたあと、後半も6人は突っ走った。ラストの「Whip That」では、髙地優吾がステージを降り、無秩序なパフォーマンスを展開。普段は柔らかな印象を与える人物だけに驚かされた。SixTONESが面白いのは、各々が自由にパフォーマンスしているかと思いきや、突然息の合ったダンスパフォーマンスを見せるところ。このメリハリも彼らに引き込まれるポイントだと思う。短い時間だったが、初めてフェス仕様のSixTONESを体験することができてよかった。いいものを観た。

赤を基調とした衣装で登場したLiSAのステージは10分近く遅れてのスタートとなった。9年ぶりのサマソニ、初のMARINE STAGEだという彼女の歌唱は圧巻。スタンドのてっぺん近くで観ていても、彼女の力強いボーカルはまっすぐに鼓膜を刺激してくる。彼女の歌声や表情から、このステージを心の底から楽しんでいることが伝わってきた。歌がはじまった瞬間に大歓声が沸き起こった国民的ヒット曲「紅蓮華」では大シンガロングが起こるなど、骨太なバンドセットとともにハードロッキンなパフォーマンスを繰り広げた。「最高な夏のはじまりをありがとう! 今日もいい日だ!」と言い残して去っていった彼女の顔には、太陽のような笑顔が浮かんでいた。


暑さにやられる前に、涼しいメッセへ移動。女性シンガソングライターWALLICEのパフォーマンスを目撃しにSONIC STAGEへ向かった。オーソドックスな4ピース編成で、大きなグルーブで牽引するオルタナティブロックを鳴らす。「ありがとう。私はWALLICEです」「暑いですねえ!」とやたらと日本語で挨拶するなと思ったら、彼女は日本にルーツを持っているという。WALLICEのボーカルには人の心にそっと寄り添うような包容力があり、内省的な印象を与える。そういった特徴も彼女のルーツと関係があるのかもしれない。


「入場規制がかかりそう!」という友人の言葉にあおられるように、HANAを観るためにSONIC STAGEへ移動。今年からステージがメッセ9-11番ホールに変更され不便になったかと思ったが、その分、スペース面で余裕が生まれていてよかった。スタート数分前にステージ周辺に着くと、確かに今にも人があふれそうな状態になっていたため、急いでホール内へ(その後、入場規制がかかった)。
HANAのライブにはもう度肝を抜かれた。ステージ上で一列になったメンバーが自己紹介のように歌をつないでいくのだが、1人1人順番にスポットライトが当たる演出の効果もあり、鳥肌が立つほどカッコいい。メンバー全員、歌唱力が高く、パワフルかつ、ソウルフル。スタンドマイクを使った歌唱もクールで、声質がいいこともあり、ラップが映える。

しかも、ただの実力派グループではない。メンバー全員が個性的で、そんな7人が集まっている画はとにかく強い。ダンスに関しても、やみくもにシンクロ率の高さを追い求めるのではなく、調和と個性が絶妙に入り交じり、ここぞという場面でビシッとそろえる。これがHANAというグループをより個性的に見せていた。これは一朝一夕に身につく空気感ではない。去年はまだオーディション中で、候補生と一緒にサマソニに遊びに来ていたという。にわかに信じがたいエピソードだ。新人離れにもほどがある。古いたとえで恐縮だが、90年代に活躍したアメリカの女性R&BグループEN VOGUEを彷彿とさせた。日本において、こういう存在感の女性グループは初めてじゃないか。そういった意味でもかなり新鮮で、見ていてワクワクする。

圧巻だったのはラストに披露した「ROSE」。この曲のエンディングでは、7人全員が全身を使って薔薇の花を表現。あの一瞬だけでも強烈なインパクト。大勝利だと思った。ちょっとすごいものを観た。すでに国内でも話題になっているが、世界での活躍も全然夢ではないのではないか。今後も彼女たちの活動を追いかけたいと心底思った。

HANAを観た影響で、その後の予定を変更。90年代初期~中期に人気を博し、ジャズヒップホップの躍進に寄与した男女3人組ユニットDIGABLE PLANETSのパフォーマンスが観たくなり、BEACH STAGEへ。彼らが再結成していること自体驚きだったが、まさかの来日発表には目を疑った。しかし、彼らはたしかにそこにいた。ラップと歌の間を自由に漂うような、Ladybug Meccaによるクールかつ、理知的なラップは健在。全盛期から30年が経った今聴いても唯一無二。大ヒットシングル「Rebirth of Slick (Cool Like Dat)」を生で聴けた感動は何物にも代えがたかった。まさかこんな日が来るなんて。
BABYMETALのためにこのままメッセに戻ろうと思ったが、どうしてもOfficial髭男dismの様子が気になり、ZOZOマリンスタジアムの音漏れを聴きに行った。ちょうど「宿命」の演奏中らしく、藤原聡のハイトーンボイスが聴こえてくる。辛抱たまらず、ほんの少しだけ観るつもりでMARINE STAGEのアリーナスタンディングエリアへ入ったものの、やはりステージに釘付けになってしまい、どうにかこうにか踏ん切りをつけて「ミックスナッツ」の途中でMOUNTAIN STAGEへ急いだ。オーディエンスに向かって楽しそうに投げキッスをしている楢﨑誠の姿にほっこりした。


SUMMER SONICのBABYMETALはMOUNTAIN STAGEがしっくりくる。帰ってきたな、という感覚になる。彼女たちのたたずまいは変わらないが、世界各地で研鑽を積み続けていることで、バンドとしての強靭さとしなやかさはいまだ天井知らず。最新作『METAL FORTH』も、アメリカのBillboard 200にて自己最高9位にチャートイン。他の国でも自己最高位を次々と叩き出している。結成から15周年を迎えた今なお、ユニットとしてのフレッシュさが失われないのがBABYMETALであり、そこに世界は熱狂している。ライブのオープニングナンバーが「BABYMETAL DEATH」であることもわかってはいるが、彼女たちの歴史と質の高いパフォーマンスがマンネリに感じさせない。最初の一音目からしびれる強靭なバンドサウンドをバックに、一糸乱れぬキレのある動きを見せる3人。ただ両腕を斜め上に上げるシンプルな動きでも、目が離せない。彼女たちの強靭な体幹はそれをありきたりに見せないのだ。そこには一切の無駄がなく、実にストイック。ステージ背後から強烈な照明に照らされ、浮かび上がる3人のシルエットが神々しい。

2曲目に「ヘドバンギャー!!」を持ってくるという意外性には驚いた。さらに、間奏でMOMOMETALによる「Are you ready!?」というグロウルが飛び出したことにはもっと驚いた。『PMC』本誌でのインタビューでもグロウルの練習を続けていると話していたが、まさかアドリブに近い形で聞けるとは思わなかった。
BABYMETALは今月、「BABYMETAL WORLD TOUR 2025-2026 SUMMER TOUR IN JAPAN」を行ったが、『METAL FORTH』収録の新曲が続々と日本初披露されていて、この日は「Kon! Kon! (feat. Bloodywood)」がプレイされた。『PMC』本誌でのインタビュー時、この曲のダンスについてMOAMETALが「右足の負担がヤバい」と話していたが、実際にパフォーマンスを見てその理由がよくわかった。右足に重心を置いたダンスが非常に目を引く構成になっていたからだ。さらにこの曲で際立っていたのはSU-METALのボーカル。ときにコミカルで、ときにおどろおどろしい。それは小さな村に伝わる怪談話を聞いている子どもを思わせる無垢なボーカリゼーションで、MOAMETALとMOMOMETALによるダンスも合わせて、曲の世界観をより深いものにしていた。
興味深かったのはオーディエンスだ。筆者はフロア後方からステージを見ていたのだが、フロアを埋め尽くした人々の熱量が過去一番高かったのだ。以前は、「世界で活躍していると噂のBABYMETALのライブを観に来た」という興味本位な雰囲気が感じられたが、今年は楽曲の認知度が明らかに高かったように思う。ラストの「Road of Resistance」における拳の上がり具合は、見ていて胸が熱くなるほどだった。あと、これまでは「ギミチョコ!!」が初見客をひきつける役割を果たしていたが、新たに「RATATATA」がラインナップされたことも大きい。たとえBABYMETALの存在を知らなかったとしても楽しめるこの曲のパワーを再認識。来年1月のさいたまスーパーアリーナ公演では一体どんな姿を見せてくれるだろうか。

DAY1のヘッドライナーFALL OUT BOY がMARINE STAGEに立っていたころ、MOUNTAIN STAGEにはBABYMETALからバトンを受けとったThe Prodigyが登場。出自こそ異なるが、どちらも異形の存在からヘビーミュージックシーンのど真ん中へと切り込んでいったという点では同じだ。The Prodigyサウンドの基本構造は96年リリースのシングル「Firestarter」以降、変わっていない。しかし、時代に合わせた細かなアップデートを繰り返した結果、たとえ約30年前の楽曲であろうが、ノスタルジーではなく、今のダンスミュージックとして踊れてしまうのは驚異的。

「Firestarter」では、2019年にこの世を去ったキース・フリントの姿がレーザーで描かれ、感動と興奮が入り交じった。個人的には5枚目のシングル「Out of Space」をやってくれたこともうれしかった。キースの代わりにメインボーカリストを任されたマキシムは、ステージ上だけでなく広大なフロアも駆け回るなど、大奮闘。強烈なカリスマ性を誇った前任者に劣らないパフォーマンスで我々を喜ばせた。

近年、たまに披露していた「Everybody in the Place」も観られたら最高だったが、贅沢は言うまい。帰宅後もビールを飲みながらぼーっとしてしまうくらい、脳の奥までしびれるライブだった。ステージ上ではあまり目立たないが、The Prodigyサウンドの全てを司るリアム・ハウレットは本当に偉大なクリエイターだと思った。

朝イチのSixTONESからラストのThe Prodigyまで、終始元気に楽しめたことは自分でも驚いた。天候に恵まれたし、会場内も過ごしやすく、かなり充実したDAY1だったと思う。
Text:阿刀大志