音楽専門誌『ぴあMUSIC COMPLEX』連動企画
「SUMMER SONIC 2025」DAY2レポート。aespaやLEE YOUNGJIら韓国アーティストとINI、MAZZEL、FRUITS ZIPPER、NiziUを観た!
PMC編集部
第228回

aespa
8月16〜17日、国内外のアーティストが集結するインターナショナルフェスティバル「SUMMER SONIC 2025」(以下、サマソニ)が東京・大阪の2ヶ所で同時開催された。韓国語と日本語のバイリンガルライター尹秀姫が観た、東京会場(千葉・ZOZOマリンスタジアム、幕張メッセ)2日目のレポートを届ける。



8月17日、「SUMMER SONIC 2025」2日目。MOUNTAIN STAGE のトップバッターで登場したのは、2年連続2回目の出演となったINI。まずマーチングバンドに扮したダンサーたちがステージに登場すると、生バンドの演奏&フェス用にアレンジを施した「FANFARE」でライブがスタート。夏らしくマリンルックの衣装に身を包んだメンバーの登場で、会場は一気にヒートアップする。「FANFARE」では藤牧京介の、松田迅の気合いの入ったシャウトではじまった「MORE」では髙塚大夢のハイトーンがマウンテンステージに響き渡り、激しいパフォーマンスの合間にもしっかり歌を聴かせるあたりはさすが。西洸人は早くもサングラスを外して、パフォーマンスに本気モードに入った。田島将吾が普段のおだやかさからは想像できない激しさで「恥ずかしがらないで声を出して!」と何度もオーディエンスをあおる姿も印象的だった。「SUMMER SONIC、調子はどうですかー!」とリーダーの木村柾哉が尋ねると、会場からは元気な声が飛び出す。そんな中、佐野雄大がパイナップルジュースを片手に「みなさん、俺たちと一緒に夏を楽しむ準備はできていますか?」と言ってはじまった、その名も「Pineapple Juice」では巨大なパイナップルとハイビスカスのオブジェが登場し、トロピカルなステージに。続いて、池崎理人が持ち前のイケボで「2025年の夏は今年1回しか来ないぞ」と会場をあおり「HI-DE-HO」から「We Are」、「Party Goes On」まで、チルいメロディに合わせてメンバーたちも客席に手を降ったり、ウォーターガンやバブルガンで水とシャボン玉を飛ばす。乾杯タイムに入り、後藤威尊がINI式乾杯として「ロケット発射まで3、2、1」と合図すると、会場のMINI(INIのファン)たちは「ロケティー!(INIのデビュー曲「Rocketeer」にかけた掛け声)」と答えるコール&レスポンスで会場全員で水分補給。その後の「DOMINANCE」では客席から大きなコールが飛び交い、MINIの声援を受けて気合いも十分。畳みかけるようなラップの重なりから冴えわたるボーカル、リフレインするサビが押し寄せる波のように会場を熱くしたかと思えば、ダンスブレイクを挟んでの「WMDA(Where My Drums At)」ではその波が次第に大きくなり、壮大なメロディが会場を包み込むようなカタルシスとなって襲いかかる。ラストはWANIMAのKENTAが楽曲提供した「HERO」。疾走感のあるこの応援ソングでは、会場が一体となってタオルを振り回す。そんな客席に向かってINIはステージからボールを投げ入れ、大盛りあがりのうちに終了。もともとパフォーマンスには定評のあるINIだが、最近では藤牧、髙塚だけでなく尾崎匠海、許豊凡もメインボーカル級に成長。トークでは飾らない素顔を見せたりと、隙のないパフォーマンスとのギャップも魅力だ。2日目のMOUNTAIN STAGEは、INIのいいところを特盛りにしてみせたようなステージではじまった。




続いて、同ステージに登場したのはMAZZEL。一昨年はオープニングアクトだった彼らが、今年は12:10に登場。RANのラップから「Fire」がはじまると、まさに燃え盛る炎を表すかのようなパフォーマンスであっという間に会場をMAZZELの色に染め上げた。そんな彼らの気合いに当てられたかのように、客席も一斉に腕を上下に振り下ろし、1曲目からド迫力のステージに。HAYATOの歌いだしではじまる「K&K」では、個性際立つMAZZELらしくTAKUTO、EIKI、RYUKIの色が異なるラップが交互に重なり、合間に挟まれるRANとKAIRYU、TAKUTOのメロディアスなボーカルにサビのSEITOのがなる低音ラップで畳みかけてきて、一瞬たりとも目が離せない。メンバーたちが作詞作曲に参加したMAZZEL流応援ソング「HERO SUIT」では、スクリーンにリリックを映し、勇気をまとって前へ進むというメッセージをしっかりと届けた。オーディエンスもクラップで呼応し、その雰囲気のままに、KAIRYUのフェイクからNAOYAの歌につながる「Vivid」はミュートを効かせたトランペットとピアノが奏でるジャジーなメロディに合わせて、ラップもボーカルもほんの少し大人なムードに。かと思えばRANが高くジャンプしてみせたり、EIKIがハイトーンを響かせたりと、見どころたっぷりのステージとなった。「CAME TO DANCE」ではステージ上でメンバー同士が目を合わせながら、楽しそうに踊る姿が印象的。「まだまだ行けるでしょ、サマソニ!」というシャウトを合図に会場も一体となってタオルをブン回し、夏フェスらしさを感じる1曲。ラストはKAIRYUが芯のあるボーカルで歌い上げ、観客の度肝を抜いた。MAZZELの曲の中でも難易度の高いパフォーマンスで知られる「J.O.K.E.R.」や、サビでリフレインする<「王様ダレだ?」>が癖になるパーティロックチューンの「King Kila Game」、切ないメロディと夏の思い出を感じさせる歌詞が刺さる「Seaside Story」と、さまざまな魅力を見せたところで、最後はレトロポップな楽曲とラップの掛け合わせが絶妙な「Parade」へ。SEITOが足さばきが見事なウィンドミルで盛り上げた後は怒涛のパフォーマンス。最後まで会場も一体となって盛り上がった。




SONIC STAGEに足を運ぶと、来年2月1日に初の東京ドーム公演開催を発表したばかりのFRUITS ZIPPERが登場。あわや入場規制になるかと思われたほど観客が押し寄せ、ライブがはじまる前から外気に負けないほどの熱気が漂っていた。手拍子と大歓声を受けながら、3周年ライブで初お披露目した黒い衣装で登場すると、アカペラから「NEW KAWAII」がスタート、そして会場をぴょんぴょん跳ばせてスタートした「ぴゅあいんざわーるど」ではふるっぱー(FRUITS ZIPPERのファン)だけでなく明らかに他バンド目当ての観客も一様に盛り上がり、サマソニらしい雰囲気に。今月2日にリリースされたばかりの「ピポパポ」では会場が一体となって<new kawaii>を叫び、ライブ序盤から早くも会場をFRUITS ZIPPERの色に染め上げた。真中まなの口上ではじまる「ふるっぱーりー!」では仲川瑠夏、鎮西寿々歌、早瀬ノエルらがスタイリッシュなラップを聴かせたかと思えば、歌パートでは歌謡曲顔負けのコブシを利かせ、櫻井優衣のやさしいハイトーンが会場を包み込む。どこかで聴いたことのあるサビの<100人乗っても大丈夫っ!!>を会場が一丸となって叫んだり、松本かれんの「いっくよー!」の合図でメンバーの愛称をコールしたり、ステージに立つメンバーだけでなくオーディエンスも一緒になってライブを盛り上げた。続く「RADIO GALAXY」は随所でテンポが変わる曲を自在に歌いあげ、<ますかるのゆあ ふるふるる>の呪文が印象的な「かがみ」では魔法少女のようなリリカルなステージを表現、FRUITS ZIPPERの人気を確立した「わたしの一番かわいいところ」まで、笑顔を絶やさず立て続けにパフォーマンス。メンバーカラーで彩られた照明は、現在活動休止中のメンバー、月足天音の存在を随所に感じさせてくれた。櫻井が「後ろの方まで見えてますよ、声出せますか!」と観客をあおりつつ、ラストは「完璧主義で☆」。駆け出したくなるようなメロディとまっすぐで熱い歌詞は彼女たちの強さを表現しているようだった。最後までSONIC STAGEを盛り上げ、来年の東京ドーム公演へ弾みをつけた。




昨年は台風の影響で東京会場に来ることができなかったLEE YOUNGJI(イ・ヨンジ)がSONIC STAGEに登場。日本語で「初めまして、私の名前はLEE YOUNGJIです」と流暢に挨拶すると、自己紹介がわりに「I Am Lee Young Ji」でライブをスタート。「日本語の実力は上手じゃないよ」と謙遜しつつ、Duolingo(語学学習アプリ)で日本語を勉強したことを明かして笑いを誘ったり、少しの日本語と英語をまじえつつ自分は韓国のラッパーでシンガーであると挨拶した。2019年放送の『高等ラッパー3』でデビューし、2022年放送のHIPHOPサバイバル番組『SHOW ME THE MONEY 11』でも優勝を飾った彼女。2曲目の「GO HIGH」はまさに『高等ラッパー3』で優勝を決めた曲で、まだ何者でもなかったYOUNGJIが高みを求めた、ヒリヒリするほどの渇きを今も感じさせる。熱をはらんだ体を冷やすようにペットボトルの水を浴びる彼女を、客席からスマホのライトが照らしていた。続く「Small girl(feat. D.O.)」は昨年6月にリリースするや韓国の音楽チャート1位を席巻したEXOのD.O.とのコラボ曲。オーディエンスの知名度も抜群で、YOUNGJIがマイクを向けるとすぐ歌が出てくるほど。これにはYOUNGJIも「気持ちがいいね!」とニコニコ顔だった。MARK(NCT 127 / NCT DREAM)の曲でYOUNGJIがフィーチャリングした「Fraktsiya」を1人でフルパフォーマンスしたり、Jay ParkやSlomといった名だたる韓国ラッパーたちがラップをつなげる「BLUE CHECK REMIX」を披露した。またJay Parkがフィーチャリングした曲「WE (Feat. Jay Park) (Prod. by Slom)」ではステージ中央で、ダンサーたちを引き連れる女王然としたステージで会場を圧倒した。しかし、星野源とのコラボ曲「2 (feat. LEE YOUNGJI)」について説明しはじめると、たどたどしい日本語で「ありがとう、源さん!」と自前のエコーで感謝するなど茶目っ気を発揮。アンチへの怒りを込めた曲だと解説した「WITCH」では、コール&レスポンスの練習で会場のコールが「やさしすぎる、もっとBADに!」と焚き付け、バッドガールな一面ものぞかせた。「次が最後の曲」と言ってはじまった「NOT SORRY」ではメロディアスラップを口ずさみながらステージを降りて日本の観客の目の前でパフォーマンス。韓国語で「ごめんね」を意味する「ミアネ」を会場が一体となって合唱し、ライブを盛り上げた。これで終わりかと思いきや、YOUNGJIがフィーチャリングしたBSS(SEVENTEENの3人ユニット)の「Fighting(Feat. Lee Young Ji)」、さらに「Smoke」も披露。嵐のように感情をあらわにする速射砲ラップから乙女心を感じさせるかわいらしい歌まで、彼女の魅力をたっぷり感じることができた。



そして、MARINE STAGEへ足を運び、2020年のデビュー以来、世界的な人気を誇るaespaを観た。「SUMMER SONIC」には初登場となるが、サブヘッドライナーとしてパワフルなステージを披露した。17:55からのスタートとはいえ、真夏の野外のステージではまだ日も高く、気温も余裕の30度越え。そんな中、SFチックなアラート音がスタジアムにこだますると、彼女たちのグローバルな人気を確固たるものとした「Supernova」からライブがスタート。もともとボーカル力には定評のあるaespaだが、まさに“口から音源”のパフォーマンス。超高音も軽やかに響かせ、気負うことなく大きなステージを自分たちのものにしてみせる。昨年、日本デビュー曲としてリリースした「Hot Mess」を歌いながら花道に進むと、それだけで大歓声が湧き上がる。MARINE STAGE中央に設けられたサブステージからニンニンが英語で「今夜は楽しんでね」と挨拶すると、「小さいころから観ていたSUMMER SONICでみなさんに会えてうれしいです」とオーディエンスに話しかけるウィンター。カリナはみんなが暑くないか心配しつつも、「aespaのステージはもっと熱くなるから期待していてね」と観客をあおった。日本出身のジゼルは話しはじめただけで大歓声。「みなさん、すてきな思い出を作りましょうね」とほほえんだ。「Next Level」の腕を直角に折り曲げたり、「Armageddon」で骨盤を揺らす、インパクトのある振り付けやパフォーマンスに加え、それぞれの声質を活かしたボーカル&ラップという完成度の高いパフォーマンスで圧倒するのだが、ステージが終わるたびに「あっつ!」「暑いですよね……」とボヤく姿は、彼女たちも人間なんだなとホッとさせてくれる。10月からジャパンツアーがはじまること、9月に新しいアルバムでカムバックすることを報告し、新曲のスポ(ネタバレ)も。本来は発表前にほんの少しだけ見せることをスポというのだが、aespaはわりとしっかり歌ってしまい、カリナが「(ほぼ)全部です……」と苦笑していた。暮れなずむ夏のスタジアムに、風に髪をたなびかせながら甘い歌声が響き渡らせた「Flights, Not Feelings」、夏らしいサウンドが耳に心地良い「Better Things」でボーカルの魅力を存分に浴びせたあとは、初の日本語歌詞の楽曲としてリリースされた「ZOOM ZOOM」で “ギャル”で元気な魅力を存分に発揮。かと思えば「Whiplash」で見せたクールでシックなパフォーマンスは圧巻の一言。ジゼルを中心にメンバーとダンサーが花が開くようなフォーメーションを見せるスーパージゼルタイムではこの日のステージで一番の歓声が飛び出した。最後には今年6月にリリースしたばかりの「Dirty Work」でイケメンな魅力を垣間見せる。はたして9月にリリースするという新曲ではまたどんな魅力が飛び出すのか、一層楽しみになった。




幕張メッセへ戻ると、NiziUがPACIFIC STAGEのヘッドライナーとして登場した。ドラムが刻むリズムに合わせて手拍子が打ち鳴らされると、その音に誘われるようにメンバーが元気よくステージへと登場。RIKUが「最高の夏の思い出を作りましょう!」と大きく叫ぶと、彼女たちのプレデビュー曲「Make you happy」からライブがスタート。当時も話題をかっさらった“縄跳びダンス”のキュートさは健在。「SWEET NONFICTION」では恋する乙女のリアルなドキドキを明るく元気に、そしてほんの少し切なく表現してみせるMAYAの表情にドキッとして、ファンキーなサマーチューン「Super Summer」はAYAKAの弾むボーカルにはじまり、会場が一体となってタオルを振り回す。5月にリリースした「Shining day」は落ち着いた曲調とラストのMAKOのファルセットに胸にグッと掴まれ、大人になったNiziUを感じて、思わずしみじみと感じ入ってしまう。同じく5月リリースの「LOVE LINE –Japanese ver.-」はレトロポップな楽曲にNINAとMIIHIのクリアなハイトーンが会場に響き渡り、ドラマチックなステージに。そして今回初披露となった「What if」の日本語バージョンではメンバーもオーディエンスも一緒になって拳を突き上げ、大きな声を上げ、疾走感のあるメロディの曲を駆け抜けた。RIMAとMAYUKAの超弩級にかっこいいラップにはじまり、NINAのハイトーンへとつながる「JUMP」ではかわいらしいNiziUしか知らない観客の度肝を抜き、続く「Love & Like」ではミュージカルのように1曲でさまざまな表情を見せる楽曲をパワフルに、伸びやかに歌い上げる。小刻みにリフレインされる歌詞にRIKUのハイトーンが重なり、RIOをはじめプリンセスのように優雅に踊る振り付けが特徴的なこの曲は、音階を自在に行き来しながらもピッチを外さない超絶技巧を見せつけ、彼女たちがどれほど努力してきたかを想像させる。もともとオーディション番組で選抜された精鋭ぞろいではあるけれど、デビュー以降も実力を磨き続けたNiziUの堂々の“現在地”。最後に披露した「Take a picture」では実力派アーティストへと成長を遂げた姿を見せた。
Text:尹秀姫