そして、今回の「DETOX FINAL TOUR」は、「強いメッセージとともに回ったツアーで、世界に出ている日本人としてできること、いろんな観点といろんな気持ちを持って、1歩ずつ1本のライブにかけてきました。今回はみなさんたちのエネルギーを借りながら、みなさんたちありきのライブをやりたいと組ませてもらったツアーです」とTakaも言っていたように、歴代の人気曲やメドレーを織り交ぜたセットリストに一新しつつ、それらの楽曲が『DETOX』のメッセージともつながる普遍性を感じさせるという進化をとげていた。さまざまなドラマが生まれた「DETOX TOUR」を通して芽生えた連帯、YAO(ヤオ:Awich、CHICO CARLITO、ONE OK ROCK、Paleduskの4組による音楽プロジェクト)という新たなバンドへの派生など、全てがONE OK ROCKというバンドを強靭なものにしていたのである。筆者は9月5日の公演を観たが、アリーナがオールスタンディングで設定されたZOZOマリンスタジアムは、サークルモッシュやウォールオブデスがあちこちで起こる、日本におけるスタジアム規模のライブでは観たことのない景色が広がり、スタンド席も含め、ものすごいエネルギーが生まれていることに感動した。1年半をかけて世界をまわった「DETOX TOUR」を経て、単なる追加公演とは言えない、意義深いものを感じたのである。
9月5日、ZOZOマリンスタジアムの客席は3万5千人のオーディエンスでぎっしりと埋め尽くされていた。ステージに地平線のような青い光のラインが広がり、Tomoyaのドラミングが響き、壮大なスケールを感じさせる「Fight the night」で幕を開けた。同曲は彼らがアメリカに拠点を持ち、本格的に海外での活動をスタートさせた2015年のアルバム『35xxxv』収録曲である。このときのツアーでも印象的だった演出と同じく、白く光るLEDをバックにTaka、Toru(G)、Ryota(B)、Tomoya(Dr)のシルエットが映し出される。『35xxxv』から10年が経った、「DETOX TOUR」はヘッドラインショウのみで全世界で80万人を動員(アジア公演も含む)する過去最大規模を大きく更新したワールドツアーとなったが、バンドサウンドの重みと歌の説得力が半端ない。続く、「Taking Off」でも大きな歓声があがる中、「準備はいいか。思う存分楽しんで!」とスモークジェットが吹き上がる。「Prove」の<答えのない時代に 君は何を思う?>もそうだが、『DETOX』の収録曲ではない楽曲群が、『DETOX』のテーマ、そして混沌を極める2026年の今ともリンクするように新鮮にずっしりと響き会場を圧倒する。
Taka(Vo)(photo by Kosuke Ito)
「ついに最終日を迎えました。今日のみなさんたちに与えられた使命は……アリーナのみなさん悔いのないよう思う存分暴れてください。スタンド席のお前ら、その場からでも思いをぶつけてくれ。よろしくお願いします」と「The Beginning」へ。スタジアムのアリーナでサークルモッシュが起き、RyotaとToruもそれぞれがステージの両端までいき会場をあおる。スタンド席もみんなで肩を組んでヘドバンをするなど、ヒートアップする。「Make It Out Alive」では手拍子と会場全体がジャンプし、Takaが人差し指を高く掲げぐるぐる回すとアリーナのあちこちにサークルができ、「Puppets Can’t Control You」では、Takaのシャウトがつんざく中、大合唱が起きる。赤いレーザーに包まれた「Liar」まで、手拍子やコールアンドレスポンスが起き、会場全体がまさに止まらない勢いだった。
オープニングからぶっ通しできていた中、「なにか一つ忘れてない?」と歓声を待つRyota。会場から誕生日を祝う声があがると「昨日で37歳になりました! 昨年もこの時期にライブで祝ってもらって、ありがとう!」と会場を和ませた。
続いて、2020年10月11日に開催した「ONE OK ROCK 2020 “Field of Wonder” at Stadium Live Streaming」以来となる、ZOZOマリンスタジアムで単独ライブを行う経緯が、Tomoya、Toruにより語られた。
「コロナのとき、無観客ライブをやったのがここなんですよ。そのときはそのときで、ライブができる幸せを感じることができたけど、ここに戻ってきて、満席の会場でみんなを観ることができて幸せなことだなと改めて感じました。決してあたりまえじゃないこの景色、この空間……最後までよろしく!」(Tomoya)
「6年前かな、ここで無観客ライブをやったときめちゃくちゃ寂しかったんですよ。カメラの向こうに届けることがどれだけ難しいことか思い知らされて、すごくドキドキしながらカメラに向かって演奏したことを覚えています。ファイナルで帰ってこられましたよ!」(Toru)
そして、Toru、Ryota、Tomoyaのインストパートが世界をまわってきたスケールのハードロックを聴かせ、会場の空気を変えたかと思うと、『DETOX』に3曲参加するDAIDAI(Paledusk)がステージ上手から彼独特のギターソロを鳴らしながら登場。そして、旗をかかげたラッパーのAwichとCHICO CARLITOの姿も見える。YAOである。この新プロジェクトはAwich、CHICO CARLITO、Paledusk、ONE OK ROCKという4組のアーティストによって結成。『DETOX』のツアー中に誕生した11人組のバンドである。1stシングルの「777」から11人の迫力がすごい。スタジアムの巨大なステージが小さく見えるほど、ツインドラム、ツインベース、3ギター、さらに、ラップと、KAITO(Paledusk)によるメタルコアのシャウトとTakaのボーカルがカオティックでありながらも必然のように美しく混じり合っている。この日は、TakaがモハブログとのDMの流れで、急遽「ライブ出る?」的なノリでステージ上にあがったモハとマゼンの2人も加え、ステージを盛り上げ、会場も<7777>と大合唱になっていた。
YAO(photo by Masahiro Yamada)
「われわれがバンド1年生のYAOです」とKAITOが自己紹介をはじめる。「バンドを20年やっているとほかの刺激がほしくなる。シンガーとして挑戦していたいし、友だちとしても進行を深めて、仲間となったこのバンドに助けられた」というTaka。リリースしたばかりの新曲「ありふれた世界の果てに」では、AwichとCHICO CARLITOの故郷である沖縄の民謡を思わせる楽曲で、冒頭のメロディをTakaから歌うのだが、誰もが口ずさめる人なつっこさとともに、<イーヤーサーサー>というインパクト、そして大合唱のあと、沖縄の歴史を踏まえた迫真のラップと歌で、平和への願いを壮大に伝えた。この11人でなければ生まれなかった曲である。続く「C.U.R.I.O.S.I.T.Y.」と「One by One」も強烈。ロックとヒップホップというジャンルを超えた融合と個性豊かな11人が、それぞれの個性を活かしたままで、美しく共存し、ステージを掌握していた。「One by One」でのToruとDAIDAIとTSUBASAのギター3人のアクションもど迫力だったが、ONE OK ROCKとしてのTakaのシャウトの進化やサウンドのスケール感は、こうしたアーティストとの交流も大きいように思えた。
「ONE OK ROCKは活動20年を超えました。こんなに音楽を続けられるとは正直自分でも思っていませんでしたが、みなさんたちがいるから続けられています。世界をまわってみて感じたこと……それは、そんなに簡単に世界は変わらないということでした。もちろん、変えられるたくさんのことを手に入れてきましたが、同時に変えられないこともたくさん見てきました。僕らがそれでもなお、なぜ音楽を鳴らし続けるかというと、世界中に僕らを待ってくれているファンの人たちがいるというたった一つの事実があるからです。世界平和というテーマを掲げてツアーを回ってきたけど、残念ながら世の中はどんどん悪い方向に向かっている。でも、悪いこともいいこともいつまでも続くことはない。だから僕らは、続けることの重要性を再認識することができた。残酷な世界に生きている中でも希望を忘れてほしくない。音楽はみなさんの背中を押してくれるものだと思います。今の世界にとっても大事な曲、歌ってください!」
「+Matter」である。1人1人を尊重し、それぞれが大切な存在であることを肯定し、一緒に進もうというこの曲で、会場全体がジャンプし揺れていたが、「Stand Out Fit In」では、アリーナもスタンドも全員がしゃがんで一斉にジャンプするクラウドジャンプまで起き、スタジアムの会場でこうした光景が実現する、バンドのロマンが詰まっているように観えた。本編ラストは「Wasted Nights」。一度きりの人生を、一つ一つのライブへ真剣勝負してきたONE OK ROCKと3万5千人が後悔のない夜にする、その瞬間であった。光の中で歌い上げ、空を見上げるTaka。オーディエンスとの一期一会で作り上げるライブの本質がはっきり観えているようだった。
(photo by Kosuke Ito)
アンコールは、「We are」だった。いつものように大合唱が起きるこの曲で、Takaは客降りし、アリーナの外周を走り回る。RyotaとToruもメインステージから客降りし、オーディエンスのできるだけ近くから、その熱を伝える。「まだ行けるかー?」と「キミシダイ列車」では、Takaが下手側の外周を回り、メインステージに戻ってくると、「思った以上に残された時間は短いんだ。お前ら、絶対に無駄にしないと約束しろ!」と大合唱を誘う。ラスト「Mighty Long Fall」では、「この光景を収めろ」とスタンド席の観客に撮影を促した。アリーナの前方から後方までものすごい勢いでたくさんのサークルモッシュが起きる中、「分かれろー!」とTakaが叫ぶと、巨大なウォールオブデスが生まれ、会場全体が全力でONE OK ROCKに向かう、この日一番の熱狂が生まれていた。「これが世界のONE OK ROCKだ」と挑発するTaka。そして、この夏を終わらせるように、大きな花火があがった。筆者も、日本で、かつ、スタジアムという大規模な公演で、これほどまでの観客の熱狂をみたのは初めてだった。こんなことが日本であり得るのかという景色だった。全力で1年半を走りきった中で、彼らが日本で観たかった景色を、観客はメンバーへ届けられたのではないかと思う。素晴らしいファイナルだった。
(photo by Kosuke Ito)
なお、「ONE OK ROCK DETOX JAPAN TOUR FINAL 2026」千葉・ZOZOマリンスタジアム最終公演の模様が10月9日20:00よりLIVESHIPにて有料配信される。ぜひともチェックしてほしい。
1. Fight the night
2. Taking Off
3. Prove
4. The Beginning
5. Make It Out Alive
6. Puppets Can't Control You
7. Liar
8. Delusion:All (Acoustic ver.)
9. The Pilot</3 (Acoustic ver.)
10. Tropical Therapy
11. Instrumental
12. 777(YAO)
13. ありふれた世界の果てに(YAO)
14. C.U.R.I.O.S.I.T.Y. (YAO)
15. One by One(YAO)
16, メドレー(Bombs away、Wonder、Deeper Deeper / 69、Start Again、恋ノアイボウ心ノクピド、Clock Strikes)
17. +Matter
18. Stand Out Fit In
19. Wasted Nights
ENCORE
20. We are
21. キミシダイ列車
22. Mighty Long Fall
23. 完全感覚Dreamer(9月6日公演のみ)