NIKO NIKO TAN TAN/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー
音楽+映像で表現するNIKO NIKO TAN TANが降り立った現在地を探る
特集連載
第18回
NIKO NIKO TAN TAN(左:Ochan、右:Anabebe)
曲の展開を映像ベースで考えられるんですね。やっぱり音だけで考えるよりも断然発想が広がります(Ochan)
── そもそもの始まりが、バンドをやろうというところからではないんですよね?
Ochan そうなんですよ。始まりは、僕と映像を担当しているSamson Lee(サムソンリー)が、それぞれに音楽と映像を作りあって発展させていくという感じでしたね。それで今の形になっていきました。
── じゃあ音楽と映像が最初から半分半分だったんですね。
Ochan これまでバンドをやってきたので、バンドをやらない感じでバンドをやりたかったというか。
── バンドが嫌になった?
Ochan ま、単純に言ったらそういうことですね(笑)。行き詰まりを感じていたというか。でも結局やってるという(笑)。
── ははは。でも今の形のものをバンドというかどうかっていうのは、また面白いところですよね。何せ、ボーカルとシンセ、コンポーザーのOchanとドラムのAnabebe、そしてSamson Leeが映像と作詞を担当して、さらにモーショングラフィックに長けたDrug Store Cowboy(ドラッグストアカウボーイ)という映像クリエーターがいるわけですから。
Ochan たしかにそうですね。さっき言ったみたいにSamson Leeと一緒にやり始めた時から楽しかったですし、AnabebeとDrug Store Cowboyが加わって、さらにやれることが広がっていったんで。
── 少し意地悪な質問ですけど、音楽にダイレクトに関与しているのがOchanとAnabebeのふたりじゃないですか。バンドと比べた時に難しさや物足りなさはなかったですか?
Ochan いや、それはないですね。まあ人数が少ないというくらいで。Anabebeとはずっと一緒にバンドをやっていたので、ふたりだけでも十分やりたい音を出せるんですよね。何より、曲を作る段階から映像と一緒にやれる新鮮さが大きいです。
── 例えばどういうところに新鮮さを感じますか?
Ochan 曲の展開を映像ベースで考えられるところですね。やっぱり音だけで考えるよりも断然発想が広がるんです。思いも寄らない展開をしていくというか。そういうことは今までやっていたバンドでは味わえない体験でした。
── どういうふうなプロセスで1曲ができていくんですか? そこにすごく興味があります。
Ochan 曲によっても違うんですけど、大体のパターンをざっくりで言うと、まずは僕が曲のデモを作ります。それを音楽チームはスタジオで合わせて、映像チームはMVのイメージを考えていきます。で、ガッチャンコする時に、例えば「もうちょっと全体の尺がほしい」とか、「ここはガラッと曲を展開させよう」みたいな話し合いをしていくので、本当に音楽と映像を同時にミックスしていく感覚なんですよね。
Anabebe 曲によってはデモ段階でもうMVを撮ったりもしますね。
── へー。じゃあ、後で音楽が追いかけていく感じ?
Ochan & Anabebe そうそう(笑)。
── OchanとSamson Leeがやり始めた時に、目指していたものってあったんですか?
Ochan 自分たちの作ったものを誰かに聴かせたり見せたりということはまったく考えてなかったんです。あるとすれば、お互いのリハビリというか(笑)。僕はバンドでできなかったことをやりたかったし、Samson Leeは映像クリエーターとしてクライアントワークではない自由なものを作りたいと思っていただけなので。
── あらゆるシガラミみたいなものをなくしたところで自由に発想してみたかった?
Ochan そうですね。肩の力を抜いて誰に聴かせるでもなく、作りたいものを自由に作りたかったっていうところからでしたね。
── それこそが本来、創作の出発点であるべきなのにね。だから行き着いた形が普通のバンドとは違うものだったっていうのは、そのへんにルーツがあるんでしょうね。
Ochan こうやってインタビューをしてもらったり、ラジオに出演させてもらったりということも、もちろん想定していなかったことではあるんですけど、4人になって作っていくうちに、いろいろなきっかけが増えてきて、多くの人に聴いてもらえるようになったんですよね。だからそこも、すごく自然で自由な感じでこうなったというか。
Anabebe だって、フジロック出たら解散しようって言ってたもんね(笑)。
小学校上がってしばらくして、『おまえドラムな』って、YOSHIKIモデルのスティックを渡されました(笑)(Anabebe)
── 作詞に関してはSamson Leeが担当しているんですよね。それはやっぱりストーリーを担う部分が大きいからですか?
Ochan そうですね。結成当初に僕が歌うことはまったく想定していなくて。でもそもそも4人のうちふたりが映像担当だしってことで僕が歌うことになり、じゃあ歌詞どうしよっか?ってなった時に、Samson Leeは元々言葉に対しての感性が敏感だったので、自然な形で彼が歌詞を書くようになりました。おっしゃったみたいに歌詞は映像のストーリーと密接してくる部分でもあるので、そこもあって彼がやった方がいいだろうと。
── とは言え、言葉に関するやりとりもあるんでしょう?
Ochan ありますね。デモの段階で思いついたフレーズを入れたりしているんで。それってやっぱり音に紐づいた言葉だったりするんで、そこは大事にしようっていうのは共通認識としてあります。
── 言葉の感覚が独特で、もちろん音楽的であるのは間違いないのですが、総体として映像的というか、やはりそこはNIKO NIKO TAN TANならではの部分だと思いました。Samson Leeの書く歌詞に関して、Ochanはどのように感じているんですか?
Ochan ある主人公を置いて、その人物がそこからどう動いて、何を感じるかをすごく俯瞰で眺めているようなイメージがありますね。もちろんいろんなパターンがあるんですけど、ベースにあるのはそういう感覚なのかなと僕は思いますね。
── 音楽のバックボーンは皆さんバラバラですか?
Ochan 全然違います。
Anabebe 僕はドリーム・シアターとかハードロックがバックボーンとしてはあります。そこからエレクトロニカに行ったりという感じですかね。
Ochan Anabebeは5人兄弟なんですけど、全員楽器をやってるんですよ。音楽一家なんです。
Anabebe 6歳くらいの頃から家でザック・ワイルド(※元オジー・オズボーン・バンドのギタリスト)とかイエスとかがガンガン流れてましたね。
── ハードロック教育が行き届いていますね(笑)。
Anabebe なんかこれ知ってる曲やなって思ったら子供の頃に聴いたことのある曲やって(笑)。
Ochan 担当パートもドラムって最初から決められていたらしいです(笑)。
Anabebe 小学校上がってしばらくして、「おまえドラムな」って、YOSHIKIモデルのスティックを渡されました(笑)。
── ドラム歴長!(笑)。Ochanは?
Ochan ピアノをやってたんですよ。3、4歳くらいから。でも教室に行くのが嫌で……。
── 習い事ってそうなりますよね。
Ochan 自分の意思でバンドをやり始めたのは高校からです。どちらかと言うと僕はトラックメイカーが作る音に惹かれることが多かったですね。
Anabebeがライオン、僕が調教師で、ステージを映像が演出していくというサーカスみたいなイメージなんですよ、僕らのライブというのは(Ochan)
── 新曲『WONDER』について伺います。まずどういうイメージがあったんですか?
Ochan コロナの自粛中に作った曲だったんですけど、本当に外を出歩くこともなくなりましたし、ライブもなくなってしまいました。どこか刺激がなくなっていく毎日に、「WONDER=欲望、高揚感」を音楽で表現したいなと思ったのがきっかけでした。逆張りというか、あえて派手な感じの曲を作りたいと思ったんですよ。好奇心というか快楽というか、そういう楽しい気分を自分の中で忘れないでおこう、呼び起こそうっていうテーマがありました。
── いきなりド派手な始まり方しますよね。カンフー映画っぽいレトロフューチャーな感じというか。
Ochan そこがだから、映像ありきだからこそ出てくる部分なんですよね。なかなか音だけだと出てこない発想というか、あのイントロは。勇気がいるんですよね。でも映像があることによって振り切れるというのはNIKO NIKO TAN TANの音楽の作り方のど真ん中としてあるものです。
── なるほど。映像に預けられる感じというか。
Ochan そうですそうです。
── 映像は、どういうふうに作っていったんですか?
Ochan 渋谷の街なかとか、僕らの住んでいる街の近所とか、夜中に練り歩いてスナップみたいにサッと撮ったものをつなぎあわせたんですけど、ストリート感を出していきたいというイメージが映像においてはありましたね。
── 登場人物のふたり以外は一切ひとが映っていないのが、コロナ感というか、地球によく似た違う惑星みたいな感じがあって、ものすごくストレンジでした(笑)。
Anabebe めっちゃわかる(笑)。
── 人がいないというのは最初から意識していたことだったんですか?
Ochan そこは狙いとしてありました。まさに異世界感というか。
── 人類滅亡後の地球というか。
Ochan いい読みしますね(笑)。
── 『WONDER』でのバンドの進化は感じましたか?
Anabebe Ochanがデモを持ってきた時に、ちょっと今までとは違う感じでいこうと思ってるんやなっていうのは感じましたね。それが進化かどうかはわからないんですけど。
Ochan まあたしかに、いつもとは違う感じにしたいなというのは思ってましたね。BPMの速い曲を作ろうと思ったというのがそもそもで。コロナのことも関係しているんですけど、自分はどういう音楽に高揚感を感じるのかなって考えた時にやっぱりダンスミュージック、しかもディスコ寄りのグルーヴというかビート感、雰囲気を今はすごく求めているなと思ったんですよね。頭で考えてどうこうっていうよりも、とにかく体が動く音楽がほしいっていうのは確実にありました。
── 5月7日にGINZA SONY PARKで行ったライブの映像を拝見しました。映像チームも加わったライブという空間は、NIKO NIKO TAN TANにとって、むしろ主戦場なのでは? と思いました。コロナがあってなかなか思うようにできない日々が続いたとは思いますが、これからライブはどんどんやっていきたいという気持ちはありますか?
Anabebe めちゃくちゃありますね。
Ochan そのGINZA SONY PARKは、初めて映像チームがVJとして加わってできたライブだったんですよ。結構実験的なこともやりつつ、あれを経験することによってやりたいことが見えたかなというのもありますね。
── それはつまり?
Ochan 抽象的かもしれないんですけど、Anabebeがライオン、僕が調教師で、このふたりが立ったステージを映像が演出していくというサーカスみたいなイメージなんですよ、僕らのライブというのは。
── ああ、曲によって出し物が変わるような。
Ochan その切り替えとかストーリーのつなぎを映像が担うことによって、ライオンが自由に暴れられるという感じですね。
── 『WONDER』から3カ月連続シングルリリースとなりますが、これに関してはどういうイメージなんでしょうか?
Ochan 3つとも全然違うタイプの曲をリリースするんですけど、現時点での僕らの名刺代わりというか、全部ひっくるめてNIKO NIKO TAN TANっていうものになればいいなと思っています。
── 11月21日(日)にWWWで行われるワンマンライブ『微笑坦々』、楽しみにしています。
Ochan そうだ、それ言うの忘れてた(笑)。
Anabebe 初ワンマンです。
Ochan もちろん映像チームと一緒にやりますし、サポートメンバーも入るので。NIKO NIKO TAN TANの現在地を示せたらいいなと思っています。
Text:谷岡正浩 Photo:矢部志保
リリース情報
4th デジタルシングル「WONDER」
2021年9月22日(水) ダウンロード&ストリーミングリリース
5th デジタルシングル「ヨルガオ」
2021年10月20日(水) リリース
ライブ情報
NIKO NIKO TAN TAN 1st ワンマンライブ“微笑坦々”
2021月11日21日(日) 渋谷 WWW
17:30開場/18:00開演
チケット代:オールスタンディング (立ち位置指定あり) 3,000円
詳細は公式サイトで確認を⇒https://www.nikonikotantan.com/
プロフィール
NIKO NIKO TAN TAN
2019年結成。音楽担当と映像担当を擁する、クリエイティブミスクチャーユニット。メンバーは、Ochan(オオチャン/Vo,Synth,etc/作曲)、Anabebe(Dr/編曲)、Samson Lee(サムソンリー/映像/アートディレクター/作詞)、Drug Store Cowboy(ドラッグストアカウボーイ/映像/モーショングラフィック/アートディレクター)。4人で楽曲とミュージックビデオを同軸で制作するという斬新な手法を取ることによって、音楽・映像・アートが混合した表現を世に送り出し、さらに音楽性も様々なジャンルの要素を自由な発想で取り入れたオルタナティブミュージックを追求する、まさに「ミクスチャー」なクリエイティブを生むユニット。2019年8月にデビューシングル『東京ミッドナイト feat. Botani / キューバ気づき』をリリース。2020年11月に1stアルバム『微笑』をリリースし、同年12月には、VANS主催『VANS MUSICIANS WANTED』のアジアTOP5 に選出される。2021年9月22日、3カ月連続シングルリリースの第一弾として『WONDER』を配信リリースした。
関連リンク
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公式サイト : https://www.nikonikotantan.com/
番組概要
放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
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