Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

South Penguin・アカツカ/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー

本音と建前の間を行ったり来たり。South Penguin・アカツカの考える音楽をやるロマンとは?

特集連載

第33回

僕はサインがしたくてバンドをやっていると言ってもいいくらいなのに

── アルバムのリリースが2年半ぶりになります。ほぼ丸々コロナの期間とかぶるのですが、その影響というのはあったんですか?

アルバムの制作や活動自体に特に影響があったわけではないんですけど、ただ目に見えない部分というか、何がしかの影響というのは受けていたのかもしれないですね。バンドがやりやすかったのかと言われれば、決してそういうわけではなかったので。レコーディングなんてやる気も起きなかったですね(笑)。ひたすら酒を飲んで寝るという、怠惰な生活を送っていました。

── (笑)。でも2020年6月に『bubbles/mad love』という作品をリリースしていますから。

かろうじてシングルを。

── ちなみに1stアルバム『Y』をリリースした時点で、次のアルバムの構想というのはチラッとでもあったりしたんですか?

まったく考えてなかったですね。燃え尽きていました。このアルバムで3年くらい評価を受け続けたいって思ってたんですけど、なかなかそういうわけにもいかず(笑)。

── 中国や台湾で頻繁にライブをしていましたよね。

そうですね。コロナの影響で言うならそこが一番あったかもしれないですね。決まっていた中国でのライブも飛んだりしましたから。

── 中国や台湾でライブをするきっかけは何だったんですか?

単純に向こうのプロモーターの人が声をかけてくれて。タダで海外旅行に行けるんだっていうくらいの感じで行って、ライブをやったら割と現地のオーディエンスの人たちが盛り上がってくれて。それで、コンスタントにライブに呼ばれるようになったっていう感じですね。

── South Penguinはどういう受け止め方をされていたんですか?

まずオーディエンスのタイプが日本と向こうでは違うというか。日本の人たちは良いと思っていても反応が薄かったりするんですけど、中国や台湾の人たちは良いと思ったらボディランゲージでも何でも、積極的に反応を示してくれるんですよね。めっちゃサインを求めてくれたりして。もう大好きですね、そういうの(笑)。日本の人はあんまりサインさせてくれないんで。何だったら僕はサインがしたくてバンドをやっていると言ってもいいくらいなのに。

── やっぱりロックバンドとしての受け止め方なんですか?

いや、もうちょっとドリームポップというかネオアコというか、バンド名にPenguinって入ってるから、ちょっとかわいいフワフワした感じで受け止められてるんじゃないですかね。僕らとしては、かなりアバンギャルドなアプローチをしているんですけど。でも、海外の音楽の影響をそのままというよりは、そこに日本の歌謡曲のエッセンスとか自分のセンスを落とし込んで作っているので、もしかしたらそのあたりがキャッチーに受け止められているのかもしれないですね。

今回は歌詞にも一貫性はありませんし、曲調のバランスを取ったりもしてない

── 2ndアルバム『R』の制作はいつ頃から着手されたんですか?

すげえ最近です。2021年の5月とかなんですよ。その時点でデモもまだ全然できてなくて、とりあえずシングルを出すつもりだったんですけど、せっかくスタジオを押さえてバンドで録音するんだったら、もうちょっとまとまった曲数を録ってアルバムにした方がいいんじゃないかっていう話になって、そこから大急ぎで曲を作り始めました。

なので昔あったデモもブラッシュアップしたりしつつ、結果アルバムに収録されている曲の半分くらいは5月以降に作った曲です。

── そうすると今回収録されている7曲というのは、意識としては一塊りなんですね。

そうなんですけど、何のコンセプトもないんですよね。作った時期が近いというだけで。前作の『Y』のときは“美しさ”というテーマを設けて、そこに向かって曲を作っていくっていうコンセプチュアルな部分があったんですけど。今回はこういう曲を作ろうっていうイメージすらなく、ただ録り溜めていたものであるとか、その時自分から出てきたものを一塊りにしただけ。歌詞にも一貫性はありませんし、曲調のバランスを取ったりもしてないので、自分の中でコンセプトなり何かを設けたりはしなかったんですよね。

── 1曲1曲仕上げていったという感じ?

そうですね。今はこういう気分だからこういう曲を作ってみようっていう感じですね。

── アカツカさん以外のメンバーは今でもサポートメンバーという形をとっているんですか?

そうではあるんですが、サポートメンバーというほど軽薄な関係ではないというか。ほぼほぼバンドメンバーです。楽曲作りもライブも決まったメンバーでやってますからね。

── アー写が象徴的なんですけど、それでもやっぱりアカツカさんとそれ以外のメンバーとの間には薄い幕みたいなものがありますね。

アー写もそうなんですけど、ジャケットに関しても僕は一切口出ししないんですよ。なので気づいたらアー写はこうなっていました(笑)。だいたい曲のアレンジもほぼ何も言わないでメンバーに託すので。

── そこまで信頼しあえるメンバーなのにサポートメンバーのままなのは?

僕がシャイで言い出せてないだけですね(笑)。バンドメンバーになってくれるなら、よろしくお願いしますって感じなんですけど。ただ、このサポートメンバーたちもそれぞれ忙しいので、例えば3人はバンドメンバーになるけどふたりはならないってなったら嫌だなと思って。みんな一緒にだったらいいんですけどね。

── タイトルの『R』は何のRですか?

今言ったみたいに、僕はジャケットにも一切口出ししないので、上がってきたものを見たら赤かったので、「レッドやな〜」と思って、僕もアカツカだし、前作はアルファベット一文字だったし、じゃあ『R』でしょうと。

── なるほど(笑)。

ジャケットのイラストは、何だったら本格的にアルバムの制作作業に入る前にすでにありましたね。むしろアルバム全体がジャケットに引っ張られていったと言えるかもしれない(笑)。

僕はめちゃくちゃ売れたいって思ってるんです。音楽じゃなかったとしても世に出たいんです

── 1曲目の「vitamin feat.没 a.k.a NGS」はいきなり強力ですね。高校生の時にはじめてJAGATARAを聴いた時の興奮が蘇りましたよ。

うれしいですね。この曲を作っている段階でJAGATARAっていうキーワードは確かにありました。

── あ、そうですか。特に没さんが入ってくるあたりの江戸アケミ感がすごい(笑)。

ははは。没くんもアバンギャルドでファンキーな、踊れるものって好きだと思うんですけど、僕らも大好きなんですよね。さっき中国や台湾でドリームポップ的な捉えられ方をしているかもっていう話をしたんですけど、僕らとしてはもっとダンサブルな音楽の方向で捉えてほしいなっていうのは、今までの作品においてもあって。なのでイメージを払拭したいという意識もあり、こういう振り切った感じの曲を作ろうっていうことでやりましたね。

── それをあえてジャンルで言うと何ですか?

僕はJ-POPだと思っています。さらに言うなら、ニューウェーブが好きだから、J-WAVEとしておきましょうか(笑)。

── はははは。アカツカさんのニューウェーブ感がもろに出ているのが2曲目の「thinker」ですよね。

これは完全に手癖で作った曲ですね。なので意図とかそういうものではなく、自分から自然に滲み出たものがあるのかもしれないですね。

── SONAR TRAXになっているのが4曲目に収録されている「gadja feat.Dos Monos」ですね。この“gadja”という言葉に意味はないんですよね?

何の意味もないですね。

── 曲の中でアカツカさんが歌唱している部分の言葉、あれは?

ドイツの詩人のフーゴ・バルの『Gadji beri bimba』という詩があって、それ自体がほとんど意味のない言葉で書かれたものなんですけど、それを僕が歌いやすいように入れ替えたりしているので、さらに意味はないんです。フーゴ・バルの詩がなぜ出てきたかというと、トーキング・ヘッズが最初にアフロ・ビートに挑戦した頃の曲で「イ・ズィンブラ」っていう曲があるんですけど、その曲のカバーをしようぜって言ってて作り始めたんですよ。

そしたら僕が自分の色を出しすぎて、全然違うものになっていったんですよね。経緯はどうあれ、オリジナルになっていった。でもちょっと不安だったので、そこにDos Monosが入ってくれれば完全にオリジナルになるだろうと(笑)。

── そうするとDos Monosはどの段階で一緒にやろうと思ったんですか?

そもそも最初の段階でDos Monosと「イ・ズィンブラ」のカバーをやろうかって始めたんですよ。

── そうなんですね。Dos Monosとは前作でも荘子itさんと一緒にやっていますし、今作の中でも没さんが参加されています。彼らと共鳴する部分はどういうところですか?

同い歳なんで、話が早いところがあるというのは大きくて。彼らもアバンギャルドなものが好きだし、僕らも一筋縄でいかないけど音楽として気持ちいいなっていうものが好きだし、そこが一番共通している部分かもしれないです。もしかしたらキャッチーな音楽ではないかもしれないんですけど、一聴すれば気持ちいいな、カッコいいなっていう音楽ですね、僕らが目指しているものっていうのは。そういう意味では、Dos Monosも僕らも、非常に快楽主義ではありますね。

── Dos Monosとやる場合はどういうふうに制作していくんですか?

もう単純で、オケをこっちで作って、出来たやつを渡してっていう。

── じゃあリリックの内容や方向性に関しても何かを言ったわけではなく。

一切言ってないです。まだリリックをちゃんと読んでないですね(笑)。放送禁止用語とか言ってなければいいかなって。

── ということはもうSouth PenguinとDos Monosの基礎体力がぶつかり合った曲ですね。

そうかもしれないですね(笑)。何もリクエストせずに出来上がってますから。

── 後半にものすごい凶暴なギターが入ってますね。

はははは、邪悪なやつが(笑)。あれは僕がデモで入れたものをそのままメンバーにやってもらってるんですけど、割と曲的にもハッピーな感じとか爽やかな感じが一切なかったので、だったらおどろおどろしい方向に振り切りたいなっていうのがありました。それと、楽曲的にはアフロ・ビートを基調にしていたり、ファンキーに聴かせるものとして作っていて、わかりやすくドーンというものがなかったので、最後にめちゃくちゃ歪ませようと、安直ですけどそこは男の子なので(笑)。

── 曲を聴いてもそうだし、お話をしていても感じるんですけど、サウンドアプローチに関して、絶対に日和たくないっていう強い意志を感じるんですよね。

僕はめちゃくちゃ売れたいって思ってるんです。それは別に音楽じゃなかったとしても世に出たいんです。いろんな芸能人に会いたくてバンドやってるみたいなところがあるんで(笑)。そのために僕ができるのがバンドだったっていう話で。ただ、芸能人に会うための音楽ってもっとあると思うんですよ、普通に考えて(笑)。でも僕は芸能人全員に会いたいわけではなくて、自分の好きな芸能人に会いたいんです。

そういう人たちって、カッコいいことをやっている人たちなんですよね。で、カッコいいことやっている人たちの作品は妥協がないので、僕がそういう人たちに会うためだけの、妥協しまくったイヤらしい音楽を作るようになったら、自分的にはうれしくないというか、そこは対等でいたい。芸能人に会いたいって言うと結構笑われることも多いんですけど、そこは僕の中でロマンがあって、そういう人たちに自分の本気の作品をいいって言ってもらいたい。だから特にサウンドに関しては、音楽をやるのであれば妥協しないようにしていますね。

── 妥協したものを作って、尊敬する人に会ったとしても、自分の作品をその人に説明できないですもんね。

そうなんですよ。これはどういう意図で?って聞かれて、あなたに会いたくてって。そんなのただの迷惑だしダサすぎるじゃないですか(笑)。気を抜いてるところはめっちゃ抜いてますけどね。歌詞とか20秒くらいで作る時ありますから(笑)。だから歌詞に関してはどんどん深読みしてほしいです。

── 3月18日(金)に渋谷WWW Xでリリースパーティーが行われますね。

今回参加してもらったDos Monosとのツーマンライブになります。あとLPの方に収録されている「gadja」にはフィーチャリングで環ROYさんに参加してもらってるんですけど、ライブにも環ROYさんがゲストで出てくれます。僕らはかなり原型のないオルタナティブなライブを最近やってるので、楽しみにしてください。

Text:谷岡正浩 Photo:吉田圭子

ぴあアプリ限定!

アプリで応募プレゼント

South Penguinのサイン入りステッカーを3名様にプレゼント

【応募方法】

1. 「ぴあアプリ」をダウンロードする。

こちらからもダウンロードできます

2. 「ぴあアプリ」をインストールしたら早速応募!

リリース情報

South Penguin『R』アナログ盤
2022年3月26日(土)リリース
品番:DDJB-91222
定価:3,000円(税込)

・収録内容
■A面
1. vitamin feat.没 a.k.a NGS
2. thinker
3. fancy
4. luv revolution

■B面
1. gadja feat.Dos Monos
2. night walker
3. n.t.
4. gadja feat. 環 ROY

South Penguin ニューアルバム『R』
2022年3月2日(水)配信リリース
・収録内容
1. vitamin feat.没 a.k.a NGS
2. thinker
3. fancy
4. luv revolution
5. gadja feat.Dos Monos
6. night walker
7. n.t.
Pre-add / Pre-saveリンク:https://ssm.lnk.to/R_SP

South Penguin「night walker」
2022年2月9日(水)配信リリース
Released by IDL | AWDR/LR2
https://ssm.lnk.to/nw_SP

ライブ

South Penguin “R” release party.
2022年3月18日(金)18:00開場/19:00開演
会場:東京・Shibuya WWW X
料金:前売3,500円/当日4,000円(別途ドリンク代が必要)
出演:South Penguin/Dos Monos
ゲスト:環 ROY
INFORMATION:WWW X

プロフィール

2014年7月に東京で結成。2016年にEP「alaska」でデビュー。2017年6月、台湾での初の海外ライブを行った後、アカツカ以外のメンバーが全員脱退。その後は、サポートメンバーを迎え活動。2017年、2nd EP「house」をリリース。2018年、中国のフェス「Taihu Midi Festival」を含む中国ツアー、2019年には、台湾のフェス「WAKE UP FESTIVAL 2019」を含む台湾ツアーを行った。そして、2019年8月、1st Album「Y」、2020年6月に7INCH「bubbles / mad love」をリリース。2021年8月には二度目の「FUJI ROCK FESTIVAL」出演を果たしている。2022年3月26日(水)に2年半振りとなるアルバム『R』のLPをリリース予定。

South Penguin=アカツカ(g/vo)
Support Member=稲葉航大(b)、礒部拓見(dr)、石崎元弥(perc)、宮田泰輔(g)、ニカホヨシオ(key)

関連リンク

公式サイト:https://southpenguinband.tumblr.com
Twitter:https://twitter.com/S_Penguin_band
Instagram:https://www.instagram.com/south_penguin_band

番組概要

放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
ハッシュタグ:#sonar813
番組LINEアカウント:http://lin.ee/H8QXCjW