新東京/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー
現役大学生のギターレスバンド・新東京が奏でるのは新感覚なネオ・シティポップ
特集連載
第36回
櫻井海音が最新のリリース楽曲からライブイベントまで、“いま聴くべき音楽”を厳選して紹介する『PIA SONAR MUSIC FRIDAY』から、番組連動インタビューを掲載。今回は3月4日に出演した、4ピースギターレスバンド・新東京のメンバー4人に、バンド結成から曲作りについて話を聞いた。
この1年が勝負というか、いけるところまで全力でやり切って突っ走ってみようっていう感じですね(杉田)
── 結成が2021年4月ということは、現時点で活動開始からまだ1年経っていないんですね。
杉田 そうなんですよ。
田中 結成っていうのも曖昧ではあるんですけど。曲を作っていこうってなったのが昨年の4月なのでそうしています。もともと仲が良かったんですよ、友達として。
杉田 普通に楽器で遊んだり、旅行に行ったりとかね。
田中 遊園地に行ったり(笑)。
杉田 ただの友達だったんですけどね(笑)。音楽やろうってなってそこから。
保田 もうすぐ1年なんだね。
── ものすごい速度感ですね。体感としてはどうですか?
田中 思いついたらすぐやるっていうスピード感は大事にしていて。もちろん1曲1曲は丁寧に作るんですけど、とにかくどんどん形にしていくっていう感じでやってきていますね。
杉田 僕たち今、全員4年制の大学に通っていて、昨年の後期から1年間休学したんですよ。そこからの1年間でどれだけバンドとしての実績を残せるかというのを大事にしているんです。ここですべて出し切ることによって結果が出たら、またもう1年休学してバンド活動に集中できるわけじゃないですか。だからこの1年が勝負というか、いけるところまで全力でやり切って突っ走ってみようっていう感じですね。なのでスピード感としては速く感じるのかもしれないですね、まわりから見ていても。
── じゃあ順調に結果が出続ければ延々に卒業できなくなっちゃいますね(笑)。
杉田 なかには大学辞めるためにがんばっているメンバーもいるんで(笑)。
大倉 僕は京都の大学に通っているので、今さら復帰するメンタルが残っていないので、このバンドをがんばりたいです。
── 今はこっちに移ってきているんですか?
大倉 行ったり来たりですね。まだ借りている部屋自体は京都にあるので。
── 去年の後期から休学されたということで、確かに10月に「The Few」、11月に「ユートピアン」「36℃」、12月にEP『新東京#1』、そして1月に「Morning」、2月に「濡溶」と怒涛の楽曲発表が続いていますね。
田中 そうですね。1年間の休学が終わる今年の夏までにどんどん出していきたいです。
杉田 まだまだ曲やアイデアは手元にあるので。
みんなバラバラなんだけど、全員が納得できる形の音楽ができていますね(田中)
── 音楽をやろうとなった時に、4人で確認しあったことはありましたか? 例えば、こんな音楽をやろうぜとか。
田中 なんだろう?
保田 音楽性を確認したことはないよね。
杉田 僕たち4人の感性でカッコいいと思うものを常に追求し続けるっていうのをやっていたら自然と曲にまとまっていったっていう感じですね。
田中 いいメンバーが集まりました(笑)。
大倉 自然にね。
田中 この人は好きなジャンルが違うからダメとか、そういうのは全然なくて、みんなバラバラなんだけど、全員が納得できる形の音楽ができていますね。
杉田 うん。好きな音楽のジャンルはみんな違うんですけど、感性は似ているんですよ。だから出来上がる曲に対してみんなが100%納得した状態で世に出せているというのがバンドとして大事なのかなと思いますね。
── そもそもどうやって繋がっていった4人なんですか?
杉田 出会い方が全員バラバラなんですよ。キーボードのトシ(田中)からみんな繋がっています。
── 田中さんがハブになって集まったわけですね。
田中 そうですね。バンドをやるっていうのは最初から決めていて、この人はドラムでこの人はボーカルでっていう感じで繋がっていきました。ドラムの優真とはバンドのメンバー募集の掲示板で出会っているので。掲示板を見て、上手い人いないかな、いないかなってめちゃくちゃ探して、一番うまかったのが彼でした(笑)。
── じゃあ引く手数多だったでしょう、保田さんは。
杉田 ほんとそうだったよね。
保田 ネット上ではって感じ。
田中 こいつ、誘いを全部無視してるんですよ。
杉田 「うちのバンドでぜひ!」みたいな感じで大量のコメントとかがついているんですけど全部スルーみたいな(笑)。じゃ何のために掲示板やってんのって。バンドメンバーを探すための掲示板なのに。
── あんまり気乗りしなかったんだ。
保田 そうですね。でもトシは曲もすごくカッコ良かったし、高校の時にリモートで初めてコンタクトとったんだよね。で、高校卒業して大学に入った4月に初めて会って話をした(笑)。スタジオ行ってセッションしたよね。
田中 そうそう(笑)。
── で、最初にできた曲が「Cynical City」だった。
田中 はい。コロナでずっと家に篭ってて、PCの前で全部完成させちゃったっていう曲です。
保田 宅録だよね。
杉田 クローゼットの中でボーカルRECはやりましたから(笑)。ハンガーとか掛けるところにマイクを掛けて。扉を閉めて真っ暗な中で歌いました。
── コロナ禍でスタジオに行けないという不便さはあったかもしれないけど、集中して曲を作れるという期間にはなったということですね。
杉田 それは間違いなくそうですね。普通に大学に通ってっていう感じだと、なかなか集中してできなかったと思うので。そもそもこの4人がこういう出会い方をしていなかったんじゃないかな、とも思いますね。大学に入ってすぐコロナだったので、とにかく出会いがなくて、貪欲に自分からコミュニティを探して出会いを求めなければならなかったっていう環境が、今考えれば大きかったのかもしれないですね。
── 「Cynical City」の手応えはいかがでしたか? 注目されましたよね、いきなり。
田中 アプリに最初上げたんですけど、すぐに反響がありましたね。そのアプリの会社の方から連絡があって、この曲すごくいいからぜひ会って話がしたいって言われたり、コンテストでも賞をもらったり、手応えはかなりありましたね。
杉田 その賞をもらったコンテストに出そうっていう目標をある時から立てていたんですけど、完成していないまま期限ギリギリで出したんですよ。さすがにそんな状態で通るわけないじゃんって思ってたらトシから連絡があって、「通ったわ」って(笑)。その瞬間に僕は、このバンドはガチでやっていくんだろうなって確信したんですよね。それまでは、本当にちゃんとやっていけるのかな?って不安もあったんですけど、あの時のトシの「通った」っていう一言にハッとさせられましたね。
── バンドとしてのスイッチが入った瞬間だった。
杉田 そうですね。そこから急に動き出した感じがしますね。
田中 実は「Cynical City」を作っているときは別のベースがいたんですよ。
杉田 方向性の違いで。
田中 というほどでもないんだけど(笑)。まあ、いなくなって。それで、大倉とは高校の時に一緒にバンドをやっていて、また絶対一緒にやりたいなって思ってたから。
杉田 言ってたよね。
田中 京都にいるっていうのはわかっていたんですけど、ずっと連絡して「一緒にやんないか、東京に来ないか」って最初はネタで言ってたんですよ。でも変な人なんで(笑)、ネタで言ってたとしても、ワンチャンあるかもって思って。そしたら最終的に来ちゃった(笑)。
大倉 どこで間違えてしまったのか。
田中 正解だった?
大倉 正解だったかもしれない。
自分たちのやりたいことを最大限にやりつつも、独りよがりにならないようにキャッチーにまとめる(杉田)
── 曲はどういうふうに作っていくんですか?
田中 最初に春音(杉田)に、こういう感じの雰囲気とか、どういう感じの歌詞を書いてほしいかっていうのを伝えるところからですね。
杉田 テーマを話し合ってね、じゃあこういう感じでやろうかって。
田中 で、歌詞をもらって、そこにメロディやアレンジで肉付けしていく感じですね。
── あ、言葉が先なんですね。
杉田 そうですね。
── どの曲も?
杉田 全部そうだよね。
田中 うん。
── そうなんですね。今回SONAR TRAXになっている「Morning」、それから2月23日にリリースされた「濡溶」は、言葉と音の関係性が付かず離れずというか、すごく独特な感じがこれまでの曲よりもさらにあったので、詞先というのは少し驚きでした。
杉田 ただ、お互いにブラッシュアップをしていく過程もあって、先に僕が詞を作って、トシが曲の土台を作るんですけど、じゃあここの音数だったら、もっとこういう言葉の方がハマるんじゃないかっていうことをやって完全体にしていくっていう感じなんですよね。
田中 いいメロディができたら、それに合うよりいい歌詞があるってなるので、そこからどんどん良くなっていくし。
杉田 だから、今おっしゃった感覚は間違いではないと思いますね。
── アレンジに関しては最終的には4人で話し合ってっていう感じですか?
杉田 曲によりますけど、優真もビートメイキングに参加してくれるし、大倉も──。
大倉 僕はバイトをしています(笑)。
杉田 ははは。
── 「Morning」は歌詞自体が短編小説のような味わいがある独特な世界観が魅力ですが、どういうところからの着想だったんですか?
杉田 これは、朝の曲をやりたいなって僕が思ったのが始まりです。朝に聴く曲のイメージって、ポップで爽やかでちょっとテンションの上がる、1日の始まりっていう感じが多いと思うんですけど、そういう朝ではなくて、前日の夜とかにすごい辛いことを考えちゃったり、何かに思い悩んだりした時に、それをそのまま引きずりながら迎えてしまった朝って、誰しもが経験したことがあると思うんですよね。そういう明るさとは対照的な、暗く淀んだ朝の曲を作りたいなっていうところから始まりました。
── 朗読に対して曲をつけたような、そんな感じのする曲ですね。
杉田 基本的に僕の書く歌詞が小説っぽいというか、言葉としても独立している感じがあるからだと思います。
── サウンドとしてこだわったのはどういうところですか?
田中 リヴァーブ深めで、まだ寝起きで意識がはっきりしていないようなモアっとしたサウンドで、それぞれの楽器がよく聴こえて、ボーカルとの距離が近いっていうのは新東京の特徴にしたくて。そういうミキシングを心がけました。
保田 ドラミングに関して言うと、朝だからバチバチ叩くっていうよりも、コソコソコソコソっていう感じを大事にしましたね。
田中 全体的なイメージとして共有していたのは、速いけど全体的に小さい音でやるというか、優しくやるというか、そういう感じにしたかったっていうのはありますね。
杉田 BPMは意外と速いんだけど、そういう感じがしないっていうか。
田中 そういう曲をずっと作りたくて。
── 最初に共有する曲のイメージというのは、ジャンルやタイプではなく、“こんな感じ”をみんなで具現化していくっていうことなんですか?
杉田 そうですね。
田中 次はバラード作ろうとか、次はロックで、とかはないよね。
保田 ないない(笑)。
── で、最新シングルの「濡溶」ですが、この言葉は造語ですよね?
杉田 造語です。
── どういうイメージですか?
杉田 僕は「溶ける」って言葉を入れたくて、トシは「濡れる」って言葉を入れたくて、じゃあソフトランディングしようっていうことで「濡溶」になりました。
── 杉田さんの歌詞には「溶ける」という言葉がよく出てきますよね。
田中 ヤバイじゃん(笑)。
杉田 マジ(笑)。
── いや決してそういうことではなく(笑)。そこに表現者としての根っこみたいなものが含まれているのかなって思いました。
杉田 意識は全くしていないんですけど、確かに何かはあるんでしょうね。
── 境界がなくなっていく感じとか、何かと何かが混ざり合う感じとか、それはすごく新東京の音楽を表しているものだと思いました。
杉田 ありがとうございます。それはうれしいですね。
── 「濡溶」は、「Morning」があったから生まれた、というところはありますか?
杉田 どうなんだろう? ひとつ言えるのは、同じ時期にできた曲ではあるんですけど、すごく気持ちが落ち込んでいる時だったし、暗いモードの時にどちらも生まれたというのはありますね。
── 曲の前半は朗読になっていて、そこからメロディが発生するという構成になっているんですけど、いわゆるポップスの定型からはみ出した作品ですよね。そこは意識されましたか?
田中 春音が結構前に、語りをやりたいって言っていたことがあったんですよ。歌詞を伝える上で、完璧なメロディを当てられたらそれが最高なんですけど、朗読はそれ自体で強さがあるなと思ったんですよね。
杉田 音数とかの制約を全部取っ払える手段が朗読だと思ったので、一度文字数とかの制限をなくして言葉を伝える曲を作りたいっていうのをみんなに提案して、それが形になった曲ですね。
── サウンドはどういうイメージで作っていきましたか?
田中 とにかくローを削るというところから始めて、本来ボーカルが中心にあるんですけど、ドラムがMONOで真ん中でしか鳴っていないミキシングにして、語りに入る瞬間にそれが逆転するんですよね。ボーカルが真ん中に入ってきて、ドラムが左右に分かれていくっていうのをやってみました。で、そこからだんだんローが入ってきて、そこも滑らかに、そっと入っていくようにして、最後ベースが入ってきてすごく盛り上がるっていう感じです。あとは、雷の音とか雨の音とかを入れています。
大倉 入れてるよね、そういうの(笑)。
田中 なんか、すごい盛り上がるところで入れてるんですけど、雨の音として入れてるんじゃなくて、音圧というか、足りない部分に「シャーッ」って耳元で響くようにしたかったんです。別に雨でなくてもよかったんですけど、その音がちょうど隙間を埋めてくれるような音だったんですよね。
── でも雷や雨というのは歌詞との世界観とも響き合いますよね。そういうところからも、決して難しいことをやっているのではなく、音楽としていかに届けられるかということを意識して曲を作っているんだなと、お話を伺ってさらに感じました。
杉田 自分たちのやりたいことを最大限にやりつつも、独りよがりにならないようにキャッチーにまとめるっていう全体的なバランス感は大事にしています。
Text:谷岡正浩 Photo:吉田圭子
リリース情報
デジタルシングル「Morning」
2022年1月26日(水) 配信リリース
配信リンク:https://nex-tone.link/A00094780
デジタルシングル「濡溶」
2022年2月23日(水) 配信リリース
配信リンク:https://nex-tone.link/A00096238
ライブ
ONE WEEK WONDER 〜TOKIO TOKYO 1st ANNIVERSARY PARTY〜
日程:2022年3月14日(月) 18:30開場/19:00開演
会場:渋谷 TOKIO TOKYO
出演:ego apartment/新東京 and more...
料金:前売3,600円/当日4,100円(入場時ドリンク代400円が必要)
Tokyo Zero Circuit 2022
日程:2022年4月3日(月) 11:30開場/12:00開演
会場:下北沢MOSAiC/下北沢 近松
出演:chef’s /DeNeel /Ezoshika Gourmet Club/あたらよ/声にならないよ/新東京 ほか
料金:3,500円(入場時ドリンク代が必要)
KNOCKOUT FES 2022 spring
日程:2022年4月17日(日) 12:00開演
会場:下北沢全13会場(MOSAiC、SHELTER、近松、251、ReG、WAVER、ろくでもない夜、LIVEHOLIC、Flowers Loft、ERA、DaisyBar、mona records、DY CUBE)
出演:asayake no ato/Adler/アマアラシ/あるゆえ/WELL DONE SABOTAGE/Apes/CULTURES!!!/クジラ夜の街/CODE OF ZERO/さめざめ/ザ・シスターズハイ/シャンプーズ/suisei/downt/チョーキューメイ/帝国喫茶/ハイエナカー/板歯目/フジタ カコ/ペルシカリア/毎晩揺れてスカート/まなつ/minori/molly/リスキーシフト/LUCY IN THE ROOM/WALTZMORE/藍色アポロ/アポロノーム/ES-TRUS/エルスウェア紀行/果歩バンド/CASANOVA FISH/Conton Candy/Seek me/新東京/Split end/徳永由希/成田あより/Bye-Bye-Handの方程式/ヒナタトカゲ/HollowBug/マイアミパーティ/my sister circle/Midnight 90's/みねこ美根/美遊バンド/mekakushe/リアクション ザ ブッタ/Lym/Lyric Jack/輪廻/レトロリロン
料金:一般2,800円/高校生以下2,000円(学生証提示)(※入場時2ドリンク代1,200円が必要)
プロフィール
杉田春音(Vo)、田中利幸(Key)、保田優真(Dr)、大倉倫太郎(B)の4人で2021年4月に結成し、8月にデビュー作「Cynical City」をリリース。ノンプロモーションながら、Spotifyの”RADER: Early Noise”、”New Music Wednesday”大型プレイリストにリストイン。続いて、10月にリリースした「The Few」は2作目ながら、J-WAVE”SONAR TRACKS”に大抜擢。その後、「ユートピアン」「36℃」をリリースし、Eggsのデイリーポップアーティストランキングでは1位を記録。
2022年1月9日に放送された、テレビ朝日「関ジャム 完全燃SHOW」“プロが選ぶ年間マイベスト10曲”にて「Cynical City」がピックアップされ、SNSを中心に大きな話題を集める中、2022年1月には「Morning」をリリース。早くも2度目となるJ-WAVE”SONAR TRACKS”に選出された。そして、2月にはカッティングエッジな新境地「濡溶」を発表。クオリティの高い作品を精力的に生み出している。
手数の多いフレーズに卓越したプレイ。アートワークや映像もセルフプロデュースする鋭角なセンス。色気のある歌声と上質で洗練された楽曲は圧倒的な個性を放ちファンを魅了する。
メンバー全員が現在大学2年生。つい先日成人式を迎えたばかりの彼等は、学校を1年間休学して音楽活動に専念することを決意。
2022年2月にはバンド組織を法人化し「新東京合同会社」を設立した。
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