「美しい」という形容詞を、何の違和感もなく背負える男性は決して多くない。だけど、八木勇征を語るには、「美しい」以上の言葉が出てこない。
昨年秋に放送された『美しい彼』で一躍、最旬スターに名乗りを上げ、今年に入ってからもその人気は衰え知らず。1月に開設されたWeiboが「1月に最も注目された人気アカウント」に選出されるなど、八木勇征の名は中国をはじめアジアへと拡大している。
FANTASTICS from EXILE TRIBEのボーカルとして、俳優として、世界を夢中にさせる24歳の素顔をクローズアップする。
── FANTASTICSメンバーが総出演のバラエティ番組『FUN!FUN!FANTASTICS SEASON2』。時代を彩ったレジェンドとのトークが見どころですが、これまで登場したゲストの中で特に印象的だったのは?
『グラップラー刃牙』の板垣恵介先生にお会いできたのはうれしかったです!『刃牙』シリーズが大好きなので、聞きたいことが山ほどあって、しこたま聞きまくりました(笑)。
── 『刃牙』のどんなところが好きなんですか。
設定がめちゃくちゃ面白いんです。自分と同じ大きさのカマキリと戦うんですよ! 客観的に見たらおかしな設定なんですが、それらが大真面目に格闘マンガとして描かれている。実際、昆虫が僕たちと同じ大きさだったら敵わないくらい強いということまで細かく表現されています。僕、活字を読むのがあんまり得意じゃないんですが、食い入るように読んでいました(笑)。
── 実際に先生にお話を聞いてみて、特に印象深かったことはなんですか。
いちばん最初に連載作品を持ったのが、お化粧が題材の漫画だったという話は驚きでした。『刃牙』のタッチからは考えられなかったです。あの絵の感じでメイクって、どういう話なんだろうってめちゃくちゃ興味が湧きました。
── このSEASON2でも4月から始まる舞台『BACK TO THE MEMORIES PART2』の主演の座をめぐるバトルが繰り広げられています。
今回は水野美紀さんがオーディションをしてくださいました。お題に合わせてそれぞれ実演をするというワークショップ形式で、前回とはまったく違うスタイルだったので楽しかったです。グループのみんなと一緒にオーディションを受けるのはまた違った緊張感があり、変な感覚でした。
── どんなものになるのか楽しみです!
PART1はタンバリンを叩いて一緒に盛り上がったり、声が出せない中でもみんなで一体になって楽しめる演出がたくさんありました。今回もそんな舞台になるはずなので、ぜひみなさんと一緒に同じ空間を共有できたらなと思います。
今まで以上に歌に感情を乗せられるようになってきた
── さらに3月9日には新曲『サンタモニカ・ロリポップ』が発売になりました。
最初に曲を聴いたときは、すごくカラフルだなという印象でした。パッとメロディを聴いたときに、人によっていろんな色が思い浮かぶ曲に仕上がっていると思います。レコーディングのときも、その曲調の良さをなるべく崩さないように、と意識しました。
── レコーディング時に、ディレクターさんからどんなオーダーをもらいましたか。
まずは自分の思い通りに歌わせてもらえました。僕自身、今までFANTASTICSとしていろんな曲を歌ってきたので、そこで得た引き出しを曲調に合わせて自在に使い分けていこうとイメージしました。そういった表現のバリエーションも楽しんでもらえたらうれしいです。
── FANTASTICSは八木さんと中島颯太さんのツインボーカルですが、中島さんとの個性の違いは意識したりしますか。
あんまりないですね。毎回、レコーディングではおのおのが考えてきたものを出すというスタイルです。それがあまりにも違いすぎたらバランスをとるために調整することはあるんですが、今回の『サンタモニカ・ロリポップ』はお互いイメージしていたものが近かったので、レコーディングもスムーズに進みました。
── 『Turn to You』、『Tie and Tie』といったカップリング曲も気になります。
『Turn to You』は(佐藤)大樹くんがダブル主演のドラマ『liar』の主題歌で、『サンタモニカ・ロリポップ』とはまた全然違う、せつないバラードになっています。『Tie and Tie』は大樹くん出演舞台のサブタイトルが”繋ぐ”だったので、繋ぐという意味での“タイ”から来ていますが、おまけで大樹くんの“タイ”というクスッとできる意味合いもあります(笑)。曲調はどバラード。僕のイメージですが、サビを聴いていると壮大な草原が浮かんでくるんです。天気は曇り空。でも、その分厚い雲の向こう側には太陽が輝いている。そういうアンニュイな雰囲気の曲になっています。みなさんもぜひそれぞれ自由に景色を思い浮かべながら聴いてください。
── ボーカリストとしての成長を感じるのは、どんなときですか。
ここ最近は演技の経験を積んだおかげで、今まで以上に感情を歌に乗せることができるようになったなと自分の変化を感じます。
歌い方の幅が広がってきましたが、特にバラードはブレスだったり、溜めだったり、そういう小さなことでがらっとニュアンスが変わる。ライブで歌うときはライブでしかできないその瞬間のアレンジをすることで、原曲と多少違っていても、それはそれでいい味として出せるようになってきたのかなと自分では思っています。
── ボーカリストとしては、やっぱり生の空間でパフォーマンスできるのは最高ですよね。
そうですね。ファンのみなさんを近くに感じながら、一緒に空間を共有できるのは、僕たちにとって何よりのやりがいです。今はまだいろいろと制限はありますが、みなさんの気持ちは伝わってくるし、幸せな時間を共有できている実感があります。
いつかきっとまたみんなで一緒に歌える日が来ると思うので、その日を夢見て、今は今このときにできる最大限の方法でみなさんと幸せを分かち合えたらと思いながら、ひとつひとつのライブに取り組んでいます。
『美しい彼』は利久とじゃなかったらできなかった
── 八木さんといえば、昨年秋に放送された『美しい彼』の清居奏役が素敵でした。
ありがとうございます。『美しい彼』は凪良ゆう先生の原作を読んだときから、ものすごく惹きこまれました。凪良先生は、紡ぐ言葉のひとつひとつが凪良先生にしか表現できないものなんですよね。先生の文章は、このインテリアがどこにあるかまではっきりと情景が浮かんでくる。だから僕も没頭して読めたし、清居にのめり込んで演じることができました。
── 個人的には、2話の水遊びのシーンが美しくて浄化されるような気持ちになりました。
あのシーンは、酒井(麻衣)監督から「全部自由に演技して」と言われていて。1回ホースを止めたあと、「だったらもう見んな」って言ってまた水をかけるところからは全部フリーでやらせてもらいました。ひたすら(萩原)利久に水をかけていただけなんですが、自分が高校の頃に青春していたらこんな感じだったのかなって。すごく楽しかったです。
── 縁側のシーンとか2人乗りのシーンとか、何気ない行間の場面の2人の空気感がとても自然でした。
ありがとうございます。たぶんそれは相手が利久だったからだと思います。利久とは今回が初共演だったんですが、初めて会った気がしない、ずっと前から一緒にいた同級生みたいな感覚でした。『美しい彼』は利久とじゃなかったらできなかった。今もめちゃくちゃ仲が良いし、出会えて本当にうれしいです。
── 即興の自由演技もできちゃうのは本当にすごいですね。
そこはやっぱり酒井監督が演者ファーストで撮ってくださったおかげだと思います。僕自身、お芝居に関しては頭で考えるというより、感覚の部分が結構大きくて。平良がこう来るなら、きっと清居はこうするだろうなと咄嗟に出たことを監督がそのままオッケーテイクとして使ってくださることが多かったです。本当にやりやすい環境を作っていただいたことに感謝していますし、いい経験になりました。
── 今まで自分が見たことのないような表情もありましたか。
ありましたね。最終話のラストで平良に「もっかい言って」と言われたあとの表情は、自分で見てもヒロイン顔だなと思いました(笑)。
清居は「キモい」という言葉をよく使うんですが、1話から6話にかけて気持ちが変化していくにつれて、同じ「キモい」という言葉でも全然ニュアンスが変わってくるんです。その感情の線を意識しながら演じていたので、実際に出来上がった映像を見ても違いが明確だったのが嬉しかったですし、やりがいを感じました。
いつか『カリギュラ』に挑戦してみたいです
── では、最後に八木さんの素顔を少しだけ聞かせてください。Weiboで筋肉美を披露されていましたが、体づくりはどんなことをやっているんですか。
基本的には休みの日でも毎日トレーニングをしています。この仕事を始めるまで、パーソナルトレーナーの仕事をしていたので、筋トレはある程度知識があるんです。トレーニングする部位を、日によって変えていて、今はだいたい胸の日、背中の日、肩の日の3つをルーティンでやっています。
── ストイックですごいです。
いや、それ以外は本当ダラダラしています(笑)。僕、休みが続くとダメなんです。休みが1日しかなかったら、時間を無駄にしたくないなと思って朝からパッと起きていろいろできるんですが、2日以上休みが続くと朝起きてもベッドにいる時間が徐々に長くなる(笑)。だから休みは連続で2日までで大丈夫です。3日以上続くと、人間として堕落します(笑)。
── やっぱり食事にも気を遣われるんですか。
何でも食べますよ。僕、めちゃくちゃ食べるんです。お肉なら1食で2.5kgくらい食べられるし、お米も1kgくらいは余裕でいけます。
── それでなんで太らないんですか。
前は減量とかもしていたんですが、23〜24歳ごろから体質が変わってきたみたいです。1回絞りきったら、そこからあんまり増減しなくなりました。
── さっき「高校の頃、青春してたらこんな感じだったのかな」とおっしゃっていましたが、高校生活はどんな感じだったんですか。
大学もサッカー推薦で行ったくらいずっとサッカーをやっていたので、ボールが恋人みたいな生活でした(笑)。本当にモテたこともないので、『美しい彼』で男女がワイワイやっているのを撮りながら、これが青春なんだなって感慨深かったです。ファミレスも行かず、お昼はずっとお母さんのお弁当を食べてました(笑)。
── 今後の活動のビジョンを聞かせてください。
グループとしては、どうやったらみなさんに楽しんでもらえるかを常に考えながら発信しているので、僕たちの届けるエンタテインメントが応援してくれる方々の日々のモチベーションになるような存在になっていきたいです。
個人としては、演技のお仕事に今すごく興味があるので、映像も舞台もチャンスがあればどんどん挑戦していきたいです。今はとにかく経験を積む時期。たくさんインプットをしていきたいと思っているので、もしまた何か作品に関わらせてもらえることがあれば全力で自分のベストを尽くしたいです。
── ちなみに好きな俳優さんはいますか。
僕、『勇者ヨシヒコ』世代なんですよ。だから、山田孝之さんとかムロツヨシさんとか佐藤二朗さんがすごく好きで。特に山田孝之さんは『クローズZERO』も観ていたので、あの振り幅の広さには本当に驚かされます。
他にも菅田将暉さんは『カリギュラ』という舞台を観させてもらったんですが、気迫がすごかったです。憧れと言うのもおこがましいですが、本当に尊敬している役者さんのひとりです。
── 菅田さんが演じた狂気の暴君は確かに素晴らしかったですね。でも、八木さんも狂気の暴君は似合いそうです。
僕ですか? 恐れ多いですが、役者をやらせていただく以上、挑戦したいと思う作品のひとつではあります。『カリギュラ』をやって、FANTASTICSとしてライブツアーもやれたら、幸せすぎますね。いつかそうなれるよう頑張ります!
撮影/奥田耕平、取材・文/横川良明、企画・構成/藤坂美樹、ヘアメイク/富樫明日香、スタイリング/jumbo(speedwheels)