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神山羊/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー

新世代クリエイター・神山羊 「これまでの人生では起こり得なかったことがたくさん起こった4年間だった」

特集連載

第46回

櫻井海音が最新のリリース楽曲からライブイベントまで、“いま聴くべき音楽”を厳選して紹介する『PIA SONAR MUSIC FRIDAY』から、番組連動インタビューを掲載。
今回は、動画やSNSシーンを中心に話題を呼び起こしている新世代クリエイター・神山羊が登場。4年間、自問自答を繰り返し出来上がったという1stフルアルバムについて話を聞いた。

クローゼットは自分にとっては安心する場所

── アルバムリリースの実感や手応えはいかがですか?

4年かけて準備してきてやっと出たなって感じなので、それ自体はすごくうれしいんですけど、やっぱりこういう時代ということもあって、店頭で並んでいるところをまだ見れていないので、実際にお店に行ったらもっと実感が湧くのかなと思います。

── 4年かけて準備していた、ということですけど、つまりは4年前にアルバムの形を構想していたということですか?

そうなんですよ。1曲目の「YELLOW」を2018年に出した時から『CLOSET』っていうタイトルでフルアルバムを作りたいと思っていました。

── ちょっと時間がかかっちゃったなって感じですか?

かかっちゃいましたね。世の中の変化もそうですけど、自分自身もインディーズからメジャーといった立ち位置の変化もこの4年間にあって、だから正しいタイミングで出せたのかなとは思いますね。

── アルバム1曲目に入っている「YELLOW」という曲は、神山さんにとって重要な曲として今もあるわけですよね?

特に海外という意味では、遠いところまで自分の曲が届いて聴いてもらえるきっかけになったのが「YELLOW」という曲で、YouTubeを介して日本人が日本語で歌っている曲を日本語が全然わからない人たちに聴かれているという状況がうれしくて、それはかなり自分にとって大きなモチベーションになりましたね。

── 作る段階で「YELLOW」はそれまでとは全然違う意志を込めた曲だったんですか?

そうですね。どうやったら届けられるかな?っていう強い意志を持つようになったのが「YELLOW」を作るタイミングだったんです。それまでは聴かれる、聴かれないとかってあんまり考えたことがなかったんですよ。でも届いた時の楽しさを想像して作り始めたのがそこからでしたね。

── そのために必要になるのが自分の奥深くに潜るという感覚ですよね。

そこが何より重要で、表面的なものにならないようにするためには自分の深いところときちんと向き合う時間が必要になりますね。

── 「YELLOW」の歌詞の中にも〈クローゼット〉という言葉が出てくる通り、クローゼットというのは創作における大切なモチーフになっていると思うのですが、それは神山さんにとってどんなものとしてあり続けているのでしょうか?

自分の音楽制作の過程の中で、最も根本的なアイデアを作る場所が家の中のクローゼットなんですよ。

── 実際に?

そうです。今もそうなんですけど、東京に出てきたばかりの頃四畳一間しかないオンボロアパートに住んでいて。当時ボーカロイドで作っていた曲が、インターネットを経由して広い世界に出ていって、自分の全然知らない人たちに届いて行く感覚というのが自分の根本にはあって。だから狭くて閉じられた空間の中で自分と向き合って曲を作るというのは、なんだろう……儀式的なことなのかもしれないですね。

── 最初にそこを通過しないと世界とつながれないという感覚なんですかね?

そうかもしれないですね。一番ミニマムなところから行かないと広がらない気がするというか。自分を取り巻く環境というのはどんどん変わって行くんですけど、音楽との向き合い方をそれにつれて変化させて行くことには違和感があるんですよね。いい機材を使ったからいい音楽が書けるかと言えば、僕はそうじゃないと思うんですよ。なので根っこの部分を曲げないっていうことの大切さをこのアルバムを作りながらずっと考えていました。

── アルバム『CLOSET』は神山さんの4年間の歩みがほぼ網羅された内容になっていて、その中にはタイアップ曲という外界との接触が濃厚な曲も含まれるのですが、どの曲にも共通しているのは今おっしゃった創作の根っこの部分だと思いました。

ありがとうございます。言ってくださったようにタイアップ曲も同じで、クローゼットのドアを開けて、いただいたテーマを通過してその先にいる人たちに会いに行く、そしてまたクローゼットに戻ってくるという感覚なんですよね。

── じゃあクローゼットの中で自分と向き合う時間は、自分が擦り減る行為ではないんですね?

それは全然ないですね。そこは自分にとっては安心する場所だし、そこで曲を作るという行為は食事するとか寝るとか、そういうことと同じなんですよ。だから自分が擦り減ったりはしないですね。確かに自分に向き合うことによって傷ついたりっていうのもわかるんですけど、僕はそうじゃないみたいです(笑)。自分でもわからなかったんですけどね。だから深く潜らないと確かな表現に辿り着かないんだなって気づいたのも、この4年間の活動をしながらでした。

── それは、「YELLOW」の時に深く潜って創作をしたけど、活動を続けるうちに様々な変化もあってやり方も迷う中で、やっぱりあの時ああしたことは正しかったんだなって確認ができたという感じですか?

めちゃくちゃその通りで、活動して行く中で自分の思うことってすごく動いたんですよ。これまでの人生では起こり得なかったことがたくさん起こった4年間だったので、その度に自分がショックを受けて立ち止まって、これは正しいのか?って自問自答を繰り返しながらやってきたんです。だけど、やっぱり根本的な部分を自分の意思で選択したことって、そこまで大きく間違ってはいないというか、人に答えを委ねないということを確認できた4年間でしたね。

── なるほど。責任持てなくなっちゃいますもんね。

そうなんですよね。自分の人生への責任とか音楽への責任を持つことの大切さ、結局それが一番根本にあるのかなっていう気がしますね。

── それが神山さんのリアルで、例えファンタジックなものがテーマになっていたとしてもそこの根本は変わらないということですよね。

芸術的なアプローチとしてのファンタジーは大好きなのでいくらでもやりますけど、神山羊という作家性というかアーティスト性はリアルで生々しいものなのかなと思っています。

── ちなみに「YELLOW」という言葉はどういうイメージだったんですか?

いろんな解釈をしてもらっているんですけど、僕が最初に考えていたのは「日本人」なんです。J-POPっていうものを正直僕はそれまでやりたいと思ったことがなかったので、例えばコードもないような曲を作ったりだとか(笑)、特にバンドをやっていた時は人に届けるっていうことから一番遠い場所で音楽をやってきたっていうのがあって。その反動ではないですけど「YELLOW」を書く時に、日本人が作ったポップスをどうやったら海外の人がクールって思うのか、とか、どうやったら広く伝わるのか、とか、そこをめちゃくちゃ考えて作ったんです。言ってしまえば〈YELLOW〉っていうのは否定的な意味を含むじゃないですか。でもだからこそ「YELLOW」っていうタイトルの曲がクールだね!ってなったら面白いなって思ったんですよね。

今感じるダンスミュージックのあり方

── アルバムのリードトラックでもある2曲目の「セブンティーン」はバンドサウンドになっていて、でも神山さんは当たり前ですけど実際にバンドを組んでいるわけではなく、だからひとりでクローゼットにいながらどこにでもつながれるんだっていうことを象徴しているような曲だと思いました。

今、この時代のティーンってなかなかバンドを組めないんですよ。もちろんコロナということもあるし、わりと音楽制作自体をひとりでできてしまうということもあるし。ティーンの気持ちを中心に描いていこうと思ったんですけど、個人がバンドに憧れるっていうニュアンス感というか、ロックっていうサウンドに対する憧れとか、フェスとかライブとか熱のあるものに対する枯渇感みたいなものを含ませたいなと思ったんですよね。だからおっしゃっていただいたような感じで聴いてもらいたいなって思っていたのでうれしいですね。

── 「YELLOW」もそうだったんですけど、M-5「青い刺」、M-10「CUT」も〈CLOSET ver.〉として収録していますね。基本的にはボーカルを再録したものだと思いますが、これらの曲を再録したのはどうしてですか?

これは、今回のテーマでもある〈クローゼット〉と同じテーマかどうかということが基準になっています。

── 個人的に大好きなのが、M-6「煙」ですね。

おお! みんな褒めてくれるんです、この曲(笑)。

── まずボーカルとリズムの揺らぎがたまらないんですよね。

めっちゃゆらゆらですよね(笑)。

── ここはあえて狙ったところですよね?

そうですね。千鳥足の感じをいかに出すかというのは大事でしたね。

── 最初にイメージしたのは何ですか?

どうして「煙」という曲を作ろうと思ったかって根本的なところで言うと、ヒップホップをポップスのアーティストがやるっていうところだったんです。ラップをするんじゃなくて、トラックがまずヒップホップ的なアプローチになっているっていうところが僕の作風のひとつでもあるんですけど、そこを突き詰めてやりたいっていうのがあって。あとは依存衝動とか気持ち悪さっていうのを含んだ曲をこのアルバムに入れたいなと思って作りました。

── 今おっしゃった、ヒップホップではないアーティストがヒップホップをやるっていう感覚は、クローゼットにいながらドアを開けて、違う世界と繋がっていくっていうことと通底しているような気がしますね。

そうかもしれないですね。この曲は酔っ払っている状態で作って、酔っ払っている状態で録ったみたいな曲なんですよ(笑)。酔っ払っている状態で録ったって言うとちょっと語弊があるんですけど(笑)。正常な思考じゃないものがどういう曲になっていくのかっていうのが自分の興味としてあって、コラージュ的なアプローチかもしれないんですけど頭の中の、何かひとつ新しい取組だったなって思いますね。

── 「煙」に続くM-7「O(until death)YOU」は、ゲーム音楽的なインストになっていますが、これを入れた理由は?

過去作でも──ミニアルバムを2枚出しているんですけど──どちらにもインストを入れていて、僕はインストが好きなんです。歌に左右されない音だけの可能性みたいなのを歌ものしか聴かない人に対してもっと届けたいなっていうのがあるんですよ。このインストに関して言うと、幼い時のクローゼットの中の記憶を思い返していて、母親が働きに出ている人だったんですけど、僕と弟のふたりで待ってたんですよ、家の中で。待っている時にリビングでずっとゲームをやっていて、その情景を音で表現したいと思ったのがきっかけですね。だから記憶に対する劇伴と言えるかもしれません。で、待っている時のその感じっていうのが、今クローゼットの中で音楽を制作している時の感覚にすごく近いなって思ったんですよ。

── ここから次のM-8「SHELTER」につながっていくのが気持ちいいんですけど、「SHELTER」を聴きながら思ったのは、神山さんの音楽的ルーツって確実にダンスミュージックなんだなっていうことですね。

それは絶対にそうですね。音楽の一番好きなところってやっぱり勝手に踊り出してしまうところに尽きますからね。

── しかも「SHELTER」ってクローゼットを大きくしたようなものですよね。

そうですね(笑)。大きな箱の感じというか。

── そこにコロナのニュアンスを感じ取ったりもしました。

ああ、そうですね。人間の中身は急に変わるわけはないのに、ある時を境に「声を出すな」とか「人のいるところに行ってはいけない」って言われて、不思議な感覚になりましたよね。だから、今感じるダンスミュージックのあり方というものを自分なりに音楽にしたら「SHELTER」になったという感じですね。

自分のやりたいことの大きな部分を占めているのは、嘘をつかない表現の繰り返し

── そして最後、13曲目がSONAR TRAXにもなっている「CLOSET」。ここまでアルバムを聴いてきて、やっぱりこの曲を作るためにこのアルバムはあったのかなって、大袈裟に言えばそんなふうに思いました。

この曲は本当になかなか作れなくて。あんまりひとつのテーマに対して何曲も書いたりっていうことはしないんですけど、この曲だけは本当に書けなくて……。嘘がひとつもないものにしたいというか、自分がこの曲をリリースした翌日に死んだとしても恥ずかしくないものを書くっていう覚悟で作ったので、満足しています、これは。

── かなり試行錯誤されたんですね?

もう、ヤダって思いました(笑)。

── 〈クローゼット〉っていう明確なコンセプトが最初からあって、4年が経過して。今だっていうタイミングで書かなければいけないっていうプレッシャーは確かにすごそう(笑)。

重いんですよ、ほんと、この4年間が(笑)。

── 「YELLOW」との関連性というのがもっとも濃厚にある曲ですよね?

そもそも「YELLOW」から始まったことなので、そこの整合性を取りたいっていうのはやっぱり一番あって、何せ4年経ってますからね。4年間ひとりのアーティストを聴き続けるってなかなかないんじゃないかなって。まあコロナもあって音楽の聴き方や届け方も変わったり、そんな中でも「YELLOW」っていう曲が記憶の片隅にある人がいたとしたら、「CLOSET」を聴いた時に、「あれ? なんかこの感じ知ってる!」っていう鍵みたいなものになったら、自分の歩んできたこの4年間を串刺しにできるんじゃないかなって思いました。

── なるほど。「YELLOW」も「CLOSET」も、四つ打ちのビートでなければならなかったというような、そこに強い意志を感じるんですよね。

やっぱり四つ打ちが一番なんですよね。ベースミュージックが好きなので、単純に言えばキックとベースが鳴っていればそれでよくて(笑)。その信頼感というか、そこに歌ものの感覚をミックスしていった結果、自分らしい形になったなというふうに思っています。

── ジャケットのコラージュにも象徴されるように、アルバムに収録されている13曲がすべて同列に配されていますよね。1曲ごとに取り出して聴けるように。それでもアルバムという形にこだわる理由は何ですか?

もともと自分がアルバムというもので音楽作品に触れてきたというのもあるんですけど、コンセプチュアルな想いとか作品群に対する魅力って僕はあると思っていて、そういうものを自分が残していきたいっていう想いが根っこにあります。

単曲でのリリース、サブスクが当たり前の時代にはなっているんですけど、だとしても芸術としての音楽というものに対しての価値というのは自分の中で持ち続けなきゃいけないと思っていて、だからアルバムという形はどうしても必要だったなって思っています。

自分のやりたいことの大きな部分を占めているのは、嘘をつかない表現の繰り返しだから、1曲1曲の羅列だと整合性が取れなくなってくると思うんですよね。そのひとつひとつを結びつけるものというのが必要で、それが音楽をより豊にしてくれるものだと僕は信じています。

── その“結びつけるもの”が今回は〈クローゼット〉だったということですね。

そうです。

── 次はどうなるか楽しみです。

もう考えています。やりたいことが明確にある。また何年かかるかわからないけど(笑)。

── それはこのアルバムを作りながら見えてきたことですか?

そうですね。もしかしたら途中はそれを作っているようには見えないかもしれないけど、確実にそこに向かって行くつもりです。

Text:谷岡正浩 Photo:吉田圭子

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リリース情報

メジャーデビュー1st AL『CLOSET』
発売日:2022年4月27日(水)

<初回盤 [CD+PHOTOBOOK]>品番:AICL-4224~5
価格:4,000円
※トールサイズデジパック+三方背特別BOX仕様

<通常盤 [CD]> 品番:AICL-4226
価格:3,000円

<収録曲>
01.YELLOW -CLOSET ver.-
02.セブンティーン
03.色香水
04.Girl.
05.青い棘 -CLOSET ver.-
06.煙
07.O(until death)YOU
08.群青
09.仮面
10.CUT -CLOSET ver.-
11.SHELTER
12.Laundry
13.CLOSET
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プロフィール

様々なジャンルの音楽を感じさせながら、突き抜けたPOPセンスで生み出される楽曲が話題を呼び起こしている新時代のサウンドクリエイター。2018年11月にYouTubeに投稿した楽曲「YELLOW」で神山羊として活動をスタート。TikTokをはじめとするSNSで拡散、流行が巻き起こり爆発的な再生数を記録、一躍ネットシーンでの存在感を示す。2020年TVアニメ「空挺ドラゴンズ」のOPテーマに抜擢された楽曲「群青」でメジャーデビュー。ネット、ストリート、アート、アニメなど様々なカルチャーを横断した表現を行う存在として注目を集めている。

関連サイト

公式サイト:https://www.yohkamiyama.com/
Twitter:https://twitter.com/Yuki_Jouet
Instagram:https://www.instagram.com/yoh_kamiyama/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCw1U9K3S8WVWp7REGaHIW0A

番組概要

放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
ハッシュタグ:#sonar813
番組LINEアカウント:http://lin.ee/H8QXCjW