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Bialystocks/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー

ジャンルの垣根を越えた分野で活動するBialystocks「感情が一方通行じゃない感じというか、一面的じゃないものを作りたい」

特集連載

第47回

櫻井海音が最新のリリース楽曲からライブイベントまで、“いま聴くべき音楽”を厳選して紹介する『PIA SONAR MUSIC FRIDAY』から、番組連動インタビューを掲載。
今回は、映像作家という顔も持つ甫木元 空(ほきもと・そら/Vo)とジャズピアニストとしても活躍する菊池 剛(きくち・ごう/Key)のふたりからなるBialystocks (ビアリストックス)に映像制作や楽曲制作において意識している点などを聞いた。

「差し色」は足湯みたいにずっと浸かっていられる感じ(菊池)

── 甫木元さんは映像作品の制作も行っていますが、ご自身で撮った映画に音楽をつける場合と、今回のようにドラマタイアップとして楽曲を作る場合とでは、まったく違った経験でしたか?

甫木元 そうかもしれないですね。やっぱり自分で監督した作品ではないものに対して音楽を作るというのは全然違う作業でしたね。タイアップの場合は、脚本を見ながら「こんな感じかな?」ってその映像作品を想像しながらという部分が大きいので。

── その、わからなさが逆に良かったりもするんですかね?

甫木元 ああ、そうだと思います。あんまり合わせに行かずというか、歌詞も邪魔しないような感じで、というのは心掛けましたね。

── ちなみにドラマの内容は“お取り寄せ”がテーマになっているのですが、タイトルの「差し色」は、“差し入れ”にかかっているんでしょうか?

甫木元 タイトルはすっごい悩みまして。悩みすぎてよくわからなくなって、菊池に相談したんですよ。そしたら「『差し色』でいいんじゃない?」って(笑)。

菊池 “差し入れ”とかかっているということに今からしたいです(笑)。

甫木元 ははは。

── じゃあ、本当はそうではないんですね(笑)。

菊池 そうですね。でも潜在的には影響されているんでしょうね。

甫木元 言葉をとにかくたくさん出していって、それこそお取り寄せ関連の言葉も出せるだけ出して、これかなぁって悩んでましたね。

甫木元 空(ほきもと・そら/Vo)

── タイトルはいつも悩むんですか?

甫木元 そうですね。悩むかもしれないですね。最初から決まっているものもありますけど、編曲を菊池に進めてもらって、その音に合わせてまた歌詞を書き直したりしていく過程で、当初想定していたものとは違う感じの歌詞になることもあって。そうすると最初につけていたタイトルに違和感を抱くようになるんですよね。例えばそこで、デモで適当に歌っていた言葉を持ってきたりすることもありますね。でもタイトルは毎回悩みます。なかなか最初につけたタイトルの固定観念から抜け出せないっていうのがあるんですよね。そこに縛られるというか。

── 「差し色」のアレンジはどういうイメージで進めていったんでしょうか?

菊池 ドラマの放送が毎週金曜の深夜なので、金曜の夜を邪魔しないような感じというのを意識しました。

── ミニマルなサウンドが心地いい曲ですが、その平坦さみたいな感じは意識されましたか?

菊池 そうですね。足湯みたいな感じと言いますか(笑)。炭酸泉に長く浸かっていられる感じですね。

── アウトロのベースソロに重なって響くコーラスが、なんとも言えない不穏な響きを残して終わっていくのが無性に気になりました(笑)。

甫木元 ちょっと怖いですよね(笑)。最初に僕が弾き語りで作っていたものがシンプルすぎたんです。ぬるま湯に浸かってて、最後ちょっと全然違うところに行くのは面白いかなっていう感じで、その時レコーディングスタジオにいた全員でマイクの前に立って唸ってみました、深夜に。

菊池 (笑)。ちょっとマーヴィン・ゲイ感を意識して。

感情が一方通行じゃないものを目指している(甫木元)

── いつも曲を作るときはふたりでやりとりしながらだと思うのですが、種となるものはどちらから提示するんですか? そこもお互いが持ち寄って、という感じですか?

甫木元 本当にお互いにっていう感じですね。弾き語りくらいのもので1フレーズだけの断片の場合もありますし、1曲丸々の場合もあります。そういうものができたらクラウド上にどんどん上げていって、溜まっていったものの中から選んでいくっていう感じですね。なので毎回、これはどっちが作るっていうのは決めずにとりあえず出してみて、ベースにしていくものが決まったら進めて、でもここの部分だけは昔こういうのがあったから合体させてみようかとか、あるいはまた全然違うアイデアを持ち寄ったりとかして1曲に仕上げていくっていう感じですかね。だいたいいつもそんな感じでパズルをしているんですけど、でも毎回違うパズルを作っている感覚はありますね。

── どちらかに最初からガッチリしたイメージがあって、こういう感じでよろしくっていうことはあまりないんですか?

甫木元 場合によってはそういうこともあります。だから何か足りない時にパズルが始まるっていう感じですね。

── お互いの感覚が根本のところで合致していないとなかなかひとつのパズルを一緒に作ることは難しいと思うんですけど、共通している感覚として挙げられるものがあるとすればそれはどんなところですか?

甫木元 うーん、どうですか?

菊池 え(笑)。そうですね……ケバい音楽とかが好みではないっていうところですかね。

菊池 剛(きくち・ごう/Key)

甫木元 はははは。そうだね。どちらかというと引き算の感覚というのは共通している部分ですね。でも、行くところは行ってほしいんですよ。ギャイーンって(笑)。でも全体を通して見た時に、緩急というか、差し引きというか、全部がてんこ盛りになっているよりは、メリハリがついている感じが好きですね。最後ちょっと上がって終わる、みたいな。風景が変わっていく感じっていうか。

まあ当たり前ですけどふたりとも全然違う人間なので、それが合体した時の感覚を僕ら自身が面白がっているというのはあると思います。

── 例えば、Bialystocksっていうのはこういう音楽をやるバンドっていうふうに決めきらないことを意識しているっていうことはありますか?

甫木元 あんまりそういうことも意識せずに、自分たちがいいメロディだなって思えるものをとりあえず今は出し合って作っているっていう感じですね。だからまだコンセプトを決めて、次はこういう感じのものをやっていこうって話し合っていってというよりも、実験しながらやっている感じの方が強いかもしれないですね。

── 今回の「差し色」もそうですが、1月にリリースされたEP『Tide Pool』に収録されている楽曲も、Bialystocksが表現している音楽というのは特に歌詞の面で、何かを言おうとしているというよりも、目の前の景色を眺めている様がそのまま音楽になっているような印象を受けました。ジャンルということでなく目指したい音楽というものはどういうものですか?

甫木元 感情が一方通行じゃない感じというか、例えば歌詞を少し悲しい感じで作っても、それを編曲で悲しい方向だけに行かないようにはしてくれるだろうなっていうのは思っていて。なので一面的じゃないものを作りたいっていう感覚はありますね。それを歌詞とメロディといろんな楽器との組み合わせの中で絶えず動きのあるものができたらいいなと思っています。

菊池 歌詞はほぼ甫木元に任せているんですけど、歌詞で描かれていることをそのまま強めるようなものにしたらちょっと聴くのが疲れてしまう音楽になるような気がしていて。そこはサウンドでバランスをとるようには意識しています。

自分がどこにいても他者という感覚(甫木元)

── 甫木元さんは高知で、菊池さんは東京と、それぞれ拠点が離れているのですが、そのことが音楽に与える影響というのはありますか?

甫木元 距離というのはあんまり関係ないかもしれないですね。

菊池 ただ、甫木元が高知に住んでいるということは彼にとっては影響のあることだと思います。

甫木元 そうだね。高知で見る景色とか経験したことっていうのは歌詞に反映されたりしているので、そこは影響という点では確実にありますね。なので距離感ということではなく、ふたりが違うものを見ているという観点で言うと、そこは何かがあるのかもしれないですね。ただ、あんまりまだ僕らが音楽を作る過程を理詰めで考えたりはしていないんですよ。

── 高知に移住したのはバンドを始めてからですか?

甫木元 始める前ですね。なんとなく高知で映画が作れたらいいなって思って移住したんですけど、それからバンドを結成してそんなにうまくいくとは思わないじゃないですか(笑)。

── 結成の経緯も甫木元さんの監督した映画『はるねこ』の音楽を実際にプレイしながら上映することがきっかけですもんね。

甫木元 そうなんですよ。だからそれがずっと続くとは思っていなかったし、何か発表のできる場づくり、くらいに考えていたんですよね。

── 甫木元さんにとっての高知というのは、おじいさんの出身地ということで、ルーツではあるけどそれまで住んだことのない見知らぬ土地であるわけじゃないですか。その不思議な土地感覚っていうのは作品を作るうえで重要なものとしてありますか?

甫木元 確かに高知は地元ではないので帰っている感もないというか。でも一方で、僕の地元は埼玉県でそこで生まれ育ってはいるんですけど、そこも実は地元ではない感じっていうのはあるんですよね。だからむしろ高知に住んで距離ができた分、埼玉のことを客観視できるようになったというか。そう考えると、高知は小さい頃にたまに夏休みで行ったりするだけだったので、もともと距離があって、だからすごく興味をそそられる土地だったんですよ。

不思議なもので住んでしまうと興味ってわかなくなってくるんですよね。普通になっちゃうっていうか。なんかそのへんの、自分がどこにいても他者じゃないですけど、その感覚っていうのはもしかしたら自分の作るものには反映されているのかもしれませんね。

甫木元 空(ほきもと・そら/Vo)

── 「差し色」のMVは甫木元さんが監督されていますが、どのようなイメージで作ったのでしょうか?

甫木元 撮影場所の候補としてスタジオとかいろんなところを見ていたんですけど、その中でスタッフのひとりから劇場がいいんじゃないかっていう提案があって。劇場っていろんな演目をやるじゃないですか。それがずーっと蓄積されて深夜とかに急にひとりでに動き出したら面白いなっていうのがなんとなく最初にありました。勝手にライトとかが動き出して、今までそこで鳴っていたSEなのか物語なのか、何かが急に動き始めるっていう、ざっくりしたイメージから始まりましたね。

── 5月7日に『音楽交流記 1』と題した対バン形式のライブを行いました。ライブアレンジに関してはどのようなことをポイントにしていますか?

菊池 だいたいの曲がそのままやれないので、パート数的にもできないし。でも今の段階では同期をあまり使わない方がいいなと思っているので、少ない編成でどうやって表現していくかっていう部分をいつも悩んでいますね。なので、人間のフィジカル感、生感みたいなものが強調されるようなアレンジを心がけています。

── そして7月9日(土)に『音楽交流記 2』が決定しています。前回のグソクムズに続いて、2回目のゲストは優河with魔法バンドが決まっていますね。

甫木元 すごく普通のことを言えば、出演していただいたバンドのライブを見るのが何より楽しみですね(笑)。終わった後なんかに「どうやって曲作ってるの?」とかって話をしたりするのも刺激がありますし。とは言えこちらが企画しているイベントなので、出演してくれたミュージシャンにも何かしら持って帰ってもらえるようなものにしたいなとは思っていて、今後もどんどん変化させながら、普段のライブではできないことをやっていけたらなと思っています。

菊池 リハーサルを見れるっていうのが楽しいよね。

菊池 剛(きくち・ごう/Key)

甫木元 この人たち何するんだろう?ってね(笑)。

── 今後ライブは増やしていきたいなという感じですか?

甫木元 そうですね。やっぱりコロナもあってあんまりできていなかったので、どんどんやっていきたいと思っています。

Text:谷岡正浩 Photo:吉田圭子

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リリース情報

6st デジタルシングル「差し色」
2022年4月15日(金) 配信リリース
https://lnk.to/sashiiro

ライブ情報

La.mama 40th Anniversary『PLAY VOL.106』
日程:2022年5月26日(木)18:30開場/19:00開演
会場:渋谷 La.mama
出演:Bialystocks /odo
料金:スタンディング4,000円(ドリンク代別)

Bialystocks Live 2022 “音楽交流紀 2”
日程:2022年7月9日(土)17:15開場/18:00開演
会場:Shibuya WWW
出演:Bialystocks/優河with魔法バンド
料金:スタンディング4,000円(ドリンク代別)

プロフィール

2019年、ボーカル甫木元空監督作品、青山真治プロデュースの映画「はるねこ」生演奏上映をきっかけに結成。ソウルフルで伸びやかな歌声で歌われるフォーキーで温かみのあるメロディーと、ジャズをベースに持ちながら自由にジャンルを横断する楽器陣の組み合わせは、普遍的であると同時に先鋭的と評される。
2021年1st Album『ビアリストックス』発表。同年METROCKに出演が決定。収録曲「I Don't Have a Pen」はNTTドコモが展開する「Quadratic Playground」のWEB CMソングに選出されている。

関連サイト

公式サイト:https://bialystocks.com/
Twitter:https://twitter.com/bialymusic
Instagram:https://www.instagram.com/bialystocks/
YouTube:https://www.youtube.com/c/Bialystocks

番組概要

放送局:J-WAVE(81.3FM)
番組名:PIA SONAR MUSIC FRIDAY
ナビゲーター:櫻井海音
放送日時:毎週金曜 22:30~23:00
番組HP:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarfriday/
番組twitter:https://twitter.com/SONAR_MUSIC_813
ハッシュタグ:#sonar813
番組LINEアカウント:http://lin.ee/H8QXCjW