Haruy/PIA SONAR MUSIC FRIDAYインタビュー
シンガーソングライター・Haruy初インタビュー『「Swimmer」は決意の曲というか、決断の意志が滲み出ている曲』
特集連載
第48回
櫻井海音が最新のリリース楽曲からライブイベントまで、“いま聴くべき音楽”を厳選して紹介する『PIA SONAR MUSIC FRIDAY』から、番組連動インタビューを掲載。
5月27日放送回に登場するのは、2000年生まれ、現在21歳の大学生でもあるシンガーソングライター・Haruy(ハリー)。4月20日にSuchmosのベーシストHSUことHayata Kosugiを迎えコライトしたデビューシングル「Swimmer」をリリース。彼とのコライトにより気づかされた楽曲制作の楽しさや思いについて話を聞いた。
いろんな人と音楽を作りたいからソロでやりたいと思った
── 最初に音楽に興味を持ったきっかけは何だったんですか?
母親がすごく音楽が好きで、家の中では常に音楽がかかっていて自然と好きになっていきました。本当にいろんな音楽を聴いて育ったんですけど、よく覚えているのは、『glee』というアメリカのドラマがあって、そこで聴いた様々なポップスは印象に残っています。
── 『glee』はクイーンとかコールドプレイとかいろんな名曲が、しかもオリジナルアレンジで披露されていましたよね。
そうなんですよ。名曲だらけで。あとは『ドリーム・ガールズ』も印象に残っています。
── シュープリームスがモデルのミュージカル映画ですね。映像作品から音楽の良さを知るというのが原体験として面白いですね。楽器の初体験は?
幼稚園の頃にピアノの教室に通い始めたのが最初ですね。兄と一緒に行っていました。
── じゃあそこで音楽的な基礎が植え付けられたんですね。
でも楽譜読むのが嫌いで(笑)。ただ弾いているのが楽しいから弾くっていう感じでした。音が鳴ること自体が面白かったし、先生と連弾することが楽しかったです。結局全然続かなくてすぐに辞めちゃったんですけど(笑)。
── とにかく音楽の楽しさだけは体感として学んだと(笑)。
本当にそんな感じですね(笑)。
── そこからどういう経緯で自分で音楽を始めるようになるんですか?
中学生になって軽音楽部に入ったのがきっかけですね。バンドをやろうってなって最初に買った楽器がベースだったんです。
── たまたま空いてたパートがベースだった?
そう(笑)。でもベースってカッコいいし、いいなと思って。ただ結局そのバンドはやらなくなっちゃうんですけど。そこからアコギを弾き始めるようになりました。ミニー・リパートンの「ラヴィン・ユー」を最初にコピーして弾き語りをしていました。
── スタンダードの名曲ですね。ちなみにオリジナルはいつくらいから作り始めるようになるんですか?
高校1年生くらいの時からです。その時はバンドを始めて、そこでベースに戻ったんです。最初はコピーをしていたんですけど、だんだんオリジナルを作るようになっていきました。
── EPをリリースするなどしますが、結局解散しちゃうんですよね。
みんな将来どうする?って悩んでいる時期で、留学とか大学院に行こうかとか、自分たちの環境が変わっていく時期に差し掛かって、その中でバンド活動ってすごく時間が割かれるので、ちょっと難しいかもっていう話になりました。またタイミングが合えば3人でやりたいねっていう感じで一旦解散という決断をしたという感じです。
── ソロでもやりたいって思ったのは、バンドではできない自分の音楽があったからですか?
そうですね。ただ、音楽性というよりは、私はいろんな人と音楽を作るのがすごく楽しくて、だからバンドメンバーと一緒にやるのも楽しいんです。でもバンドではない人たちとやったらどうなるんだろうっていう興味がすごくあったんですよ。やっぱり音楽って一緒にやる人によって全然違うものができるっていうのが一番の魅力だなって私は思うんです。
トラックもそうですけど、エンジニアさんによっても出来上がる音楽って違いますよね。だから私がソロでやりたいって思ったのは、ひとりでやるということではなくて、むしろいろんな人とやるためにソロでっていうことなんです。
「Swimmer」は決断の曲
── デビューのきっかけは何だったんでしょうか?
それはもうHayataさんとの出会いだったんですけど、最初はマネージャーさんを経由して連絡をいただいたんです。Hayataさんが楽曲を作ってプロデュースするというプロジェクトがあるんだけど一回会ってみませんか?って言われて初めてお会いしました。で、会った日に今回デビューシングルとしてリリースすることになった「Swimmer」を聴かせていただいて、歌詞もその時にはもうあって、「こんな曲を歌ってほしいんだけど、どうかな?」って。
── じゃあHaruyさんのための曲がもうできていたということですよね?
そうなんですよ。Hayataさんは私のバンド時代の映像とかをチェックしていてくれて、そこからイメージを膨らませて作っていただいたということです。
── 具体的にHayataさんからはHaruyさんのどういったところに魅力を感じたのかっていうような話はありましたか?
力が抜けている声がいいってよく言っていただきました。で、今後はそれだけじゃなくて例えば声を張るとか、強い気持ちを声で表現する曲が作れたらいいねっていう話をしていました。
── 「Swimmer」を最初に聴いた時はどういう感想を持ちましたか?
Hayataさんもこういう曲を書くんだ!っていう驚きが最初にありました。Suchmosとはちょっと違うというか、もちろんベースラインはそれを感じさせる雰囲気もあるんですけど、やっぱり女性ボーカルを意識した曲っぽいなっていうふうに思いました。あと、最初に聴いただけでは歌詞の意味を深いところで捉えられなかったというか、そこまで意識できなくて。何回も何回も聴いていくうちに歌詞の世界に入れる感じというか、そこで初めて理解できる感覚はありました。
── 確かに不思議な奥行きと隙間のある歌詞ですよね。曲の雰囲気も含めて。
本当に泳いでいるような感じですよね。
── 歌うにあたって意識したのはどんなところですか?
何回も曲を聴いて、自分で歌う練習をしている時に、だんだんこの曲は決意の曲というか、決断の意志が滲み出ている曲だと思ったんです。だから、力が抜けた声がいいっておっしゃっていただいたけど、決断する強さと私の声の出し方のバランスは考えなきゃなと思ってHayataさんと相談しました。
サビにある歌詞で〈曖昧は もういらない〉っていうフレーズの中の〈曖昧〉っていう言葉だけ私からHayataさんに提案したんです。そこだけ空いていたんですよ。それでHayataさんから「何かいい言葉ないかな?」って相談されて、前後にある〈濡れた〉とか〈めぐり〉っていう言葉の語感からも考えて「〈曖昧〉はどうですか」って言ったっていう経緯もこの曲が私にとって決断の曲として存在するものになったかなと思っています。
── そうやって曲の輪郭や細部を掴むと歌は全く違うものになりますよね。
違いますね。決断する強い気持ちがありながらも水の中を泳いでいくようなイメージで歌う、というバランスを意識しながらできました。でもそこを意識しすぎてもそれはそれで力んでしまうことになるので、トラックの心地よさとか語感に身を任せるようにしました。
Hayataさんの歌詞って、歌いやすいっていうのともまた違うんですけど、流れるように歌える言葉の並びになっているんですよね。そこを純粋に楽しむっていうことが一番大切なポイントだったように思います。
── その、〈曖昧〉の箇所がブランクのままになっていたというのは気になりますね。Hayataさんがどういうつもりだったのかという。もしかしたらHaruyさんから何か出てくるのを待っていたのかもしれないし。
Hayataさんはもともとひとつの曲を一緒に作ろうっていう意識がすごくある方で、「Swimmer」以外の曲もご一緒させていただいたんですけど、自分が曲をポーンと出して、はい歌って、みたいな感じではなくて、一緒に仕上げていこうっていう意識が最初からありました。
── だからもしかしたら「Swimmer」という楽曲は、Haruyさんがそこから何を受け取るかによって雰囲気が違った曲になったかもしれませんね。やっぱりそこをHayataさんは待っていたような気がします。
うん、そうかもしれません。
自分が歌えば自分の曲になるっていう感覚があります
── で、実はデビュー曲「Swimmer」の後の展開が決まっていて、5月18日(水)には2ndシングル「Ryan」を、そして6月8日(水)にEP『MAO』をリリースします。これらの楽曲も全てHayataさんのプロデュースで、「Swimmer」の後どのようにして進められていったのでしょうか?
「Swimmer」の仮歌を録っている時に、「実はこういうデモもあるんだけど」っていう感じで、「ちょっと歌ってみない?」ってなっていろいろ試していたら、「いいかも!」って(笑)。「じゃあ次までに歌詞を考えてきてくれる?」ってなって他の曲の制作も始まっていったっていう感じです。
── よりコライト色が強くなっていったんですね。
そうなんです。
── 何か今おっしゃったHayataさんとのやり取り含めて、コライトの感じがすごく楽しそうですね。
本当に楽しかったですね。いやもちろんすごく悩む時もありましたけどね、Hayataさんと一緒に。今までそんなにいろんな人と曲を作ってきたという経験はないんですけど、Hayataさんとはわかり合えるっていう気持ちになっていました。
── 一緒に悩んだり、いいね!って瞬間を共有していく中で、もしかしたらHaruyさん自身が自分の声の資質や音楽へのアプローチの特徴みたいなものに気づかされていったのかもしれないですね。
確かにそれまで自分の声がどんな感じでっていうのも、あんまり意識していませんでしたから。まわりで「なんか綺麗な声だね」みたいな感じで言ってくれる人はたくさんいましたけど(笑)。Hayataさんの曲って切ない感情が多く含まれているというか、言ってしまえばマイナスの感情も含んだ柔らかさとか、自分の声にはそうした性質があるんだっていうのをHayataさんは制作を通じて教えてくれていたのかもしれないです。実際に私は初めて気づかされたわけですから。
── ご自身的に意外な自分の魅力に気づかされた曲ってありましたか? なかなか答えづらい質問かもしれませんが(笑)。
(笑)。でも、EP『MAO』の1曲目に収録されている「Snake」は、自分ってこんなに歌うまかったっけ?ってちょっと思うくらいびっくりしました(笑)。「Snake」は全てのパートを生で演奏してもらったんですけど、最初の数回は一発録りな感じでせーのでやって、ボーカルに関してはそこでのテイクが結構良かったので、そこをベースに作っていったんです。
そのHayataさんとのセッションが人生で一番楽しくて。初めての感覚でした。こんなに歌って心地いいんだって。ちょっと言葉でどうやって表現したらいいかわからないくらいのすごい経験でした。
── EPの最後に納められている曲がリードトラックとしてシングルにもなっている「Ryan」。80'sっぽい雰囲気のある曲ですが、どんなイメージで作っていったんですか?
Hayataさんがデモを送ってくれたんですけど、「これはオレのフェチで、こんな曲もやってみたいんだよね」って。私にとっては新鮮な曲で、あんまり普段聴かない感じだったので、最初はイメージもできなかったんですよね。
でも、だからこそというか、歌ってみたいと思ったし、こういう曲もどう?っておっしゃっていただいたのがうれしかったです。この曲の歌詞を私が書くことになって、Hayataさんが題材のイメージを送ってくれて、その世界観を私が歌詞に落し込んで仕上げました。
── 歌詞はバンド時代も書いていたんですよね?
書いてはいたんですけど全部英語詞だったので、今回が初めてに近い感覚です。やっぱり日本語って平坦というか、言葉の意味も考えつつ歌で強弱をつけなければいけなかったりして、すごく難しいんです。正直、韻を踏むとかっていうのもそれまでは考えたことがなかったですし。
でもHayataさんから「韻は踏んだ方がいいよ」ってアドバイスされて、あ、なるほどって。日本語って私にとって、なんて言うんだろ、すぐに意味がわかっちゃうから直接すぎるという感覚があって。歌詞としてストレートに言い切るか、めちゃくちゃまわりくどい言い方をするかどっちかしか成立しない感じがするんですよね。中間がないというか。
── そう考えたら「Swimmer」のHayataさんの歌詞ってすごいねっていうところに戻るというか、最初に良き指針をいただけたというか。
本当にそうなんですよ。
── 次はこんなことをやってみたいなっていうことはもうあったりしますか?
やっぱりいろんな人と音楽を一緒にやりたいということは変わらずあります。フィーチャリングでもいいですし、全然自分っぽくないジャンルでも、どこか通ずる部分がある人と曲を作っていきたいっていう気持ちがあります。
── そうしていく中で、ブレずに自信のあるものは何ですか?
今回一連の作品をHayataさんとご一緒させていただいて、意外とこういう声と歌い方の人って自分以外にいないかもって思えましたし、自分が歌えば自分の曲になるっていう感覚があります。そこに自分の考え方も反映させて、自分にしかできない曲を作っていきたいです。
Text:谷岡正浩 Photo:吉田圭子
リリース情報
Haruy, Hayata Kosugi デジタルシングル「Swimmer」
2022年4月20日(水)配信リース
Haruy, Hayata Kosugiデジタルシングル 「Ryan」
2022年5月18日
https://ssm.lnk.to/Ryan
Haruy 1st EP『MAO』
Produced by Hayata Kosugi(HSU form Suchmos)
2022年6月8日(水)リリース
価格:1,500円(+税)
<収録曲>
1. Snake
2. Swimmer
3. Lovely
4. Don't catch the now
5. Ryan
https://haruy.lnk.to/MAO
プロフィール
東京を拠点に活動する神奈川県出身2000年生まれのシンガーソングライター。中高時代に軽音楽部に在籍し、Tastyという3ピース・バンドを結成。Ba.&メインVo.とソングライティングを担当。2021年7月にEP『Weep』をリリース。2022年4月プロデューサーにHayata Kosugiを迎え、デジタルシングル「Swimmer」でソロデビュー。本作品は、Hayata KosugiがHaruyが歌うことをイメージして描き下ろした楽曲で、この作品がきっかけとなり、ふたりでの制作がスタート。Haruyの浮遊感のあるボーカルが小気味良く響くロマンティックなダンス・トラックに仕上がっている。
また、同じくプロデューサーにHayata Kosugiを迎え、5月18日にデジタルシングル「Ryan」、6月8日には1st EP『MAO』をリリースする。
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放送局:J-WAVE(81.3FM)
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ナビゲーター:櫻井海音
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