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BOYSぴあSelection 第53回 萩原利久

萩原利久「大学に行かないと決めたとき、この仕事を続ける覚悟ができた」

全1回

特集

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スタッフと談笑しているときは、どこにでもいるような素朴な男の子。だけど、カメラに立った瞬間、ふっとオーラをまとう。スチールなのに、その瞳の向こう側に物語を感じさせる顔をする。

萩原利久、23歳。職業は俳優。もしも神様が運命を決めているのなら、きっと彼は俳優という道につくように導かれていたのだと思う。そう信じたくなるほど、彼はどんな作品でも自然と物語に溶け込み、役として生きている。

BOYSぴあだけに語ってくれた、お芝居のこと。そして大好きなバスケットボールのこと。その非凡なる才能を支えるのは、好きなものにとことんのめりこむ性格と、偉大なる“神様”の存在だった。

── 『探偵が早すぎる 春のトリック返し祭り』もいよいよ佳境に。2000億円の遺産相続をめぐってのお話ですが、もし萩原さんが2000億円を相続したらどうします?

僕はゴールデンステイト・ウォリアーズというNBAのチームを応援しているんですけど、そこのユニフォームを全部買います。

── すごい。最初に出てくるのが家でも車でもなく、ユニフォームなんですね(笑)。

そうですね。それだけお金に余裕があったら、もうチーム全員分のユニフォームを買います。ユニフォームって基本的に毎年デザインが更新されるんです。だから、その年のものはその年しか買えなくて。それこそ昔のプレミアムユニフォームのオークションがあったら、バキバキに入札していきますよね。

── 札束で殴り倒すオタクだ!

です! 1億、2億、3億、4億って(と、札束を叩きつけるポーズ)。

── なんでそんなにほしいんですか。

好きだからですかね。コレクション欲というか。着たいし、飾りたい。今、うちには5〜6枚あって。普段は壁にかけているんですけど、試合のときはそれを着て応援しています。だから、お金があるなら着る用と飾る用に分けたい。なので、全部2枚ずつ買います。

── オタクの写真集みたいなものですね。

そうです、鑑賞用と保存用みたいな(笑)。あ、あとユニフォームにはレプリカと、オーセンティックという選手が試合で着用しているのと同じ素材のユニフォームがあって。選手のユニフォームは基本的に繰り返し使うものじゃないんです。軽い分、生地も薄くて、洗濯に弱いのもあって。普段、僕が着ているのは耐久性のあるレプリカの方なんですけど、お金があるならオーセンティックユニフォームを集めたい。特に昔のデザインのものほどなかなか手に入らないので、お金にものを言わせて全部買い占めたいです(笑)。

── では、次の質問です。主人公の千曲川は人並外れた知識と洞察力で事件を未然に防ぐ名探偵。萩原さんは探偵適性はある方ですか。

ないんじゃないかなあ。推理ものとか犯人が誰か考えるのは好きですけど、でも当たらないです。『名探偵コナン』とか全然当たらない。

── 観察力はどうですか。人のちょっとした変化に気づくのが得意とか。

いや、得意じゃないです。

── 女子の髪型やネイルが変わったとか。

(小声で)わかんないですね…。全然わからない。

── それ、怒られるやつですよ(笑)。

そうですよね…。

── もしかして人に対する関心が薄いタイプですか。

薄いと思います。決して「あります!」とは言えない(笑)。ただ、興味があるものに対しての執着はすごいですね。だからサッカー選手の髪型が変わったらすぐわかります。あ、ちょっとヒゲのデザイン変わったとか。髪色が変わったとか。

── 根本的にオタク気質ということですね。

そういうことですね。なので、やっぱり“浅く広く”はいけない。自分のゾーンに入ったものでないと、目に入らない人間です。

── そういう意味では、『美しい彼』で演じた平良一成は結構近いところがあるんじゃないですか。

なので、僕はそこから平良に入っていきました。平良のオタク気質なところはすごく共感できたというか。清居への神様に対する信仰に近いような一方的な感情は意外とわからない感覚じゃないなって。そこから役を掴んでいった感じでしたね。

── じゃあ、萩原利久にとっての“神様”は?

(ゴールデンステート・ウォリアーズに所属するプロバスケットボール選手の)ステフィン・カリーです。僕の一番の心配は、彼が引退したらどうしようっていう。

── いつまでもあると思うな、親と推しですね。

本当にそうです。日常のありとあらゆるメンタルとか全部ステフィン・カリーを基準にしちゃっているので。言ってしまうと、推し活ですよね。隙間時間があれば、ステフィン・カリーの動画を繰り返し観ています。

── 名プレイ動画集みたいなのがあったりするんですか。

あります! ステフィン・カリーの最大の武器はスリーポイントシュート。現役選手でいちばんスリーポイントを決めているのがステフィン・カリーなんです。彼のスリーポイントはもう圧倒的。それこそバスケをやってない方が見ても、とりあえずすごいことはわかると思います。遠いところからタンタンタンタン入れていくので、見ていて気持ちいいんですよね。

1000本外しても1001本目で入るかもしれない。コービーの姿勢が僕のメンタルを変えてくれた

── 個人的に萩原さんの演技力は同世代の中でもずば抜けていると思っていて。特に、翳りのある目のお芝居は最高です。

ありがとうございます!

── フィルモグラフィーを見ていると、影のある役どころが多いなという印象です。

確かに多いと思います。何でなんですかね。昔の宣材写真がわりとそんな感じで。あの写真を見てオファーをいただいたときは、僕のことをクールな人だと思われているので、よく驚かれました。実際の僕は、よく喋るので。

── あの演技力はどこから培ったんだろうというのが気になってしょうがないです。

やっぱり長くやっているのはあると思います。僕は9歳からこの世界にいて、たくさんの人と出会って、いろんなものを見て、いろんな声をかけてもらって。今俳優を始めた人よりは多少は経験がある分、失敗もしてきているし、そこから学んで、こういうときはこうしようみたいなのもわかるし。

それこそ今の事務所に入ったばかりの頃は、時間があれば菅田(将暉)くんの現場に行かせてもらっていました。僕が出ていなくても、そこで大人の人たちの芝居を見て。俳優だけに限らず、スタッフさんとか現場の人とたくさんお話しさせてもらったおかげで、自分が考えていることとスタッフさんが考えていることは全然違うんだとか、いろんな視点をもらえた。その経験値は僕の財産なのかなと。

あとは、スポーツとか音楽からもらうものも多いです。

── 好きなものがお芝居につながってくるんですね。

よく(NBAのレジェンドである)コービー・ブライアントの「マンバメンタリティ」の話をするんですけど、あのより良いものを目指し続けるメンタリティはお芝居にも応用できる部分があります。音楽は玉置浩二さんが好きで、玉置浩二さんを見ていると究極の表現者だなと思います。僕は歌を歌っているわけではないので、完全に応用することはできないけど、自己表現とか、自分を投影させる方法だったりは、玉置さんからいただいている部分はあります。

── よく「マンバメンタリティ」については話されていると思いますが、では気持ちが萎れてしまうことはあまりないですか。

もう無理だってなることはないと思います、今のところは。コービーたちも全部が全部うまくいっているわけではなくて。人間だからダメな日ももちろんある。だけど、彼らは失敗することに対して恐れていないんです。失敗したから、ここでシュートを打つのをやめようみたいな感じは全然なくて。1000本外しても1001本目で入るかもしれないみたいな考えで。そこは僕らの仕事も近いんじゃないかなと思います。

もちろん一発で決められるに越したことはないですけど、ダメだったらもう1回お願いして撮り直しさせてもらって、テイクを重ねるごとにひとつひとつダメなところを直していけばいい。そう考えるようになってからは、今までより本番を恐れなくなりました。緊張感を持つことは大事だけど、過度な緊張は体のパフォーマンスを下げるだけ。ここでミスしても、また次があると思うようになってからは、リラックスして本番に臨めるようになりました。

── いろんな現場を経験してきていると思いますが、その中で今もずっと残っている誰かからもらった言葉ってありますか。

19歳のときに『アイネクライネナハトムジーク』という映画に出させてもらって。僕は高校生の役だったんですけど、今泉(力哉)監督から「高校生ってもうちょっと幼くてもいいんじゃない?」というようなことを言われたんです。それが結構衝撃的で。そうか、僕は、もうただ立っているだけでは高校生にならないんだって思ったんです。

18歳と19歳では、たった1歳しか違わないけど、でも確かに微妙な違いがある。だから、そこからは自分が何歳の役をやるのか、バックボーンを今まで以上にイメージするようになって。高校生をやるときも、シーンのふとした瞬間に、「今この反応って16歳かな」みたいなことを1回考えるようになった。口で説明するのは難しいですが、そういうことを意識するようになってから、よりやりやすくなって。ひとつピボットが増えた分、役の広げ方も増えた気がしています。

── 今まで挑戦してきた中で、特に演じるのが苦しかった役はどれですか。

15歳のときに『イノセント15』という作品で15歳の少年の役をやらせてもらって。当時は役の気持ちがわからなくて、すごく難しかったです。15歳の心ってガラスみたいだし、いつもグラグラしてる。今振り返れば、無垢な15歳だからこそ、あのまんまでよかったのかなと思うし、逆に今あの役をもらってもできるかと言われたらちょっと答えられないです。当時はそんなことを考える余裕もなく、わっかんねえなあっていうゾーンに毎日陥ってましたね。

── 完成した作品を観て手応えは得られましたか。

なかなか苦戦していたので、当時は冷静には観られなかったです。やっぱりシーンごとに現場のことを思い出してフラットに観られないんですよ。だから、今だと逆に落ち着いて観られるのかもしれないです。

ひとつのことにハマる才能は人よりあるかもしれない

── この仕事を大人になっても続けると覚悟を決めたのはいつぐらいの頃でしたか。

『イノセント15』のあと、ちょうど高校2年生だったと思うんですけど、学校で進路希望調査票を配られて、ああそっか、もうこういうことを考えなきゃいけないんだと思って。大学に行くなら勉強しないといけないし、どうしようって考えた結果、当時の事務所の人とも相談をして、大学に行くのはやめようと。

── 進学という保険を選ばず、退路を絶って前に進むことを決めたんですね。

というのもありますし、大学に行ってこれがしたいというのが自分の中で明確に浮かばなかったのが大きかったです。それがない限り、大学に行っても4年間、ただ時間が過ぎていくだけな気がして。もちろん大学に行ったら行ったでいろんな経験ができると思うし、そのすべてがダメだとは思わないですが、どうせ同じ時間をかけるなら、仕事に全部を注ぎたかった。その環境を手にするために、自分は大学に行かないと決めました。

── 仕事に専念できる環境をつくったことで、仕事への気持ちも変わりはじめましたか。

ちょうどその頃、『あゝ、荒野』という映画を撮影していたんですが、すごくタフな作品で。受験勉強をしながらこの作品に臨むのはできないこともないでしょうけど、でもせっかくなら時間をかけてやりたいという気持ちが強かったんです。大学に行かないと決めたことで、持てる力を全部ぶつけられた。自分の時間を他のものに割かずにすんだというのはやっぱりうれしかったです。

── ちなみに、じゃあ進路希望調査票にはなんて書いたんですか。「第一志望:役者」とか?

「役者」とは書いていないです(笑)。なんて書いたかなあ…。確か「行きません」って書いて出した気がします(笑)。

── 萩原さんは、この世に才能があると思いますか。

才能はやっぱりあると思います。

── では自分に芝居の才能はあると思いますか。

うーん。芝居の才能というより、ハマる才能はあると思います。物事にハマったときの執着はなかなか強い方だと思うので。人に関心が薄いというのもそれで、自分のハマったものに全部関心がいってしまうんです。知らないことがストレスだから、意地でも選手の名前とか全部覚えますし、誰に言われることなく、知らない情報をどんどん入れていく。そういう執着みたいなものは、世の中全員の平均値を出したときに真ん中より上にはいるのかなと。

これもコービー・ブライアントの言葉で、結局自分の持っている才能を何に使うかなんですよね。これは合わなかったけど、別のことをやったらすごく合ってたみたいなことってみなさん1人ひとりにあると思っていて。僕だったら、このひとつのことにハマる才能をうまくお芝居に向けられたらなと思っています。

── お芝居にハマってよかったですか。

そうですね。興味のないものは続かないので、続いてるってことは、たぶんそういうことなんじゃないかなと思います。

── 他人の芝居を見て、うまいなあって悔しくなることはありますか。

なくはないです。それこそ、瞬間的に「うわ、食われた」と思うこともあります。でも悔しいとはちょっと違うかも。やられたからやり返したいっていうより、じゃあ次はもっと自分もできるようにって思えるモチベーションになるというか。人と比べても、あまりいい方向に転ばないので。結局はそれって自分の尺度から測った話であって、はたから見たらどう見えているかもわからないし。それより、もっとここをこういうふうにできたじゃんって意識を自分に向けて、自分をブラッシュアップするようにしています。

安眠の秘訣は、「寝るんだ!」という強い意志を持つこと

── では、お芝居の話はいっぱい聞かせてもらえたので、最後はお芝居以外のことを。今、芝居以外で何かチャレンジしたいことはありますか。

最近、クレーンゲームのYouTubeをたくさん観ていて、自分ももうちょっと上手くなりたいなと。昔から好きなんです、クレーンゲーム。だから、動画を見て勉強しています。

── 家の中に、クレーンゲームでとったぬいぐるみとか置いてますか。

ありますね。でも、ぬいぐるみがほしいというよりは、取ることが目的ですね。

── そのハマりやすい性格から考えると、クレーンゲームにつぎこんちゃうこともありそうな…。

普通5~6000円使っても「ああ、取れねえ」っていうことはありました(笑)。でも、動画を観たら、引き際が大事っていろんな人が言っていたので、これからはもう大丈夫です!

── 梅雨の季節ですが、雨は好きですか。

いや、好きじゃないですね。傘を差すのが下手で。差しているのに濡れているんです。いっそカッパとかで出たいです。

── では、雨の日の過ごし方は?

寝ます(笑)。雨だからこそ、わざわざ外に出なくていいので、そこは最高ですね。

── 安眠の秘訣はありますか。

「寝るんだ!」っていう意思をしっかり持つことですね。寝具のこだわりは一切ないです。「寝ます!」って強く思って寝ます(笑)。

── この仕事をしていると、ショートスリーパーの方が助かりません?

そうなんですよ。憧れます。だって、4時間で8時間寝たことになってるわけじゃないですか。そんなのずるくない!?と思います。羨ましいですね。

── では、理想のデートコースを教えてください。

喋るのがすごく好きなので、コミュニケーションが1番にあったら、すごくいいなと思います。ドライブしながら喋るでもいいし、普通に歩きながら喋るでもいい。公園に行って、ずっと喋ってるとかいいですね。

── 恋愛は自分が引っ張っていくタイプですか。

対等かなと思います。

── じゃあ、デートでおごったりもせず?

……対等かなと思います(笑)。

── 喧嘩したら自分から謝るタイプですか。

そもそも喧嘩をしないです。喧嘩するぐらいなら、その前にしない方へ自分から持っていく。だから相手が感情で来ても絶対に感情で返さないです。これは人に関心がないところから派生しているんですけど、恋愛に限らず、わりと人付き合い全般でそういうところがありますね。

── じゃあ相手が不機嫌そうなときは?

そうですね。極力怒らせないようにします(笑)。

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撮影/友野雄、取材・文/横川良明、企画・構成/藤坂美樹、ヘアメイク/カスヤユウスケ、スタイリング/Shinya Tokita