【動画インタビュー】気になる!あの映画の“ウラ話” by.映画パーソナリティ 伊藤さとり
Vol.10『桜色の風が咲く』田中偉登 「母親役が小雪さんで良かったと思う部分が何回もあった」
第10回

伊藤さとり、田中偉登
映画パーソナリティ・伊藤さとりのYouTube番組「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」。
新作映画の紹介や、完成イベントの模様を交えながら、仲良しの映画人とゆる~い雰囲気の中でトークを繰り広げます。他ではなかなか聞き出せない、俳優・監督たちの本音とは?
今回は映画『桜色の風が咲く』から田中偉登さんが登場! 共演した小雪さんとのエピソードや役作り、お気に入りの映画のことまでたっぷり語っていただきました。
映画人たちの貴重な素顔をご堪能ください。
“触れ合う”というコミュニケーションの原点の大切さを伝える

9歳で失明、18歳で聴力を失いながらも世界で初めて盲ろう者の大学教授となり、2003年にはTIME誌による「アジアの英雄」に選出された、東京大学先端科学技術研究センター教授・福島智の生い立ちを描いたヒューマンストーリー。
『ALWAYS 三丁目の夕日』など数々の作品に出演する小雪が、母として智を支えていく主人公・令子を演じ、智の青年期を『朝が来る』などに出演する気鋭の若手俳優、田中偉登が演じる。さらに吉沢悠、リリー・フランキー、朝倉あきらが顔を揃える。
監督は『最後の命』『パーフェクト・レボリューション』の松本准平。人とのコミュニケーションや関わり方が難しくなっている今だからこそ、“触れ合う”というコミュニケーションの原点の大切さを伝えていく、あたたかな人間賛歌を作り上げた。

教師の夫、3人の息子とともに関西の町で暮らす令子(小雪)。末っ子の智は幼少時に視力を失いながらも、家族の愛に包まれて天真爛漫に育つ。
智は東京の盲学校で高校生活を謳歌するも、18歳のときに聴力も失う。暗闇と無音の宇宙空間に放り出されたような孤独にある息子に立ち上がるきっかけを与えたのは、令子が彼との日常から見出した“指点字”という新たなコミュニケーションの“手段”だった。
勇気を持って困難を乗り越えていく母子の行く手には、希望に満ちた未来が広がっていく──。
「オーディションでは全部服も脱いで、体験したままをやりました」

── (田中偉登が出演した)『朝が来る』(2020)も大好きで、今日お会いできるのを楽しみにしていました。しかもこの作品でたくさん泣かせていただきました。
田中偉登(以下:田中) 泣いてくださいましたか。
── “こういう親になっていかねばならぬ”という使命感さえ持ちました。
田中 確かに。令子さん(小雪演じる智の母)強いですからね。
── 本当に素敵なお母さんで、素敵な福島智さんだったんですけど。どうでしたか、この話が最初にきたときは。
田中 オーディションなんですよ、この役。概要と台本の課題ともうひとつ、盲ろう者の日常生活を演じてくださいって。ただ盲ろう者の生活を演じるといっても、目をつぶって聞こえないふりして料理でもすればいいのかな、でもそれじゃちょっとな……と。
お風呂場で、何しようかなって考えてたときに、ひとりで生きていくのってどれだけ大変なんだろうと思って。耳栓を入れて目をつぶりながらお風呂に入るのを、オーディションまでの準備期間にやってみたら、意外と難しくて。
こんなに時間がかかるんだというのを体感してからオーディションでやったときに、どうせなら服も脱ぐかって。全部服も脱いでそのまま、体験したままをやりました。監督がすごく気に入ってくださって、智にある度胸とリンクする部分があると。後から聞いた話ですけど、即決で、決めてくださったと。
今でも活躍されている方の半生をたどり直すってなると、とんでもないプレッシャーだなって後から気づきました。(撮影時)二十歳になったばかりだったんですよ。いきなりでっかい壁がきたなって感じではありました。

── 実際に(福島智さんご本人に)会ったんですよね?
田中 コミュニケーション取れるのかなとか、どうやってしゃべればいいのかなって思っていたんですけど、福島さんは本当に明るいですね。「目が見えなくなったときどうですか」とか、深い内容のインタビューをしたんですけど、すごい明るく、冗談を交えながら楽しそうにしゃべるんですよ。
でもそのなかにどうしても苦しい過去だったり、辛かったときの感情がにじみ出てくる感じがあって、それがすごく印象的で。そういう強さを持った人なんだなっていうのをそこで感じて、劇中でも明るく楽観的な雰囲気というか、そういうのは意識しました。

── お母さまの存在がすごくあって、今回小雪さんが演じられましたけど。
田中 小雪さんで良かったなと思う部分が本番中に何回もあって。実際僕、目を閉じている状態からスタートだったので、小雪さんのお芝居を目で見てないんですよ現場中、1回も。
なので小雪さんがしゃべる声の音の感じとかで、今泣いてるのかな、笑ってるのかなっていうのを想像しながら。それが自然に、一度も突っかかることもなく、すらっと僕の中に入ってくる自然な方なので、そういう意味ではすごく助けられていたなというのがありますね。
── すごく自然体な役の入り方をされてたので、智ってこういう風に自然に動いているんだなって思い込んでいたんですよ。
田中 現場でカメラが回っていないところで、小雪さんが本当にお母さんらしくて。「ご飯食べてるの?」とか僕のことを心配してくださって。僕が信頼して色々おしゃべりすると、それにちゃんと応えてくださるし。
本当にお母さんだなって思いながら、カメラが回っても、カメラが回っていないときと同じ感じのテンションでふたりでしゃべっているから、感情の起伏とかもちゃんと入ってくるんですよね。そういう部分も計算されてやってくださっているのかなって。感謝することがいっぱいです。

このほかにも、「生きる希望になる映画」とも語った本作から学んだことや、今の田中さんが思う“役者”とは何か、そして今後のビジョンなど、熱くたっぷりと語っていただきました。
恒例の“ガチャガチャ”を引いて質問に答えるコーナーでは意外なプライベートも明らかに! ぜひ動画全編もご覧ください。
『桜色の風が咲く』
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YouTubeチャンネル「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」
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