【動画インタビュー】気になる!あの映画の“ウラ話” by.映画パーソナリティ 伊藤さとり
Vol.14『戦場記者』須賀川拓監督「異常な状態が日常になっている。それがいかに恐ろしいことか」
第14回

伊藤さとり、須賀川拓監督
映画パーソナリティ・伊藤さとりのYouTube番組「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」。
新作映画の紹介や、完成イベントの模様を交えながら、仲良しの映画人とゆる~い雰囲気の中でトークを繰り広げます。他ではなかなか聞き出せない、俳優・監督たちの本音とは?
今回は映画『戦場記者』から須賀川拓監督が登場! 記者としての熱い想いから、映画でも語られなかったエピソードまで、たっぷりとお話いただきました。
映画人たちの貴重な素顔をご堪能ください。
圧倒的なリアル、真実を映し出す今観るべきドキュメンタリー

世界の紛争地を飛び回ってきた日本人記者の視点から、“戦場の今”を映し出すドキュメンタリー『戦場記者』。TBSテレビに在籍し、JNN中東支局長として現在ロンドンを拠点に世界中を飛び回る特派員須賀川拓がメガホンを取り、監督として、時に画面に登場するレポーターとして、戦地の状況とその裏に潜む社会の問題を伝える。
須賀川監督は、中東はもとより、ヨーロッパ、アフリカ、西アジアと地球の約3分の1という驚異的な広さのエリアをカバーし、世界各地を飛び回ってニュースを発信している。
「戦争に白黒はない」と、常に反対側からの視線も忘れない須賀川監督。テレビ報道の枠を超え、SNS等も駆使し、戦地の肌感覚とニュースの向こうに広がる光景や真実を視聴者に届けており、スピード感溢れる怒涛のレポートと、紛争地のヒリヒリした緊張感を伝えるYouTube配信は、若い視聴層も取り込み、平均30万再生以上の人気コンテンツにもなっている。

そんな須賀川監督が、抜群の行動力と分析力で人々を見つめ、観る者に戦争の残酷な現実を突きつける本作。そこにはニュースだけでは知りえない、圧倒的なリアル、真実が存在する。
パレスチナでは、イスラエルによって閉ざされた人口200万の街、ガザに入り、4人の子供と妻を空爆で失った男性の静かな慟哭を聞く。一方のイスラエルでは、ガザから無差別に放たれるロケット弾と迎撃ミサイルが空を行き交う異様な光景を伝えた上で、それぞれの当局者に攻撃の正当性を問いただす。
アフガニスタンでは、タリバン支配で女性の人権が抑圧される実態のほか、深刻化する貧困と蔓延するドラッグが作り出した“橋の下の地獄”に足を踏み入れる。
戦争が続くウクライナでは、クラスター爆弾が降り注ぐ街の住民や、ロシア軍の占拠で放射能汚染のリスクが激増したチョルノービリ原発の職員に現地取材、ロシアのプーチン大統領が「ネオナチからの解放作戦」と主張する“軍事作戦”が、紛れもない侵略・破壊行為であることを示す。
激動と混沌の時代に生きる我々が、今観るべきドキュメンタリー映画となっている。
「横で人が死のうが、現地の人々も慣れてしまっている。それが日常」

── 須賀川監督はご自身で戦地に乗り込んで、今どういう状況かというのを(映画で)私たちに教えてくださっていたんですけど、合間にご自身の想い、インタビューのようなところがあって。それを観ていたら「なんて素敵なんだこの方は…!」と。お会いしたらさらに素敵なんです!
須賀川拓監督(以下:須賀川監督) ありがとうございます(笑)。
── 最初はそもそも報道で、ご自身のレポートをオンエアするために撮っていた。それをYouTubeでやろうというのは、いつごろどのように思われたんですか?
須賀川監督 とりあえず僕の喋りが長いんですよ。長くて地上波では使えない。地上波の短いレポートでは絶対に伝えられないという想いがずっとありました。
僕はずっと中東の現場にいて、戦場や爆発、難民キャンプですとか、そういうところに行くたびに、ひたすら長いレポートを撮ってました。そこで、TBSのインターネットでニュースをどんどん発信していこうというタイミングとちょうど重なって。最初にレバノンの大爆発があったんですが、そのロングレポートを流したら(数字が)伸びて。もうこれでいこう、と。
── それだけ伝えたい想いが溢れていたんですよね。
須賀川監督 日本語の能力が足りなかったんですかね(笑)。でも伝えたいことは、テレビの尺だけでは絶対に伝えられないというのは昔からずっと思っていました。だからその分、レポートが長くなってしまったんですけど、結局地上波では使えないので、自問自答というか、苦しい時期はけっこうありました。

── 映画の中では、ガザ地区やアフガニスタンの状況が映し出されていますが、最初に“これは本当に打ちのめされた”という現場ってどこだったんですか?
須賀川監督 やっぱりガザですね。映画の中でも言ってますが、対立が長すぎて、空爆が1回、2回くらいじゃニュースにならない。それは我々の責任でもあるんです。それをニュースにし続けなければならないんですけど、現地の人々も慣れてしまっている。横で人が死のうが、家族もろとも殺されようが、それが日常になってしまっている。
むしろ激しい現場よりも、激しい現場のすぐ隣で何事もなかったかのように生活していることのほうがいかに恐ろしいか。それが衝撃でした。

── ガザ地区の崩壊した建物で子供たちが遊んでいたじゃないですか。あれを撮る意味を感じて撮ったんだろうなと。
須賀川監督 水道管が破裂してクレーターができているところに(子供たちが)石投げて遊んでいるんですよ。そこにまだ遺体があるかもしれないところに。でも大人も止めない。
子供たちは笑顔で遊んでいますけど、彼女・彼らに与える心の傷ってどれほどのものなのか、想像もできないですし。
一方でイスラエル側に行っても、ガザからロケットが飛んでくるのが当たり前になっていて、空襲警報が常に鳴り響いている。もうお互い超異常な中で生活している。超異常な状態なのに、人々は日常を送っている。こういうところも伝えていかなければならないと思います。

このほかにも、現地で家族を失くした人々とどうコミュニケーションを取り、インタビューしているのか、さらに映画本編でも語られていない知られざるエピソードまで、記者としての熱い想いを交えてたっぷり語っていただきました。
後半では、須賀川監督のおすすめ映画も教えていただきました! ぜひ動画全編もご覧ください。
『戦場記者』
公開中
(C)TBS テレビ
データ
YouTubeチャンネル「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」
https://www.youtube.com/channel/UCVYlon8lP0rOJoFamEjsklA