Vol.15『ひとりぼっちじゃない』伊藤ちひろ監督「観終わった後に誰かといろいろ話したくなる映画を作りたかった」

King Gnuの井口理×馬場ふみかの化学反応に注目！

『世界の中心で、愛をさけぶ』『スカイ・クロラ』など、数々の名作を世に送り出してきた脚本家・伊藤ちひろが、10年かけて上梓した小説「ひとりぼっちじゃない」を、行定勲の企画・プロデュースにより、自ら初監督を務め映画化。

原作は、不器用でコミュニケーションがうまくとれない歯科医師・ススメの日記形式の小説。伊藤は脚本も担当し、ススメが謎の多き女性・宮子に恋をすることで、変わっていく自分、歪み狂っていく日々を、初監督ながら圧倒的な世界観で描いている。

主演は、デビュー以来音楽シーンに大きなインパクトを残し続けるバンドKing Gnuの井口理。脚本執筆の際に主人公・ススメを井口自身にアテ書きしたという本作で、井口は、撮影前にもかかわらず、伊藤監督とともに撮影地のロケハンにも帯同。並々ならぬ意欲で役柄を構築し、これまで見せたこともない表情でススメを演じた。

さらに共演には、ススメが恋をする謎多き女性・宮子に馬場ふみか。宮子の友人でありながら、ススメを惑わせる蓉子に河合優実。若き実力派のふたりによる、化学反応にも期待が高まっている。

人とうまくコミュニケーションのとれない、歯科医のススメが恋をしたのは、アロマ店を営む宮子。しかし、宮子は部屋に鍵をかけず、突如連絡が取れなくなったりする、つかみどころがない女性だった。

それでも、彼女と抱き合っていると、ススメは自分を縛っている自意識から解放される気がしていた。自分でも理解できない自分を宮子は理解してくれている、ススメはそれがうれしかった。

けれど、謎の多い宮子を前に、自分は彼女のことを理解できていない、と思い悩むススメ。ある日、宮子の友達である蓉子が、ススメに宮子の身に起きた驚きの事実を告げ……。

「誰が本当のことを言ってて、ウソを言ってるのか分かんない」

── 本当に監督の書く脚本が大好きで大好きで。ずっと観続けていたこの伊藤ちひろ監督の初の劇場長編映画ということですけど、映画を観ると本が読みたくなる、で、映画を観終わった後に語らいたくなる。だから今日私は質問があまりできないという……。

伊藤ちひろ監督（以下：伊藤監督）　しちゃいましょう(笑)！

── しちゃっていいですか？　いや、でもそういう作品なんですよ。めっちゃ“考察型”っていうんですかね？

伊藤監督　そうですね。私も映画を観終わった後に、例えば、自分が一緒に観た人とかと、あれ観た？ってなって、その後にあれって本当はこうだったのかな？　ああだったのかな？って話せる映画がけっこう好きなんですよ。だからそういう映画を作りたいなっていうのが最初からありました。

── しかもね、またセリフがすごくひとつひとつ響くんで。

伊藤監督　セリフがすごく少ない映画ですよね。なんか一個一個のセリフの選び方とか……。原作は日記形式で、ススメの言葉だけで綴られてるんで。その中からどれぐらいススメが実際外に口に出せてる言葉ってあるのかなとか、そういうのを結構考えて脚本を書いてるとこありますね。

── この三人が出てくる訳じゃないですか。河合優実さんも馬場ふみかさんもまた絶妙なんですよね。三角関係とも言えない不思議な関係が構築されるんですよ。でもこのふたりもちょっと捉えどころがない。それがまた面白くて、どっからこれを生み出したんだろうってすごく気になったんですよ。

伊藤監督　確かに。“まとも”って何が“まとも”か分からないですけど、分かりやすく物語の中でこの人を“まとも”と思って見れば、物語って理解しやすいって人が出てきたりするけど、この映画はあんまり出てこないですね。

だから、誰が本当のことを言ってて、誰がウソを言ってるのか分かんないっていう風に多分見てると思うんじゃないかなって。私も思いながら撮っていたけど、多分その登場人物たちはみんな自分が嘘ついてるつもりはないっていう風に思ってるよね、っていうのをみんなと話をして、当時演出していましたね。

インタビューではこのほか、脚本のことなど伊藤監督ならではのこだわりについても深堀り！　さらに、東映チャンネル本編では、伊藤監督の好きな東映作品についても語っていただきました。ぜひあわせてご覧ください。

『ひとりぼっちじゃない』
3月10日(金)公開

(C)2023「ひとりぼっちじゃない」製作委員会

データ

「伊藤さとりのシネマの世界 Vol.53」『ひとりぼっちじゃない』放送日時
2023年2月16日(木)13時50分～14時00分
https://www.toeich.jp/information

東映チャンネル公式サイト
https://www.toeich.jp/