【動画インタビュー】気になる!あの映画の“ウラ話” by.映画パーソナリティ 伊藤さとり
Vol.32『おしょりん』北乃きい&森崎ウィン 「今は仕事を頑張りたいから恋愛は考えられない」の言葉の真意とは?
第32回
(左から)北乃きい、伊藤さとり、森崎ウィン
映画パーソナリティ・伊藤さとりのYouTube番組「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」。
新作映画の紹介や、完成イベントの模様を交えながら、仲良しの映画人とゆる~い雰囲気の中でトークを繰り広げます。他ではなかなか聞き出せない、俳優・監督たちの本音とは?
今回は10月20日(金)福井先行公開、11月3日(金)全国公開の映画『おしょりん』から北乃きいさんと森崎ウィンさんが登場! 本作の魅力や撮影エピソードなど、たっぷりとお話いただきました。
映画人たちの貴重な素顔をご堪能ください。
人生を懸けてメガネ作りに挑んだ兄弟と、ふたりを支え続けた妻の情熱と愛の物語
今では日本産メガネの95%を生産している福井県。藤岡陽子の同名小説を元にした本作は、明治時代の福井を舞台に、豪雪地帯のため冬は農作業ができず収入の道がなくなる村を助けようと、メガネ工場をゼロから立ち上げた増永五左衛門と幸八の兄弟と、ふたりを信じて支え、見守り続けた妻・むめを描いた、挑戦と情熱、そして家族の愛の物語。
史実をもとに、福井がメガネの聖地となった成り立ちを追いかけ、“ものづくり”の魅力と、実用品かつ装飾品でもあるメガネに渾身の技術と魂を吹き込む職人と彼らを支える家族を感動的に描きあげた。
主人公・むめには、北乃きい。女性の自由が少なかった時代に、メガネづくりを成功させるという夢を見ることで、心の自由を手にした女性を演じた。また、むめの夫である増永兄弟の兄・五左衛門を小泉孝太郎、弟の幸八を森崎ウィンが演じる。
時は明治37年、福井県足羽郡麻生津村(現・福井市麻生津)の庄屋の長男・増永五左衛門と結婚したむめは、育児と家事で忙しい日々を送っていた。ある日、五左衛門の弟の幸八が勤め先の大阪から帰郷し、村をあげてメガネ作りに取り組まないかと持ち掛ける。
初めは反対していたが、視力の弱い子供がメガネをかけて大喜びする姿を見て、挑戦を決めた五左衛門は、村の人々を集めて工場を開く。だが、苦労の末に仕上げたメガネが「売り物にならない」と卸問屋に突き返され、資金難から銀行の融資を受けるも厳しく返済を迫られ、兄弟は幾度となく挫折する。そんなふたりを信じ、支え続けたのが、決して夢を諦めない強い心を持つむめだった。彼女に励まされた兄弟と職人たちは、“最後の賭け”に打って出る……。
「結婚したことないけどこういうことかなみたいな勉強になりました(北乃)」
── この映画を観て福井の魅力もそうですけどメガネの魅力を改めて感じました。おふたりはどう思いました?
北乃 自分も小さい時から矯正メガネをかけていて、しかもかけても見えないメガネを最初かけていたのでメガネが嫌いだったんですよ。かけても見えないし小学校でかけても黒板が見えなくて。かけたら見えると思ってたから、メガネって。なんか全然違うとか思ったんですけど、途中、ある年代からあの分かります?メガネに憧れる……。
森崎ウィン(以下、森崎) あー分かります。
北乃 メガネをしている自分がいいみたいな。あるよね? 小さい時って。
森崎 目がちょっと悪いぐらいがカッコイイみたいな(笑)。
北乃 そうそう(笑)。それで好きになった時代が来てそこから今普通のメガネをかけているんですけど、やっぱりこんなに歴史があったんだっていうのを改めて脚本と演じることで役を通して知ることができて、本当に一本一本大切にしようって、心から思う。思いましたよね?
森崎 思いましたよ。
北乃 普段かけていますか?
森崎 普段は伊達メガネをかけることが多いです。目がいいからそんなに度が入ったメガネをかけないんですけど、こういう兄弟がいてこういう奥さんがいらっしゃって、そうやってものづくりの裏にはこれだけストーリーが奥深くあったんだなっていうのを、この作品を通して僕らも勉強になったなってすごく思いましたね。
── だって、職人さんたちに情熱を与えるやり方っていうのも見えてくるじゃないですか。それぞれのグループ分けのところとかで。なかなかうまくいかない青年も出てきて見てたら、メガネ大事にしようって本当 に思いました。
北乃 本当に思いますよね。今って結構お手頃に買えるものとかもあったりするじゃないですか。だけどやっぱり貴重なもので。鯖江のめがねミュージアム行った?
森崎 俺行けなかったんだよね。
北乃 私、行かさせてもらったんですけど、その時もちゃんとすごくしっかりしたいいメガネだから、いいお値段するんです。でも、やっぱりこれが一生ものだという感じがします。
── あと、映画の中でもなんか福井の魅力がいろいろ冒頭でも感じられるじゃないですか。森崎さんはどこか行きましたか?
森崎 福井の中でどっか行ったっていうのはあんまりなかったんですけど、それこそ撮影も毎日あったりとかして、ロケ地で越前町の海岸に行って。そこ、きいちゃんいなかったっけ?
北乃 いなかったけど、海岸を見ましたよね。あれは違うか。
森崎 あれはまた違う海岸。
北乃 いろんな海が(笑)。
森崎 車で行くのにもすごく綺麗なドライブコースみたいになっていて、すごく印象に残ってますね。
北乃 ひとりでいろんなとこ行く人なんで、車でいろんなところ行かれてましたよね?
森崎 そうなんですよ。
── 誘ってあげないとじゃないですか。
森崎 あのーさすがにタレントはちょっと乗せられないので(笑)。
北乃 なんかソロキャンとかも好きみたいです。ソロでできる人だから。ソロキャンって、寂しいじゃないですか。
──寂しいです。怖いもん。
北乃 分かる! 怖いなと思うんですけど、それができる人だからすごいなと思って。
── ランタンとかフルセット持っているんですか?
森崎 全部自分の車に積んであって。それを持ってそのままキャンプ。
── コーヒーとかもやっているわけですね?
森崎 そうですね。豆を挽いて……。
北乃 すご! こだわりが!
── ソロキャンやる人たちはみなさん全部、“マイ豆”もそうですが全て揃えてますよね。
森崎 自分の世界がそこに全部詰まっているから。
北乃 すごいですね。
── すごいですね。福井の建物とかも初めからあるものなんですよね?
北乃 そうです。重要文化財をお借りして。だからもう本当ドキドキでした。もし何か壊しちゃったらみたいな気持ちでやってましたね(笑)。
── だからセットじゃないからすごいリアリティがあって風味があるというか。
北乃 やっぱり役を演じる上で大切ですよね。その土地でその場所で撮るってことはなかなか贅沢なことなんでありがたかったです。
── そして、ふたりの役どころがまたね。
北乃 香ばしいですか?
── 香ばしいていうか私この時代だったら無理だとか思いましたもん。お見合いの時代で好きな人とあれっ?てなるじゃないですか。
北乃 まさかね、三角関係が……。
── そうそうそう。でも、それどういう気持ちで演じてたんですか?
北乃 私の役っていうのは、あまりいい印象じゃなくなっちゃうと良くないっていうか、むめさんって素晴らしい女性だから、この三角関係って演じ方によってはちょっと色々出てきちゃうなと思って。例えば、旦那さんがいる前で照れた表情をしたり、彼が帰ってくると五左衛門さんの前で喜んだりするのもあんまりやると、この女の人、大丈夫か?みたいになっちゃうんだろうなと思って。そこはすごいさじ加減を考えたのと、五左衛門さんが大阪のこととかで土下座した時のシーンで、私はスイッチが入りましたね。あっ、この人についてこうって。それで、着物を売るとかそういうのがあった時も、もう完全に森崎さんから小泉さんにしっかりとシフトチェンジして。
森崎 そこは役名でよくない? なんで本人の名前なの?
北乃 それまでは気持ちはちょっとあったんです。だけど、もう完全にこの人を支えていこうっていう。それで見えたものがあって。
私の祖母って戦時中の時代の人なんですけど、ずっと離婚せずに祖父と添い遂げたんです。お見合いで結婚したけど、お互いに別に好きな人がいたんですって。でも、無理やり結婚させられたの。でも、なんでだろうと思って6歳ぐらいの時に聞いたんですよ。「何でおばあちゃんは離婚しなかったの?」みたいな、「好きなの?」って聞いたら「好きじゃない」って言うんです。「好きじゃないよ。だけど家族なんだよね」と言われた言葉がずっと意味がわからなくて。「えっ? どういうこと? 恋愛で結婚しても離婚するのに何で何で何で?」って思ってて。この役を演じて、五左衛門さんにシフトチェンジした時にちょっとだけわかったんですよ。これが家族なんだみたいな。その好きとか嫌いとかじゃなくて……。
── (そうなのよーと頷く。)
北乃 そうなんですか(笑)!?
── うちの母もそうだったから。お見合いの時代だから、こういうこととか見ながら思いました。
北乃 責任なんですよ。
── そうそう、背負うっていう。
北乃 なんか背負うっていう感じ。だから嫌いだから冷たくするとかそういうことじゃなくて。好きとか嫌いじゃなくて、この人をどんなことがあっても支えるみたいな深いところ。結婚したことないけどこういうことかなみたいな勉強になりました。
── だから私、むめさんはすごい好感度が良かった。
北乃 えっ、本当ですか?
── いや、本当微妙な役だろうなって思ったんですよ。
北乃 すごい微妙です。
── だってさ、目の前に好きな人いるんだよみたいな。で、またそれが超身近だよみたいな。
北乃 そう。それで浮かれたりしちゃってるから。森崎さんが帰ってくるそのシーンとかは、やっぱりちょっと早足になったりとかしてみるんですよ。ちょっとスキップっていうか、ちょっと宙に浮いてるみたいな、犬でいうとシッポ振ってるみたいな感じなんだけど、それはあんまり出さないっていうのがすごい難しかったですね。
── ご苦労されてたんですね。
北乃 いやいや。
森崎 もう全然それはもう一ミリも見せずに現場でどんと座長としていらっしゃったんで。
北乃 何を言うんですか? 怖い、怖い! (幸八は)ひとりだけ大阪からおしゃれな格好で来るじゃないですか。あれ、よかったね。
森崎 あれ、衣装すごい可愛かったよね。
北乃 すごい森崎さんの衣装が可愛いくて、明治って可愛いなって思いました。
── トレンドを持ってきながらも、ただのおしゃれメガネじゃなくて、それがいかに重要なのかっていうのを熱弁するっていう。その感情の部分はどうだったんですか? だって好きだったわけですもんね。
森崎 ですけど、幸八の性格的にもすごくストレートでちゃんと純粋な少年でもあったので、自分の兄上の奥様に対して、そういう目で見るとか、そういうこと自体も出さないけれども、やっぱり一時期、一瞬思いを寄せたっていうのはどっかではある。けれども、そこがメインで描かれるっていうよりかは、ふたりが寄り添っているような、その時に映画の中では、幸八はパートナーが描かれるシーンとかはないからこそ、家族っていいなっていう意味合いでも捉えられるぐらい、むめさんがいるからすべてが頑張れるっていうわけではないんですけども、やっぱりこう、この家族っていう形はやっぱり羨ましいなとか、そこに対しての思いはすごいあったかなと思います。そこはあんまり強く演じるっていうよりかは、物づくりに対する思いの方が強いのかなって。
北乃 現場でも感じました。すごく森崎さん(幸八)の五左衛門に対するリスペクトをめっちゃ感じました。
── 小泉さんに対して?
北乃 なので、結婚してからは直接のやりとりみたいなのはもう一切なくなったんですよ。それをむめとして感じていました。こっちがちょっと一方通行みたいな感じでした。それぐらい幸八がすごい真面目な人なんですよ。やっぱ五左衛門も真面目だけど、似てて。やっぱり長男がすごくリスペクトされるっていうのもあるし、時代かなっていうのもありますね。
── ただ普遍的なものがひとつありましたよね。幸八さんの「今は仕事を頑張りたいから恋愛は考えられない」みたいなセリフ、今の時代も昔も一緒やと思って。
北乃 そうなんですよね(笑)。
── なんですか?っていうね。男の人はよく言いますよね。
森崎 意外と幸八って多分不器用なんですよね。何か入ってきちゃうと集中できないというか、たぶんいろんなことを両立するのって難しいと思ってるのか……。っていう捉え方もあれば、むめさんに対しての気持ちが、もしかしたらそこにちょっと別の気持ちがあって、そこはむめさんを超える人と出会えないかもしれないっていうか。でも、たぶん幸八の方がいろんなところにでかけているからいろんな人に会っているはずなんですけど、それでもパートナーがいないから、もしかしたらどこかで自分の中でむめさんと出会った人を比べている。それをまずやめられないと、次にいけないんじゃないかなっていう言葉でもあるのかなって。
北乃 やっぱりだから、そのままじゃないんですよ。私、男の人が言う「仕事で今忙しいから恋愛はいらない」みたいなのは100パーセント嘘だと思ってます。
── 私も同じなんですよ。
北乃 絶対に理由があるんだけど、なんか気を遣って言わないみたいなことですよね。だから私は幸八からそう言われたときに、別の意味があるんだなって思いました。
── 私もそう思います。
森崎 なるほどね。これは完全に2対1だね(笑)。
── 森崎さんはどう思うんですか? すっごい仕事を頑張ってたら他のことは手がつかなくなるんですか?
動画では、気になるおふたりの恋愛観についてや最近観てよかった映像作品についてもアツく語っていただきました。ぜひあわせてご覧ください。
『おしょりん』
10月20日(金)福井先行公開
11月3日(金)全国公開
データ
「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」
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