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【動画インタビュー】気になる!あの映画の“ウラ話” by.映画パーソナリティ 伊藤さとり

Vol.39『WILL』東出昌大&エリザベス宮地監督 スキャンダル後にドキュメンタリーを撮られることを承諾した一番の理由とは?

第39回

伊藤さとり、エリザベス宮地監督、東出昌大

映画パーソナリティ・伊藤さとりのYouTube番組「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」。

新作映画の紹介や、完成イベントの模様を交えながら、仲良しの映画人とゆる~い雰囲気の中でトークを繰り広げます。他ではなかなか聞き出せない、俳優・監督たちの本音とは?

今回は現在公開中の映画『WILL』から東出昌大さんが登場。しかも、途中からエリザベス宮地監督も飛び入り参加! 本作を撮ることになった経緯や狩猟について、友人でもあり劇中音楽を担当するMOROHAとの関係性など、たっぷりとお話いただきました。

映画人たちの貴重な素顔をご堪能ください。

俳優・東出昌⼤はなぜ狩猟をしているのか?

『WILL』

なぜ俳優である東出昌大が狩猟をしているのか。彼が狩猟をして生命を頂き、生きながらえる生命とは何なのか──。

本作はアーティストのドキュメンタリーやMVを製作してきた映像作家・エリザベス宮地が監督を務め、狩猟する東出を追いかけ、容赦ないリアルな1年間の記録が収められている。

また、ラップグループ「MOROHA」が音楽を手がけ、自身も出演。心の根底に混沌、矛盾、葛藤を抱える東出昌大というひとりの人間の姿を、MOROHAによる渾身の言葉とともに映し出す。

『WILL』

俳優の東出昌大は、猟銃を持って山へ向かう。電気も水道もひかれていない雪山で生きる東出は、狩猟で得た鹿や猪を食べ地元の人々と触れ合っていく。命を頂き生きながらえる、葛藤と矛盾を心に抱える人間の姿が浮かびあがる。

本来ライバルになるはずの週刊誌記者と仲良くなる東出に監督もびっくり!

『WILL』

── ご自分のドキュメンタリー映画を宣伝するというのは、どんなお気持ちですか?

東出昌大(以下、東出) もう全然何喋っていいか分からないです。やっぱり僕は被写体だったので、この映画を観終わった後は容赦ないなと思ってかなり食らっちゃいました。色々な思いがフラッシュバックしたので。だからこの映画の宣伝はものすごくしにくくて(笑)。多分僕は劇場でもやっぱ観れないし、でもエルザべス宮地さんと過ごした時間っていうのが映ってたなと思います。

── 私は『桐島、部活やめるってよ』の時から東出さんを知っていますし、何度もインタビューしたり司会をしています。だから、勝手にですけど何となくわかってるんですよ。勝手にわかってる中でさらに、このドキュメンタリーを観たら「こんなところもあったのか」っていうのと、「あっ、やっぱりこうだったか」っていうのがいっぱい詰まっていて、本当にやっぱり素直すぎるんだって思いながらも……。本当に人に愛される男ですね。

東出 さとりさんから見て意外な一面とかあったんですね。

── ありましたよ。ご自身もありましたか?

東出 自分のちっちゃさとか至らなさとか生々しさとかなんか見せたくないところみたいなのが詰まってたんですよ。エリザべスさんと山に行った時って、もうちょっと「こういう風に歩いてください」とか、「これが痕跡です」とかかっこいいそれっぽいこと言ってたんですけど、そういうの全部カットで(笑)。酔っ払ってくだ巻いてたり、本当に思いの丈が口からこぼれちゃってる感情みたいなのを、僕もそんなことマジで思ってたなっていうようなものが全部詰まってたからこの映画の完成を観た時はきつかったですね。

── 土臭いというか泥臭くて、私、140分あっという間に観ちゃいましたよ。

東出 僕がありがとうございますっていうのもなんなんで(笑)、エリザべスさん入ってくださいよ。

── はい、ここに監督いらっしゃるんですよ。

東出 何を思われて作ってたのかとかエリザベスさんじゃないと……。

── 今言ってもらわないと。これもドキュメンタリーっぽいですね。

東出 ちょっと待ってください。(監督のために椅子を持ってくる)

エリザベス宮地(以下、宮地) 監督の宮地と申します。お邪魔します。もうちょっと喋ってよ(笑)。

東出 だって分かんないんですもん(笑)。やっぱり自分が普段、劇映画だとこの台本に魅力を感じて参加するって決めてるわけだから、伝えたいメッセージってやっぱり一言では言えないながらも、こういう映画に仕上がってると思いますとか、こういう問題を取り扱いましたみたいなことは言えるんですよ。でも、自分のドキュメンタリーって何を喋っていいか分かんないんですよね。何を思ってこれを撮られたんですか?

宮地 それも劇中には入ってるんですけど、コロナ禍で僕が狩猟に興味を抱くきっかけがあって。でっくん(東出)の師匠の服部文祥さんっていう人と一度お仕事というか、ご一緒する機会があって、その時ちょっと表面的な部分だけだったのでもっと知りたいと思ったんですね。その際に服部さんから「東出がお前の話してたぞ」って言われて。それで、東出君も狩猟やるんだよってその時初めて知って。それがきっかけで、もっと狩猟のことを知りたいっていうので、でっくんに声をかけたという流れですね。

『WILL』

── でも、ドキュメンタリーを撮られることを承諾した一番の理由は何だったんですか?

東出 これは難しいんですけど、僕、あの時やっぱり混沌としてたんです。仕事も今後どうなるか分からないとか、住むところもないしとか、色々な思いが巡ってた中で、やっぱり僕にまつわる報道とかいっぱい出てたんですけど、その中には「え!? これ俺のこと言ってんの?」とか、「こんなことないだろう!」っていう嘘もいっぱいあったんですよ。

その中で自分がなんかよくわからなくなってきちゃって。あれ?と思って、僕の真実ってどこにあるんだろうって思ってる時に、やっぱ狩猟ってひとりで向き合って山に入って獣を獲ってたので、あの瞬間って嘘じゃないよなって思ったんです。

人から見られる商売だけど、自分の核とかっていうことで言うんだったら、あの瞬間は嘘がなかったと思った時に、狩猟のお話だったので、じゃあエリザベスさんに撮ってもらうかみたいな感じです。

宮地 なるほど。

── それで酔っ払ってるところも撮られ(笑)。

東出 そう。

── 私が感動したのは、本来ライバルになるはずのパパラッチの方たちと仲良くするんですよ。自分でも「あ、これだ!」って思ったんですよ。たまに嫌な感じの目に遭ったりすることあるじゃないですか。でも、ライバルとか敵的な人を味方につけるって、ただ巻き込むだけでも味方になっていくのかもって。でもそれができるのは人柄ですって本当に思ったんですよ。何であそこであんなことになったんですか?

東出 僕の車が故障しちゃって、女性猟師さんがその日助けてくれて、猟友会まで一緒に行ってくれたんですよ。そこを撮られて、「新恋人と山奥で!」って書くって連絡が来たんです。で、記者さんたちに直撃されて「新恋人ですか?」って言うから、「全くそうじゃない」って言ったのに、編集部がそれを書くって言って、その直撃してきた記者さんたちが憤ってたんですよ。

「編集部にちゃんと事実を伝えたのに、それでいくって言ってるから東出さん、編集長に連絡してください」って(記者さんに)言われて(笑)、編集長に電話したんです。「だったら普通に取材してください。普通にお答えするので」って言って。「じゃあカメラマン一人置いてきます」っていうレスがあって、その子と一緒に風呂入って色々話してるうちに仲良くなって、今、みたいな感じですね。

『WILL』

── ずっと客観的に一緒にこうやって過ごしていて、カメラまで回していて、こんな意外なところ見つけたってなります?

宮地 でもさっきのまさに週刊誌記者と仲良くなるっていうのは、僕、でっくんから「今日突撃されました」と連絡もらったんですよ。ま、それは分かったと。それで、でっくんがもう泊めさせるって言うから。さっき本当はライバルとか敵っておっしゃいましたけど、その人を泊めちゃうっていうのがびっくりしすぎちゃって、何考えてるんだろうっていうのがやっぱすごいあの時は一番思ったかもしれないですね。

── それがドキュメンタリーに入ってるんですよ!

宮地 それに対する恐怖とかがあんまなかったっていうことだよね? 住所がバレたりっていうか。

東出 やっぱり住まいがバレるとかっていうのは嫌だと思うけれども、嘘を書かれるっていうのがやっぱり嫌じゃないですか。で、やっぱり人間と人間だから話せばわかると思ってたんですよ。それで、話したら僕の真実みたいなのを汲み取ってくれたら、そっちが書けるわけじゃないですか。それで色々お話をしてる時にこんな人だと思わなかったって結構言われるんですよ。

週刊誌の記者さんたちが作り上げた虚像みたいなのを、週刊誌の記者さんたちは信じて任務を持ってここに来てるから、そういう被写体のことを何て言うんですかって言ったら、「敵」とか「ターゲット」って言って追っかけるらしいんです。

── やっぱりそういう言い方なんですね。

『WILL』

東出 そう。そっか僕、敵だと思われてたんだ。ターゲットだと思われてたんだって。狩猟みたいだなって思いながら、でも、人間同士は敵じゃないからって思うんですよね。それで色々話してるうちに親交が生まれて。でもそれでいいんじゃないかなって思うんだけどな。

── ドラマチックでしたよ。この作品で人と人との付き合いについても学びました。狩猟のドキュメンタリーを観てるうちにあっという間に感覚が巻き込まれているの。こうやって人とこう繋がっていくんだなっていう。

宮地 人と人もそうですけど、“人”対“動物”、“野生動物”。こっちから普段作ってる境界線みたいなのが東出君を撮っているとどんどんなくなっていくというか、本来それって誰が作ったものだったんだろうとか考える時間はすごい多かったです。

東出 狩猟っていうことをやらなければ、殺すっていう行為がなければ、道で見かけた鹿は野生動物で終われるんですけど、それをやっぱ殺して解体して食べて、体に取り入れるっていうのが狩猟っていう行為なので、飯がそこにある。でも飯じゃないし、じゃあ殺したらどっからが肉で、それ以前どこまでが動物なのかとか、命っていつの瞬間失われるのかとかって、狩猟っていう行為の中に答えはないものがいっぱいの情報として入ってるから、価値観は揺らぎますね。

『WILL』

宮地 本来、狩猟はテレビとか、YouTubeとかもそうだと思うんですけど、解体シーンはモザイクかけなきゃいけないんです。ただ、その解体のところはモザイクかけなきゃいけないのに、お肉切ってお皿の上に乗せるとモザイクかけなくていいとかってあるじゃないですか。

── そうなんですね。

宮地 はい。その線引きとか、さっきでっくんが言っていた命が食べ物になったら、じゃあなんでOKなのとか、やっぱ彼を追いかけていく中で、普段全く考えてなかったことを考えることが増えましたね。疑問というか、当たり前だったものが当たり前じゃなくなる。

── 子供たちに見せるっていうところも、自分の子供にも体験させたらどんな答え返ってくるんだろうなって興味持ちましたね。あれはでも、食べ物に対する考え方も変わっていくのかなって気がしましたね。

東出 なんか知り合いの子供が来てとか色々あるんですけど、子供の方がショックを受けないんですよ。大人の方が「うわぁ」とか「あったかい」とか「血が」って言うんだけど。だから人間ってこの社会を形成して倫理感とかなんかこうあるべきとか、食肉とかっていう色々作ったがためにショックを受けるのかなって。

── MOROHAのアフロさんが出てくるじゃないですか。で、歌がすごいまた、そこが入ってるのがちょっとずつリンクしてくるんですけど、そもそも好きだったんですもんね。



映像では東出さんとMOROHAとの関係性、監督が400時間にも及ぶ映像の中でカットしたシーンについてなども語って頂きました。このほかにも、最近のお気に入りの映画や最近食べて美味しかったものなどについても教えていただきました。続きはぜひ動画全編でごご覧下さい!


『WILL』
公開中


東出昌大&エリザベス宮地監督インタビュー『WILL』
(番組制作:チャンネル700)

データ

YouTubeチャンネル「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」
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