【動画インタビュー】気になる!あの映画の“ウラ話” by.映画パーソナリティ 伊藤さとり
Vol.40『水平線』ピエール瀧×小林且弥監督「6、7年前から瀧さんを勝手にイメージしてました」
第40回
(左から)伊藤さとり、ピエール瀧、小林且弥監督
映画パーソナリティの伊藤さとりが注目する最新映画のキャスト、監督、スタッフ等にインタビューする、東映チャンネルのオリジナル番組「伊藤さとりのシネマの世界」。
3月のゲストは、現在公開中の映画『水平線』から、ピエール瀧さんと小林且弥監督が登場!
撮影ウラ話満載のインタビュー映像をお届けします。
『凶悪』で出会ったふたりが新たにタッグを組む社会派ヒューマンドラマ

本作は、福島を舞台に大切な人の突然の不在に立ち止まってしまった親子が、ある遺骨を巡って葛藤し、ゆっくりと向き合っていく姿を丁寧に見つめた意欲作。
監督を務める小林且弥は、2013年に白石和彌監督『凶悪』でピエール瀧が演じるヤクザの舎弟役で共演し意気投合。自身初の監督作品となる本作へと発展した。
主演のピエール瀧は、震災で妻を失い心に傷を抱えたまま、高齢者や生活困窮者を相手に散骨業を営む主人公・井口真吾役を演じる。共演は『青葉家のテーブル』の栗林藍希、『孤狼の血 LEVEL2』の足立智充、『ぐるりのこと。』の内田慈らが名を連ねる。

福島の港町に娘の奈生と暮らし散骨業を営む井口真吾は、震災で妻を亡くしていた。ある日、若者が兄の散骨の手続きに来る。その後、真吾のもとを訪ねてきたジャーナリストの江田から、その遺骨が殺人犯の物だと告げられる。苦しい選択を迫られる中、真吾が下した決断は……。
「主演ってこんなに褒めてもらえるもんなんですか(笑)?」(ピエール瀧)

── 今回、小林監督が監督をやって主演をピエール瀧さんにするというお話はいつ頃からされていたのですか?
小林且弥監督(以下、小林) もう6、7年前ぐらいに。もともとこの映画って舞台だったんですよ。それで、神奈川芸術劇場っていうところからオリジナル企画で演出やりませんかっていうお話をいただいてて、結局舞台では成立しなかったんですけど、そこで骨組みができたんですね。その時から瀧さんには一切話してなかったんですけど、瀧さんを勝手にイメージして勝手に組み込んで、瀧さんだったらこういう感じだろうなっていうことを勝手にやっていたのが始まりです(笑)。
──つまりピエール瀧さんに「監督する時はぜひ主演でお願いします」なんてことは一切なかったってことですか?
ピエール瀧(以下、瀧) ないです。ある日突然電話がかかってきて、「瀧さん、映画撮るんで主演やってください」って。
── (笑) 脚本を読まれてどうでしたか?
瀧 小林君が監督やるっていうのも「そうなんだ」っていうのもありますし、もうやるしかないなと思ってたんですけど、ただ、できない役を引き受けて迷惑をかけてもっていうところがあるので、「じゃあ、とりあえず脚本だけもらっていい?」って言って、脚本を読んで「あ、そういう話なんだ。そういう話を撮る監督さんなんだ。意外!」みたいなのもあって。それで、この役だったら引き受けさせてもらうねっていうことで。
── 小林監督がカメラの横にいながら、このシーンのピエール瀧さんはやっぱピエール瀧さんじゃなきゃできなかったなってつくづく思ったとこはどこですか?
!!小林 でもポイントじゃなくて、やっぱりなんかその全体を通しての瀧さんの姿で。僕、『64-ロクヨン-』がすごく好きで、瀧さんの“攻めの瀧さん”っていうのが過去作の各所にいろいろあると思うんですけど。耐え忍ぶではないですけど、ずっと何かを受け入れていくというか、その中での葛藤みたいなその姿ですよね。
どっかのシーンやポイントでっていうことよりも、やっぱりこの映画の中で生きてるひとりの井口真吾っていう人物を通してのピエール瀧っていう人の”様”をやっぱり撮りたいと思ってたし、全体としてそこは自分の中でうまくいったんじゃないかな、撮れたんじゃないかなっていう風には思ってますね。
── なんで笑っているんですか(笑)?
瀧 主演ってこんなに褒めてもらえるもんなんですか(笑)? すげえ褒められたと思って、だんだん小っ恥ずかしくなってきちゃって。
小林 (笑)。
瀧 こんな褒めてもらえるの!? 嘘でしょって思いながら話聞いてましたけど。

瀧 でも、井口真吾さんってちょっと複雑な立ち位置の人じゃないですか。なので、そういう部分の葛藤だったりとか、そういう部分を仕草や表情とかで出さなくちゃいけないのかなって思ってた部分はあったんですけども、とにかく小林君が「瀧さん、余計なこと考えないで、瀧さんとしてここにいてくれればいいです」っていうようなことを言ってくれたので、そういう部分で変な気負いというか、こうしなきゃっていう、映画を成立させなきゃみたいな部分も取っ払ってくれたんで。だからそういう風にもし皆さんの目に映ってたとしたら、それは小林君のおかげだと思ってますけど。
── 井口さんみたいな立場になってしまったらどうするんだろうって自分ごとになる作品だったんですよね。これって普遍的なテーマっていうか、もう今の社会によくある問題だなと思って。ネット上だったりとかも、誰が正しいのかとか、こうすべきだとか、この人の感情を組むべきだとか、そういうのが溢れている社会でこの映画を観たからすごい自分ごとになって持ち帰ったんです。
小林 “正しさ”って難しいなと思って。人に押し付けるもんでもないんだけど、そうなっちゃってるっていう、今この時代の気持ち悪さみたいなものがすごくあるので。
瀧 大体“正しさ”は外野が言ってきますよね。

── そうなの。あのジャーナリストの人(足立智充扮する江田)がね。でも、あの人はあの人の一生懸命の“正しさ”なんですもんね。
小林 そうですね。あの人はあの人で……そうなんですよ。ともすると彼はわかりやすく言うと悪役というかヒールなんですけど、彼は彼なりの“正しさ”を振りかざすというか、それを集約させたというか。懲罰感情っていうんですかね。もうこの国は加速度的にそれが広がっていて、もう止むことはないんだろうなっていう。そこの思うところとかっていうのは、瀧さんにちょっと引き受けていただきましたね。
瀧 足立さんが本当にムカつくんですよ、あの人(笑)。お芝居が。
── 喋り方とかもうまいですよね。

瀧 「ムカつくなーこいつ」っていう(笑)。
── 本当に表情とかすごかったです。
瀧 「カット」って言ったら、「足立さんってマジでムカつくわ」って言って(笑)。だから、それだけ足立さんがお上手っていうことなんですけど、「マジでこいつムカつくな!」と思いながらやってましたね(笑)。
また、おふたりのお気に入りの東映作品についても語って頂きました。ぜひあわせてご覧ください。
『水平線』
公開中
(C)2023 STUDIO NAYURA
データ
YouTubeチャンネル「ぴあYouTubeチャンネル」
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「伊藤さとりのシネマの世界 Vol.65」『水平線』放送日時
2024年3月10日(日)19時50分~20時00分
2024年3月28日(木)12時50分~13時00分
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