【動画インタビュー】気になる!あの映画の“ウラ話” by.映画パーソナリティ 伊藤さとり

Vol.49『心平、』奥野瑛太 山城達郎監督は、ぶつかりながら「こんな感じでいいの?」と言い合える仲

第49回

伊藤さとり、奥野瑛太

映画パーソナリティ・伊藤さとりのYouTube番組「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」。

新作映画の紹介や、完成イベントの模様を交えながら、仲良しの映画人とゆる~い雰囲気の中でトークを繰り広げます。他ではなかなか聞き出せない、俳優・監督たちの本音とは?

今回は現在公開中の映画『心平、』から奥野瑛太さんが登場。撮影秘話やプライベートのことなど、たっぷりとお話いただきました。

映画人たちの貴重な素顔をご堪能ください。

2014年の福島県を舞台に、家族の葛藤を描いた人間ドラマ

『心平、』

本作は、2014 年の福島を舞台に、原発事故の影響で失職してから仕事を転々とする心平と、彼と向き合えずにいる父親、家族のために働く妹の葛藤を描いた人間ドラマ。

主人公の心平を『碁盤斬り』の奥野瑛太、いつも兄のことを気にかけている妹のいちごを芦原優愛、父の一平を下元史朗が演じる。監督は、2022 年『ダラダラ』で長編映画を初監督し、本作が劇場公開映画二作目となる山城達郎監督が務める。

『心平、』

福島のある小さな村に住む心平は、3年前に起きた原発事故によって失職。父・一平は、そんな心平に軽度の知的障がいがあることに向き合えずにいた。妹・いちごは、そんな父と働かない兄のために家事をする日々に、ウンザリしている。そして、近所の住民から心平が空き巣をしているらしい、と聞いたいちごと一平は、家を出たまま帰ってこない心平を追いかけてある場所へとたどり着く――。

監督、スタッフみんなで“なぜ軽度の知的障害なのか”に向き合って、ひとつの家族の話を作ろうという動きに

『心平、』

── 『心平、』はいつ撮影したんですか?

奥野 『心平、』は2023年の夏ですね。暑かった覚えがあります。

── じゃあ去年の夏ですね。私、画の美しさと共に本当に演技が素晴らしいって思いました。

奥野 ありがとうございます。

── 最初脚本を読んだ時はどうだったんですか? 

奥野 監督と会う前に脚本を読ませてもらった時は、山城達郎監督と脚本家の竹浪春花さんが福島に行き、ずっと自分たちで取材をしながら現地の人とコミュニケーションを取って作った脚本とは知らなかったのですけれども、東日本大震災後の問題意識が、ちゃんとおふたりの中にある台本だなと思いました。

僕は福島にゆかりはない者なので、外部の者として関わることとしてちょっと気が引けてしまうようなところはあったんですけど、逆にこういう機会を与えてもらったのが嬉しいなと思って読ませてもらいましたね。

── 心平が知的障がいの役じゃないですか。そこがすごく日本映画の中でも新鮮で私は好きだったんですよね。それはどう思いましたか?

奥野 心平が軽度の知的障がいであることの意味合いってどういうことなのかが山城監督の中にちゃんとあって欲しいなって思ってたんですが、当初、台本上では見えづらい形になっていたんですよね。

「なぜ、軽度の知的障がいという設定で心平を描きたいのか?」という風なことが僕もずっと腑に落ちないところがあったんですが、最終的に撮影に入る直前になって専門家の方や、自閉症スペクトラムの方に普段向き合っている方とお話する機会もいただいて、監督、スタッフさんも含めみんなでそのことについて向き合ってひとつの家族の話を作ろうという動きになったので、そこはすごくいいなと思いました。

『心平、』

── 友人の子供に軽度の知的障がいだったり自閉症スペクトラムの子供もいるんですよ。だから、逆にそれがすごく物語に綺麗にハマっていて、そういう子たちがいることもみんな偏見を持たずに分かってほしいよねと思ってすごく好きな部分だったんですよね。

奥野 良かったです。

── でも、何かリサーチされたりとかしました?

奥野 僕が子供の時って、今ではそういう風に診断を受けてしまうような子でも分け隔てなく同じクラスにいたりとか、自分もそうかもしれないとか……。専門家の先生と話をした時も面白かったんですけど、今はグラデーションが非常に分かりづらいものですし、そこは個性でもあるのでその辺をどういう塩梅で描きたいのかというのが非常に監督と悩んでやっているところでした。やりながらも僕はやっぱり分からないところもあるので、「今どういう風な感じに皆さん捉えています?」というのをその都度その都度話し合ってやる感じでした。

『心平、』

── わーすごいな。福島が舞台の映画って震災以降にあったじゃないですか。でも、こんなに緑が豊かなんだとか、こんなに静かに空気が流れているんだっていうのをこの映画でちょっと体感したんですよ。実際に行かれてどうでしたか?

奥野 撮影の場所は福島全域に渡るぐらい色々行っていて、それこそ海岸部から内陸部、立入禁止区域になっていて最近解除されたっていうところへ行ったり、結構広い範囲での福島が描かれているんですけど、その場所その場所で風景が全く違うんですよね。

海岸部だと原発が見えるところで撮影したり、大熊町とか双葉町での撮影では、もう立入禁止区域は解除されているけど誰も人が戻ってこない広大な町があって、廃屋がたくさん立ち並んでいたり……。映画の撮影として行かなかったら、僕はそこに立つことも辛かったんだと思うんです。今回、心平という役柄を通してそこに住んでいる人ということで立たせてもらったので、色んなことを感じながらも何とか居させてもらったなという気がしています。

『心平、』

── エピソードの中で傘屋の子から毎回傘を買うっていうところも私大好きで大好きで。結構カメラで一連で撮ったりもずっとしていたじゃないですか。

奥野 とにかく撮影期間も予算も少ない中でやらなきゃいけないので(笑)。何らかの工夫を色々して本当に少人数の体制でやられていたので、本当にゲリラみたいな形でやっていました。

── だから1シーンにたくさんのカットで撮っているって感じではなかったですよね。

奥野 そうですね、これも一連でやっちゃおうみたいな感じが多かったですね。

── 凄いんです。だから、奥野さんの演技力をさらに垣間見たみたいな感じで。うわ、これ長回しで一連で撮ってる!とかね。

奥野 色々失敗していますけど(苦笑)。

── いや、そんな事ないです。こうやって色んな映画に出ていて役者としての映画作りで自分はこういう立ち位置でいようとか思っていることって今ありますか?

奥野 いや、全くないですよね。座組が違えば全く違う作品だし、全く違う生き物の中に入る感じなので全然ないですけどね、そういうのは。

『心平、』

── 今回の現場だって監督がほぼ初監督(長編二作目)みたいになっているじゃないですか。そこの現場だとやっぱりそれで主演というと立ち位置ってやり方も随分変わりますよね?

奥野 い~や、どうなんでしょうね。毎回ケンカしながらじゃないですけど、ぶつかりながら「こんなんでいいの?」みたいな感じで言い合える仲でやっているところはあるので、特に立ち位置とかってあんまり考えたことがないんです。今回、山城監督って、今岡監督、田尻監督、坂本監督の国映周りだったり……。

── ミニシアター系もね色々監督やったり脚本やったりしている方々がプロデューサーにいるんですよね! 面白いんですよ。

奥野 そうそうそう(笑)。その方々とずーっと一緒にやっている方だし、その中で僕と同い年なんです。僕が尊敬する憧れの俳優さんの水澤紳吾さん、守屋文雄さん、川瀬陽太さんとかみんな信頼できる方がこぞってその匂いを持っている方たちなので、山城監督は僕たちの世代でそういう匂いを感じている人なんだろうなと思います。新たにどういう現場の動きが出るのかなっていうのをちょっと楽しみながらやっていた感じがあります。

『心平、』

── こうやってずっと役者を続けていてどんなところが俳優としての面白みですか?

奥野 面白み?!いや、辛いことの方が多いですよね(笑)

── この間もそう言ってましたよね!(笑)

奥野 辛いことの方が多い。面白み……漠然と信じているものが多分あるのかなって思うんですけど、その瞬間その瞬間、撮影の中で生まれた!みたいなことでしかないですよね。

このほか奥野瑛太さんのおススメ映画や“人生の大失敗”などについても教えていただきました。続きはぜひ動画全編でごご覧下さい!

『心平、』
公開中
(C)冒険王/山城達郎

奥野瑛太インタビュー『心平、』

データ

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