【動画インタビュー】気になる!あの映画の“ウラ話” by.映画パーソナリティ 伊藤さとり
Vol.51『ぼくのお日さま』池松壮亮&奥山大史監督 カンヌでの経験は「最高のスタート」グザヴィエ・ドランからは映画の感想も!
第51回
伊藤さとり、池松壮亮、奥山大史監督
映画パーソナリティ・伊藤さとりのYouTube番組「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」。
新作映画の紹介や、完成イベントの模様を交えながら、仲良しの映画人とゆる~い雰囲気の中でトークを繰り広げます。他ではなかなか聞き出せない、俳優・監督たちの本音とは?
今回は現在公開中の映画『ぼくのお日さま』から池松壮亮さんと奥山大史監督 が登場。撮影秘話やプライベートについてなど、たっぷりとお話いただきました。
映画人たちの貴重な素顔をご堪能ください。
田舎のスケートリンクを舞台に交錯する小さな恋

本作は、『僕はイエス様が嫌い』の奥山大史監督の商業映画デビュー作で第77回カンヌ国際映画祭“ある視点部門”に出品された話題作。
吃音のあるホッケーが苦手な少年、選手の夢を諦めたスケートのコーチ、コーチに憧れるスケート少女、3人の視点で紡がれる雪が降りはじめてから雪がとけるまでの、淡くて切ない小さな恋を描く。
主人公の少年・タクヤを本作が映画主演デビューとなる越山敬達、フュギュアスケートを学ぶヒロインの少女・さくらを本作が演技デビューとなった中西希亜良、夢に敗れた元フィギュアスケート選手のコーチ・荒川を池松壮亮が、さらにその恋人・五十嵐を若葉竜也が演じている。

吃音のあるアイスホッケー少年・タクヤは、「月の光」に合わせフィギュアスケートを練習する少女・さくらの姿に、心を奪われてしまう。
ある日、さくらのコーチ荒川は、ホッケー靴のままフィギュアのステップを真似て何度も転ぶタクヤを見つける。タクヤの恋の応援をしたくなった荒川は、スケート靴を貸してあげ、タクヤの練習をつきあうことに。しばらくして荒川の提案から、タクヤとさくらはペアでアイスダンスの練習をはじめることになり......。
「奥山監督には何かやっぱりビビっときていたんだと思うんですよ」(池松)

── 奥山監督、映画賞受賞おめでとうございます!
奥山大史(以下、奥山) ありがとうございます。
── トロフィー、ちょっと見せてください。これは台北映画祭で獲った……?
奥山 これは審査員特別賞ですね。是非!
池松壮亮(以下、池松) ホヤホヤのね。
奥山 昨日帰ってきまして。
── あらやだ、重いわ(トロフィーを持ってカメラ目線)。まるで私が獲ったような(笑)。ねーすごい! 三冠ですもんね。
奥山 そうなんです。あとは観客賞と台湾監督協会賞。
── すごいですね。
奥山 嬉しいですね。本当にありがとうございます。
── 私はおふたりのカンヌ映画祭の勇姿をずっと、ネットやテレビで見てました。カンヌを体験されてみてどうでした?
池松 僕は初めてでしたけど面白かったですね。すごい場所だなと思って、いっぱいパワーをもらいましたし。何よりこの映画の本当に最高のスタートを切らせてもらって、いい経験になりましたね。
奥山 いい経験でした。
── 史上最年少の監督ですよね?
奥山 ドキドキでしたが、上映の時にずっと好きだった監督たちが席に座っているのを見ると、やっぱり作って良かったなの一言ですし、一緒に作った人たちもみんな一緒に座っていたので、作らせてもらえて良かったなって気持ちに「こんなに真っすぐになれるんだな」っていう感動がありましたね。
── 好きな監督とか俳優さんから映画の感想って聞いたんですか?
池松 いっぱいありましたね。もう奥山さんなんかね、ドランの話して!
── えっ⁉ グザヴィエ・ドラン?
奥山 そうですね。ドランもクロージング・パーティーとかで、授賞式の後にお会いできたので、その時に意外にも話しかけてくださって、それで感想を言ってくれたのはとても嬉しかったですね。
── どんな感想ですか?
奥山 結構終盤に関してのことだったので、割とネタバレになってしまうんですが、ひとつ言われたのは、「とにかく詩的だった」と。「いわゆるこの映画祭っぽいかと言われると、そうではないけれどそれがまた良かった、新鮮だった」と。「何本か観た中でこの作品が出てきて、よりすごく新鮮に感じてその詩的さにすごく感動したよ」って言ってくださって。
あとラストシーンに関してもいろいろ名言してくださって、本当に観てもらえたんだなって改めて嬉しくなりましたし、良かったなと思いました。
── 嬉しいですね。池松さんは誰かと喋りました?
池松 喋りましたね。ちゃんと喋ったのはドランと、あとは……。映画をまだ観ていなかったですけど、オゾンさんがいて。
── フランソワ・オゾン?
池松 はい。「評判になっているね」って、「早く観るね」っていう風に言ってくれましたし、上映会にまず是枝さん(是枝裕和監督)が見送ってくれて、僕の斜め後ろに西川さん(西川美和監督)がいて。
── 西川美和監督? みんな行ってましたもんね。
池松 こっち(右を指し)には山下さんがいて。
── 山下敦弘監督ね(笑)。
池松 目の前にルーカス・ドンがいて、すごかったんですよ。
── すごいなそれ、もう映画ファンにはちょっと。
池松 「なんだ!この空間‼」と思いますよ。
── キャーみたいな。
池松 西川さんはお話しできて、ものすごく喜んでくれて。やっぱり西川ファンとしてはもうめちゃくちゃ嬉しかったですね。
── 母のように胸アツで見てました。「奥山監督……。『僕はイエス様が嫌い』の時からインタビューして私は応援していたよ」って。見て! この完全なるおばさんの母心(笑)。
池松 (笑)。

── 池松さんも奥山監督の作品をすごい好きだったってインタビューで読みました。
池松 はい。
── どんなところが良かったんですか?
池松 何かやっぱりビビっときていたんだと思うんですよね、この人に惹かれるというか。自分では覚えていなかったんですけど、『僕はイエス様が嫌い』を初日に観ていたらしくて、なかなかそんなことしないので(笑)。初日に日比谷で観て、隣に奥山さんの知り合いの方がいらっしゃっていたらしくて。
『僕はイエス様が嫌い』から拝見して、その後いろいろPVとか様々な奥山さんの映画以外のところの活動もこっそり陰ながら見ていて。一回レストランでお会いしましたけど、接触はなかったんです。ちょっと長くなっていいですか?
── いいですよ。
池松 とある企画が浮上した時に、僕は内定という形で決まっていて、プロデューサーの方が監督を探していて、新しい監督がいいとおっしゃって。この題材にいい監督がいないかって考えた時にもう奥山監督だと思ったんですね。それで会いに行って、そこで初めてお会いして。
それで、対話していく中でその時に、西ヶ谷プロデューサーと別のもの、この映画の原型になったものなんですけど、それを進められていて。その後、一緒にドキュメンタリーの仕事をして、初めてそこで一緒に仕事をするんですね。だから、いろんなことを重ねながらこういう形になっていったんです。なので、ここ数年間、コロナ前からやっていましたね。
── へぇー。前作の『僕はイエス様が嫌い』が私は大好きだったんです。こんな小っちゃいイエス様出てくるんですよ。よくそんなこと思いつくなと思いながら、「この人何者だ?」と思っていたんですよね。
今回すごくセリフも相当削ぎ落として本当に画の力で自然光の中でファンタジックな画を撮りながら、若者のピュアさだったり、人間のちょっとした弱さっていうのを見せつけてくるというか、全然また違う角度から来たぞっていう。脚本をあれぐらいシンプルにしていこうっていうのはもう最初から考えていたんですか?
奥山 シンプルなストーリーラインに、プロット段階でなっていたので、それをどうやって1時間半ないしは2時間の長編映画にしていくかというところは、自分でももちろん悩みましたし、本当に短い段階でとりあえず池松さんに読んでいただいて。そこでアドバイスをもらうつもりぐらいで一回読んでいただいたら、もうそこで「出る」って言ってくださったので。
それで、「この冬、雪が降る期間でここなら空いている」っていうのを言ってくださったので、そこに向けて書くしかないと。釜山の企画マーケットに持っていくことでいろんな人のアドバイスもらったり、あとはその時に一緒に行った西ヶ谷プロデューサーと一緒に話していったり、フランスのセールス会社についてもらうことでいろんな人からまた更にアドバイスをもらったりっていう、本当にいろんな人からのアドバイスを取り入れられるものは全部取り入れて、膨らませていったという感じですね。

── さすが池松壮亮さん! だってあれ読んだ時点で「俺、フィギュアスケートやんなきゃいけないじゃん」って分かるじゃないですか。
池松 (笑)。
── めっちゃすごいんですよ!
池松 いやいや、本当知らなかったからこそですよ。フィギュアスケートというものがどれだけ難しいかというのを知らなかったから、「分かりました」と(笑)。
── でも、小さい時に履いたりしてたでしょ?
池松 していなかったです。もう氷の上に立ったことがなかったし、スキーも2回ぐらいしかしたことないし、ウィンター・スポーツに触れてこなかったので。時間あるので、まだどうなるか分かんないけど始めますねぐらいの感じで(笑)。
── さすがだな。本当にストイックでいつもひとつの作品でこんなにいろいろやるから、池松さんじゃなきゃできませんねと思って観てました。
池松 いやいやいや。
── 本当に滑ってるわ~と思って。また、子どもたちとのシーンに結構アドリブもありましたよね。ちょっとミュージックビデオみたいで好きでした。ト書きみたいな感じだったんですか?
池松 今回、日本映画にしては特殊な作り方をしていて、随分余白を残しているんですね。撮影で積み上がっていくもの、あるいは俳優たちが動くことによって物語を立ち上げるのではなくて、立ち上がってくることを目指して、ものすごくスペースを残してくれていたので、実際みんなで体感する中で物語が生まれていくことを、(監督が)どんどんどんどん選んでくれた。だから、4人みんなで遊ぶように映画を撮れたなと思っていますね。
── だから、グザヴィエ・ドラン監督、ルーカス・ドン監督がなんか好きっていうの分かっちゃうな。
池松 (笑)。
このほか、おふたりの最近観たおススメ映画や“人生の大失敗”などについても教えていただきました。続きはぜひ動画全編でごご覧下さい!
『ぼくのお日さま』
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YouTubeチャンネル「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」
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