【動画インタビュー】気になる!あの映画の“ウラ話” by.映画パーソナリティ 伊藤さとり

Vol.60 カンヌ国際映画祭からお届け!『遠い山なみの光』 広瀬すず&松下洸平、『見はらし世代』団塚唯我監督&黒崎煌代

第60回

映画パーソナリティ・伊藤さとりのYouTube番組「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」。

新作映画の紹介や、完成イベントの模様を交えながら、仲良しの映画人とゆる~い雰囲気の中でトークを繰り広げます。他ではなかなか聞き出せない、俳優・監督たちの本音とは?

今回はなんと5月13日から12日間に渡って開催された第78回カンヌ国際映画祭からお届け! 『遠い山なみの光』の 広瀬すずさんと松下洸平さん、『見はらし世代』の団塚唯我監督と黒崎煌代さんにお話を伺いました。

映画人たちの貴重な素顔をご堪能ください。

「松下さんと初めてご一緒した感じはしませんでした」(広瀬)

(C)『遠い山なみの光』製作委員会

『遠い山なみの光』はノーベル文学賞作家カズオ・イシグロの長編デビュー作である、同名小説を原作に『ある男』の石川慶監督が映画化したヒューマン・ミステリー。第2次大戦終戦後の混乱期を舞台に、執筆のために実家を訪れた作家志望の女性が、長崎で原爆を経験した母から、最近よく見るというある夢について語られる様を描く。

そんな本作で夫婦を演じた広瀬すずさんと松下洸平さんを直撃! 初共演だというお互いの印象は……?

(左から)伊藤さとり、広瀬すず、松下洸平

── 今回、第78回カンヌ国際映画祭の日本映画のある視点部門に入ったということでおめでとうございます!

松下洸平(以下、松下) ありがとうございます!

広瀬すず(以下、広瀬) ありがとうございます。

── カンヌ国際映画祭の印象は?

広瀬 カンヌは10年ぶりでちょっとした景色だけは写真でなんとなく覚えてるんですけど。街ごと映画のお祭りの街っていうイメージがすごいあったので、またこうして来られたことはとても嬉しく光栄に思います。

── しかも、松下さんはカンヌは初めてなんですよね?

松下 はい、僕は初めてですね。すごい雰囲気ですね。見るもの全てが新鮮で、参加できて本当に嬉しいです。

── 脚本の印象は?

広瀬 すごく不穏な空気が続いてる中、台本で読んだ時と演じてみた時と完成した時って全部印象が違っていて、それが海を越えてフランスの皆様にどう届くのかなっていうのは楽しみのひとつですね。

松下 僕も今おっしゃっていただいた通り、この物語が世界中の人にどう受け入れられるのかがすごく楽しみです。

我々にとって長崎や広島で起きたことは、親の代よりもっと前の代からずっと語り継がれるようにして聞いてきたものではありますけど、海外の方にとってあの日あの時の出来事がどういう形で残ってるのか……。

決してこれは戦争の悲惨さを伝える作品ではないとは思うんですけど、でも、やっぱりいろんな形で残していかなければいけないものではあるので、台本を頂いた時はそのバトンを受け取ったような気持ちでした。

── 初共演はいかがでしたか?

広瀬 初めてご一緒した感じはしなくて。

松下 うん、確かに!

広瀬 男女として、なんかこう言葉にしないけどすごく間に“何か”があって。

松下 うん。

広瀬 何か見えている。ふたりにだけなぜか見えているものがあって、なんかそういうのもすごくひとつひとつ楽しみながら撮影させてもらえた気がしておりますが……。

松下 ありがとうございます! 僕も本当に初めてとは思えない、夫婦ならではの気を遣わない会話というのが割と最初からできていたような気がしていて。それはなぜかと言うと、ちょっと言葉にするのは難しいかもしれないんですが、何となくお互い向いているベクトルが一緒だったような気もしますし、表現ひとつとってもそうですし。

石川監督がすごく丁寧に細かく見てくださったおかげもあって、当時の悦子と二郎っていう関係性みたいなものもすごくよく見えたんじゃないかなと思います。

── 松下さんは今までいい人の役が多かったんですけど、今回悪い人とは言わないですけど、ちょっと昔気質な生き方ですよね?

松下 そうですね。そこも塩梅がすごく難しくて。とはいえ、悦子を大切にしていないように見えてしまうのは作品としては違うので、しっかり愛してはいつつも、やっぱり時代だったり、当時の男性にとっての家族と仕事、そして彼は戦争から戻ってきて高度経済成長の中でどう生き抜いていくかっていうことにすごく必死だったので、悦子に対しては少し冷たく当たってしまう部分も多かったとは思いますけど。

でも、やりすぎたら監督が止めてくれたし、やらなさすぎたら監督が言ってくれたので、そこは本当に現場で細かい微調整を石川監督にしていただきました。

広瀬 この本をどう解釈していいのかっていうのが……。

松下 難しかったですよね。

広瀬 本当に難しくて。そして悦子だけが動いたからといって成立するものではなくて、監督には「中心に悦子さんがいるんです」って言われて。でも、その“中心”って多分1歩間違えると全然違う認識の“中心”で、すごい難しいなと思いつつ、完成したものを観たら女性たちのいろんな顔が混ざってひとつの顔に見えるような……。

松下 確かに!

広瀬 観たらスッと入ってくるような瞬間がたくさんあって、その女性たちの当時抱えていた、見えていたものっていうのが何人もの顔を通してある意味“違和感”としてきっと皆さんに伝わるんじゃないかなと思ってすごく早く観てもらいたいな。観てもらったらこの言いたいことが伝わる気がするっていう(笑)。

松下 確かに。

広瀬 それぐらい言葉にするのはなかなか難しいですけど、女性たちの共鳴しているシーンはすごく楽しみにしてます。

広瀬・松下 『遠い山なみの光』是非ご覧ください!

『遠い山なみの光 』
9月5日(金)公開
(C)『遠い山なみの光』製作委員会

「黒崎君にしかできない現代の若者像があるだろうなと思って声をかけました」(団塚監督)

(C)2025「見はらし世代」製作委員会

続いては、『見はらし世代』の団塚唯我監督と黒崎煌代さんを直撃!

再開発が進む東京・渋谷を舞台に、母親の死と残された父親と息子の関係性を描いた本作で主人公を演じ、本作が映画初主演となる黒崎煌代さんと団塚監督との出会いとは…?

(左から)団塚唯我監督、黒崎煌代、伊藤さとり

── 『見はらし世代』第78回カンヌ国際映画祭監督週間選出おめでとうございます!

団塚唯我監督 ありがとうございます。

黒崎煌代 ありがとうございます。

── おふたりは初めてのカンヌ国際映画祭ですよね。体験してみてどうですか?

黒崎 どうですか?

団塚 今ちょうど上映中なので、すごく感想が気になっていてちょっとソワソワしてます。

黒崎 やっぱ街全体が映画一色みたいなのが非日常ですごい楽しいです。

── 本作の出演を決めた理由は?

黒崎 あんまり監督のことをなんて言うんだろうな……、そんな知らずにというか、普通にひとつの物語として読んで面白かったので。

団塚 自分の体験とか考えてたこととかをベースに作ったんですけど、やっぱりいろんな人が関わってスタッフキャストの意見が入っていってひとつの映画になっていくのがすごい幸せな映画制作の時間でした。

── 黒崎さんをキャスティングした理由は?

団塚 『さよなら ほやマン』っていう映画の現場で一緒になっていて、それに僕がメイキングで入ってたんですけど、その時に知り合って仲良くなって、すごい彼にしかできない現代の若者像があるだろうなと思って。忙しくなる前に早く声かけないとと思って、声をかけました(笑)。

黒崎 本当にありがたいです。カフェに呼び出されて「やってほしいんだけど」って言われて。映画の話は事前に聞いてたんですけど、「これ誰がやるんだろうな?」と思ったら「僕⁉」みたいな(笑)。それがめっちゃ嬉しかった覚えがあります。

団塚 撮影中に1回渋谷のカフェでふたりでお茶しました。その時に撮影も始まってたんですけど、いろいろと今お互いが考えてることを喋って、その時間はすごくいい時間だったなと思います。

黒崎 前半始まって3日ぐらい経った時に「これなんかうまくいってない!」と思って「監督、ちょっと宮下パークでお茶しよう!」って言って。それでなんとか軌道修正できたんじゃないかなと思います。

── 遠藤憲一さんのオファーについては?

団塚 この役を書いた時から遠藤さんしかないかなと思っていて、それですぐオファーさせてもらったので、やっぱり遠藤さんじゃないとできない役柄だったかなとは僕は思ってます。

黒崎君も書いてる時ぐらいに先にオファーして、黒崎君が決まった段階で遠藤さんと黒崎君のふたりが喋ってるシーンとかが見たいなとすごい直感で強く思ったので、それを信じてオファーさせていただきました。

── 団塚監督の現場はいかがでしたか?

黒崎 「とりあえず動いてみて」って言われた後の修正がある時とない時が激しいというか。「とりあえず何かやってみて」みたいな感じに言われて、なんか分からずにやったら、「それで行こう」みたいな時と、「なんか違うな」って言って「どうする?どうする?やばいやばい」とか言って僕のとこに来たり。友達でもあるので、普段監督と接する時とは違うテンションで一緒に「えっ、これどうする?」みたいな感じでした。

団塚 「どうする?」って言いながら楽しく撮ってました。

黒崎 公開はまだ先で秋なんですけれども、この映画はあんまり僕も多分観たことない、まだ僕も観てないんでわかんないんですけども、おそらく最近の映画監督にはない撮り方をしている映画だと思いますし、新しいものが見れると思うので是非楽しみにお待ちください。お願いします。

団塚 この映画は2025年秋に公開予定になってます。いろんなスタッフやキャストと結構ワイワイしながら作り上げた作品になってるので、きっとたくさんの方が楽しんでくれると信じています。是非劇場でご覧ください。

黒崎 お願いします!

『見はらし世代』
2025年秋公開
(C)2025「見はらし世代」製作委員会

Vol.60 第78回カンヌ国際映画祭
『遠い山なみの光』 広瀬すず&松下洸平、『見はらし世代』団塚唯我監督&黒崎煌代

データ

YouTubeチャンネル「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」
https://www.youtube.com/channel/UCVYlon8lP0rOJoFamEjsklA