【動画インタビュー】気になる!あの映画の“ウラ話” by.映画パーソナリティ 伊藤さとり
Vol.61 カンヌ国際映画祭その2『8番出口』 川村元気監督、「JAPAN NIGHT」主催MEGUMI
第61回

映画パーソナリティ・伊藤さとりのYouTube番組「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」。
新作映画の紹介や、完成イベントの模様を交えながら、仲良しの映画人とゆる~い雰囲気の中でトークを繰り広げます。他ではなかなか聞き出せない、俳優・監督たちの本音とは?
今回は第78回カンヌ国際映画祭からお届けする第2弾! カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション【ミッドナイト・スクリーニング部門】に正式招待された『8番出口』の 川村元気監督、日本の映画と文化の振興を目的としたイベント「JAPAN NIGHT 2025 in Cannes」の主催・MEGUMIさんにお話を伺いました。
映画人たちの貴重な素顔をご堪能ください。
「二宮和也さんの勘の鋭さにすごく助けられましたね」

『8番出口』は、インディーゲームクリエイターのKOTAKE CREATE氏がたったひとりで制作し、累計販売本数190万超の世界的大ヒットを記録したゲーム『8番出口』を二宮和也主演で実写映画化したサバイバルスリラー。地下通路に迷いこんだ男性が、異変に見舞われながらも脱出しようとする。
そんな本作で監督を務めるのは、『君の名は。』『天気の子』『すずめの戸締まり』など数多くのヒット作品のプロデュースを行ってきた川村元気氏。同じくカンヌ国際映画祭の舞台に登壇した二宮和也さんや小松菜奈さんの印象や作品のこだわりも語って頂きました!
── 『8番出口』ミッドナイト・スクリーニング部門選出おめでとうございます。
川村元気(以下、川村) ありがとうございます。
── 川村元気さんは今までもプロデュースでこのカンヌに来られていましたけれども、監督として来るのはどんな思いなんですか?
川村 そうですね。やっぱり監督が主役の映画祭でもあるんで。
── カンヌでの上映が初お披露目ですか?
川村 そうですね。世界初のお披露目がカンヌになってますね。
── 二宮和也さん、そして小松菜奈さんも一緒に登壇になるわけですけど、おふたりは何て言っていましたか?
川村 二宮君は意外にもカンヌが初めてということでとても喜んでましたし、小松菜奈さんに至っては海外映画祭に登壇すること自体が初めてみたいで。すごくいっぱい行ってるイメージがあったんですけど、「緊張してる」って言ってました。彼女も緊張することあるんだなって(笑)。
── レッドカーペットを歩くんですもんね。
川村 そうなんですよね。ふたりの横で歩くのは華やかだろうなとは思いますね。
── 映画はたくさんのトリックがあって面白かったんですが、あれはどうやって物語を紡いでいこうって考えたんですか?
川村 あのゲームは本当に地下の通路をループしていくというシンプルなシステムなんですけれども、あの空間自体にものすごく物語性があります。
色々な異変がやってくるんですが、「じゃあ、異変って一体何なのか? 二宮君扮する主人公にとっての異変ってどういうことなんだろう?」という風に考えた時に、あるトリックを思いついたということがひとつと、あとは“8番出口”っていう、その出口の意味っていうのが何なんだろうということを考えていくと、あの空間自体が人間の心の中を炙り出すような空間なんじゃないかなっていう風に思えてきて、そこから結構物語が一気に走り出したっていう感じでしたね。

── 人生の分岐点で思いついたことっていうか、そこら辺は何かありますか?
川村 ゲームでは異変があったら引き返して、異変が何もなければそのまま前に進むっていうシンプルな2択を提示しているゲームで、それって僕らも生きている中でいろいろな2択があると思うんですよね。だからそこで前に進むか、後ろに戻るかで人生の積み重ねでそれが変わっていく。なんかそういうことを主人公にちょっと託しているという感じでしょうかね。
── 二宮さんはどうでしたか?
川村 さすがだなと思って、もう基本的にはずっと地下通路で撮っていて、カメラがずっとゲームのように彼を追いかけ続けるんですけれども、やっぱりアーティストとしての顔も持ってる方なので、カメラとの距離感がとにかくめちゃくちゃ勘が良くて、今どこにカメラがいて、どういう風に自分が映ってるかっていうことの彼の勘の鋭さにすごく助けられましたね。
小松菜奈さんも小松菜奈さんでやっぱり彼女がストーンって現れると、もうそれだけでいろんな意味合いを持ってくるので、すごく意味深な存在として大いに力をもらいました。

── ときどき『1917 命をかけた伝令』みたいに長回しになるじゃないですか。でも、それがそのゲームの世界観を意識してるのかなと思ったんですけど。
川村 変化球だと思われがちなんですけど、『百花』っていう前作の映画でワンカットの中で繋がらない空間が繋がるみたいなことに結構トライしていて、それが評価されたところもあって、その手法を使って今回ちょっとスリラー的なことがやれないかなって思っていたのと、あと結構こういう手法ってアニメーションの世界では、押井守監督だったり、今敏監督だったり、すごい自分の好きな監督がチャレンジしていた手法だったので、アニメーションを普段作っているので実写でそういうことをチャレンジできないかなと思ってトライしましたね。
── でも、いま世界的なシェアってアニメーションが非常に人気じゃないですか。そこで川村元気監督は監督でアニメーションをやりたいっていうのはないんですか?
川村 いやぁ、やっぱりアニメーションはちょっと絵描きの世界だなって思うところがあって。今回僕は二宮君だったり小松さんだったり、河内大和さんだったり俳優の肉体を使って、まるでCGの世界だったり、アニメーションの世界みたいなものを、人の演技と美術スタッフだったり撮影スタッフの力を借りて人力で起こり得ないことを起こすっていうことにチャレンジしていて。それがすごく面白がられてこのカンヌに呼んでいただいてるのかなと思うので、この手法は自分の特徴として今後も続けていきたいかなとは思っています。

── 日本の皆さんにメッセージをお願いします。
映画『8番出口』は8月29日に日本で公開されます。日本に先駆けてこのカンヌの場所でお披露目となります。日本のインディゲームがこうやって世界のひのき舞台に上がるという、地下通路だけの映画がこうしてカンヌに来るっていうすごく不思議な体験に驚いていますが、是非、日本の観客の方々にも楽しんでいただけるようにまずここでしっかりお披露目していきたいと思います。よろしくお願いします。
『8番出口 』
8月29日(金)公開
(C)2025 映画「8 番出口」製作委員会
「作るのと同じくらい売っていくことも大事なんだなと思う」

続いては、カンヌ国際映画祭で日本の映画や文化を世界に伝えるイベント「JAPAN NIGHT 2025 in Cannes」の主催を務めるMEGUMIさんを直撃!
カンヌ国際映画祭という世界最高峰の舞台で感じたことや、自身がプロデュースする新作映画について語って頂きました。
── MEGUMIさんはカンヌはこれで2回目ですか?
MEGUMI 来るのは3回目かな?
── カンヌ国際映画祭、どうですか?
MEGUMI もう本当にテンションがぶち上がりますね。世界中の映画関係者の方たちが集結しているし、あとやっぱり何より空気もいいし、朝お散歩しててもドレスアップしてる方たちがいたりとかして。でも、これってみんな映画を愛してる人なんだなって思うと、なんかすごい心が踊ります。
── カンヌ国際映画祭に通うようになって、「さらに英語もスキルを上げなきゃと思った」っておっしゃってましたよね。
MEGUMI そうですね。英語頑張っています。今はイベントも自分でやってるし、いろんな映画の制作もやっているので、イベントだけではなくて裏側の方とお話をする機会もものすごく増えていて、合作とか「話したいね!」とかってなると、やっぱり英語は必要なので、まだまだですが頑張っております。
── カンヌ国際映画祭がやっぱり「Japan Night」をやる意味っていうのを、今回カンヌに来れれたのが3回目ということで、本当に強く感じてるんじゃないかと思いますが。
MEGUMI そうですね。「Japan Night」もあと2日後かな。今年もやらせていただくんですけども、もう現状で1000人近くの方から来るっていうメールをいただいています。そして、もちろん出品&選出された7作品(『ルノワール』『遠い山なみの光』『8番出口』『恋愛裁判』『国宝』『見はらし世代』『ジンジャー・ボーイ』)の作品を紹介出来るっていうのもありますし、あと若い才能も今年もたくさんご紹介できますし。
あと日本のお酒とかお茶とか食とかそういったものもやっぱりそちらで紹介できるので、日本を映画というフィルターを通していっぱい紹介できるような場所になっているなというのは私たちにとってもやっぱりすごく意味を感じてやってます。
── 色々ご覧になりましたか?
MEGUMI いや、まだです。これからです。
── 『ルノワール』も。
MEGUMI 『ルノワール』観ました? 楽しみ! リリー(・フランキー)さんがすっごい素晴らしい作品だし、主演の鈴木唯ちゃんもすごいっておっしゃってたので、観たいなと思ってます。
── リリーさんに私もこの間会ったら、是枝監督に「すごいんだよ!」って言ってて。
MEGUMI でも、珍しいですね。もちろんいい時はいいって言うけど、あんなにテンション高く言うのは珍しいから、よっぽど素晴らしいんだろうなと思って『ルノワール』楽しみにしてます。

── 今回のこのカンヌ国際映画祭で楽しみにしてるものは他に何かありますか?
MEGUMI でも、この映画祭ってやっぱり映画ビジネスとかチャンスをめちゃくちゃそれぞれが掴んでいくというか、映画なんだけど、違う形で何かやろうと思ってやってるじゃないですか。だから、結構いろんな方の職場にお邪魔させていただいたりとかして、バイイングの方たちに、こうやって映画って売られてるんだっていうのも今回見させていただいたりして。
あとは自分が制作した映画が実は先月クランクアップしたんですよ。そのフライヤーを持って配ったりとか、いろいろ営業活動と勉強を今してますので。これはでもね、楽しい! 面白い!
「あっ、こうやって映画って売られるんだ」とか、「こうやってPRしてるんだ」とか、また他の国のパーティにもお邪魔させていただいて、こうやって国をPRしてるんだとか、本当にこの“カンヌ”という、ひと言だけどいろんな意味があるから、そこを毎日知れるのがとても楽しいです。
──カンヌ国際映画祭って確かにマルシェっていう売り買いをするところと一緒に同時にやってるじゃないですか。
MEGUMI はい。もちろん。
── 自分が作った作品も海外にもうアピールしていって……?
MEGUMI はい。もちろんです。もう海外の配給会社の方とは契約してるので、その方とのミーティングとかもあるし。でも、マルシェとかよりも会社に行って日本茶とか出しながら私がプレゼンして売った方がいいんじゃないかとか、売り方をいろんなところで見たりとかして、オリジナリティ持って売ってくのがいいんだなとかっていうことが勉強になりました。
── それを海外に広げるっていうのは、自分たちがやっぱやらなきゃね。
MEGUMI はい。作るのと同じくらい気合入れて宣伝といいますか、売っていくことも大事なんだなと思うし、やっぱりすごいプレゼンがうまい人とかいるんですよね。美味しいお茶やコーヒーとかを出してくれて、すごい空気のいいヴィラみたいなところでカーテンも締め切って「このタイの映画はね、こうでこうであぁであぁで」みたいな感じですごい説明した後に「じゃあ観てみましょう!」みたいな。「めっちゃ面白そう!!」っなるんですよね。だからその感じが、今回は大変いい刺激になりましたね。
── 日本だとまだ俳優の人がプロデューサーをやるっていうのが少ないじゃないですか。しかも女優の方がプロデューサーをやるのもまだ少ないです。一方で、海外はすごくいま多いですよね。
MEGUMI 多いですね。めちゃくちゃ多いから。
── だから本当にそこは先駆者としてぜひ!
MEGUMI いや、本当にまだまだわからないですけれども、プロデューサーの方とかもアドバイスを皆さん下さって。カンヌに来てる人もいっぱいいるじゃないですか。日本人の方たちがそういう人たちと毎日ご飯も食べてて、それと日本ではできない会話ができるわけですよ。
「本当はこう思ってるんだよ」とか、「こういう風にやってったらいい」とかっていうのを「これ、東京だったら絶対こういう会食ないよね」みたいな話もできるから、本当に今回もいろんなプロデューサーの方にアドバイスを頂いて、人生観変わるようなこともありました。
── 女性が元気になれる映像を撮りたいとおっしゃっていたじゃないですか。
MEGUMI はい。もちろんです。
── そこは今回の制作の方でも?
MEGUMI もちろんでございます。女性が主人公でいろんな問題をサバイブしながら乗り越えていく成長物語になってますので、もう完全に私のこの掲げてるものにフィットした作品でございます。
── MEGUMIさんも出てますよね?
MEGUMI どうですかね? でも、どうですかねってことはどうですかね……?(笑)
── (笑)。
MEGUMI そうなんですよ。主演が片山友希ちゃんっていうことはもう発表されています。あと木村太一監督、太一さんも今年カンヌに来てますのでプレゼンもしてもらうんですけども、徐々に出演者の方もこれから開示して皆さんにお伝えします。「すごくない!?」って言っていただける方たちにおかげ様で出演していただきましたし、音楽もすごいです。「えぇ⁉えぇ⁉」っていう……。
── でも、言えないんですね。
MEGUMI まだ言えないんですけれども、来年の一応夏か秋には日本で公開できるように今動いてます。それで、映画祭ももちろん目指してます。
── その時にもインタビューしたいと思います。
MEGUMI 来てください、来年も!
『8番出口』 川村元気監督、「JAPAN NIGHT」主催MEGUMI
データ
YouTubeチャンネル「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」
https://www.youtube.com/channel/UCVYlon8lP0rOJoFamEjsklA